地学系の業績ってどうなってるのだろう?という思い
【イントロ】
「自分の分野にだけ閉じこもってタコツボ化してはいけない」とは、学問だけでなく様々な分野において言われることだと思います。新しいアイデアは様々な既知のアイデアの組み合わせから生み出されるため、色々な分野の情報を積極的に取り入れていくのは大事な事です[1]。これまでの記事では固体物性に関わる雑誌や研究者の業績について調べてきましたが、はたして他の分野の業績はどうなっているのだろうと思い、調査を行ってみることにしました。
調査対象となりうる分野は天文や素粒子、数学から、化学、生物まで幅広くありますが、友人からの依頼もあり対象分野は地学分野とすることにしました。地学分野を専門とする大型の研究施設で、年報から業績をまとまった形で確認できるという点から、東京大学地震研究所[2]の研究業績を調査してみることにしました。
【方法】
調査対象は、東大地震研の2014~2016年度の年報に記載されている、助教(JK)の研究業績としました。確認したのは論文数、出版論文のImpact Factor(IF)です。プロシーディングはカウントの対象外としました。論文の見落としはないように確認しましたが、数え落としの可能性はゼロにできないので、今回の調査結果は下限値であるという認識です。また、実際は一人非JKが含まれていますが、そのラベルは秘密です。
(余談1)調査してみて面白かったのは、「地震」研という名前からは思いつかないほど多様な研究分野があることでした。地球計測、地震予知、火山噴火といった地震関係から、海半球観測、巨大地震津波といった海洋系、それらをカバーする観測機器、また数理系や高エネルギー系といったちょっと地震との直接のつながりをイメージできない分野まで多様な分野をカバーしている研究所であるということが調べてみてわかりました(おもしろかった)。
(余談2)Geophys. Res. Lett.[3]やJ. Geophys. Res.[4]といった固体物性では出てこない雑誌に掲載されている論文が多く、世の中にある論文誌の多様性に驚かされました。その分、知らない雑誌のIFの確認に骨が折れました。。。
【結果】
図1に論文出版数、図2に合計IF、図3に平均IF、そして図4にJK指数(1st論文数x3pt+2nd論文数x2pt+3rd以降論文数x1pt)を示します。
調査してみて感じたのは、出版雑誌のIFの高さです。固体物性分野でよく論文が掲載されるJPSJ(IF=1.585)[5]やPRB(3.664)[6]と比較して、地学分野ではGeophys. Res. Lett(4.99)やJ. Geophys. Res.(3.318)といったIFが高めの論文に掲載される比率が多いことが見て取れました。「固体物性の方がIF高いのでは?」と勝手に思っていた先入観を恥じるばかりです。結果として地震研JK全体の平均IFは3.6、旧帝国大学所属の固体物性系JKの平均IFは4.2でほぼ同じといえる結果となりました。
2014-2016年の平均出版数は約4本で、固体物性(2015-2017/5)の約5本と比較するとほぼ同じか、年平均1本程度少ない模様です。地球といった実験室内でコントールすることが難しい対象を扱っている以上、起こりうる差であると思えます。
【まとめ】
今回、地学分野の研究業績を調査してみて学んだことは、おもに2つありました。1つ目は分野が違えばその数だけ研究対象がありその数だけ論文雑誌もあるということです。自分野だけを考えていると思いつかないような研究対象が存在することを、忘れてはいけないと思いました。2つ目は、固体物性と地学といった違う分野でも、JKの論文の生産性や研究のインパクトはほとんど同じということでした。日夜世界の謎に真摯に向き合い研究を進めると自然と同じアクテビティに到達するということなのかなと思った深夜でした。
【参考文献】
[1]、ジェームス W.ヤング、アイデアのつくり方
[2]、東京大学地震研究所 http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/
[3]、Geophysical Research Letters
[4]、Journal of Geophysical Research
[5]、Journal of the Physical Society of Japan
[6]、Physical Review B
