2019年10月の気になった物性系論文(完全版)

10月の気になった論文です。
ホントの辛さがマッハで加速してきた。

今月はMnBiTe系の研究が加速した感じがしますね。
あとは、マジックアングルTMDの発見が今後の注目でしょうか?

Ver. 1 : 1-12 2019/10/14
Ver. 2 : 13-19 2019/10/27
Ver. 3 : 13追記、20-21 2019/10/29
Ver. 4 : 13、20追記、22-23 2019/10/30
Ver. 5 : 13追記、24 2019/10/31



1,Iron-Selenide Phenomenology in Superconducting Pr4Fe2As2Te0.88O4
https://arxiv.org/abs/1910.01639

コメント:電子面しか存在しない薄膜FeSeと同じフェルミ面構造がPr4Fe2As2Te0.88O4で実現していることをARPESとXRDで発見した論文。ネマティックな振る舞いはどうなってるのかな?

2,Two-band model for magnetism and superconductivity in nickelates
https://arxiv.org/abs/1910.02482
Nickelate superconductors −− Multiorbital nature and spin freezing
https://arxiv.org/abs/1910.00473
Spin excitations in nickelate superconductors
https://arxiv.org/abs/1910.05757
Magnetic penetration depth and Tc in superconducting nickelates
https://arxiv.org/abs/1910.13269

コメント:今月のニッケル酸化物超伝導理論。実験の追試はマダー?

3,Uniaxial-strain Control of Nematic Superconductivity in SrxBi2Se3
https://arxiv.org/abs/1910.03252

コメント:一軸圧を使ってネマティック超伝導の向きを制御する研究。

4,Dynamic Superconductivity Responses in Photo-excited Optical Conductivity and Nernst Effect
https://arxiv.org/abs/1910.02388

コメント:銅酸化物に見られるクーパー対形成前駆現象を平衡・過渡超流動密度の観点から解釈するアイデアの提案。

5,Phonon hydrodynamics and record room-temperature thermal conductivity in thin graphite
https://arxiv.org/abs/1910.04422

コメント:8ミクロン厚のグラファイトがダイヤモンドを超える室温熱伝導度を持つことを発見した論文。フォノン流体力学すごい・3・

6,Double moiré with a twist: super-moiré in encapsulated graphene
https://arxiv.org/abs/1910.00345

コメント:少しずつずらしたhBNで挟んだグラフェンは上下面hBNからモアレの影響を受けてスーパーモアレ電子状態になるという理論提案。

7,Orbital Nernst Effect of Magnons
https://arxiv.org/abs/1910.03317

コメント:マグノンのスピンカイラリティと系の軌道自由度と結合することで、巨大な軌道磁化と熱軌道流が生じることを予言する理論。こういうの好き。

8,Observation of giant anomalous Ettingshausen effect in permanent magnets
https://arxiv.org/abs/1910.03748

コメント:永久磁石SmCo5において、磁場と電流と垂直な方向に温度勾配が生じる異常エッティングハウス効果が生じることを発見した論文。”熱電永久磁石”開発への道が開いたらしい。

9,Magnonic Analogue of Edelstein Effect in Antiferromagnetic Insulators
https://arxiv.org/abs/1910.00143

コメント:電子の逆スピン起電力効果のアナロジーを、反強磁性体のマグノンをつかって考えた理論的提案。

10,Direct comparison of many-body methods for realistic electronic Hamiltonians
https://arxiv.org/abs/1910.00045

コメント:7種の遷移金属のイオンと酸化物の物性に対して、第一原理計算20個を使ってベンチマークした”Simons collaboration on the many-electron problem”の報告。

11,Quantum Generalized Hydrodynamics
https://arxiv.org/abs/1910.00570

コメント:相互作用する量子粒子のオイラー的流体方程式は”一般化流体力学”と呼ばれているが、そこには量子ゆらぎや量子干渉といった量子効果は織り込まれていない。そうした量子効果を考慮した”量子一般化流体力学”をこの論文では提案し、多成分ラッティンジャー液体理論とみなせることを指摘している。なるほど、わかんにゃい・3・

12,Thermoelectric response and entropy of fractional quantum Hall systems
https://arxiv.org/abs/1910.04177

コメント:厳密対角化を使った分数量子ホール効果の熱電応答の理論的研究。

13,Persistent gapless surface states in MnBi2Te4/Bi2Te3 superlattice antiferromagnetic topological insulator
https://arxiv.org/abs/1910.11014
Universal gapless Dirac cone and tunable topological states in (MnBi2Te4)m(Bi2Te3)n heterostructures
https://arxiv.org/abs/1910.11323
Magnetic topological insulator in MnBi6Te10 with zero-field ferromagnetic state
https://arxiv.org/abs/1910.10101
Variety of magnetic topological phases in the (MnBi2Te4)(Bi2Te3)m family
https://arxiv.org/abs/1910.11653
Möbius Insulator and Higher-Order Topology in MnBi2nTe3n+1
https://arxiv.org/abs/1910.11906
Realization of an intrinsic, ferromagnetic axion insulator in MnBi8Te13
https://arxiv.org/abs/1910.12847
Ferromagnetic van der Waals compound MnSb1.8Bi0.2Te4
https://arxiv.org/abs/1910.13057
Strongly Gapped Topological Surface States on Protected Surfaces of Antiferromagnetic MnBi4Te7 and MnBi6Te10
https://arxiv.org/abs/1910.13943

コメント:MnBiTeシリーズの研究。ギャップレス表面状態があったり、磁場をかけると強磁性アキシオン絶縁体になったり、メビウス絶縁体だったりギャップの有無は劈開面にBi2Te3が来てるかどうかで決まっている、等と話題が豊富。

14,WSe2/WS2 moiré superlattices: a new Hubbard model simulator
https://arxiv.org/abs/1910.08673

コメント:TMDモアレヘテロ構造がハバードモデル的振る舞い、すなわち反強磁性モット絶縁体的振る舞いや量子相転移を示すことを発見。超伝導はでるのかな?

