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ピピーッ!その測定、対照実験してますか?~磁場中輸送測定で超伝導の異方性を議論することの怪しさ~

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 【イントロ】 博士「ついにやったぞ!」 学生「どうしたんですか? 逮捕状でました ?」 博士「逮捕はまだじゃ。なんと、超伝導体の異方性を磁場中輸送測定で検出することに成功したんじゃ!」 学生「すごいじゃないですか。」 博士「ふふふ、これでNature Physicsも間違いナシじゃ」 学生「ちなみに、レファレンスつかった対照実験して、測定系由来のアーティファクトの検証はしましたか?」 博士「・・・はにゃ?」 学生「なんで突然ちいかわになってるんですか。」 博士「ほしい結果が出たら、それを正当化する理屈をつけて論文にすればよいんじゃないのか・・・?」 学生「正気ですか?正気を失ってしまった博士にはこの論文を紹介しましょう。ラトガース大学のMallick博士らによる論文、 Debarghya Mallick et al .,  Ubiquity of rotational symmetry breaking in superconducting films, from Fe(Te,Se)/BiTe to Nb, and the effect of measurement geometry ,  arXiv:2505.18749 [cond-mat.supr-con] です。」 博士「がんばるぞい」 © ちいかわ 【どんな論文?】 博士「ふむ・・・この論文はどんな内容なんじゃ?」 学生「この論文は、 『超伝導体の2回回転対称性の破れを磁場中輸送測定で検出しても、それが試料由来ではなく、測定系が本質的にもっている2回回転対称性を見ているだけの可能性がある』 ということを主張している論文です。」 博士「そ、そんなことがありうるのか!?」 学生「はい。それを明らかにしたのが、最初に述べたレファレンス(参照サンプル)との 対照実験 です。」 博士「ふむ。具体的にはどういうことじゃ?」 学生「では詳細を説明しましょう」 【モチベーション】 学生「そもそもこの論文は、磁場中輸送測定で超伝導体の異方性を検出し、非従来型超伝導を主張する先行研究の問題点を指摘しています」 博士「どういうことじゃ?」 学生「前提から説明しましょう。 最近、凝縮物性において ネマティック転移と呼ばれる自発的回転対称性の破れ が注目を集めています。 このような転移は鉄系超伝導...

トポロジカル物質って役立つの?~Chernネットワークを題材に~

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 【イントロ】 本記事では、最近読んだ面白かった論文、 Matthew J. Gilbert,  Chern networks: reconciling fundamental physics and device engineering ,  Nat Commun 16, 3904 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-59162-x の内容の要約です。 【感想】 凝縮物性物理分野における基礎研究と電子デバイスの応用研究の亀裂、そしてトポロジカル物質は工学的に役立つのか? そうした興味深いテーマの意見論文になっています。 「量子異常ホール絶縁体はどこまで小さくできるのか?」というエンジニアリングの問題も突き詰めれば「量子異常ホール絶縁体の対向するカイラルエッジ流が干渉しない限界サイズ値を決める原理はなにか?」という基礎的な問題に着地します。 デバイス分野からの視点により、トポロジカル物性の限界を浮き彫りにする研究は新しいアイデアの源泉となりうるように感じました。 一方で、トポロジカル物質は、無散逸のエッジ伝導以外にも多くの特徴があります。電子回路への応用にとらわれず、トポロジカル物質の社会実装を進める topologic などの企業も存在します。 今後もトポロジカル物質の研究には注目です。 イクラちゃん( ©サザエさん ) 【要約】 凝縮物性の基礎研究と、電子デバイスの工学的研究の間の距離感が広がっている。これらの分野は、かつては情報化社会の礎を築くデバイス研究を強力に推し進めるパートナーであった。 凝縮物性の基礎研究は、複雑な物質や幾何構造で生じる微妙な電子現象の追求に夢中になっている。一方で、デバイス研究は室温動作とエネルギー効率のための改善的研究に重きを置いており、破壊的な変更をもたらす代替物質や物理現象を重視していない。 このコメント論文の目的は、近年基礎研究分野で注目を集めているトポロジカル物質の研究をテーマに、デバイス分野の観点からの要求と評価基準を明らかにすることで、基礎研究分野と応用的デバイス研究分野の再結合を促し、トポロジカル物質を利用した次世代電子革命を促進することである。 トポロジカル物質を工学的に応用しようという最近のアイデアの1つがチャーンネットワーク(Ch...

(工事中)バトルしようぜ!~凝縮物性論争まとめ~(仮)

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 ※本記事は、現在開発中です バトルしようぜ! 水素化物高圧超伝導はほんとに超伝導か?ってハーシュ氏が言ってる  現状、最も高い超伝導転移温度が実現しているのは水素化物(H3SやLaH10など)で、超高圧(100GPa~200GPa)環境において、Tc=200K-300K弱程度の超伝導が発現する[1]。 この現象に対して論争、というよりJ.Hirschらによるイチャ・・・批判が存在する。 「高圧下において、本当にゼロ抵抗とマイスナー効果が観測されているといえるのか?」 というのが、Hirschらによる批判の中心的な論点である。測定結果の解釈と解析方法に問題があるのではないかと熱心な批判が加えられている[2]。  この批判に対して、世界の中心的な凝縮物性研究者達が連名で、 「高圧水素化物の超伝導現象は実際に超伝導である」 というコメント論文を出す事態になっている[3]。  実際のところ、Hirschらが批判の対象としている高圧下のゼロ抵抗測定や磁化率測定を超えて、最近のNV中心磁力計を利用したマイスナー効果測定[4]や、トンネル分光測定による超伝導ギャップ測定の実現[5]などにより、高圧水素化物超伝導の実現は十中八九正しいと考えられる。  一方で話をややこしくしているのは、Hirschらの批判が一部正しく、初期の水素化物超伝導における高圧下磁化率測定の解析に課題があり、訂正論文が出版される事態になった[6]ことである。  ある分野の測定は、他分野の研究者からはブラックボックスな部分があり、どのような実験・解析が行われているか不明なところがある。そうした曖昧さが許容されない時代を感じる。  今後もHirschらによる批判と、高圧下の超伝導状態測定手法の進化の競争が楽しみ論争でもある。 [1]Drozdov, A., Eremets, M., Troyan, I. et al. Conventional superconductivity at 203 kelvin at high pressures in the sulfur hydride system. Nature 525, 73–76 (2015) . [2]J E Hirsch, Are hydrides under high-pressure–high-temperature superc...