2026年9月の気になった論文(暫定版)

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-2026/10/1、2--
Accidental accuracy and formal consistency in $GW$+BSE: Exact benchmarks and regime-dependent error cancellation
光励起の標準手法GW+BSEでは、BSEカーネルは本来自己エネルギーの汎関数微分であるべきだが、実用上は静的遮蔽直接項と裸の交換項で構成され整合性が破れている。拡張ハバード二量体の厳密対角化でこの不整合の代償を評価した結果、実用的手法が正確な光学ギャップを与えるのは、過小評価されたGWギャップと過大な交換項の偶然の誤差相殺によるもので、弱束縛領域に限られることを示した。深く束縛した励起子には静的カーネルを超える物理が必要である。

Single-particle detection of the Néel transition in LaCrO$_3$ microcrystals via widefield nitrogen-vacancy center magnetic imaging
希土類オルソクロマイトの磁性は従来アンサンブル測定で評価されてきた。本研究では広視野NV中心磁気イメージングにより、溶融塩法で作製したLaCrO3微結晶の個々の粒子でネール転移を観測した。18粒子中5個がネール温度付近で磁化の発現を示し、4個は信号なし、9個は局所的磁性不純物に由来する温度非依存の信号を示した。熱サイクルごとに弱強磁性モーメントの符号が独立に決まる、構造的にピン止めされたミクロンスケールの反強磁性ドメインの存在も示唆された。

Sign problem and criticality in world-line quantum Monte Carlo methods
負符号問題は量子モンテカルロ法の主要な制約として、主に行列式QMCで研究されてきた。本研究では、あまり調べられていない世界線QMCにおける負符号問題の温度・サイズ依存性を検討した。この手法では自由フェルミオンでさえ負符号問題が生じ、それが参照模型であるハードコアボソンの非解析的振る舞いと結びつくことを示した。2次元ではハードコアボソンのKT転移が平均符号に刻印されており、直接のサンプリングが困難になっても相転移の情報が負符号に保持されることを明らかにした。

Synchronous Monte Carlo method and its application to a mean-field spin glass model
通常のマルコフ連鎖モンテカルロ法は変数を一つずつ更新するため、GPUなどの大規模並列計算を十分に活かせない。本研究では、ガウス積分恒等式で補助ガウス場を導入し、全変数を同時に更新しつつ詳細つり合いを満たす「同期モンテカルロ法」を検討した。平均場スピングラスでは動的平均場理論で厳密に解析可能であり、ランダム直交模型に適用したところ、動的転移温度以下で揺動散逸定理の破れと一般化FDTの2勾配構造が現れ、シミュレーションと理論が定量的に一致した。

Optical observation of interlayer spin correlation
層状物質の層間スピン相関は磁気基底状態やスピン輸送を決める基本量だが、直接測定は困難だった。本研究ではファンデルワールス反強磁性体CrSBrにおける2マグノンラマン散乱を用い、層間スピン相関の初の直接光学プローブを実現し、フィッティングパラメータなしのスピン波模型と良く一致した。2マグノン信号は反強磁性状態でのみ現れ強磁性状態で消失する。また励起子共鳴近傍で信号が約10倍増強される励起子媒介型の手法も確立した。

Defect Dynamics and Isomer Quenching in $^{229}$Th:CaF$_2$ Crystals
229Th:CaF2は固体原子核時計の有力候補である。本研究では放射光X線励起とクライオ真空系を用いて、ラジオルミネッセンス、フォトルミネッセンス、熱ルミネッセンス、残光の温度依存性を系統的に調べた。自己束縛励起子発光の三重項・一重項成分の熱消光を分離し、11個の熱ルミネッセンスピークを同定した。得られたトラップ深さはX線誘起アイソマー消光の温度依存性と強く相関し、捕獲されたキャリアが原子核を消光しないというキャリア捕獲描像を支持する。

Quantum quenches of scar states in the Affleck-Kennedy-Lieb-Tasaki model via Clifford augmented tensor network simulation
クリフォード拡張法は、スタビライザー構造を利用して量子系を効率的にシミュレートしつつ非スタビライザー性(マジック)を定量化できる手法である。本研究ではクディット版のこの手法でAKLT模型を調べ、基底状態とスカー状態が高いマジックを持つ一方、低エンタングルメントのため低ボンド次元のクリフォード拡張MPSで表現できることを示した。ハイゼンベルク模型へのクエンチ後、同じハルデン相内でもストリング秩序が減衰し、その減衰はバイマグノン数とともに顕著になることを見出した。

Nature of the 175-180 cm$^{-1}$ Raman Feature in Altermagnetic $α$-MnTe
α-MnTeの175 cm⁻¹ラマンモードは唯一の対称性許容フォノンE2gに帰属されてきたが、第一原理計算では100 cm⁻¹以下と予測され、対称性低下フォノン、プラズモン、MnTe2不純物という3つの説が競合していた。化学量論を制御したMBE成長でMnTe2二次相の割合を変化させたところ、このモードはMnTe2の存在とほぼ一対一で対応した。高レーザー出力では歪んだMnTe相由来のモードも現れ、本質的なフォノンやプラズモンではないことを明らかにした。

Spectroscopic Evidence for Nontrivial Band Topology in Superconducting FeTe/MnTe Heterostructure
FeTeは従来、超伝導を示さない自明なトポロジーの反強磁性金属とみなされてきた。本研究では閃亜鉛鉱型MnTe上への高次エピタキシーにより格子間Feを抑制したほぼ化学量論的なFeTeを作製し、約13 Kで超伝導転移の開始を観測した。ARPESにより準粒子コヒーレンスの向上、明瞭なFe由来ホールバンド、フェルミ準位近傍の2次元的ディラックコーン状態を観測し、第一原理計算はバンド反転による非自明なZ2トポロジーを示した。トポロジカル超伝導の有望な舞台となる。

Chiral quantum chaos around exponentially many zero modes in the quantum breakdown model
量子ブレークダウン模型は、絶縁破壊の物理に着想を得たランダム相互作用フェルミオン模型である。本研究では、0次元の全結合版について対称性と量子カオスの分類を確立した。SYK模型を思わせるフェルミオンモード数に対するZ4周期性を示し、さらにカイラル対称性を持つ5つのクラスすべてを実現し、カイラル指数で保護された指数関数的に多数の多体ゼロモードを持つという独自の特徴がある。スペクトルギャップのスケーリングと、ハードエッジ準位統計による量子カオスの兆候を示した。

Qantum Well Resonant Tunneling Diode Probe of Correlated States in Twisted Bilayer MoS$_2$
遷移金属ダイカルコゲナイドのモアレ超格子は強相関量子相の研究舞台である。本研究では新たな実験手法として量子井戸共鳴トンネルダイオード(QWRTD)を開発し、約57°ねじれ二層MoS2の電子状態を調べた。微分コンダクタンスの充填率・変位電場依存性から、ν=1で全変位電場範囲にわたり安定な整数相関絶縁体状態を観測し、さらに変位電場誘起のν=3/4分数絶縁体状態を同定した。温度・磁場依存性から後者は一般化ウィグナー結晶の可能性がある。


Giant PhotoMagnetoDiode Effect
0.1 Tの磁場下で整流比10という巨大な「光磁気ダイオード効果」を観測した。これは外部磁場中で光電流の電圧依存性がダイオードのような非相反性を示す現象で、高品質なVPE成長GaAs試料の低温・バンド間光励起条件で観測された。光伝導度は電場と磁場の両方の極性反転に対して不変であり、フォトルミネッセンスではさらに大きな非対称性が見られた。これらの結果は、電場・磁場中のキャリアの両極性ドリフトと高速な表面再結合の理論でよく説明される。


Emergent Quantum Geometric Phases in Holey Graphene
高品質な周期的アンチドット格子を加工した封止単層グラフェン(ホーリーグラフェン)の磁気輸送を測定した。格子寸法を系統的に変えることで、複数の古典軌道に起因する古典的整合性効果の階層構造を明らかにし、さらに磁束量子と人工格子の単位胞との量子的整合性によるブラウン・ザック振動を観測した。系固有の幾何学的位相が直接測定可能であることを示し、ねじれや格子不整合なしに単層グラフェンでモアレ的電子スペクトルを実空間設計で生成できることを実証した。


Realization of ZnSe-based Field-Effect Transistors operating at Cryogenic Temperatures as a Platform for Future Spin-Qubit Applications
ワイドギャップ半導体ZnSeは、非縮退伝導帯と核スピン同位体純化の可能性から電子スピン量子ビットの有望な母材である。本研究では新しいシャドウウォール法によるMBEとAlオーミック電極のその場蒸着を組み合わせ、ノーマリーオフ型ZnSe電界効果トランジスタを実現した。室温から5 Kまで線形な出力特性と良好なゲート制御を示し、閾値電圧約3 V、電界効果移動度100 cm²/Vs以上を得た。シミュレーションで特性を再現し、スピン量子ビット応用への可能性を示した。

Multi-Branch Transport in a Back-gated WS$_2$ Transistor at Deep-Cryogenic Temperature
遷移金属ダイカルコゲナイドの中でもWS2は極低温動作のトランジスタ材料として有望である。本研究では、バックゲート型多層WS2トランジスタの電気特性を20 mKまでの極低温で評価した。素子は極低温域全体で強いゲート制御性を保ち、オン/オフ比は10⁵を超えた。特に低温でのターンオン特性には再現性のある肩状構造が現れ、これを並列に動作する複数の実効伝導ブランチからなる現象論的モデルで記述した。

Engineering Grain Boundary Commensurability for Ferroelectric Stabilization in Hafnia-Based Films
強誘電体において粒界は従来、減分極場や欠陥蓄積により分極を抑制する有害な要素とされてきた。本研究では、多結晶Hf0.5Zr0.5O2薄膜で粒界の整合性が極性斜方晶相の安定性を支配することを示した。深さ分解マルチスライス電子タイコグラフィで原子分解能の3次元相分布を観測し、整合性の高い粒界が格子不整合を補償して非極性正方晶相を抑制することを明らかにした。整合粒界を優先的に形成するよう設計した薄膜で残留分極が約60%向上した。

Atomic-Scale Imaging of Lattice Relaxation and Topological Flat Bands in Helical Trilayer Graphene
ヘリカル三層グラフェン(HTG)は強相関と非自明なバンドトポロジーを持つ可変性の高いモアレ量子物質だが、原子スケールの格子構造や局所電子状態は未解明だった。本研究では走査型近接場光学顕微鏡と低温STMを組み合わせ、スーパーモアレ格子緩和による鋭いドメイン壁で区切られた大きな三角ドメインやストライプドメインを直接観察した。ハニカム状の電子テクスチャを持つフラットバンドとドメイン壁の1次元境界状態を見出し、マジック角が理論値1.6°より大きい約1.9°であることを示した。

Room-temperature polariton supersolids
結晶秩序と超流動性を併せ持つ超固体は、これまで冷却原子気体やIII-V族半導体ポラリトン系など極低温でのみ実現されてきた。本研究では、室温で安定なペロブスカイト半導体と分散設計したフォトニック結晶導波路を組み合わせ、多モード分散と強いパラメトリック非線形性を持つポラリトン凝縮体を作製した。臨界凝縮密度を超えると連続並進対称性が自発的に破れ、結晶秩序と大域的量子コヒーレンスを同時に示す室温超固体相が実現した。


Fingerprints of unconventional pairing in superconductor-hole-gas heterostructures
超伝導体と2次元ホール気体のヘテロ構造は量子デバイスの有望な基盤だが、非従来型ペアリングなどの本質的性質を実験的に捉えるのは困難である。本研究では、面内磁場に対する超流動剛性とスピン磁化率の依存性に、ホール気体に誘起されたギャップ構造を反映する非解析性が現れることを理論的に示した。さらに、運動インダクタンス測定で得られる剛性テンソルの磁場角度依存性のフーリエ高調波が、非従来型ペアリングと3次ラシュバ結合の指紋になることを提案した。

A Different Perspective on Superconductivity in Crystalline Graphene: Exploiting Energetics
結晶性グラフェンでは超伝導が広く見られる一方、異なるアイソスピン秩序金属の境界付近の狭い領域に限定されることが多いという謎がある。本研究では「二つの親状態」のエネルギー論的枠組みを用い、ペアリング引力の詳細を特定せずにこの現象を説明した。一次転移で二つの正常状態の自由エネルギーが縮退すると、正常金属の再構成コストを差し引いた小さな超伝導エネルギー利得でも超伝導が安定化し、より大きな正味利得を持つ親状態が選ばれることを示した。

Electronic Reconstruction across the Tilt-Free Transition in La$_3$Ni$_2$O$_7$
加圧下La3Ni2O7の高温超伝導は、NiO6八面体の傾きが消失する構造転移と密接に関係するが、電子構造への影響は不明だった。本研究では常圧で、約544 Kの傾き消失転移を挟んで15 meV〜3.2 eVの広帯域反射率測定を行った。1〜3 eVの励起から1 eV以下の低エネルギー励起へ大規模なスペクトル重みの移動が見られ、二つの低エネルギーバンド間励起が合流することを観測した。超伝導機構の鍵とされる二層Ni 3dz²状態の再構成を示唆する結果である。

adapol: Adaptive pole-fitting for quantum many-body physics
松原グリーン関数、自己エネルギー、混成関数を、実数の極位置と行列値の留数を持つ単純な極の和でフィッティングするPythonパッケージadapolを紹介する。極フィッティングは、厳密対角化やテンソルネットワークに基づく量子不純物ソルバーの混成関数フィット、離散レーマン表現の圧縮、解析接続など多くの場面で必要となる。修正版AAA有理近似アルゴリズムで極位置を推定し非凸最適化で精密化することで、ブラックボックス的かつノイズに頑健な高精度フィットを実現し、TRIQSとの連携も備える。

Designing Strongly Correlated Quantum Phases of Matter with Foundation Neural-Network Quantum States
所望の性質を持つ物質の設計は、基底状態がその性質を示すハミルトニアンの結合定数を探す逆問題であり、強相関系では困難だった。本研究では、ハミルトニアン族の基底状態を単一の変分波動関数で表す基盤ニューラルネットワーク量子状態を用い、結合空間での勾配最適化による逆設計手法を提案した。正方格子フラストレート・ハイゼンベルク模型に適用し、8結合の探索でJ1-J2-δ模型に収束した。16×16までの有限サイズスケーリングで秩序がないことを示し、新たな量子スピン液体候補として提案した。