15,A report of (topological) Hall anomaly two decades ago in Gd2PdSi3, and its relevance to the history of the field of Topological Hall Effect due to magnetic skyrmions
https://arxiv.org/abs/1910.09194

コメント:最近スキルミオン由来の巨大トポロジカルホール効果が発見されたGdPdSi3、実は20年前にすでに巨大ホール効果自体は発見されていたけど当時は理由がわからず、現代的スキルミオン解釈により、そのふるまいが理解できましたよね、という論文。

16,Probing quantum spin liquids in equilibrium using the inverse spin Hall effect
https://arxiv.org/abs/1910.08610

コメント:量子スピン液体を逆スピンホール効果を利用して検出できるはずという理論的提案。

17,Absence of superconductivity in the pure two-dimensional Hubbard model
https://arxiv.org/abs/1910.08931

コメント:次近接ホッピングを含まないオリジナルな二次元ハバードモデルの基底状態は超伝導にはならないことを理論的、数値計算的に示した論文。

18,Link between magnetism and resistivity upturn in cuprates: a thermal conductivity study of La2−xSrxCuO4
https://arxiv.org/abs/1910.08126

コメント:銅酸化物の擬ギャップ相の低温で見られる電気抵抗のアップターンの起源を熱伝導度測定から調べた論文。スピン密度波転移のオンセットと相関してるよねという磁性起源を提唱している。

19,Superconducting fluctuation probed by the Higgs mode in Bi2Sr2CaCu2O8+x thin films
https://arxiv.org/abs/1910.07695

コメント:銅酸化物の超伝導前駆現象は時間分解光学測定やARPES、ネルンスト効果で観測されているがその温度は一致していない。この論文では超伝導コヒーレンス発現と密接に関係したヒッグスモードをテラヘルツカー効果を利用して観測することで、超伝導コヒーレンスがピコ秒時間領域で生じていることを発見した論文。他のARPESやネルンスト効果で見える前駆現象はクーパー対は形成されているけど位相のコヒーレンスは生じてないってことですか(。・ω・))フムフム

20, Magic continuum in twisted bilayer WSe2
https://arxiv.org/abs/1910.12147
Flat bands in small angle twisted bilayer WSe2
https://arxiv.org/abs/1910.13068

コメント:マジックアングルグラフェンと同様の現象がWSe2でも生じることを明らかにした研究。その名も魔法連続体捻り二層WSe2!モット絶縁体的振る舞いや超伝導もみえ、さらにマジックアングルが⊿θ~1°と広い角度で安定する。2つ目の論文ではSTMでフラットバンドの観測に成功している。マジックアングル物性が二次元物質全般に広がる日は近そうだけど、実験できるグループは相変わらず限られている印象です><

21, Quantum phase transition of correlated iron-based superconductivity in LiFe1−xCoxAs
https://arxiv.org/abs/1910.11396

コメント:LiFeAsにCoを置換していくとフルギャップ構造からノーダルギャップ構造に変化していくのをSTMで観測した論文。s±波+非磁性不純物効果で理解できる。やったね❤

22,Evidence for topological surface states in amorphous Bi2Se3
https://arxiv.org/abs/1910.13412

コメント:アモルファス状態のBi2Se3にトポロジカル表面状態が存在することをX線散乱とARPESから観測した研究。結晶の対称性がぶっ壊れた物質のトポロジカル状態とは一体。。。理論的には提唱されていましたが、イマイチ想像がつかないのでちゃんと論文読まないとダメですね(戒め)

23, Imaging and control of critical spin fluctuations in two-dimensional magnets
https://arxiv.org/abs/1910.13023

コメント:広視野・高速観測が可能な磁気光学顕微鏡を開発し二次元磁性体CrBr3のスピンゆらぎの実空間観測した論文。さらに其の観測結果をフィードバックしてゲート電圧だけで磁気状態の制御にも成功している。こういう新しい測定手段の開発って楽しそうですよね。

24, Evidence for a Parity Broken Monoclinic Ground State in the S = 1/2 Kagomé Antiferromagnet Herbertsmithitehttps://arxiv.org/abs/1910.13606

コメント:ZnCu3(OH)6Cl2 (Herbertsmithite) の基底状態を明らかにするために光学伝導度測定と高次高調波測定を行い、パリティ対称性の破れたネマティックZ2ストライプスピン液体が実現している可能性を提案する論文。
うんうん、それもまた量子液晶だね(๑•̀ㅂ•́)و✧

コメント

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

学振採用者はどこへ消えた?

物理系研究関係者、ツイッターやりすぎランキング(ぶひん調べ)

オレ達はあと何本論文を書けば東大教授になれるんだ?