完全教祖マニュアルを読んで研究分野を創始する



【イントロ】
神です。
おはようございます。

宗教にとって必要なものはなんでしょうか?
そうですね、宗教を信じる人々、すなわち信者を作ることです。
では、宗教を創始するにはどうしたら良いでしょうか?
その身近にあるけれどよくわからない宗教を作り上げる手法を明らかにしたのが、名著完全教祖マニュアルです。
いままで漠然としていた宗教の作り方をマニュアル化し、教祖になる手段を軽妙な語り口で提供してくれるこの怪著は、宗教に対してこれまでにない視点を与えてくれるすばらしい作品ですので、ぜひ皆さんにも一読いただきたいです。

さて、この手法、研究にも利用できないでしょうか?

そこで本記事では、「完全教祖マニュアル」に記載された「宗教創始」マニュアルを「研究分野の創始」に当てはめることが可能か検証しました。

【本文】
 まず、”教祖”、”信者”とは何でしょうか?「完全教祖マニュアル」(以下、教祖マ)によれば、
”教祖”=何かを言う人、”信者”=それを信じる人
とのことです。わかりやすいですね。
 研究に当てはめると、
”教祖”=新しい研究を始めた人、”信者”=その研究のフォロワー
というところでしょうか。よくありますね。教祖がいないと研究分野は始まりませんし、信者がいないと研究に広がりが生じませんから両方大切です。

 では、”教祖”の”使命”とはなんでしょうか?、教祖マによれば、
”使命”=人をハッピーにすること
とのことです。これは研究にも当てはまりそうですね。ハッピーサイエンス!

教祖マでは、宗教の設立に必要なものとして、”神””反社会性””高度な哲学”の3つを上げています。

 まずですが、神の有無そのものではなく、神がなす機能が重要であると指摘されています。例えば、辛いこと、不安なことがあった時、そこに理由を与えてくれるのが神の機能ということです。
研究にとって神とはなんでしょうか?、ここでは科学そのもの、すなわち
「自然や社会など世界の特定領域に関する法則的認識を目指す合理的知識の体系または探究の営み。実験や観察に基づく経験的実証性と論理的推論に基づく体系的整合性をその特徴とする。」(三省堂 大辞林 第三版
としておきましょう。

 次に反社会性です。そもそも宗教は社会が抱える問題点を解決するために発生するため、本質的に反社会的な存在です。既存の社会で幸せになれない人に、反社会的な基準を与えることでハッピーを与えるのです。
 研究の世界でも新しい研究分野は、既存の学問に挑戦するという意味で反社会的ですね。ニュートン力学に対する、相対性理論のようなものです。水星位置の近日点移動が解明できてハッピーです。また、一般社会から研究は「なにか難しくてよくわからないもの」として扱われているようですから、存在自体が反社会的ですね。

 最後に高度な哲学です。これは、教祖マによれば、
「突飛な”前提”を用意し、社会の問題点を追求すること」
に当たります。重要なのはいかに突飛な前提を用意するかです。突飛な前提に基づく異常な攻撃を行うことが重要です。問題点との間の論理的なつながりは問いません。これはエリートたちに解決させます。エリート達は優秀なので論理的な議論が得意です。飛躍を論理で埋めることにエリートはハッピーを感じてくれます。そのかわり、論理的ゆえに突飛な前提を生み出すことが苦手なのです。論理的なので。
研究では、原理の提案に当てはまるでしょうか。ニュートンの法則、相対性原理、不確定性原理・・・既存の学問からみれば突飛な原理を提案することが求められます。その原理が有用ならばその後の信者の方たちがギャップを埋めてくれるでしょう。とはいえ、この原理の提案が一番難しいのですが。。。