「自分の分野にだけ閉じこもってタコツボ化してはいけない」とは、学問だけでなく様々な分野において言われることだと思います。新しいアイデアは様々な既知のアイデアの組み合わせから生み出されるため、色々な分野の情報を積極的に取り入れていくのは大事な事です[1]。これまでの記事では固体物性に関わる雑誌や研究者の業績について調べてきましたが、はたして他の分野の業績はどうなっているのだろうと思い、調査を行ってみることにしました。
調査対象となりうる分野は天文や素粒子、数学から、化学、生物まで幅広くありますが、友人からの依頼もあり対象分野は地学分野とすることにしました。地学分野を専門とする大型の研究施設で、年報から業績をまとまった形で確認できるという点から、東京大学地震研究所[2]の研究業績を調査してみることにしました。
【方法】
調査対象は、東大地震研の2014~2016年度の年報に記載されている、助教(JK)の研究業績としました。確認したのは論文数、出版論文のImpact Factor(IF)です。プロシーディングはカウントの対象外としました。論文の見落としはないように確認しましたが、数え落としの可能性はゼロにできないので、今回の調査結果は下限値であるという認識です。また、実際は一人非JKが含まれていますが、そのラベルは秘密です。
(余談1)調査してみて面白かったのは、「地震」研という名前からは思いつかないほど多様な研究分野があることでした。地球計測、地震予知、火山噴火といった地震関係から、海半球観測、巨大地震津波といった海洋系、それらをカバーする観測機器、また数理系や高エネルギー系といったちょっと地震との直接のつながりをイメージできない分野まで多様な分野をカバーしている研究所であるということが調べてみてわかりました(おもしろかった)。
(余談2)Geophys. Res. Lett.[3]やJ. Geophys. Res.[4]といった固体物性では出てこない雑誌に掲載されている論文が多く、世の中にある論文誌の多様性に驚かされました。その分、知らない雑誌のIFの確認に骨が折れました。。。
【結果】
図1に論文出版数、図2に合計IF、図3に平均IF、そして図4にJK指数(1st論文数x3pt+2nd論文数x2pt+3rd以降論文数x1pt)を示します。
図1 2014-2016の合計出版論文数 |
図2 2014-2016の合計IF |
図3 2014-2016の平均IF |
図4 2014-2016のJK指数 |
調査してみて感じたのは、出版雑誌のIFの高さです。固体物性分野でよく論文が掲載されるJPSJ(IF=1.585)[5]やPRB(3.664)[6]と比較して、地学分野ではGeophys. Res. Lett(4.99)やJ. Geophys. Res.(3.318)といったIFが高めの論文に掲載される比率が多いことが見て取れました。「固体物性の方がIF高いのでは?」と勝手に思っていた先入観を恥じるばかりです。結果として地震研JK全体の平均IFは3.6、旧帝国大学所属の固体物性系JKの平均IFは4.2でほぼ同じといえる結果となりました。
2014-2016年の平均出版数は約4本で、固体物性(2015-2017/5)の約5本と比較するとほぼ同じか、年平均1本程度少ない模様です。地球といった実験室内でコントールすることが難しい対象を扱っている以上、起こりうる差であると思えます。
【まとめ】
今回、地学分野の研究業績を調査してみて学んだことは、おもに2つありました。1つ目は分野が違えばその数だけ研究対象がありその数だけ論文雑誌もあるということです。自分野だけを考えていると思いつかないような研究対象が存在することを、忘れてはいけないと思いました。2つ目は、固体物性と地学といった違う分野でも、JKの論文の生産性や研究のインパクトはほとんど同じということでした。日夜世界の謎に真摯に向き合い研究を進めると自然と同じアクテビティに到達するということなのかなと思った深夜でした。
【参考文献】
[1]、ジェームス W.ヤング、アイデアのつくり方
[2]、東京大学地震研究所 http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/
[3]、Geophysical Research Letters
[4]、Journal of Geophysical Research
[5]、Journal of the Physical Society of Japan
[6]、Physical Review B
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