情熱!情熱はすべてを解決する!~AIの力で熱伝導のシミュレーションをしてみる

 【イントロ】
世の中の物事は、だいたい情熱があれば何でもできます。
固体中の熱の流れは、格子、電子、そして各種素励起により担われます。
例えば各種素励起としては、マグノンスピノン謎の中性粒子などが挙げられます。
一方で、再現性の難しさも指摘されています。
そんな中、今注目を集める素励起の一つ、マヨラナ励起のエッジモードの寄与を熱伝導の一種である熱ホール効果の試料形状依存性から分離し検出できる可能性が提案(実験理論)され、著者の興味を集めています。

©金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(引用元)

【実施目的】
熱ホール効果のシミュレーションができればよいのですが、まずは簡単に熱伝導度が試料形状でどのように変化するか、熱伝導のシミュレーションを書いてみることにしました。
形状依存性としては以下の2次元形状のパターンを調べてみました。
  • 正方形
  • 楔形
  • 4つ葉のクローバー型
【手法】
熱伝導の方程式は教科書などに記載されていても、実際の試料中で温度差をつけたときにどのように熱が流れて温度分布が生じるか、シミュレーションする方法がわかりません。
そこで、AIの力を借りました。
Anthropic社のClaudeを利用し、シミュレーションコードを書いてみることにしました。Claudeの有料版機能を利用してコードを作成しました。
原理的には、再現したい論文自体をClaudeに読み込ませ、論文内のシミュレーションを再現することは可能です。ただし、出力されたコードが妥当なのか検証するための知見が足りていないため、その方法は今回は取りませんでした。
作成したコードの実行と結果の可視化はGoogle colabを利用しました。

【結果】
結果です。まずは正方形型から。
図1、正方形形状の温度分布

図1のように、図の下部が高温(100℃)、上部が低温(0℃)に設定したときの温度分布をカラープロットで表示しています。以下の形状でも同様です。
見た目上、温度は下部から上部にかけて徐々に高温から低温に変化しているようにみえます。実際、x=0.5を通る直線上の温度分布を可視化したのが図2です。
図2、正方形形状のy軸方向の温度変化

温度はy軸上の位置に対してほぼ直線上に温度が変化しています。
直感的にも、滑らかに温度変化しそうなので違和感はない結果になっています。

次に楔形形状です。漢字の「工」みたいな形状の場合です。時代は工学部。
図3、楔形形状の温度分布
図3を見ると、温度分布が上下で非対称になっているように見えます。
図2と同じようにx=0.5の線上の温度分布を見てみます。
図4、楔形形状のy軸方向の温度変化

図4の温度変化を見ると、高温側が形状下部に寄っているようにみえます。
真ん中のくびれによって、熱の流れが詰まっているようなイメージでしょうか?

最後は4つ葉のクローバー形状です。幸運の証を焼きましょう。
図5、4つ葉のクローバー形状の温度分布
図5が4つ葉のクローバー形状に温度勾配をかけたときの温度分布の可視化です。
図の4角から中央に向けて45度方向に熱が流れ無い部位があり、形状が4つ葉のクローバーになっています。
温度分布を見ると、高温側、低温側ともに上下方向は1つの葉のなかでは温度変化が見られますが、中央部では変化が一定になっているように見えます。
これまでと同じように、x=0方向の温度変化を可視化してみます。
図6、4つ葉のクローバー形状のy軸方向の温度変化

図6のように、なんと中央部付近では温度変化が一定になっていることがわかります。
温度差のない左右方向の2つの葉の中で熱の流れが飽和して、中央部では温度変化が一定になっていると解釈できるでしょうか。

【まとめ】

 今回は、Claudeを使って2次元形状の熱伝導(熱拡散)による温度分布の変化を可視化してみました。同じ温度差をつけても、サンプル形状により温度分布が変化することが確認できました。試料形状を工夫することで温度分布を操作することに活用できる結果と考えられます。
 現実の物質は3次元方向の温度分布もあるため、厚み方向の拡散も考慮にいれる必要があります。また様々な試料を結合して利用する場合は試料ごとの熱伝導率の違いも考慮する必要があります。とはいえ、AIを使えば、簡単なシミュレーションであればすぐに実装できるのは様々な検証を簡単にしてくれたり、勉強した物理や数学の内容を数値計算で確かめることが容易になり学習を深めることができるようになったのは、良い時代の変化です。
 一方で、AIが出力する結果が本当に正しいのか、確かめられるスキルが求められるのも確かです。今回の結果が正しいかは、基礎方程式を正しくコーディングできているか利用者が判断できなければなりません。いくら知の高速道路が整備されても、その道を運転する技能を利用者が持っていなければ行けないことは変わらないでしょう。
 AIをうまく使って圧倒的成長を遂げたいものです。

【以下、コード】
合ってると思うんだけれども、理解深めないとだめですね(反省)
とはいえ、AIさんすごい。論文も読み込ませられるので、進化を感じました。
時代の先端に食いついていかんとな。

温度勾配可視化

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