最強の凝縮物性研究者(Cond-mattest)を探せ!(ぶひん調べ)


【イントロ】
最強になりたいですよね。
全てに負けない力を手に入れたい。
でも、どうやったら最強になれるのでしょうか?
最強になるために、最強の存在を探る。
それが、第一のステップです。
では最強の存在を知っているのは誰でしょう?
現代の最強の存在、知の巨人、そうGoogleですね。

そこで本記事では、最強のGoogleが公認する、最強の凝縮物性研究者(Cond-mattest)を探すことを試みました。

【方法】
 Google Scolarに掲載されている凝縮物性系研究者の引用数とh指数、最多引用論文とその引用数を調べました。一番引用されている研究者が最強、シンプルな理屈です。
 分野は、総合分野、実験分野、理論分野、個別分野3つ(強相関電子系、超伝導、トポロジカル絶縁体)を対象としました。
 対象としたのは、調査した分野のタグが付けられている研究者のみですので、漏れはあります。また、明らかに調査した項目と別分野と思われる論文が多い研究者の方は除いています(天文学や、生物系分野の論文が多く含まれている方)。
 加えて、当然ですが、Google Scolarに掲載されていない研究者の方は含まれておりません(例えば、東大のY. Tokura先生など)。

【結果】
 まずは、総合分野、「Condensed_matter_Physics」分野です。上位20位を下図に示しています。
 引用数第一位はGeorg Kresse先生。総引用数28万超え、h指数126、平面波基底を用いた第一原理計算の手法を考案した論文が7万回以上引用されている第一原理計算界の王というところです。
 続いて第二位はGustavo E. Scuseria先生。こちらはh指数134、第一原理計算ソフトGaussian を考案した論文が11万回超えの引用を超える、こちらも第一原理計算界の巨人です。
 最強になるには、誰もが使いたくなる道具を生み出すことが大切だということが伝わってきます。
 日本の所属からは、11位に理化学研究所のFranco Nori先生がランクイン。量子物性の理論的研究で高名ですね。総引用数6.6万を超えるツワモノですが、最多引用は意外にも哺乳類ゲノムのScience論文です。ちなみに2番目に引用されているのは量子シミュレーションのレビュー論文になっています。
 他にもトポロジカル物性理論で高名な故S.C.Zhang先生や、C.Kane先生、S.D.Sarma先生、トポロジカル物質のARPESで活躍目覚ましいZ.Hasan先生、物性理論の教科書でも有名なS.Sachdev先生などの名前を目に付きます。
図1、Condensed_matter_Physics

続いて、実験分野、「Experimental_Condensed_matter_Physics」です。
 1位は、Z.X.Shen先生、スタンフォード大学のARPES分野の大家です。h指数124、最多引用は、銅酸化物超伝導体のARPES研究のレビュー論文となっています。他にもトポロジカル物質や多くの超伝導体のARPES測定を実現してきた、当該分野最強の存在のお一人です。
 2位は、H.Takagi先生、東大からMax Planck研究所に移られた強相関電子系分野のツワモノです。日本で最初に銅酸化物超伝導を研究し始めたグループのお一人で、最多引用論文は電子系銅酸化物超伝導体の発見を報告した論文になっています。その後も多くの超伝導体や、イリジウム酸化物系の研究など強相関電子系分野のスター研究者のお一人です。
 他にも、MPIの強相関電子系の回折・散乱実験で高名なB.Keimer先生や、重い電子系のPhilipp Gegenwart先生などのお名前も目に付きます。
図2、Experimental_Condensed_matter_Physics

 続いて、理論分野、「Theoretical_Condensed_matter_Physics」です。
 1位はテキサス大学のAllan H. MacDonald先生、量子物性理論の大家です。最多引用は異常ホール効果に関してのレビュー論文で、東大のN.Nagaosa先生が共著のお一人になっています。最近ではマヨラナ励起やモアレ物性関連の理論も報告されていて、最先端の分野で活躍されています。
 2位はSISSA所属のStefano Baroni先生で、第一原理計算ソフトQuantum Espresso論文が最多引用になっています。みんな使いますからね、当然のランクインですね。
 日本からは12位に、東大のM.Ezawa先生がランクイン。h指数55でバレー物性やトポロジカル物性関係の理論を数多く提案されています。東大物工の講師をされていますが、教授になっていてもおかしくない業績に感じます。
図3、Theoretical_Condensed_matter_Physics