Quantization through Dissipation and the Optical Quantum Hall Effect
整数量子ホール効果のホール伝導度の厳密な量子化は、ラフリンのゲージ議論、エッジチャネル描像、バルクのトポロジカル不変量など様々な観点から説明されてきた。本研究では、バルクの有限周波数散逸電気力学に基づく新たな理解の道筋を示した。高精度テラヘルツファラデー回転測定と数値計算により、サイクロトロン共鳴だけではクラマース・クローニッヒ変換で量子化プラトーが得られず、不純物状態由来の微弱でトポロジカルに強制された低周波散逸寄与を含めて初めて量子化が回復することを示した。

Causality violations in cluster GW+DMFT: Exact Lehmann moments and the necessity of non-local vertex corrections
GW近似は自己エネルギーに上半面の非物理的な極を生じ因果律を破る。最小ハバード模型の厳密対角化で、GW+DMFTでも3サイト環のようなフラストレート系では松原因果律条件が破れることを証明した。2サイト系では対称性で破れが隠れる「二量体異常」も指摘。厳密なLehmannモーメントから高周波テールの閉形式を導出し、局所頂点補正だけでは因果的な解析構造を保証できず非局所頂点補正が必要と結論づけた。

From Quantized Hall Plateaus to Topological Surfaces: Quantum Capacitance as a Unifying Probe
量子ホール効果、トポロジカル絶縁体、量子容量を一貫した視点で論じるレビュー的論文。バルクのトポロジーが保護された境界状態を決め、量子容量はその状態密度を静電的に測れる数少ない手法である。自己無撞着遮蔽理論や局所量子容量測定から、量子化プラトー上でもバルクは一様な絶縁体ではなく圧縮性・非圧縮性領域に分かれることを示し、量子容量がトポロジーの課す境界状態密度を観る最も明瞭な窓であると主張する。


Active-Matter Battery
アクティブマターから取り出したエネルギーを蓄える最小限の電池モデルを提案し、充放電特性を解析的に導出した。活動性を維持するためのエネルギーコストを考慮すると、充電時のパワーと効率のトレードオフがループ状になり、効率が有限時間で最大値をとることを示した。これは受動的なエネルギーデバイスとは明確に異なる特徴であり、アクティブマターを駆動源とする機能性デバイス設計への指針を与える。


Strongly coupled ultracompressed self-cavity plasmon polaritons at millikelvin temperatures
ファンデルワールスヘテロ構造は sub-THz〜THz帯の自己共振器共鳴をもち、共振器で変調された物質相の実現に有望である。本研究では超伝導層で約10^7の電磁体積圧縮をもつ自己共振器を構成し、グラフェン層を組み込んで0.04 THzという低周波でも減衰の小さい共振器プラズモンポラリトンと共振器モードとの反交差を観測した。超伝導回路を用いたミリケルビン対応のsub-THz分光器も開発し、極低温での分光と輸送の同時測定への道を拓いた。

Orbital angular momentum in crystalline solids: non-equilibrium theory
周期的固体における軌道角運動量(OAM)の一般的な演算子理論を、平衡状態とコヒーレント駆動状態の両方に適用できる形で構築した。Adams–Blountの結晶運動量表示を用いて r×v に厳密に対応する演算子を作り、ゲージ共変な局所循環と遍歴循環に分離できることを示した。平衡では既存の軌道磁性の現代理論に帰着し、非平衡ではレーザーによる運動量空間テクスチャやバンド間コヒーレンス由来の新項が現れる。ギャップ付きグラフェンで準定常な光誘起OAMを見出した。

CTMRG as a tensor-network message-passing algorithm
コーナー転送行列(CTM)方程式とそれに基づくCTMRGを、一般の平面グラフ上の局所方程式群として定式化した。各方程式は局所部分グラフのみに依存し、整合的に貼り合わせることでグラフ全体を記述する。解として得られるメッセージテンソルとコーナー行列から、任意の連結部分グラフに対するMPS環境を構築できる。強磁性イジング模型を双曲格子を含む様々な無限格子や有限グラフで検証し、信念伝播法(BP)に対して系統的な精度向上を確認した。

Complex Magnetic Phases and Unconventional Skyrmion Thermodynamics in Magnetically Intercalated Cr$_{1+x}$Te$_2$Compounds
磁性原子をインターカレートした遷移金属ダイカルコゲナイドCr1+xTe2の構造・電子・磁気特性を、STM、ARPES、磁化、輸送、ローレンツTEMで調べた。常磁性、面内スピン揺らぎ、面直強磁性、磁場誘起ネール型スキルミオン相からなる豊かな相図を明らかにした。キュリー温度直下でスキルミオンが形成され、顕著な熱ヒステリシスを示しストライプ磁区と共存する。乱れ由来の局所DM相互作用、垂直磁気異方性、双極子相互作用の競合を示唆する。


Hydrogen plasma-assisted atomic layer epitaxy of superconducting titanium nitride
原子層堆積(ALD)の各サイクルに水素プラズマ処理を加え、前駆体由来の不純物を抑えて超伝導窒化チタン(TiN)薄膜をサファイア上にエピタキシャル成長させた。放射光X線散乱で半整合エピタキシーと小さな構造乱れを確認し、X線分光と中性子反射率で酸素起因の乱れや水素混入がほぼないことを示した。膜は転移温度2.2 K、運動インダクタンス15 pH/sq、コヒーレンス長14.6 nmを示し、ALDを量子回路用超伝導材料へ拡張する道を示した。

Layer-by-layer growth of highly aligned MoS$_2$ nanoribbon arrays
トランジスタのチャネル幅微細化に有望なMoS2ナノリボンについて、低対称サファイア表面上でCVDにより層数を制御した成長法を実証した。幅20 nm未満を保ちつつ2H積層の単結晶2層ナノリボンを配向成長でき、MoO3前駆体の供給量増加が2層目以降の成長に重要であることを見出した。成長時間と供給量で最大4層まで制御でき、MoS2/WS2縦型ヘテロ構造にも拡張可能。2層FETは単層比で移動度2倍・電流密度3倍を示し、最大86.7 cm²/Vsを達成した。

Train for Accuracy, Execute at Scale: Architecture-Preserving Inference for Equivariant Atomistic Foundation Models
等変性原子間ポテンシャル基盤モデルMACEの学習済み重みを変更せずに大規模化する推論エンジンSymmetrix-XLを提案した。エッジのストリーム実行、チェックポイント特化のコード生成、タイル実行によるメモリ再利用を組み合わせ、LAMMPSでの推論を既存手法比3.1〜5.0倍高速化した。A100 1枚で扱える原子数は約2.5万から1124万に増え、64 GPUで7億原子まで93.8%の効率で弱スケーリングする。精度は元のMACEと同等であり、推論実行がスケーリングの新たな軸となることを示した。

Landau-like formalism for the thermal-runaway and filamentation instabilities in switching Mott devices
VO2などの相関酸化物で電圧印加により起こる絶縁体-金属スイッチングを、非線形力学の安定性問題として理論・実験の両面から研究した。熱輸送の反応拡散方程式からランダウ自由エネルギー型のリャプノフ関数を構築し、オン(set)とオフ(reset)の転移をそれぞれサドルノード分岐として記述した。フィラメント幅を秩序変数とする平均場的記述は、有限幅フィラメントが途切れる一次転移を予言し、VO2薄膜デバイスの電気・光学測定と定量的に一致した。

Work fluctuation speed limit in boundary conformal field theories
境界共形場理論で記述される量子臨界系において、有限時間駆動の基本的限界を調べた。外部駆動による仕事の揺らぎが高速制御の資源となることを示し、有限温度・弱駆動の下で厳密かつ飽和可能な揺らぎに基づく速度限界を導出した。限界と最適プロトコルは普遍的なスケーリング次元のみで表され、キブル・ズレック領域と線形駆動が最適な断熱領域の間を補間する。量子不純物、分数量子ホール、超伝導回路などへ適用可能な普遍的トレードオフを確立した。

Ideal gas of active particles in a box
熱力学の基本概念である理想気体の法則を非平衡のアクティブマターに拡張し、有限の長方形の箱に閉じ込めた非相互作用アクティブ粒子の理想気体則を導出した。この法則は1次元のラン・アンド・タンブル粒子で厳密に成り立ち、任意次元のアクティブOU粒子でも定常確率密度の系統的展開で確立される。高次元のアクティブブラウン粒子などの数値計算ともよく一致し、微視的な軌道に頼らずアクティブマターの熱力学過程を巨視的に解析できることを示した。

Robustness of the Verwey transition against remanent strain-induced defects in magnetite
マグネタイトのフェルウェー転移は点欠陥やドーピングで転移温度が下がることが知られるが、一軸応力による残留ひずみや拡張欠陥の影響は未解明だった。本研究では暗視野X線顕微鏡と交流磁化率を組み合わせ、圧縮後や破断後の単結晶を調べた。線状欠陥や残留ひずみ場など大きな構造乱れが残るにもかかわらず、転移温度も転移の鋭さも測定上変化しなかった。点欠陥と滑り由来の拡張欠陥とでは転移への影響が本質的に異なることを示した。

Inertial Dynamics of a Skymeron
合成反強磁性体で2層間の実効磁気異方性の差を調整すると、一方の層が面直、他方が面内を向く直交配置へのスピンフロップ転移が起こることを示した。このとき反強磁性スキルミオンは、一方の層のスキルミオンと他方の層の面内バイメロンが結合した3次元スピンテクスチャ「スカイメロン」へ変化する。元素選択X線顕微鏡で層ごとに観察し、時間分解測定で電流パルス後の慣性的な運動の継続とピン止め状態への緩やかな復帰を発見した。


Domain-engineered ferroelectric BiFeO$_3$ thin films for efficient bias-free THz emission
強誘電体は、バイアス電圧も磁場も不要なTHz放射源として注目されているが、放射を生む超高速光電流の起源は議論が続いていた。本研究ではBiFeO3エピタキシャル薄膜の分極ドメイン構造を単一ドメインから周期ストライプまで制御し、ストライプ膜で単一ドメインの4倍のTHz電場を得た。偏光・結晶方位依存性から光電流を対称性で分離し、面内分極では光キャリアによる分極の超高速遮蔽が主因で、ドメイン壁の内部電場がそれを増強することを明らかにした。

Single-Pulse Optical Switching combined with Current-Induced Motion of Skyrmionic Spin Textures
スキルミオンを多値ビットとして使うには、位置だけでなくスピン構造の決定論的な制御が求められる。本研究ではPt/Ir/CoB/Gd/Pt多層膜を設計し、スキルミオンの安定化と単一レーザーパルスによる全光学的ヘリシティ非依存磁化反転(AO-HIS)を両立させた。30 fsの単一パルスで、磁場や電流なしにスキルミオンの極性を反転できることを示した。さらに細線に加工して電流駆動の移動と組み合わせ、光で内部状態を、電流で位置を制御する素子への道を示した。

Selective suppression of electronic orders via interlayer coupling in superconducting bilayer nickelate thin films
2層ニッケル酸化物のスピン密度波(SDW)と超伝導の関係に着目し、酸素アニールと同価数の希土類置換によって実効的にc軸一軸圧を加えた超伝導薄膜を作製した。SDW転移温度は150 Kから70 Kに抑制され、SDWは弱まりつつ残る一方、電荷的な異方性秩序は超伝導状態で完全に消失した。偏光X線吸収と電子状態計算から、層間結合の強化がフェルミ面を再構成しSDWを弱めることを示し、spin-spinlessストライプ基底状態と整合する結果を得た。

Frustration-induced multiferroicity in hauerite MnS2
パイライト型鉱物ハウエル鉱MnS2は局在S=5/2モーメントをもつ磁性絶縁体で、48 K以下で単位胞倍化を伴うコリニア反強磁性秩序が生じ空間反転対称性が破れる。これにより最大360 μC/m²の強誘電分極が生じ、MnS2がII型マルチフェロイクスであることを示した。分極は、フラストレートした隣接Mnの磁気秩序によりS2二量体が双極子モーメントを獲得することに由来する。強誘電ドメインは時間反転で保たれ、反転には磁気交換エネルギー規模の障壁を越える必要がある。

Magnetic Phase Diagrams and Spin Hamiltonian of Monoclinic $α$-RuCl$_3$ from Angle-Dependent Torque Studies
キタエフ型相互作用をもつハニカム磁性体α-RuCl3について、低温まで単斜晶を保ち14 Kで鋭い磁気転移を示す100 μm未満の高品質微小単結晶を研究した。高感度ピエゾカンチレバー磁気トルク測定を最大16 Tで行い、3つの直交結晶面内で磁場角度と強度をほぼ連続的に変えて詳細な磁気相図を得た。菱面体晶試料と比べ回転対称性の低下、秩序抑制に必要な磁場の増大、異なる磁場誘起相が見られ、平均場計算との比較から最小磁気構造模型を提案した。



-2026/9/30--
Memory-induced optimal switching in a dynamic Ising-Kuramoto model
各ユニットがイジングスピンと連続位相を持つ大域結合確率系を研究。スピンはGlauber型でスイッチし、位相はOrnstein-Uhlenbeckノイズで駆動される。スピン依存の位相相互作用により複合コヒーレントモードが秩序化しうる。線形応答から同期閾値K_cを導出し、Glauber応答の増大と記憶感受率の減少の競合により、K_cを最小化する有限のスイッチング率が存在することを示した。数値シミュレーションで非単調な閾値などを再現。

Topological Band Theory for High-Dimensional Parameter Spaces
外部ゲージポテンシャルの断熱フラックスパラメータが高次元多様体をなす量子ホール系のトポロジカルバンド理論を研究。種数g>1のリーマン面上の強相関系や、4ℓ+2次元多様体上でp形式ゲージ場と結合した系が該当する。この場合、第一チャーン類に加え高次曲率不変量が現れ、電流相関関数から構成される久保公式的な量へのトポロジカルに保護された寄与に対応する。種数2のBolza曲面上の双曲バンド理論を具体例として示した。

Nonreciprocal Chiral Automata
奇圧力は2次元圧縮性流体において渦度に対し等方的な圧力応答を与えるパリティ奇の輸送係数で、非相反的な流体応答をもたらすが、それを実現する微視的モデルは少ない。本研究では、静止粒子とカイラル衝突を含むFHP-II格子ガスセルオートマトンを構築し、Chapman-Enskog粗視化により有限の奇圧力係数を得た。静止粒子存在下で運動粒子をわずかに回転させる局所的パリティ破れ衝突が有効磁場として働き、体積粘性を奇圧力に変換する。

Magnetoplasmon molecule
磁場中の2次元電子系において、新たな内因的4粒子励起「磁気プラズモン分子」を観測した。この分子は2つの同一電子と逆スピンを持つ2つのフェルミホールから構成される。両電子と一方のフェルミホールは電子系の集団的プラズマ振動に参加し、もう一方のフェルミホールは余剰電荷を中和する役割を担う。さらに、この磁気プラズモン分子と磁気励起子凝縮体との相互作用についても調べた。


