学振採用人数の増えている人気の分野はどこだ2021



 

【イントロ】
春ですね。
そう、春と言ったら日本学術振興会特別研究員、いわゆる学振申請の季節です。
今まさにGW(Gakushin Week)の真っ最中。
松尾芭蕉も歌に読んでいますね。
「学振を集めてはやし最上川」

 そんな学振申請ですが、同じ審査区分でもいろいろな分野(小区分)が存在し、どの分野を狙えばいいのか迷ってしまいます。できれば採用人数がたくさんのところに申請したいですが、一方でライバルも多い。。。戦略が必要になってきます。とはいえ、そもそもどの分野の採用人数が多いのか、少ないのかわからないと戦略の立てようも有りません。
 先行研究として、学振DCの応募者数と採択率の変化を調べたものが存在します。しかし、小区分ごとの推移はその記事からはわかりません。
 そこで本記事では、過去3年の学振の採用分野ごとの人数を調べることで、最近流行りの分野が何なのか明らかにすることを目指しました。

【方法】
 こちらの学術振興会HPを参考に、集計対象は2019年~2021年の3年間に、審査区分「数物系科学」にDC1採用された申請者としました。採用小区分ごとの採用人数を調べて3年間の推移を調べました。PDFをWordで開いてコピーしEXCELに貼り付けてピボットテーブルで集計しています。
コレより過去では小区分の区分が(たぶん)変わっていて統一的に集計できないためです。この事実に気づいたため、データが3年分そろうのを1年待ちました。

【結果】
 まずは、応募者数と採用数、採用率です。
 図1をみると、この3年間は、応募者数は600人弱で一定となっている様子が見て取れます。コロナ流行が合ったとはいえ、学振応募者数に影響は小さいようです。
男女別で観てみると、R3年分の女性の応募者は少し減少したようです。とはいえH30年比では増えているため、ばらつきの範囲かもしれません。むしろ男性の応募者が509±1人で推移してるのがすごいですね。
 次に採用者数を見てみると、図2の通り、この3年で増加傾向にあることが見て取れます。良い傾向ですね。女性の採用者数はH31年が一番多く、そこから減少傾向にあります。H31年とR3年度の変化は応募者数が減少したことが効いていそうです。
 最後に図3の通り採用率をみてみると、R3年の採用率は男女ともにほぼ同じです。すごいですね。過去をみると男性が高かったり、低かったりなのでその年の応募者の申請書の出来次第で決まっていそうです。学振応募者の能力に男女差はなさそうといっても良さそうです。


図1、男女別応募者数

図2、男女別採用者数

図3、男女別採用率

さて次は、小区分ごとの採用者数です。
 図4に小区分別の採用者数を面積で表した棒グラフを示しています。・・・わかりにくいですね。そこで表1に数値とカラーバーで分野別の採用者数とH30年に対するR3年度の増加倍率をまとめています。
 宇宙惑星科学関連と半導体・光物性・冷却原子関連の採用者数が一番伸びていますね。今最もホットな分野と言っていいでしょう。宇宙地球惑星関連は、小天体や系外惑星、地球外生命体などがホットな話題のようです。半導体関連他のほうは、遷移金属ダイカルコゲナイド超高速分光冷却原子研究がこの分野に該当するようです。どれもArxivでよく見るホットな話題なので納得です。学振に採用された皆さんの研究からも面白い結果が出てくることでしょう。
また数学分野では幾何学分野が熱いようです。最近はどういう研究がホットなんでしょうか?気になりますね。
 逆に採用数が減少している分野は、磁性・超伝導他や素粒子実験分野が挙げられます。超伝導は銅酸化物鉄系超伝導の研究が一段落して、室温水素化物超伝導がどこのラボでもできる研究ではないことが一因の印象です。素粒子実験もヒッグス粒子の実験が一段落して、新しい素粒子もいまのところ見つかっていないことから次の実験に向けての小休止といったところでしょうか?数学も基礎解析関連が減少しています。こちらもどういったテーマがホットなのか気になりますね。

図4、分野別採用者数

表1、分野別採用数と採用者数増加倍率

【まとめ】
今回の調査では、学振のどの小区分に応募すべきか、区分ごとの採用者数を調べてみました。調査の結果、宇宙惑星科学関連と半導体・光物性・冷却原子関連の伸びが高いことがわかりました。
やっぱ半導体なんだよな~~世界のIT産業の礎たる産業のコメ、半導体の研究をみんなで進めましょう!
とはいえ、分野の公平性から考えると、むしろ採用者数が減少している分野のほうが採用されやすいのではないかと思えたりもします。このへんどうなんでしょう?採用メカニズムについてはさらなる調査が必要のようなので、今後の課題としておきます。



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