 ここからは個別分野です。上位10名を選んでいます。
 1つ目の個別分野は、「strongly_correlated_electron_system」です。強相関電子系、いいですね、「強」という漢字が最強感だしています。
 1位はAntonio H. Castro Neto先生。シンガポール国立大所属で、h指数111、最多引用はグラフェンの電子物性に関するレビュー論文になっており2万回近く引用されています。グラフェンを代表とする二次元物質系の理論研究で高名です。
 2位はXiao-Liang Qi先生。スタンフォード大学の所属で、トポロジカル絶縁体に関する理論研究をリードされています。
 日本関係では、6位に阪大からケルン大に移られたY.Ando先生、9位に東大のT.Shibauchi先生がランクインしています。Y.Ando先生は銅酸化物超伝導だけでなく最近はトポロジカル絶縁体の研究を精力的にされています。またT.Shibauchi先生は鉄系超伝導を含めた非従来型超伝導分野の研究をリードされています。
図4、strongly_correlated_electron_system

 続いて、個別分野、「Superconductivity」です。
超伝導ですよ、超伝導。「超」がついてるから間違いなく最強です。最強of最強の研究者は実質この分野です。
 栄えある1位は、なんと、L.Landau先生です!おめでとうございます!最多引用は理論物理学教程、納得です。というより、Google Scolarがあることに驚きました。
 2位はプリンストン大のR.J.Cava先生。h指数150で今回調査した中では最強です。多くの高温超伝導体だけではなくトポロジカル物質、磁性物質などを発見されている物質開発のプロ中のプロという印象です。これはもう実質現役最強といっていいでしょう。
 日本関係では、5位に理研のF.Nori先生、10位に京大のY.Maeno先生がランクインしています。Y.Maeno先生はSrルテネイト超伝導の研究が有名ですね。最近ではCaルテネイトの電流誘起金属絶縁体転移の研究などもされて引き続き強相関電子系分野全般をリードされています。
図5、Superconductivity

 最後は、個別分野、「Topological_insulator」です。最近流行りですね。猫も杓子もトポロジカル。なんなら物質の4分の1はトポロジカルまである。
 1位はプリンストン大のR.J.Cava先生。超伝導に続きこちらの分野でもランクインです。お強い!
 2位はマックス・プランク研究所のC.Felser先生です。ホイッスラー合金に関する論文が最多引用でh指数は97。100までアト少し!最近ではワイル半金属やアキシオン絶縁体などの興味深いトポロジカル物性の論文を多く発表されています。
 3位はプリンストン大のN.P.Ong先生。トポロジカル物性系、強相関電子系の輸送測定で圧倒的存在感を示す大御所です。やっぱプリンストン大すごいですね。今年もノーベル物理学賞(S.Manabe)と化学賞(D.MacMillan)の二人の受賞者を擁して圧倒的存在感の大学です。
 日本関係では、5位にY.Ando先生がランクインされています。超伝導で強い研究者はトポロジカル物性でも強いという印象をうけます。道具立てが似ているからでしょうか。
図6、Topological_insulator

【まとめ】
 Google Scolarを利用して最強の凝縮物性系研究者を調査しました。最強認定は以下の研究者の方々です。
・総引用数:Georg Kresse先生(平面波基底第一原理計算手法を開発)、
・単一論文の引用数:Gustavo E. Scuseria先生(Gaussian を開発)
・h指数:R.Cava先生(物質開発)
・レジェンド:L.Landau(レジェンド)
 こうしてみると、やはり多くの人が使える道具を、計算手法なり物質なり生み出すことが引用にとって重要なことだということがわかります。自己満足ではなく、自分の研究が周りにどういう影響を与えるかまで考えるのが大切ですね。
 とはいえやっぱ、Landauやねん!




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