Linking Topological Medium Range Order and Density-Wave Coherence to Metallic Glass Ductility
金属ガラスの組成依存の機械的性質の構造的起源を探るため、放射光による還元密度関数G(r)と機械学習支援4D-STEMを組み合わせ、5種類のZr系金属ガラスの幾何学的・トポロジカル中距離秩序(MRO)を解析した。G(r)から得た密度波のコヒーレンス長が協調的延性緩和の基本傾向を捉え、トポロジカルMROが追加的寄与を与えることを示した。Zr量の増加はCu富化FCC的MROを抑制し、延性向上に関わるZr富化HCP的秩序を促進する。

Magnetic properties and Fermi-surface topology of kagome magnet HoV$_6$Sn$_6$
カゴメ磁性体HoV6Sn6の磁気特性とフェルミ面を、磁化測定とトンネルダイオード発振器(TDO)測定により調べた。約2.4K以下で長距離磁気秩序を示し、面直・面内で飽和モーメントが異なる顕著な磁気異方性を持つ。41.5Tまでの強磁場で最大約9kTに及ぶ複数周波数の量子振動を観測し、フェルミ面形状と有効質量を決定した。第一原理計算はフラットバンドやディラック交差を示し、計算された振動周波数は実験とよく一致した。

Unveiling Three-Dimensional Skyrmion Transitions Through Vortices and Monopoles
磁気スキルミオンは通常2次元的に扱われるが、3次元のひも構造への拡張は新たな複合構造を生む。本研究では中性子散乱トモグラフィーを用い、Co8Zn8Mn4試料において3次元的なトポロジカル電荷Q=0のスキルミオン構造を初めて実験的に可視化した。無秩序なスキルミオン状態から準安定なスキルミオニウムやバルク系では新規の複合トポロジカル物体を観測し、メロンとモノポールの結合を介した前例のないトポロジー転移経路を明らかにした。


Quantum metric induced nonlinear transport in the hidden loop-current phase of kagome metal RbV$_3$Sb$_5$
カゴメ金属AV3Sb5で提案されているループカレント秩序を伴う隠れた低温相を、RbV3Sb5の3次非線形輸送で探索した。約35Kで縦方向3次応答に強いキンクと方向異方性が現れ、同時に横方向応答に磁場奇成分が生じることから、時間反転対称性の破れた電子再構成を示す指標となる。さらに量子計量四重極が縦方向3次応答に直接寄与することを見出し、ループカレントCDWモデルで観測された角度依存性を再現した。

赤波線が残っとる


Enhanced Critical Currents and Irreversibility Fields in YBa$_2$Cu$_4$O$_8$ Films through Ca-Substitution
本来アンダードープであるYBa2Cu4O8エピタキシャル膜にCaを置換(x≤0.10)するとホール濃度が増加し、最適ドープに近づいてTcとJcが向上することを示した。40Kで10%Caドープにより、Jcは0.03Tで2.4倍、6Tで10倍に増大。Jc∝B^-0.5の磁場依存性はCa量によらず、積層欠陥による支配的ピン止め機構は変わらない。Caは15K以上で磁束クリープも抑制する。さらにJcと対破壊電流、クリープとGinzburg数の相関を議論した。

Orbital-engineered px,y-kagome lattice in a halogen monolayer
多くのカゴメ物質はd電子系で単一軌道モデルで近似されるが、本研究ではAg(111)上にBr単原子層を堆積し、pz成分を選択的に抑制する軌道フィルタリングによってpx,y軌道カゴメ格子を実現した。STM、ARPES、DFT計算により大面積で高秩序なカゴメ構造を確認し、バンド分散が異方的px,y強束縛模型と定量的に一致した。有効H終端モデルにより固有の電子構造を抽出し、スピン軌道相互作用による非自明なトポロジカル性を明らかにした。

Enabling the Ambient Pressure Growth of ScB2 Crystals for AlGaN Power Electronics
超高温セラミックScB2の単結晶を、レーザー加熱光学浮遊帯域法の移動溶媒法により常圧で育成することに成功した。Sc過剰およびB過剰のセルフフラックスから結晶を得て、AlB2型六方晶構造を確認。B過剰フラックスから育成した結晶は粒界のない単一ドメインで、XPSでも良好な電子状態を示した。仕事関数は約5eVで高い導電性と整合する。ScB2はAl高濃度AlGaNパワーデバイス用の格子整合基板候補として、スケーラブルな製造の道を開く。

Evanescent-wave Johnson Noise from Superconductors
超伝導体表面上の真空半空間における減衰波ジョンソンノイズ(EWJN)と、表面からナノメートル距離にあるスピン・電荷量子ビットの緩和時間T1を計算した。非磁性・磁性不純物を含むBCS超伝導体の横電流応答核を用いて磁場・電場ノイズを求めた。Tc直下では磁場ノイズがHebel-Slichter的コヒーレンスピークで増強され低温で指数的に減少する一方、電場ノイズにはピークがない。また磁性不純物により零温度でもノイズの下限が生じることを予測した。

Frustrated Gd3+ Double Perovskites as High-Performance Magnetocaloric Materials for Sub-100 mK Adiabatic Demagnetization Refrigeration
100mK以下の極低温実現に向け、Gd3+系ダブルペロブスカイトBa2GdSbO6とSr2GdSbO6を高性能磁気熱量材料として提案した。2K・5Tから断熱消磁冷凍(ADR)を行うと、微小磁場中で67mK・68mK、零磁場で83mK・78mKに到達し、Gd3+磁性体として最低のADR温度を記録した。フラストレートした幾何と交換・双極子相互作用の競合により反強磁性転移温度が抑制され、高いエントロピー密度を保つ。Ba2GdSbO6は0.5Tでも100mK以下の冷却を維持する。

Ohm's law for information revealed by a skyrmion Maxwell's demon
計算の省エネ化には情報熱力学に基づく回路設計が必要である。情報を運ぶ確率流「情報流」は共役な熱力学力「情報親和力」で駆動され、オームの法則に類似した線形応答が理論的に予想されていたが、実験的検証は未解決だった。本研究では室温でブラウン運動する2つの磁気スキルミオンからなる情報エンジンを実現し、マクスウェルの悪魔が生成する情報親和力に情報流が比例することを示し「情報のオームの法則」を確立した。キルヒホッフ則の修正も議論した。


Deep Learning GW Quasiparticle Hamiltonians for Many-Body Excited-State Electronic Structure at Scale
GW計算は準粒子電子構造の高精度計算法だが計算コストが大きい。本研究では原子構造から有効GW準粒子ハミルトニアンを直接予測する深層学習フレームワークDeepH-GWを提案した。DeepHの局所的・同変メッセージパッシング構造に基づき、平面波GW計算で学習する。準粒子バンド構造を数meVの誤差で再現し、多体相互作用の非局所性にもかかわらず小さな構造から大きなスーパーセルへの高い転移性を示した。電子格子相互作用によるバンドギャップ繰り込みも捉えられる。

24-hr Solid-State Power Generation with Self-Adaptive Tunable Radiative Coatings
温度に応じて昼は選択的太陽光吸収体、夜は放射冷却体に自律的に切り替わる調整可能な放射コーティングと熱電発電素子を組み合わせ、昼夜24時間の固体発電を実証した。コーティングは高ドープSi基板上の熱変色性VO2薄膜とSiスペーサで構成され、昼は高吸収率0.90・低放射率0.23、夜は高放射率0.85を示す。真空中試験で昼は黒色吸収体比32%増、夜は63%増の発電を達成し、大気中でも優位性を確認した。


Linear-Scaling Quantum Transport from Machine-Learning Density Functional Theory Hamiltonians
DFTと非平衡グリーン関数法を組み合わせた量子輸送計算(DFT-NEGF)は計算コストが大きく小規模系に限られていた。本研究では、小さな構造のDFTハミルトニアンで学習したE(3)同変グラフニューラルネットワークで大規模デバイスのハミルトニアンを予測する線形スケーリング手法HamGNN-NEGFを提案した。500原子未満でも従来法より3桁以上高速で、meVレベルの精度を保ち1万原子超の予測計算が可能。ハイブリッド汎関数や有限バイアスにも拡張できる。

Symmetry-enforced topological parity: revisiting $2\mathbb{Z}$ classifications beyond cellwise symmetry actions
運動量依存の対称性作用は、トポロジカル絶縁体・超伝導体の2Z分類における偶数制約を、対称性代数を変えずに奇数制約へ変えうる。4次元までの内部対称性および位数2の結晶対称性について、ハミルトニアンのチャーン数・巻き数と反ユニタリ対称性行列のトポロジカル不変量の間のパリティ関係を導出した。奇パリティが強制される場合、対称性を保つギャップ相は必ず非自明となる。局所性の観点から、奇数値が実現可能かを3つの場合に分類した。

Engineering Vacuum Fluctuations in Hyperbolic Heterostructures
真空揺らぎは光共振器や表面ポラリトンで制御できるが、物質内部深くまでの制御は困難であった。本研究では、双曲型物質内部の真空場が、逆符号の異方性を持つ薄いオーバーレイヤーによって再形成されうることを示した。この効果には両物質の双曲バンドの重なりが必要で、下層物質の誘電特性を変えずに真空場と物質励起の結合を変調する。応用としてエリアシュバーグ理論により、内部の2次元超伝導層の臨界温度を遠隔的に変えられることを示した。


Uniform-Charge-Density $d$-Wave Superconductivity in the Pure $t$-$J$ Model at $1/8$ Doping on an Infinite Cylinder
正方格子t-Jモデルの1/8ホールドープにおける基底状態は、ストライプ秩序か超伝導かで長年論争がある。本研究では熱力学極限で波動関数を直接最適化するVUMPS法を用い、有限円筒の境界ピン止め効果を排除した。周長8の無限円筒で、準長距離対相関を持つ一様電荷密度のd波超伝導基底状態を見出した。ねじれ境界条件で有限の超流動位相剛性を確認し、電荷・スピン相関は速やかに減衰してストライプや磁気秩序の兆候は見られなかった。

Scale invariance, fractal dynamics, and critical exponents at the phase transition
臨界点での平衡ダイナミクスは、ユークリッド空間全体ではなく実効的なフラクタル部分空間上で発展するという描像を提案した。Fisherの相関関数の定式化から出発し、異常臨界指数ηを相関フラクタル次元によって幾何学的に解釈する。分数階微積分を用い、上部臨界次元以下で臨界挙動を再現する相関関数を導出し、ηとRiesz分数階微分に関連するフラクタル次元の関係を得た。Rushbrooke関係式や非整数次元系・無秩序系への適用も検討した。

Topological Hall Effect Induced by Chiral Spin Textures at the Ferroelectric/Ferromagnetic Interface
強誘電体/強磁性体ファンデルワールスヘテロ構造Fe3GeTe2/α-In2Se3において、界面のジャロシンスキー・守谷相互作用(DMI)によるカイラルスピン構造を調べた。保磁力付近で2種類のトポロジカルホール信号を検出し、磁気力顕微鏡で逆コントラストの2種類の磁気バブルを観測した。スピンダイナミクス計算と第一原理計算によりDMI安定化スピン構造の形成を支持した。強誘電分極の反転で異常・トポロジカルホール効果を不揮発に制御でき、4つの抵抗状態を実現した。


Exact anomalous current fluctuations in the strong-anisotropy limit of the XXZ chain
XXZ鎖の強異方性極限を記述するfolded XXZ鎖におけるスピン流揺らぎを研究した。無限温度における時間積分スピン流のモーメント母関数の厳密な表式を得た。長時間漸近解析により、スケールした時間積分電流がM-Wright関数で記述される非ガウス分布に収束することを示した。導出には1次元t-0模型への非局所写像とその厳密なスピン電荷分離を用いた。さらに隣接2サイトのスピン和の動的相関関数が長時間で拡散的ガウス分布を示すことも示した。

Quantum Statistical Thermal Engine at the BCS-BEC crossover
s波接触相互作用を持つ2成分フェルミ気体を用い、BCS-BECクロスオーバーを横断して動作する量子熱機関を提案した。仕事は圧縮・膨張だけでなく、相互作用で制御される気体の統計的性質から取り出される。汎関数繰り込み群で超流動-常流動転移を含む状態方程式を非摂動的に求めた。サイクルはオットーとカルノーの両効率限界を同時に飽和でき、密度変化なしのスターリング型機関では最大38%の効率を示す。同一構成で冷凍機や加熱器としても動作可能である。

Switching Anomalous Hall and Nernst Responses by Nonmagnetic N Occupation at Fixed Noncoplanar Mn Antiferromagnetic Order
非磁性原子の占有によって、磁気秩序を変えずに磁気対称性を変え異常横輸送を制御できることを示した。同じ格子定数と全く同じ非共面all-in-all-out型Mn磁気配置を持つγ-Mn、Mn4N、MnNを比較し、N副格子の占有のみを変えた。異常ホール・ネルンスト応答はゼロ→有限→ゼロと変化する。γ-MnとMnNでは高い磁気対称性によりベリー曲率が完全に打ち消し合うが、Mn4Nでは対称性低下により約-126S/cmの異常ホール伝導度が生じる。


Electronic Coupling and Charge-Transfer Landscape of Graphene on Ge(001)/Si(001): Multiscale Analysis Assisted by Machine Learning
グラフェン/半導体界面の電荷移動制御はSi互換技術への2次元材料統合に重要である。Ge(001)/Si(001)上に成長したグラフェンを、UPS、KPFM、ARPES、STS、DFTを組み合わせて解析した。基板のナノファセット形状と相関した不均一な仕事関数分布を観測し、清浄界面ではGeからグラフェンへの電子移動によるn型ドープを確認した。一方、酸化界面ではp型への反転が予測される。機械学習によるSTSデータ分類で局所的な電子状態の違いを分離した。

Irreducible Weyl Semimetals
最小構成のワイル点からなるワイル半金属相の同定を目指し、既知の16種類の既約ワイル分子のうちどれが単独の結晶相を形成できるかを調べた。2本のバンド交差が電荷中性かつ結晶学的に分割不可能なワイル点配置をなす「既約ワイル半金属(IWSM)」を導入し、1651の磁気空間群を網羅して分類した。16種中10種のみが実現可能で、電荷3のペア型など5つの新奇なトポロジカル相を発見した。格子模型によりノード配置とチャーン数を検証した。

Reversible field-free superconducting diode effect controlled by an antiferromagnet
超伝導ダイオード効果は散逸のない一方向電流を可能にし、実現には時間反転対称性の破れが必要である。本研究では、スピン分裂を生じずに時間反転対称性を破るコリニア反強磁性体CuMnAsに近接させた通常の超伝導体Alにおいて、無磁場での超伝導ダイオード効果を実証した。絶縁性AlAs中間層で近接効果を調整し、ダイオード極性の反転が残留ネール状態の反転と対応することを示した。スピン分裂バンドや正味の磁化は不要であることを示した。