図、高度な哲学のイメージ

以下では教祖マのメソッドに従い、教祖として神=科学、前提=原理=”More is Different”とした、『”More is different”』教の布教を考えてみることにします。
※こちらの”More is different”は故P. W. Andersonそれとは異なります。
  • 大衆に迎合する
    ・教えを簡単にします。”More is different”なんて英語でインテリぶってはいけません。「みんなちがってみんないい」、それくらい簡単にして知的水準の低い人まで『More is different』教を広めていきましょう。
    ・現世利益を与えます。「将来はノーベル賞だね❤」じゃあないんだよ。研究アイデアと研究費、パーマネントポストを与えましょう。
    ・偶像崇拝します。人は何かしら形あるものにすがりたくなるものです。そうですね、Nature & Science を崇拝しましょう。南無Accept。
  • 信者を保持する
    ・怪力乱神をみせます。すなわち、「意味のない現象」に「意味」を与えます。その理解できない現象が”More is different”に基づけば説明がつくことを説明します。無敵の原理だから当然なんでも説明できます。
    ・不安を煽ります。とくに「困っていると認識していない」ことを困ることとして認識させます。いまのままでは研究費やポストを獲得できないこと、人生をやっていけないことを認識させます。いつまで任期付きをやりくりするの?
    ・救済を与えます。不安を喚起した後にカタルシスを与えます。”More is different”の原理に従えば、ハイインパクトな論文がでてポストが取得でき、人生をやっていけることを認識してもらいます。
  • 教義を進化させる
    ・義務を与えます。無条件に”More is different”を信仰するより、対価があったほうが安心してハッピーになれます。月一本の論文を義務化しましょう。「成果をアピールしたい」という感情の発露をサポートします。分野の広報誌を作って記事を投稿してもらうのも良いですね。グループの一員感を高めて信仰心を高めていきましょう。
    ・権威を振りかざします。「”More is different”は正しいから・・・」「教祖先生がいってるから・・・」と価値観の外注を実現し心を楽にしましょう。
    ・セックスをします。共同研究ですね。
    ・宗教的体裁をとります。普通の人は宗教というだけで、非論理的に宗教を信仰しています。”More is different”への信仰は非論理的な宗教的なものです。
  • 布教する
    ・弱っている人を探します。研究費やポスト、論文のアイデアに困っている人を勧誘します。
    ・金持ちを狙います。すでに研究費をたくさん持っている先生や、企業を巻き込んでいきます。
    ・親族を勧誘します。兄弟弟子や、学問上の師匠、教え子たちを”More is different”の原理に勧誘しましょう。研究グループを拡大していきましょう。誘いやすいですからね。その後の人間関係は保証できませんが。
  • 困難に打ち勝つ
    ・他の研究をこき下ろします。マジョリティを批判することで自分の正当性を確認します。「あの研究はクソ」「統計処理ってわかりまちゅか~」「再現性w」。
    ・他の研究を認めます。他の研究の存在を認めます。優しいですね。なぜなら、その研究も”More is different”の一部だからです。「いいね~その研究。”More is different”で説明できるじゃん!」「そういう発想か~でも”More is different”から導出したほうが早いけどね~」。自分たちの原理に他の研究を取り込んでいきましょう。
    ・異端を追放する。”More is different”にも色々な流派がでてきますね。「みんな違ってみんないい」みたいなゆるいグループから「多体系のメカニズムは最小構成要素の性質に還元できない」といった本気グループまで誕生しそうです。せっかく仲良くやっていたときに本気グループが出てくるとめんどくさいですね、排除しましょう。
    ・迫害に対処する。”More is different”を信仰していると、非信仰グループから攻撃を受けるでしょう。やれ「あの研究には価値がない」「リソースの無駄遣いだ」。歓迎しましょう。迫害によって一層グループ内の団結力が強化されます。批判されるほど”More is different”に価値があったということです。自信を持ちましょう。
  • 甘い汁を吸う
    ・論文を出します。普通は論文をだしても読んでくれる人がいるかわかりませんよね。信者が読んでくれます。さらに引用までしてくれます。さらに自然と共著論文も増えます。分野のレビュー論文を書くのもいいですね。h-indexバク上げです。
    ・不要品を売りつけます。研究分野の特有な実験装置やグッズを作って売りつけましょう。業者とWin-Winです。「”More is different”分野をするならこの実験装置がいるよね~」「このグッズが”More is different”分野を研究している証」という空気を作り出しましょう。空気が大切です。社会なので。
    ・教科書を売りつけます。分野の教科書を執筆して界隈に売りつけましょう。授業の指定教科書にするのもいいですね。外装のインテリア製を高めて、おしゃれな積読として販売するのも良いですね。
    ・寄付を受け付けます。お金を持っている企業や団体から寄付を受け付け、相手の名誉欲を満たします。さらに寄付に条件をつけることで、寄付という行為に付加価値をつけることも可能です。「100万円以上の寄付のみ受け付けます」(100万円以上寄付したんだからその行為には価値がある思いたくなる思考)といったところです。逆に匿名の寄付のみ受け付けて、相手の信仰心を価値付けることも可能です。「名前はでないけど、おれは”More is different”の価値をわかっているぞ~」と思わせるわけです。みんなハッピーですね。
  • 後世に名を残す
    ・国の研究にしてしまいましょう。国にサポートしてもらう、大事な権威付けですね。”More is different”分野を研究する国立研究所なんかを作ってもらえると歴史に名前を残せますね。センター長になりましょう。ハッピーです。
    ・大発見をします。とはいえ、教祖は何もしません。弟子達に任せます。重要なのは”More is different”教徒がやった研究を「教祖が発見したこと」にすることです。最高ですね。ハッピーです。
    ・科学を信じます。最終的には科学的思考法が勝利すると信じましょう。信じるものは救われます。ハッピーになりましょう。
【まとめ】
 本記事では、完全教祖マニュアルを研究分野の創始に適用したらどうなるか検証してみました。最低な研究者が誕生した気がします。まあ、人生そんなものかもしれませんね。
研究は人をハッピーにするものであってほしいです。完全教祖マニュアル、上手に生かして研究分野を生み出していきましょう!

コメント

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

学振採用者はどこへ消えた?

物理系研究関係者、ツイッターやりすぎランキング(ぶひん調べ)

オレ達はあと何本論文を書けば東大教授になれるんだ?