Interlayer dark excitons in a van der Waals heterostructure
TMDヘテロ構造の層間励起子は長寿命・長距離輸送を示すが、一重項(明)と三重項(暗)の層間励起子をモアレ励起子と区別することは困難であった。本研究では、高品質なデュアルゲートWSe2/hBN/WSe2ホモバイレイヤーにおいて、明励起子と暗励起子を分光的に直接同定した。暗励起子は明励起子と異なる選択則に従い、マイクロ秒を超える超長寿命でも強い谷偏極を保持する。さらにねじれ角による層間励起子発光の制御も実証した。

Interlayer Fermi Polarons in Bilayer MoTe$_2$
TMD二層膜では層自由度が量子相を支配するが、不純物とフェルミ海の両方が層擬スピンを持つ二層系でのフェルミポーラロン形成はよく分かっていない。本研究では、多くのTMD二層膜と異なり直接光学ギャップを保つ二層MoTe2を用いた。デュアルゲート素子で面直電場により層内・層間励起子の混成を調整し、層コヒーレント励起子を形成した。ドープにより複数のポーラロン分岐が現れ、反対層のキャリアに被覆された単層にはない新しいポーラロンを同定した。

3/8 charge-density wave instability in the kagome metal CsV$_3$Sb$_5$
カゴメ金属CsV3Sb5では、圧力下で超伝導ドームの谷に対応して波数Q=(3/8,0,1/2)・単斜晶対称性の新しい電荷秩序相がX線回折で報告された。本研究では、細かい逆格子グリッドでの密度汎関数摂動論(DFPT)計算により、主要な格子不安定性がまさにこの波数にあることを示した。有限変位計算から、常圧では非調和効果で従来のL2^- CDWが安定化するが、約1GPa以上で3/8不安定性が有利になる。ランダウ自由エネルギー解析で単斜晶歪みも説明した。

Spatially dispersive photogalvanic effects as a probe of quantum geometric tensor
ベリー曲率と量子計量を統一的に実験で捉える手段は限られている。本研究では、光の空間分散により2次光電流の選択則が変わり、中心対称結晶でもパリティで禁制の応答が外場などなしに許容されることを示した。この応答は量子幾何で決まり、量子計量とベリー曲率を異なる偏光チャネルに分離できる。1T'-MoTe2のTd-ワイル相への転移を通じて、ヘリシティ偶・奇の光電流をそれぞれ量子計量・ベリー曲率の寄与として同一素子で分離観測した。

The Principle of Minimum Justified Correlation
シャノンエントロピー、フィッシャー情報量、量子力学的運動エネルギーがいずれも相関の尺度とみなせることを示した。同時確率密度を周辺分布の積に置き換える相関破壊写像を基本とし、連続分布で座標不変な相関尺度を得た。相対フィッシャー情報量も同様に振る舞い、実波動関数ではその減少が平均運動エネルギーの減少に厳密に比例する。これに基づき、制約を満たす分布のうち相関が最小のものを選ぶ「最小正当化相関の原理」を提唱した(2部構成の第1部)。

How Thermodynamically Accessible are Quaternary Mixed-Metal Chalcohalides?
四元混合金属カルコハライド(MMCH)は有望な混合アニオン半導体だが、熱力学的な合成可能性は未解明である。DFTとAlexandria材料データベースを組み合わせ、54種のM(II)2M(III)Ch2X3化合物を評価した。すべて熱力学的に不安定と予測されたが、多くは計算誤差の範囲内で凸包に近い。分解経路は5種類に分類された。Sn系6種の溶液プロセス合成で解析を裏付け、未報告のSn2InS2Br3を初めて合成した。凸包近接性と競合相が合成の鍵となる。

Anisotropic interface-confined superconductivity in FeTe-based heterostructures
界面に閉じ込められた超伝導は数nmと薄く、固有の性質の決定が難しい。本研究では6種類のFeTe系ヘテロ構造のマイスナー応答をトンネルダイオード共振器で測定した。超薄膜では従来の感受率規格化が数十%ずれることを示し、適切な較正によりロンドン侵入長λ(T)を決定した。広い転移幅は不均一性でなく極端な形状と大きなλに起因する。超流動密度は等方的s波と矛盾し、ラインノードを持つ異方的秩序変数を示唆。界面FeTe層が超伝導の共通起源と結論した。

Imaging phase winding in topological superconductors with a fork-tip Josephson STM
トポロジカル超伝導体の秩序変数の位相巻き付きを実空間で観測するのは難しい。本研究では、不純物近傍でフォーク型の2つの超伝導探針が干渉計を形成し、2点間の位相差に敏感となる「フォーク探針ジョセフソンSTM」を提案した。探針と試料の相対位相が揺らいでも信号は観測可能である。干渉パターンを数値計算し、秩序変数の大きさと位相を角度の関数として再構成できることを示し、位相巻き付きの直接検出という長年の課題への道筋を示した。


-2026/9/29--
Zoology of chiral superconductors in Chern bands
菱面体多層グラフェンやねじれ二層MoTe2でカイラル超伝導の兆候が報告されたことを受け、斥力相互作用の強いチャーンバンドでどのような超伝導が現れるかを調べた。ペア束縛エネルギーの符号振動から微分可能な損失関数を構成する「ターゲット相最適化」を厳密対角化と組み合わせ、周期変調ランダウ準位を探索した。ν=2/3ではf−if正孔超伝導に加えp±ip、f+ifの電子・正孔超伝導を発見し、ν=1/2ではカイラル超伝導と複合フェルミ液体の直接転移を初めて見いだした。


Nanodiamond Sensing of Stray Fields during Domain Reversal
窒素-空孔(NV)中心アンサンブルを含むナノダイヤモンドを局所量子センサーとして用い、CoFeB細線の磁化反転時に生じる漏れ磁場を計測した。センサーの位置によって、細線端では正の周波数ジャンプ、細線のすぐ外側では予想外の負のジャンプ、中央ではほぼ変化なしという3種類の応答が観測され、マイクロマグネティクス計算による境界磁場で定量的に説明された。共鳴が部分的にしか分離しないODMRスペクトルでも磁場を頑健に抽出できるフィッティング手法も開発した。


Chiral Weyl-Kondo semimetallic state through enhanced correlation in CeGaGe
結晶のカイラリティ、非共型対称性、近藤相関を併せ持つ物質で予言されていたカイラル・ワイル近藤半金属(cWKSM)の証拠をCeGaGeで報告した。CeGaGeはT_N=4.7 Kで傾角反強磁性秩序を示し、高温のアキラルなI4₁md構造から低温のカイラルなP4₃構造へ構造転移する。異常ホール伝導度は近藤温度T_K≈7 K以下で一定、それ以上で急減し、磁気秩序ではなく近藤コヒーレンスに追随する。第一原理計算と合わせ、近藤混成によるベリー曲率起源の内因性AHCと結論した。

Chiral Weyl--Kondo semimetal and circular photogalvanic effect in a prototype Kondo lattice system
カイラルな重い電子系において近藤効果による電子状態の再構成からフェルミ準位近傍にカイラル・ワイル準粒子が現れるカイラル・ワイル近藤半金属(cWKSM)について、CeGaGeでの実験的実現を受け、正方晶対称性を満たす本質的な結合のみを含む原型的な近藤格子模型を構築した。これにより対称性で保護されたクラマース・ワイル粒子やトポロジカルなノード状態を頑健に示した。さらに非線形光学応答である円偏光光ガルバニック効果を解析・数値計算し、近藤由来のワイルノードの指標となる鋭い周波数ピークを見いだした。

Odd stochastic density functional theory
確率密度汎関数理論(SDFT)を、磁場中の電解質やカイラル活性物質のように、緩和時間と振動周期が同時にゼロとなる「カイラルな過減衰極限」を持つ系へ拡張した「odd SDFT」を提案した。ローレンツ力を受ける非過減衰粒子のゆらぎ流体力学から過減衰極限を取って定式化を導出した。線形応答とグリーン・久保関係の双方から相互作用粒子の集団移動度テンソルを計算して妥当性を示し、磁場中電解質のホール伝導度に適用してデバイ・ヒュッケル・オンサーガー理論の緩和項を有限磁場へ拡張した。


Digital Etching of Single-Crystalline Silicon Fin Barriers Down to Sub-10 nm
高抵抗FZ単結晶Siウェハーを用い、厚さ10 nm未満の高アスペクト比Siフィンを作製するプロセスを開発した。異方性ウェットエッチングの後、急速熱酸化(RTA)と気相フッ酸による酸化膜除去を繰り返すデジタルエッチングでフィンを薄化し、断面STEMで最薄6 nmを確認した。N₂/O₂(5:1)雰囲気と昇温レートの低減によりテーパー形状を抑え、高さ1.2 µmのフィンで厚さ変動3 nmを達成した。単結晶Siを障壁とするジョセフソン接合・超伝導量子ビットの再現性ある作製への基盤となる。

Mpemba effect without a wall
コロイド粒子系でのムペンバ効果の実験では、初期分布用ポテンシャルに粒子位置を制限する「壁」があり、効果の発現に壁が必須ではないかとの推測があった。本研究では壁を持たない新しいポテンシャルを導入し、高温初期状態とその後の緩和の両方に用いた。これにより有限のクエンチ速度でのムペンバ効果をシミュレーションで調べることが可能になった。その結果、壁がなくてもムペンバ効果は生じるが、臨界クエンチ速度より速い熱浴温度クエンチの場合にのみ現れることを示した。

Spin pumping reveals vortex-mediated angular-momentum dissipation at the superconducting transition
超伝導体へのスピンポンピングは、準粒子輸送が凍結するため臨界温度以下で効率が下がると考えられてきた。Py/Nbヘテロ構造において、超伝導転移直下の狭い温度範囲でスピンポンピング由来の磁気ダンピングが常伝導状態の値を上回るほど顕著に増大することを発見した。この増大はNb層の有限抵抗を持つ渦糸クリープ領域と一致し、渦糸がピン止めされる低温では消失する。可動なアブリコソフ渦糸がスピン角運動量散逸の新たなチャネルとなることを示し、FMRが渦糸ダイナミクスの高感度プローブとなることを示した。

How Much Do We Understand Ce L3 XANES? Ab Initio Insights into Configuration-Specific Screening at the Multiplet--Continuum Frontier
Ce L₃端XANESにおける局所多重項、集団的内殻正孔遮蔽、広がった光電子の関係を、多重項ダイナミクスと自己無撞着コーン・シャム遮蔽ポテンシャル中の連続状態伝播を結合したXSpectrupletで解析した。CeO₂のCe⁴⁺では、同じ有効4f⁰配置を保ちつつ白色線ピークが約7.3 eV離れた主・副の遮蔽状態(重み63%と30%)を同定し、その差は4f占有ではなく占有軌道の集団的再混成に由来することを示した。プレエッジ-白色線間隔10.51 eVは実験値約10.7 eVとよく一致した。

Piezo-Hall effect in $\mathrm{RbCr_2Se_2O}$
磁気空間群が正味の磁気モーメントを禁じ異常ホール効果(AHE)が抑制されている磁性体に歪みを加えると、磁気空間群が変化してAHEが出現する「ピエゾホール効果」を提案した。機構としては歪みによる磁気電子状態の転移と磁化方向の制御がある。d波交代磁性金属RbCr₂Se₂Oを例に第一原理計算で検証し、x方向とy方向に同じ一軸歪みを加えると異常ホール伝導度が大きさは等しく符号が逆になることを示した。さらにピエゾ磁気光学効果や電場・温度による類似効果も提案した。

Unifying Magnetic, Electrical, and Thermoelectric Responses in a Non-Collinear Antiferromagnet
非共線反強磁性体IrMn₃(10 nm)とパーマロイ(5 nm)のヘテロ構造において、交換バイアスを多角的に評価した。縦型MOKE、異方性磁気抵抗(AMR)、異常ネルンスト効果(ANE)の3つの独立な測定がいずれも約50 Oeの同じ一方向シフトとコサイン型の角度依存性を示した。非共線反強磁性体が課す界面の磁気対称性が、磁化反転・電荷輸送・熱電圧生成に一貫して刻印されることを示し、交換バイアスの理解を共線系の外へ拡張した。スピントロニクス・スピンカロリトロニクス素子の基盤として有望である。

Let CSP Be Your ANCHOR: Adaptive Crystal Search over Frozen Structure Priors
結晶の新規生成(DNG)モデルは「組成空間のどこを探すか」と「構造生成」を同じ重みで担うが、両者は分離すべきだと主張した。固定した結晶構造予測(CSP)モデルを物理的事前分布とし、その周りでGRPOにより多目的報酬で学習する組成方策ANCHORと、既知構造や探索履歴に対する段階的新規性スコアCANを提案した。同じCSP基盤でDNGの組成をANCHORに置き換えるとMSUNが11.4%から47.6%に向上し、MatterGenの評価系でも最先端値を29.2%から41.3%に更新した。

Bare-Die Antiferromagnetic Computing
シリコン電子素子は量子トンネル効果などにより微細化や耐環境性に限界があり、特に深宇宙探査では大きな遮蔽が必要となる。本研究では歪み媒介型の反強磁性MnIr/PMN-PTエッジプロセッサを開発し、ベアダイのまま500 K、55 T、1.5 Mradの環境で安定動作させた。入力変調型の自己リフレッシュ符号化により生のアナログ信号から非線形特徴抽出と分類を直接行い、音声認識99.8%、物体認識100%の精度を達成した。ドローンの自律航行実証や約0.2 fJ/演算の超低消費電力も示した。

Scaling Theory for Learning Low-Energy Quantum Subspaces
ハミルトニアン族にわたる低エネルギー状態を効率よく求めるため、個々の固有状態ではなく孤立した低エネルギー部分空間そのものを学習対象とする理論を構築した。この部分空間は縮退や準位交差でも明確に定義され、近傍のサンプル状態から効率的に学習できる。q次までの応答を打ち消すサンプリングでエネルギー密度誤差がd^{2(q+1)}で抑えられることを証明し、局所系ではnd²が自然なスケーリング変数となることを示した。ハイゼンベルク鎖と横磁場イジング鎖で検証し、相転移の有限サイズプローブとしての有用性も示した。

Hall conductance of dilute electrolytes from odd stochastic density functional theory
磁場中の電解質はホール伝導度を示すが、既存理論は測定値を定量的に説明できていない。本研究では確率密度汎関数理論(SDFT)を横方向移動度とカイラルな時間相関ノイズを含むよう拡張した「odd SDFT」を構築した。溶媒の流体力学効果を除いた条件で、直接応答、グリーン・久保関係、ハイブリッド揺動散逸関係の3手法でホール伝導度を計算した。odd拡散流体やカイラル活性物質など時間反転・鏡映対称性の破れた流体にも適用可能であり、デバイ・ヒュッケル・オンサーガー理論の緩和補正を磁場中へ一般化した。

Democratizing Atomistic Simulation Workflows for the AI Era with the Quantum Accelerator
量子力学計算を中心とした原子スケールシミュレーションのためのオープンソースワークフローライブラリQuantum Accelerator(QuAcc)を紹介した。第一原理電子状態計算、半経験的・タイトバインディング法、古典ポテンシャル、基盤機械学習原子間ポテンシャル(MLIP)にわたる定義済みワークフローを提供する。科学的ロジックとワークフローエンジンを分離した設計により、通常のPython関数として書いたワークフローを複数のエンジンでそのまま実行できる。MLIP評価用の整合した第一原理参照計算の生成も容易にする。

(Sub)nanoscale Visualization of Reconstruction-Driven Moiré Exciton Localization and Delocalization
ねじれモアレ二層では光吸収・発光スペクトルが励起子局在の指標とされてきたが、励起子が特定の積層サイトに閉じ込められる機構は実験的に未解明だった。本研究では極低温単色化電子エネルギー損失分光(EELS)、GW-BSE計算、光学分光を組み合わせ、WSe₂/WS₂モアレ超格子において構造再構成の程度を変えることで励起子が局在・非局在化する様子を実空間で可視化した。新たな光学共鳴の出現だけでは局在の証拠にならず、構造再構成と外部歪みが局在を支配することを示した。

Second largest eigenvalue does not bound stationary entropy production
Oberreiterらが予想した「遷移率行列の第2固有値から定義されるコヒーレント数が、振動1周期あたりの定常エントロピー生成の下限を与える」という散逸-コヒーレンストレードオフ不等式を検証した。有限のコヒーレント数を持ちながら定常エントロピー生成がゼロになる反例を具体的に構成し、この予想を否定した。このモデルは第2固有値の実部・虚部を用いた広いクラスの熱力学的不等式も排除する。第2固有値が必ずしもコヒーレント振動の度合いを特徴づけないことを示唆する結果である。

Magneto-optical Kerr spectroscopy of exciton Rydberg states in a magnetic van der Waals heterostructure
二次元半導体の励起子は時間反転対称性の破れに敏感だが、界面交換相互作用が高次の励起子リュードベリ状態に与える影響はほとんど調べられていない。近接結合したMoSe₂/Fe₃GaTe₂ファンデルワールスヘテロ構造において、波長分解磁気光学カー分光によりA・B励起子系列にわたる磁気的対称性の破れを分離した。反射・PL・PLE分光と多体第一原理計算から、増強されたカー共鳴を両系列の1s・2s状態に帰属した。A・B系列でカー極性が逆になるのは、逆向きの価電子帯スピンへの近接交換結合で説明できる。

Probing hydrodynamics in graphene and quark matter via Seebeck coefficient
ゼーベック係数をグラフェンとクォーク・グルーオン・プラズマにおける集団的流体輸送のプローブとして、緩和時間近似のボルツマン輸送方程式に基づく運動論で調べた。高キャリア密度のフェルミ液体領域では従来のMott関係に近づく一方、低キャリア密度のディラック流体領域ではMott関係から大きくずれ、グラフェンの実験値とよく一致した。ディラック流体領域では粒子あたりのエンタルピーが重要な役割を果たす。超相対論的なクォーク物質にも拡張し、同様のずれを見いだして両系の流体的応答の共通性を示した。

Enhanced sliding in the coexisting Charge Density Wave phase of strained TbTe3
TbTe₃では一軸引張応力により、c軸方向の電荷密度波(CDWc)が直交するa軸方向のCDWaへ配向転移し、a=cとなる付近で両者が共存する相が現れる。本研究では電流-電圧特性と微分抵抗を測定し、純CDWc・純CDWa・共存相におけるCDWのスライディングを調べた。歪み誘起CDWaもCDWcと同様に非線形伝導(スライディング)を示し、不整合なCDWであることを証明した。さらに共存相では両CDWが低いしきい電流でスライドすることを見いだし、直交CDWの実空間構造に疑問を投げかけた。

Moiré Quantum Layer Hall Effect
MnBi₂Te₄のような偶数層トポロジカル反強磁性薄膜は、層に固定されたベリー曲率による層ホール効果を示すが、その量子化は実験的に困難である。本研究では、制御層からの静電的モアレ超格子ポテンシャルを用いて量子層ホール効果(QLHE)を実現する方法を提案した。PT対称性を保ったまま両表面にモアレ制御層を置くと、正味のホール伝導度はゼロだが層ホール伝導度がe²/hに量子化される。弱いゲート電場で層偏極した量子異常ホール相へ移行し、その起源はモアレポテンシャルが生む層U(1)ゲージ場である。


Unconventional superconductivity in locally non-centrosymmetric CeNi$_2$As$_2$
UTe₂やCeRh₂As₂での多重超伝導相の発見を受け、局所的に反転対称性が破れた構造を持つ重い電子系超伝導体の新たな例が求められていた。本研究ではCaBe₂Ge₂型構造のCeNi₂As₂単結晶の育成に成功し、その超伝導を報告した。CeRh₂As₂との比較が可能になっただけでなく、超伝導がUBe₁₃と定量的に類似したインコヒーレントな常伝導状態から凝縮することが明らかになった。局所非中心対称構造における超伝導だけでなく、非従来型超伝導そのものについて根本的な問いを投げかける結果である。


Capacitance sensing in bilayer graphene with gate reflectometry
二層グラフェンのトポロジカル状態探索で用いられる容量測定について、ゲート反射測定に基づく新しい読み出し法を実証した。hBNとWSe₂で挟んだ二層グラフェンの上部ゲートに集中定数LC共振器を結合し、変位電場によるバンドギャップの開きをマイクロ波で確実に追跡できた。RF信号は試料の乱れによるパーコレーション伝導の影響をDC輸送測定より受けにくく、hBNとのわずかな角度整合も同定できた。上下ゲート容量を同時に測る多重化二重共振器方式も提案し、層分極率の抽出への道を示した。

t-J model at 50
t-J模型の誕生50年を記念した概説。ハバード模型から出発したt-J模型の元々の定式化を振り返り、物理的性質を議論する上での利点と欠点といった固有の特徴を強調する。特に、狭いバンド中の強相関キャリアにおける磁性、非従来型超伝導、モット・ハバード局在の間の関係を簡潔に特徴づける。後半では、模型の三軌道系への一般化についてまとめる。t-J模型に関連する物理の基本的特徴を整理して列挙することが主な目的である。

Exact probability distributions of complex spacing ratios in non-Hermitian random matrices
複素スペーシング比(最近接固有値への変位と次近接固有値への変位の比)は、開放量子系のスペクトル相関や非可積分性の診断に有用である。本研究では、複素対称行列と複素自己双対行列で実現されるクラスAI†・AII†の非エルミートガウスランダム行列について、厳密な同時固有値分布から有限Nの複素スペーシング比分布を導出した。AII†では任意Nの厳密な代数的表式を得てN=3〜6で評価し、AI†ではN=3の一次元積分表示と、立方準位反発への対数補正などの漸近挙動を導き、数値対角化で確認した。

Attraction-controlled torque organization and rotational states in frictional granular matter
二次元摩擦粒状体において、粒子間引力が応力伝達、トルク構造、粒子回転に与える影響を数値的に調べた。引力は中心力で直接トルクを生まないにもかかわらず、接触ネットワークと粒子回転を大きく変化させる。引力は低ひずみ速度の応力状態を生み、乾燥系のシアシックニング付近で高応力状態を選択する一方、高速の増粘状態はほぼ変えない。応力分解から、引力の直接寄与は一部にすぎず斥力寄与が大きく増強されることがわかった。低充填率では、接触網が有限でもトルクと回転が抑制された応力崩壊状態が現れる。

Superfluid Spin Transport in the Van der Waals Antiferromagnet CrCl$_3$
位相勾配で駆動される低損失スピン輸送として期待されるスピン超流動を、易面型ファンデルワールス反強磁性絶縁体CrCl₃で発見・制御した。非局所デバイスでのマグノン輸送測定と理論モデルを組み合わせ、傾角反強磁性スピン配置においてスピン超流動が生じ、約90 µmにも及ぶ弱い減衰の長距離スピン輸送をもたらすことを示した。強磁場や高温では超流動状態が抑制され、インコヒーレントなマグノンによる急速な指数減衰に戻ることも直接確認した。CrCl₃は省エネ長距離スピン輸送の有望な基盤となる。


Ultra-high vacuum Raman platform for in situ characterization of graphene nanoribbons
原子精度のグラフェンナノリボン(GNR)は端構造により電子・磁気特性を制御できるが、磁性を担う不対π電子のため大気中で容易に劣化する。そこで試料を大気に晒さずその場で測定できる自作の超高真空ラマン装置(ポータブルな「ラマン真空スーツケース」)を開発した。温度制御と精密なガス導入を備え、7・9原子幅アームチェアGNRの表面合成を追跡し、162〜748 Kでのラマンモードの温度変化を定量化した。O₂曝露による変化を分解し、反応性の高いジグザグ端での酸化と整合する結果を得た。

Density functional perturbation theory of meta-generalized gradient approximations using algorithmic differentiation
密度ρと運動エネルギー密度τに依存するメタGGA交換相関汎関数に対する密度汎関数摂動理論(DFPT)を実装した。煩雑な交換相関の2階微分式を導出する代わりに、交換相関ポテンシャルのヤコビアン・ベクトル積として自動微分(AD)で評価する。既存のAD-DFPT枠組みと統合し、任意の基底状態量の任意の摂動に対する微分を計算可能にした。ZnOとBaTiO₃の応答特性を計算し、r2SCAN01がLDAやPBEより概ね優れることを示したほか、AD-DFPT勾配を用いてニューラルネットワーク型メタGGAの学習も実演した。

Pyroelectric thermo-wave probing of BaZr0.2Ti0.8O3 ceramics
高誘電率・低リーク・低損失でチューナブルキャパシタや圧電アクチュエータに有望なBaZrₓTi₁₋ₓO₃セラミックスのうち、未研究だったx≈0.2の焦電特性を熱波プロービングで調べた。分極、脱分極、緩和、再分極の各状態で顕著な焦電応答が得られ、両表面で強く非対称になりうること、その非対称性が電場サイクル履歴に大きく依存することから非エルゴード的リラクサー状態の存在が示唆された。XRD、ラマン分光、修正キュリー・ワイス則(指数1.4)から強誘電秩序とリラクサー状態の共存を示した。

Catalogue of Collinear Magnetic Structures in Stoichiometric Materials
磁気構造の決定は通常中性子散乱などの実験に依存する。MAGNDATAの磁気構造の約半数が共線的で、その8割以上が共線スピン空間群(SSG)である極大部分群に従うことに着目し、230の非磁性空間群の極大共線SSG部分群によりワイコフ位置上の全共線磁気構造を網羅的に列挙した。ICSDの72,075の化学量論的構造に対し365,639の共線磁気構造を分類し、第一原理計算で7,824の共線磁性体の基底状態を決定した。SSGと磁気空間群によるトポロジー分類から数千の新しい磁性トポロジカル物質を見いだした。

-2026/9/28--
Von Neumann's Two Quantum Entropies
フォン・ノイマンは1927年と1929年に2種類の量子エントロピーを提案した。前者は純粋状態で常にゼロとなる周知のフォン・ノイマン・エントロピーであり、後者はほぼ全ての純粋状態で非ゼロとなるが、長く無視されてきた。本論文は両者の歴史と性質を整理し、1927年のエントロピーは熱力学的エントロピーではなくエンタングルメントの尺度として扱うべきであり、1929年のエントロピーこそが量子状態の真の熱力学的エントロピーであると主張する。

What Becomes of the Antiferromagnetic String When Long Range Neel Order Is Lost? Exact Results
ドープされた反強磁性体では、ネール秩序背景中のホール運動が経路依存の「反強磁性ストリング」を伴うとされてきた。本研究は、短距離反強磁性相関を保ちつつ長距離ネール秩序が失われた場合を考察する。このときRP²射影的記述が許され、線形安定な半渦という位相欠陥が現れる。逆巻きの半渦対はV(R)=κ ln(R/r_core)(κ=πρ_s/2)で対数的に閉じ込められ、1次元ストリングに代わり2次元スピンテクスチャが閉じ込めを担うことを厳密に示した。

Disentangling the Toric Code
整数スペクトルを持つ可換射影子ハミルトニアン(1+1次元イジング強磁性体、2+1次元トーリックコード)を非オンサイトなU(1)対称性の生成子とみなし、補助系によりオンサイト化できるかを調べた。有限次元補助系では、ドメインウォールやエニオンなどの分数化励起のためオンサイト化は不可能であることを証明した。一方、ローターなど無限次元補助系を許すと両者は脱エンタングルでき、オンサイト対称性が得られる。これは格子と場の理論のアノマリーの整合を示唆する。

Is the fractional Chern insulator-superconductor transition in twisted MoTe$_2$ direct?
ねじれMoTe₂で分数チャーン絶縁体(FCI)近傍に超伝導が観測され、トポロジカル秩序相と対称性破れ相の直接転移(エニオン超伝導)が期待されている。著者らは輸送データを精査し、近傍のリエントラント整数量子ホール効果(RIQHE)相が両者の間に介在するシナリオを提案する。3相のパッチワークとして試料をモデル化すると、温度や変位電場依存性を含む相図の主要な特徴を説明でき、低温では見かけのFCI-SC転移が狭いRIQHE領域を挟む2つの転移に分裂すると予測する。

Anomalous Pressure-Enhanced Polarization in Sliding Ferroelectrics
通常の変位型強誘電体では静水圧により分極が抑制されるが、積層依存の層間電荷移動に由来するスライディング強誘電体では振る舞いが異なる可能性がある。本研究では、平行積層二層窒化ホウ素の上にグラフェンを置き、圧力下での分極変化を検出した。その結果、圧力により層間ポテンシャルと強誘電分極がともに増大し、分極は1.66 GPaまでほぼ線形に約80%増加した。静水圧がスライディング強誘電体の分極制御パラメータとなることを示し、超薄型メモリ応用への示唆を与える。


Electrochemical Growth of Full Volume Meissner Effect Superconducting BKBO
3種類の実験セットアップを用いてBKBO(Ba-K-Bi-O)結晶の電気化学合成を行った。二電極方式から、高配向白金対極を用いた三電極方式へと物理変数の制御性を段階的に高めた。超伝導転移における磁化率の温度依存性を系統的に解析した結果、最も制御性の高い三電極方式で転移幅が一桁鋭くなることを確認した。また参照電極に対する過電圧により元素置換量を制御できることを示し、鋭い転移温度を持つ完全体積マイスナー効果の結晶が得られることを実証した。

Observation of the electronic Pomeranchuk effect in generalized Wigner crystals of twisted MoS$_2$
遷移金属ダイカルコゲナイドのモアレ超格子は一般化ウィグナー結晶などの強相関相の舞台である。通常こうした結晶は昇温で融解するが、アイソスピンエントロピーにより高温で局在固体相が安定化する電子版ポメランチュク効果が起こりうる。本研究では、ねじれ角4.1°と3.9°のAB積層二層MoS₂において、充填率1/3および1/4で極低温では伝導的なフェルミ液体、昇温で抵抗が増大し一般化ウィグナー結晶へ転移する電子ポメランチュク効果を観測した。


When Is Molecular-Dynamics-Predicted Ionic Conductivity Reliable in Solid Electrolytes?
固体電解質のイオン伝導度予測に分子動力学(MD)が広く使われるが、その信頼性評価は難しい。立方晶Li₇La₃Zr₂O₁₂を例に、有限の軌道長・セルサイズ・サンプリング不足が、一見線形な平均二乗変位や良好なアレニウスプロットの裏で拡散係数や活性化エネルギーの誤差を生み、材料ランキングを誤らせうることを示した。局所MSD指数α(t)を信頼性の定量的指標として提案し、所望精度に必要な軌道長を温度の関数として決定できるようにした。

Energetically Driven Structure Matching for Autonomous Total X-ray Scattering Experiments
自律実験室での閉ループ最適化に向け、全X線散乱測定中に実験データから原子構造モデルを迅速に得るエネルギー駆動型構造マッチング手法を開発した。金ナノ粒子を対象に、球・八面体・十面体・二十面体の理想構造、機械学習原子間ポテンシャル(MLIP)で緩和した構造、MDアンサンブルと比較した。理想構造は形態誤認やサイズ過小評価を招くが、MLIP緩和で大きく改善し、MDが最も実験と一致した。これらを組み合わせた階層的ワークフローを提案する。

Rare-earth Bilayer Triangular Lattice as a Platform for Tunable Ground States and Field-induced Magnetic Phases
幾何学的フラストレーション、層間結合、強い単イオン異方性を併せ持つ希土類二層三角格子反強磁性体として、R₂O₂Se(R=Sm, Eu, Tb–Lu)単結晶群を報告する。磁化率・比熱測定から主に反強磁性相互作用と多様な基底状態が明らかになり、TbOSeでは逐次転移、Sm・Dy・Ho・YbOSeでは単一の反強磁性転移を示した。DyOSeとHoOSeはc軸磁場で1/2磁化プラトー的構造を示し、HoOSeでは3つの臨界磁場と5つの磁気相からなる相図を得た。

Universal Drift Correction for Multidimensional Scanning Microscopy
走査型顕微鏡ではドリフトにより試料が名目のプローブ位置からずれて測定され、2D像、スペクトルマッピング、走査位置分解回折解析の定量性を損なう。本研究は直交走査によるドリフト補正を2D像からスペクトル像や回折データセットへ拡張した。異なる向きの多次元走査や構造参照像からプローブ位置を復元し、規則格子への再サンプリングまたは各信号の座標補正を行う。アフィンと非剛体補正を組み合わせ、GPU加速のオープンソース実装で処理を2〜3桁高速化した。

Experimental realization of the minimal two-dimensional multi-orbital kagome model
カゴメ物質は平坦バンドやディラック分散を持つが、実物質は多軌道かつ3次元的で複雑である。本研究ではSiC(0001)上の単層Sbで、真に2次元的な元素2軌道カゴメ系を実現した。基板による軌道選択で面内p_x/p_y軌道が6バンドのカゴメ多様体を形成する。化学的に決まる半充填によりフェルミ準位が閉じたノーダルラインに固定され、単位胞を保つブリージング不安定性で巨大な絶縁ギャップが開く。また軌道分解された原子的障害(obstruction)も見出した。


Plasmonic Modes in hybrid Josephson Junction Arrays
エピタキシャルAl-InAs量子井戸ヘテロ構造に基づくジョセフソン接合アレイ(JJA)のマイクロ波特性を測定した。低エネルギーのプラズモンモードを調べることで、構成する平面接合のジョセフソンインダクタンスを求めることができる。面直磁場を印加するとフラウンホーファー的な回折パターンが現れ、電流-位相関係と実効透過率を抽出できる。JJAは量子回路用の高インダクタンス素子や、アンドレーエフ状態に関連する微視的励起の研究の場として有用であり、広い磁場範囲での可変性を実証した。

Emergent frustrated magnetism in strain-patterned graphene
通常のフラストレート磁性は既存の磁気モーメントに由来するが、本研究では本来非磁性のグラフェンで、磁性と競合相互作用の両方を相関電子から創発させた。リソグラフィでひずみと擬磁場(PMF)を超格子状にパターン化し、平坦バンドと強い相互作用を実現した。輸送測定で相互作用による絶縁的振る舞い、異方的な磁気ヒステリシス、スピン凍結を思わせる遅い緩和を観測し、ルビー超格子上のモンテカルロ計算で再現した。極低温MFMでも磁気テクスチャを確認した。

-2026/9/24--
Analytical Solution of the Nonlinear Boltzmann Equation For Multicomponent Systems
等方的・一様な質量ゼロの多成分系に対し、非等方散乱断面積を含む非線形相対論的ボルツマン方程式の厳密解析解を導出した。二成分系では、初期エネルギー密度・粒子数密度・散乱断面積の間の制約条件に応じて3種類の厳密解が存在することを示した。平衡状態に加え、非平衡マクスウェル・ユットナー分布と非自明な分布が結合したハイブリッド構造、および両成分が共有する非自明なダイナミクスという、相対論的運動論では前例のない新しい解のクラスを見出した。

Easy-plane anisotropy of magnetic fluctuations in UTe2
スピン三重項超伝導体候補UTe2の磁気揺らぎを偏極・非偏極中性子非弾性散乱で調べ、Y点の反強磁性揺らぎがac面内で等方的でb軸方向の成分がほぼないことを示した。これにより従来仮定されたイジング異方性は否定され、d ベクトルがb軸方向を向く三重項状態が有利となる。5f電子の遍歴性と局在性を取り入れた強束縛模型で実験を再現し、ダイマー励起ギャップが閉じる量子臨界点近傍にあることを示唆。線形ギャップ方程式の解析ではB1u三重項が有利と結論した。

Interlayer-correlated fractional quantum Hall state in a trilayer electron system
超高品質GaAs三重量子井戸に閉じ込めた三層二次元電子系において、全占有率ν=5/7で新奇な分数量子ホール状態を観測した。両側の層の密度が中央層より大きく、層間距離と磁気長の比が約2.2の条件で、縦抵抗の深い極小と量子化ホールプラトーが現れる。この状態は、各層内でν=1/3的な相関、隣接層間でν=1的な相関をもつ三層版一般化ラフリン状態Ψ33311と解釈され、層間コヒーレンスを三層に拡張したハルペリン・ラフリン多体状態の新しいメンバーを確立した。


Robust Strange Metallicity across Attractive and Repulsive Hubbard Models
行列式量子モンテカルロ法を用いて、強結合(|U|/t=6)の二次元引力・斥力ハバード模型の電荷輸送を比較した。低エネルギーのスピン・電荷・ペア相関は大きく異なるにもかかわらず、両模型とも広い温度域で温度に線形な抵抗率を示し、この類似性は|U|より十分低温でも持続した。ネルンスト・アインシュタイン関係から、線形抵抗はキュリー則的な電荷圧縮率とほぼ温度依存しない拡散係数に起因すると判明。非コヒーレント輸送は低温の基底状態の性質に鈍感であることを示した。

Spectroscopic signatures of persistent exciton condensation in a bulk magnetic topological insulator
時間・角度分解光電子分光を用いて、Sb置換により化学ポテンシャルをトポロジカル表面状態に調整した磁性トポロジカル絶縁体MnBi2Te4の光励起キャリアを調べた。光励起後、バルク伝導帯の脱占有と同時に遅れて出現する過渡状態を観測し、その寿命はマイクロ秒に達した。準粒子分散は顕著に平坦化し、メキシカンハット型の形状を示す。これらは準安定な励起子凝縮状態の形成と整合し、磁性トポロジカル絶縁体が長寿命の光誘起多体状態の研究基盤となることを示した。

Towards Extended Active Learning for Modelling Ferroelectric Switching: the Need for 'Gold Standards'
ウルツ鉱型材料の強誘電分極反転のモデリングに向け、PBE、PBEsol、r2SCAN、r2SCAN-rVV10の4種のDFT手法を、RPA系手法(RPAR+Sなど)やMP2と比較した。目的は、機械学習原子間ポテンシャルの訓練データ生成に最適なDFT手法を選ぶための「ゴールドスタンダード」となる第一原理手法を見定めることである。AlN、ZnOおよびその混晶をモデルとした結果、第一原理手法間のばらつきは基準として不十分だが、RPAR+Sとr2SCAN-rVV10が最適な選択肢として浮上し、ファンデルワールス力も無視できないことが分かった。

Unmodeled states and uncertain action outcomes in agentic scanning tunneling microscopy
物理実験では操作が隠れた実験状態を予測不能に変化させるため、自律エージェントは不完全な情報下で操作結果を解釈する必要がある。本研究では、熟練者の技能に依存してきた走査トンネル顕微鏡(STM)の探針調整を題材に、LLMを装置のフィードバックループに組み込むエージェント基盤「quailbot」を開発した。人間の専門家による短期の指導後、最先端LLMエージェントが探針調整を自律的に完遂し独立検証にも合格した。一方で、隠れた状態や未モデル化のダイナミクスに対する自律性の限界も明らかにした。

Anisotropic upper critical field in the van der Waals superconducting quasicrystal (Ta$_{0.7}$Nb$_{0.3}$)$_{1.6}$Te
Nb置換したファンデルワールス層状準結晶(Ta0.7Nb0.3)1.6Teの大型単結晶粒の上部臨界磁場を調べた。Tc=1.35Kは準結晶超伝導体で最高値である。臨界磁場の角度依存性は判定基準に強く依存し、10%基準では異方的GLモデル、65・90%基準では二次元超伝導的なTinkham型を示し、準周期的なab面表面での表面超伝導の存在を支持する。バルクのHc2は強い異方性をもち、面内Hc2はパウリ限界の約2.5倍に達する。低温でのWHH理論からの上方ずれは電子拡散係数の空間分布で説明できる。

Observation of the orbital Nernst effect
温度勾配から横方向の軌道角運動量流を生じる「軌道ネルンスト効果」は理論的に予言されていたが、実験的証拠はなかった。本研究では、Ti上にNi電極を配置した素子で、磁化方向に依存し温度勾配に線形に比例する熱誘起電圧を検出し、Tiにおける軌道ネルンスト効果を初めて観測した。NiをNiFeに、TiをCrに置き換えると信号が大きく抑制されることから、異常ネルンスト効果やスピンネルンスト効果ではなく軌道起源であることを示し、軌道カロリトロニクスへの道を拓いた。


Direct observation of the electronic structure of even-layer puckered SnTe monolayer films on graphene
グラフェン上の単層SnTeの電子構造を角度分解光電子分光で直接観測した。低速電子回折、運動量顕微鏡、内殻分光、第一原理計算を組み合わせ、単層極限の電子構造が平坦な正方構造ではなく、パッカリングした偶数層(二原子層)構造と整合することを示した。バンド分散と偏光依存性は、基板により繰り込まれたバックリング振幅をもつ構造で再現される。グラフェンは面内配向や界面静電環境にも影響を与え、多層になるとよりバルク的な状態へ移行することを明らかにした。

Achieving 5-angstrom-resolution diffraction contrast with an uncorrected electron probe and nanosized defect characterizations
透過電子顕微鏡(TEM)での欠陥観察は統計性に優れる回折コントラストに依存するが、200〜300kV電子ではエワルド球の曲率が小さいため分解能が約5nmに制限されていた。本研究では禁制反射条件を用いた「equal-s法」により、収差補正なしの電子プローブで回折コントラストの分解能を5nmから0.5nmへ向上させた。この手法により鋼中でこれまで実験・理論ともに報告のない新相と転位ループ構造を発見し、古典的な二波条件に代わる欠陥解析手法となり得ることを示した。

Disentangling spin polarization from driven circular ionic motion in EuTiO$_3$
円偏光による格子の円運動が過渡磁化を生む「動的マルチフェロイック性」は議論が続いている。本研究では、高強度円偏光テラヘルツ波で駆動したEuTiO3において、超高速X線回折でイオンの円運動を、X線磁気円二色性(XMCD)でEu2+のスピン偏極を同時に測定した。イオン運動による古典的寄与は3×10^-8μBと見積もられ、XMCDの上限は0.03〜0.11μBであった。光学応答には明確な信号があるにもかかわらず、検出可能なスピン偏極は伴わないことが示された。

Active control of THz plasmon propagation in a one-dimensional electronic waveguide
ピコ秒時間スケールで量子操作が可能な「飛行電子量子ビット」の実現に向け、超短電子波束を設計した量子ナノ電子デバイスに注入した。長さ10〜40μmの準一次元電子導波路において、時間幅わずか4psの電子波束(THzプラズモン)の伝播速度を能動的に制御することに成功した。この成果は飛行電子を用いた超高速量子操作の重要な構成要素となるとともに、ナノスケール電子系における量子輸送とコヒーレンスの動的過程を探る新たな実験基盤を提供する。

Solid-State Dealloying Enables Local Symmetry Breaking in Ternary Intermetallic Thin Films
準安定な量子物質は狭い組成範囲に存在し、決定論的な合成が難しい。本研究では、La-Ag-Ge系エピタキシャル三元薄膜に対して成長後の固相脱合金化を行い、800〜900℃のアニールによるAg脱離で極性P63mc構造のLaAgGeを回折平均で中心対称なAlB2型P6/mmm構造へ変換した。原子分解能電子顕微鏡では局所的な反転対称性の破れを示すAg-Ge変位が観測された。変換後の薄膜は1K以下で超伝導を示し、最薄膜では面内上部臨界磁場がパウリ限界の約6倍に達した。

Three-photon photoemission on metallic transition metal dichalcogenide NiTe$_{2}$
金属的遷移金属ダイカルコゲナイドNiTe2において、紫外光励起による三光子光電子放出(3PPE)信号を初めて観測した。二光子励起を超えるエネルギー領域で、明確な光偏光依存性をもつエネルギー・運動量分散構造を同定した。その分散、スペクトル幅、面内運動量に対する強度変化から、この構造はNi 4s-Te 4d/5pの非占有バルクバンドと重なる鏡像ポテンシャル共鳴に帰属される。本成果は異方的二次元系におけるコヒーレント電子ダイナミクスの超高速研究を促進する。

Topological Fingerprints of Commensurate Order in Twisted Moiré Lattices
ねじれ二層系のモアレパターンから整合角(コメンシュレート角)を実空間構造で特定するのは、無秩序や有限サイズ効果のため困難である。本研究では原子配置を点群として扱い、パーシステントホモロジーでマルチスケールの位相的特徴を抽出する手法を提案した。冗長な局所モチーフを除く近傍分離フィルタにより、ねじれ・非ねじれ構造間のワッサースタイン距離に鋭い極小が現れ、整合角を正確に再現できる。無秩序に対しても頑健で、ガウス過程を用いてツイストMoTe2にも適用した。

Ferromagnetic resonance and magnetic anisotropy in YbMn$_\text{6}$Sn$_\text{6}$
カゴメ磁性体RMn6Sn6ファミリーは多彩な磁気状態を示すが、磁化ダイナミクスの研究は少ない。本研究では、強磁性体YbMn6Sn6の磁気異方性と動的磁化を、角度依存強磁性共鳴(FMR)とDC磁化測定で調べた。FMRの角度依存性から、c軸を磁化困難軸とする一軸異方性を確認した。さらにab面内に顕著な二回対称の異方性を見出し、DC磁化測定でも独立に確認された。この六回対称性の破れは結晶成長に起因する誘導異方性によるものと考えられる。

Intrinsic anomalous Hall effect in the surface conduction regime of non-magnetic narrow-gap insulator FeSi
バルク磁性のない系での内因性異常ホール効果(AHE)は、境界状態での自発的な時間反転対称性の破れを要する稀な現象である。本研究では、典型的な狭ギャップ絶縁体FeSiの低温表面伝導領域で、ゼロ磁場ヒステリシスを伴う頑健な内因性AHEを報告した。試料の厚さや表面粗さとの相関から55〜75K以下で表面伝導状態が現れ、45〜70K以下で温度に依存しない異常ホール伝導度が生じる。バルクには相転移がなく、非磁性絶縁体の金属表面に磁気秩序が創発することを示した。

Field-induced incipient spin-density phase stabilized inside the nematic phase of FeSe$_{1-x}$S$_x$
鉄カルコゲナイド超伝導体FeSe1-xSxでは、スピン密度波(SDW)秩序はこれまで加圧下でのみ観測されていた。本研究では最大68Tの強磁場を用いて超伝導を抑制し、ネマティック相内部で縦抵抗の急上昇、トンネルダイオード発振器応答やトルク異方性の異常を観測し、磁場誘起の電子秩序を見出した。小さく再構成されたフェルミ面を示す量子振動もSDW秩序と整合する。化学置換と加圧の両方でネマティック性を弱めるとSDWが安定化し、超伝導の主要なペアリング機構を促進することを示した。


-2026/9/23--
Re-entrant p-wave superconductivity in a Chern Dartboard Insulator
2バンド超伝導体に軌道間ペアリングとHatsugai-Kohmoto(HK)相互作用を組み込んだ厳密理論を構築し、Chernダートボード絶縁体に適用してペア感受率と相関を解析的に計算した。BCS理論で絶縁相とされる領域でも、HK相互作用が二重占有バンドを持ち上げて化学ポテンシャルと交差させることで超伝導(Chernダートボード超伝導の可能性も)が誘起される。さらに広いパラメータ領域で絶縁体–超伝導–絶縁体のリエントラント転移が現れ、その起源がHK相互作用と軌道間ペアリングの組み合わせにあることを示した。

Scaling of qubit coherence in quantum dot based Majorana chains: Rabi and Ramsey oscillations of Majorana qubits formed by four and six quantum dots
量子ドットで作った人工Kitaev鎖2本からなるマヨラナ量子ビットについて、4ドットと6ドット構成のRabi・Ramseyコヒーレンス時間を現実的な乱れを含めて理論的に比較した。乱れのない極限ではRabi振動は鎖長に依存しないが、6ドットではエネルギー分裂を作るのに大きなデチューニングが必要になり、Ramsey振動のリークが増える。乱れがある場合、どちらのコヒーレンス時間も鎖長で一律には改善しない。長い鎖は量子メモリとしては優れるが、操作する量子ビットとして優れるとは限らないと結論づけている。

Nanoscale Sr$_2$IrO$_4$ Freestanding Thin-Films for Flexible Electronics
水溶性のSr3Al2O6犠牲層を使い、ナノスケールのSr2IrO4自立薄膜(ナノメンブレン)を作製した。格子構造、フォノンモード、2マグノンラマン散乱、光吸収スペクトルは、エピタキシャル薄膜や単結晶とほぼ同じだった。特に、界面にできる3ユニットセル厚のSrIrO3層と複合層が逆位相境界を抑え、構造的に丈夫な膜が得られる。層状酸化物の自立薄膜は、従来の薄膜手法を超えた状態の制御やフレキシブルエレクトロニクスへの道を開くと主張している。

Comment on "Andreev Reflection to Probe Momentum-Dependent Spin Polarization in Altermagnet CrSb"
altermagnet CrSbの点接触Andreev反射から運動量依存のスピン偏極を報告したZhangら(PRL 2026)へのコメント論文。著者らは、主張されたAndreevスピン偏極が対称性により禁制であることを示した。拡散領域では全方位で、弾道領域でも測定3方位のうち2方位でゼロになり、許されるのは1方位のみ(計算値は約50%)である。報告された大きくほぼ等方的な値は、界面に平行な運動量成分だけで決まるべき選択則を3次元運動量で評価した誤った定義によるものだと指摘し、弾道領域の実証とフィッティング手法の不備も批判している。

Lattice in Line: Optimized DMRG ordering for complex lattice geometries
2次元・3次元の格子や分子にDMRGを使うには、サイトを1列に並べる「格子コンパイル」が必要になる。本論文ではその最適順序の指標として、バンド幅B、カット幅C、平均相互作用距離Rを比較した。フラストレート磁性の多数のクラスターで調べると、CがMPOボンド次元のピークを、Rが平均値を決め、(C,R)を辞書式に最適化すると最良のエネルギーが得られる。逆Cuthill–McKeeやQUBOでは不十分なため、Google OR-ToolsのCP-SATを使った段階的最適化を提案し、厳密な下限付きで大幅に良い順序を得た。

Observation of the magnetic spin Hall effect in a ferromagnet
磁気秩序があると、スピン流・スピン偏極・電場が互いに直交するという通常のスピンホール効果の制約が外れ、時間反転奇の成分による磁気スピンホール効果(MSHE)が生じる。反強磁性体では観測例があるが、通常の強磁性体では未確認だった。本研究は非局所横型スピンバルブを用い、垂直磁化Co系多層膜でMSHEとその逆効果を電気的に検出した。磁化反転で信号が反転し、通常のスピンホール信号は変わらないことを確認した。磁気スピンホール角は約3.8%とPt並みで、磁化で切り替え可能なスピン–電荷変換機構として有望であることを示した。


Coherent lattice dynamics distinguish Holstein and Su-Schrieffer-Heeger electron-phonon coupling
ポンプされた1次元Mott絶縁体を、Holstein型またはSSH型の電子–フォノン結合付きで時間依存DMRGにより計算した。電子系の応答は両モデルで定性的に似ており、Hubbard模型の励起と共鳴条件で決まる。一方、格子ダイナミクスは大きく異なる。Hubbard-Holstein模型ではポンプが裸のフォノン周波数に共鳴すると長寿命のコヒーレントフォノン振動が現れるが、Hubbard-SSH模型では現れない。この違いはパラメータを変えても頑健で、コヒーレント格子ダイナミクスが電子–フォノン結合の微視的な形を見分ける直接的なプローブになりうる。

Realization of quantum spin Hall insulator superlattice with emergent multigap-like helical edge states
量子スピンホール絶縁体(QSHI)のヘリカルエッジ状態にギャップを開けてオン/オフ切替えを可能にすることは、トポロジカル回路の重要な課題である。本研究では、エピタキシャル単層HfTe5で再構成による周期的な超格子変調を見いだし、STM/STSでエッジチャネルに複数のギャップ状構造と鋭いDOSピーク列を観測した。エッジギャップは超格子で強まった両端エッジ間の結合、ピークは縮小ブリルアンゾーン境界でのミニギャップによるものと解釈される。ピークは磁場でZeeman分裂し、ヘリカル性と整合する。


Strong coupling polarons in cavity quantum materials: limits of cavity-induced electron mass renormalization
真空場の改変で物質を制御する提案の多くは、共振器による電子の有効質量の繰り込みに依拠している。本研究はその上限を問う。この質量繰り込みは、本質的には電子と共振器ミラーの分極自由度との場を介した相互作用であることを指摘し、2次元電子のFeynman経路積分を数値的に厳密な量子モンテカルロで評価した。その結果、上限は平面配置のLandau-Pekarポーラロンで与えられることを示した。共振器による制御と誘電体エンジニアリングによる物性制御をつなぐ結果である。

Cryogenic Voltage Control of Magnetism in Silicon-Integrated SrTiO$_3$/Fe Heterostructures
低温エレクトロニクスにナノ磁性素子を組み込むことは有望だが、電流による書き込みは消費電力と微細化のボトルネックになる。本研究は、CMOS互換のSi基板上にエピタキシャル成長させたSrTiO3/Fe薄膜ヘテロ構造で、極低温での電圧による磁性制御(VCM)を調べた。電圧で磁区構造が変化することを実証・定量化し、それがFe/SrTiO3界面の電場による磁気異方性制御と整合することを示した。古典・量子計算向けの次世代磁区デバイスの材料系として有望である。

Different reconstruction pathways toward superconductivity in TaRhTe4 and TaIrTe4 Weyl semimetals
type-II Weyl半金属TaRhTe4で、加圧下の超伝導を初めて観測した。電気抵抗、Hall効果、磁気抵抗、放射光X線回折、第一原理計算から、約20 GPa付近で超伝導が現れ、65.2 GPaでオンセットTcが約2.6 Kに達し、63 GPa以上でゼロ抵抗となる。超伝導の出現は格子歪み、正の磁気抵抗の抑制、Hall係数の連続的なゼロへの減少と同時に起こる。Hall係数が非単調に変化するTaIrTe4とは経路が異なり、この系の超伝導は単一の臨界圧やFermi面再構成ではなく、物質ごとの経路で現れることを示した。

Time-reversal-odd Transport in Odd-Parity Magnets
正味の磁化がゼロでもスピン分裂と異常輸送を示す非従来型磁性体が注目されている。スピン群対称性解析を用いて、2次元・3次元の共面非共線反強磁性体で奇パリティのスピン分裂が生じる一般条件を導いた。相対論的には時間反転奇の輸送を禁じる鍵となるスピン群対称性を特定し、それを破るとスピン軌道結合下でそうした輸送が可能になることを示した。強束縛計算で、完全補償された奇パリティ磁性状態でも外場なしに異常Hall効果が生じることを確認し、材料データベース探索とヘテロ構造設計で有力な候補系を提案した。

Fractional Quantum Geometry in Topological Mott Regime
トポロジカルMott絶縁体(カイラルスピン液体)で、スピノンバンドが非自明なトポロジーと量子幾何を持つ状況を考えた。ギャップのある電荷セクターの仮想分極が、創発U(1)ゲージ場を通じて電磁応答を中性スピノンに伝え、テンソル型Ioffe-Larkin応答を生む。低周波領域では縦・Hall伝導度の比からスピノンChern数を、共鳴領域では逆Ioffe-Larkin応答とKramers-Kronig関係から量子計量とBerry曲率のスペクトル密度を再構成できる。モアレ系の三角格子Hofstadter-Hubbard模型やNb3Br8などに適用可能である。

Effect of interaction range on the phase diagram of magnetic hedgehog lattices
磁気ヘッジホッグ格子(HL)は創発的な磁気モノポール・反モノポールを持つ3次元トポロジカルスピン構造で、MnSi1-xGexやSrFeO3で見つかっている。理論では短距離(絶縁体的)と長距離(金属的)の相互作用モデルがあるが、相互作用距離の役割はよく分かっていなかった。交換相互作用の距離と減衰を系統的に変えた大規模モンテカルロ計算により、HLが広い範囲で安定なこと、特に中間距離の相互作用が有利なことを示した。単位胞あたりのモノポール対の数が異なる2種類の3Q-HLが現れ、その相対的な安定性は相互作用距離に強く依存する。

Observation of the Nernst effect driven by longitudinal spin fluctuations
異常Nernst効果は磁化に由来するため、Curie温度で消えると考えられてきた。本研究では強磁性(Mn,Cr)Sbで、異常Hall抵抗率がCurie温度で消える一方、Nernst係数はCurie温度をまたいでも有限値を保つことを観測した。これはMott関係の破れを示唆し、横熱電伝導度はCurie温度付近でピークを持つ。この振る舞いは、特殊なスピン構造やマグノン・フォノンドラッグを考えなくても、スピンの縦方向ゆらぎを導入するだけで理論的に再現できた。静的な磁気秩序だけでなくスピンゆらぎもNernst効果を駆動することを示し、横熱電変換の増強に新しい道を開く。


Extraordinary Lifetime Enhancement of Coherent Phonon-Amplitude Modes in the Excitonic Insulator Phase of Ta2Pd3Te5
励起子絶縁体(EI)は励起子が凝縮した電子相だが、多くの物質では構造転移が同時に起こるため、純粋に電子的な起源を見分けにくい。本研究は、検出できる構造転移なしにTc約100 K以下でEI相となるTa2Pd3Te5を、コヒーレントなフォノン振幅モードの応答で調べた。Tc以下でこのモードの寿命が極めて大きく伸びることを見いだし、励起子凝縮を示す新しい頑健な指紋として位置づけた。秩序変数ポーラロン描像と、非調和フォノン応答およびギャップ形成による電子散乱の減少を組み合わせた現象論モデルで説明を試みている。

Topological phase transition driven by structural defects
装飾ハニカム格子にStone-Wales(SW)欠陥(転位の双極子)を順に導入し、結晶状態から超一様なアモルファス状態へ連続的に変化させた。トポロジカルWeaire-Thorpeハミルトニアンで電子状態を記述し、SW欠陥が擬バンド反転を起こしてChern数を反転させうることを示した。断熱的な議論と計算コストの低いspillage指標を使い、結晶相からアモルファス相のトポロジカル相図を予測した。単一SW欠陥の有効ハミルトニアンにおけるホッピングの繰り込みから、擬バンド反転の起源を説明している。

Unraveling the Emergence of Slow Dynamics in U(1) Lattice Gauge Theories
最近の量子シミュレーション実験では、1次元U(1)格子ゲージ理論で、一般的な領域でも大きな系でも予想外の遅い緩和が観測されているが、その起源は不明だった。本研究は、トポロジカルθ角を持つU(1)格子ゲージ理論を、創発的な線形Stark場を持つ非局所な運動論的制約付きフェルミオン模型へ厳密に写像した。θ=0では非熱的ダイナミクスが可積分な自由フェルミオン近傍の前熱化として、θ≠0では凍結ダイナミクスがStark場によるものとして統一的に説明できる。Rydberg実験で亜拡散的なフラクトン流体力学を探る新しい道も示している。

Berry-Landau Fermi-liquid theory: transport in presence of quantum geometry
Landau Fermi液体理論に、Berry位相や量子計量といった量子幾何を基本要素として組み込んだ「Berry-Landau Fermi液体理論」を定式化した。Fermi面を横切る孤立バンドのスピンレスフェルミオンについて、Nozières–Luttinger構成でLandau汎関数を導いた。その結果、異常Berry接続ポテンシャルと相互作用による量子幾何的電流寄与が現れる。内因性異常Hall伝導度は繰り込まれたバンドのBerry曲率積分で決まり、Drude重みには通常の寄与と量子幾何的寄与の両方が含まれる。平坦バンド極限では輸送が量子幾何に支配され、熱的に増強されうる。

Autonomous Quantum Transport Measurements of 2D Semiconductors by an AI Agent
AIエージェントが多段階・複数日にわたる量子輸送測定を一貫して自律実行するワークフローを開発した。短い指示を受けたエージェントは、測定計画の立案、極低温装置の安全な操作、データ解析、最終報告までをこなす。単層・二層MoS2デバイスで最長6日間の自律測定を行い、単層MoS2の伝導帯スピン軌道結合エネルギーの決定と、二層MoS2の層・バレー分解相図の作成に成功した。装置の安全性と測定の信頼性を重視したFermiLinkエージェント基盤で実装されており、自動運転ラボへの一歩となる。

Three-Dimensional Imaging of High-Density Dislocation Networks and Their Interactions using Multislice Electron Ptychography
機能材料と基板を組み合わせると、大きな格子不整合から高密度の構造欠陥が生じ、デバイス性能を損なうことがある。本研究では、低損失サファイア基板上の超伝導TiNエピタキシャル膜について、マルチスライス電子タイコグラフィーの深さ分解能を用い、ミスフィット転位・らせん転位・貫通転位を3次元的に可視化した。約1.6 nm間隔のミスフィット転位や、その面外での交差、貫通転位への遷移など、従来手法では見えなかった詳細を追跡できた。微小体積・高密度の転位の種類と相互作用を対応付けられる手法として、構造と物性の関係の理解に役立つ。

-2026/9/18~22--
Scalable Multiple Electron Transport Architectures for Feedback Traceable Current Sources
本稿では、多重電子輸送デバイス(MET)として動作するフローティングゲート構造に基づいた、拡張可能な電子計数電流セルを提案する

Spatially resolved quantum magnetometry and stray-field reconstruction of permalloy microdisks using boron-vacancy centers in hexagonal boron nitride
負に帯電したホウ素空孔(VB−)スピン欠陥を有する転写可能な六方晶窒化ホウ素(hBN)は、集積型量子磁気計測のための多用途なプラットフォームを提供するが、磁気微細構造の定量的イメージングは​​依然として困難である。本研究では、転写されたhBN薄片を直径4μmのパーマロイ(Py = Ni81Fe19)マイクロディスクと統合し、室温で空間分解された光検出磁気共鳴測定を行った。

Singular high-harmonic transport above a quantum threshold
本研究では、狭ギャップ絶縁体におけるランダウ・ゼナートンネル効果が特異な直流電流-電圧特性を生み出し、それに伴って交流輸送において強い高調波発生が生じることを示す。注目すべきは、高調波応答が高調波次数に対して準指数関数的に減少することであり、これは通常の導体やPNダイオードの場合よりもパラメータ的に緩やかである。

YO&L.Fu一族の新作だ

Extreme-Scale Ising Machines with Cluster Mean-Field Theory
アナログおよびデジタルイジングマシンをより大規模な問題に拡張するには、デバイスの有限な容量とデバイス間の通信コストを克服する必要があります。本稿では、大規模な相互作用グラフを、利用可能なハードウェアに適合するサイズのクラスターに分割するフレームワークであるクラスター平均場理論(CMFT)を提案します

Non-Hermitian photonic time quasicrystal
フォトニック時間結晶は、時間変調によって波を増幅します。本研究では、非エルミートなオーブリー・アンドレ・ハーパーモデルの時間アナログを研究します。非整合な時間変調を複素位相平面に継続することで、複素化座標の関数としてのバルク増幅率が明確な整数位相に組織化され、各位相内でその傾きが整数に固定されることが分かりました。

人気概念オールスター

Digital-analog concept for superconducting perceptron-like neural networks
超伝導人工ニューラルネットワークへの有望なアプローチは、デジタル単一磁束量子(SFQ)通信とコンパクトなアナログ非線形処理を組み合わせたハイブリッドデジタル・アナログアーキテクチャです。この研究では、デジタル-アナログ-デジタル(DAD)コンバータを通過する離散信号の動的変換に焦点を当てました。このコンバータでは、アナログセルの役割を、パーセプトロンのようなニューラルネットワークの基本セルである非線形伝達関数を持つΣニューロンが担います。

Efficient creation of shallow NV− ensembles by high-angle ion implantation
ダイヤモンド表面から数ナノメートル下に位置する負電荷を帯びた窒素空孔(NV−)中心は、外部スピンのナノスケールセンシングにおける重要な量子欠陥である。しかし、浅いNV−中心を高収率で生成することは、依然として材料科学上の課題となっている。本研究では、高角度イオン注入によって浅いNV−中心の生成効率が向上することを実証した。60°を超える角度で15Nイオンを注入することにより、10 nm以下の有効NV−深さで10%近い高収率のNV−中心を生成した。

Electrical Probing of Dark Excitons through Microwave Permittivity
原子的に薄い半導体中の励起子は、その寿命が短いため電気的に検出することは一般的に不可能であると考えられており、ほとんどの場合、光学的特徴を通して観測されます。本稿では、単層二硫化タングステン中の光励起励起子がギガヘルツ周波数で大きな、光学的に調整可能な誘電率を生成し、この効果によってナノスケールでの暗励起子のイメージングに非接触の電気的手法が提供されることを示します。

Ultralow-Tensile Strain Enables Exciton Funneling and Energy Transfer to Boost MoSe2 Photoluminescence Quantum Yield
歪みエンジニアリングは、ファンデルワールス(vdW)ヘテロ構造(HS)における励起子ダイナミクスを制御するための強力な手段です。層間エネルギー移動(ET)プロセスは、vdW HSにおける光キャリア緩和経路を制御するもう1つの重要な要素です。本研究では、これら2つのプロセスを組み合わせることで、hBNバブル上に配置された薄いhBN層で隔てられたReS2とMoSe2の単層からなるHSにおいて、相対的なフォトルミネッセンス(PL)量子収率(QY)を8倍向上させることに成功しました。

Multiconfigurational Analysis of Local Electronic Structure of RuO2 Using Relativistic Embedded Clusters
本稿では、交代磁性材料の候補である二酸化ルテニウム(RuO2)の局所電子構造に関する、多配置相対論的埋め込みクラスター研究について報告する
独立粒子モデルにおける交代磁性スピン分裂の原因となる局所的なxy四重極秩序はこの対称性の低下に依存しているため、軌道準縮退によるその抑制は、歪み薄膜で報告されている強力な交代磁性の兆候とは対照的に、バルクRuO2実験で変磁性が観測されない理由を自然に説明する。

Emergent Surface Kondo Flat Band Driven by Competing Interactions in a Topological Ferromagnet
現代の凝縮系物理学における中心的な目標の一つは、強い電子相関、磁性、バンドトポロジーの相互作用から生じる新たな量子状態を解明することである。近藤相互作用によって生成される重いフェルミオン相は、電子相関の最も顕著な現れの一つであり、トポロジカルな重いフェルミオン状態は、いくつかの非磁性物質で確認されている。しかし、それらが磁気秩序と競合することによる影響は、これまでほとんど解明されてこなかった。本稿では、相関のある量子相の自発的な空間的分離という新たな現象を明らかにする。
磁性が、単一物質の異なる領域で異なる強く相関した電子状態を共存させることができることを示すことで、本研究は量子物質を組織化するこれまで知られていなかったメカニズムを確立し、相関トポロジカルシステムの研究における新たな方向性を開拓する。バルクに敏感なプローブを用いて、UAsS結晶はバルクでは金属強磁性体であり、相関によって駆動されるバンド再正規化は中程度であることを示す。

When Is Kramers-Wannier Duality Invertible?
量子イジング鎖のクラマース・ワニエ双対性は、有限周期鎖上の非可逆変換として自然に実現される。しかし、適切な対称性ツイストセクターを導入することで、双対性を可逆ユニタリ変換へと拡張することができる。本稿では、クラマース・ワニエ双対性が有限ヒルベルト空間上で可逆実現される条件を分類する。

Universality of the 1/9 Magnetization Plateau and Quantum-Disordered States in the Kagome Family Cs8AB3Ti12F48 (A=Rb,Li; B=K,Na)
スピン1/2カゴメ反強磁性体における低磁場1/9磁化プラトーの微視的な起源は未解決のままである。本研究では、化学的圧力がチタン系カゴメファミリーCs8AB3Ti12F48(A=Rb、Li、B=K、Na)における分数磁化プラトーの階層構造を再構築することを示す。

Quantum Mpemba effect from Stark localization
古典系では、起伏のあるポテンシャルエネルギー地形が、初期状態の温度が高いほど冷却が速くなるという有名なムペンバ効果の明確なメカニズムを提供します。しかし、この考え方は一般的に量子系では成り立ちません。本稿では、局所的な散逸を伴う量子エネルギー地形を設計することで、パラメータによって分離された時間スケールでムペンバ効果が生じることを示します。

Lowest-known Energy Configuration of N=100000 Coulomb Charges in a Disk: Breaking the 10^5 Barrier
我々は、円盤内に閉じ込められ、1/r クーロンポテンシャルを介して相互作用する N=100000 個の古典的な点電荷に対する、既知の最低エネルギー配置の最初の計算結果を報告する。これは、円盤内のトムソン問題においてこれまで達成されたことのないシステムサイズであり、Amore と Zarate によって報告された以前の記録 N=40886 の 2 倍以上である。

Is higher-order physics different?
集団相互作用は広く見られ、馴染みのあるモデルの高次拡張では、ペアワイズベースラインには見られない集団現象が現れる。これは、高次物理の明確な証拠としてしばしば提示される。我々は、この主張が統計物理学において新たな概念に明確な意味を与える普遍性というテストに耐えうるかどうかを問う。標準的な高次モデルを再検討し、集団行動を特徴づけるのは、長距離にわたって持続する赤外線成分であると主張する。

SALSA: Semi-Autonomous Literature Summarization Assistant
SALSA(Semi-Autonomous Literature Summarization Assistant)は、オープンソースのヒューマン・イン・ザ・ループ型プラットフォームであり、マルチモーダルな文献ソースから構造化された科学データセットを抽出するためのものです。このソフトウェアは、文書解析、大規模言語モデル、光学文字認識、コンピュータビジョン、図のデジタル化、およびユーザーガイドによる修正ツールを組み合わせ、テキスト、表、図、およびキャプションから構造化された情報を抽出します。

Insights into the long-standing controversy over sound velocities in lizardite
蛇紋石鉱物は上部マントルに豊富に存在する水素含有相であり、沈み込み帯における水の輸送において中心的な役割を果たしている。リザルダイトは低温スラブや浅​​い蛇紋岩化したマントルで予想される低温多形である。密度汎関数理論とr2SCANメタGGAおよび準調和近似を組み合わせた第一原理熱弾性フレームワークを用いて、300 Kにおける圧縮曲線、弾性テンソル、および音速を計算した。r2SCANは測定された圧縮曲線と平衡体積を0.2%以内で再現した。

The Origin of the Observed Raman Peaks in α-MnTe
室温磁性体α-MnTeのラマンスペクトルには、予測されるフォノンスペクトルには存在しない120(3) cm−1と140(3) cm−1の未帰属ピークが含まれていることが報告されている。これは磁性体コミュニティ内で大きな議論を巻き起こしており、早急な解決が必要である。本研究では、これらのピークと、理論的に予測されるモードに一致する90(5) cm−1のピークはすべて外因性であり、表面が空気にさらされた際に形成された元素テルルに由来することを明らかにした。

Multiferroic Quantum Dot in an Artificial van der Waals Heterostructure
量子ドット(QD)は、光エレクトロニクス、スピントロニクス、量子技術に関連する機能を持つ量子閉じ込め電子状態を設計するための多用途なプラットフォームを提供する。閉じ込め状態をスピン、バレー、トポロジカル、または強誘電性の自由度に結合させることで大きな進歩が達成されているが、量子閉じ込めが磁性および強誘電性と同時に絡み合うマルチフェロイックQDの実現は依然として困難である。本研究では、超高真空条件下で分子線エピタキシーによって成長させた人工ファンデルワールスヘテロ構造において、マルチフェロイックQDを設計した。

Observation of Kondo Effect in Rhombohedral Graphene Superlattices
強相関系における近藤効果は、遍歴伝導電子と局在磁気モーメント間の反強磁性結合に起因し、様々な特異な量子現象を引き起こす。二次元モアレ超格子系は、トポロジカルフラットバンドを特徴とする高度に調整可能なプラットフォームを提供する。このフラットバンドでは、ワニエ軌道が周期的なモアレポテンシャルによって空間的に閉じ込められ、局在磁気モーメントとして機能することで、観測可能な近藤効果が生じる。本稿では、磁気輸送測定および温度依存測定を通して、六層菱面体グラフェンモアレ超格子における近藤相互作用を実験的に実証する。

Generic thermodynamics of condensates with extremely small superfluid density ---Application to UTe2 and hidden second phase transition---
NMRと比熱実験によるUTe2に関する最近の実験結果に触発され、我々は超流動密度が小さい凝縮体の熱力学的特徴を理論的に探究し、その物理的特性を明らかにした。UTe2の常圧下において、より低い温度(T)および磁場(H)でスピンアップクーパー対からなる隠れた超伝導相A2を特定し、A2が3つの主要な磁場方向(a、b、c軸)すべてにおいて、より高いHで再び現れることを示した。

Superconductivity at the metal-insulator phase boundary in a bulk nickelate at ambient pressure
ニッケル酸塩における超伝導の発見は、遷移金属酸化物における非従来型超伝導を探求する新たな分野の礎を築いた。しかしながら、現在までに超伝導は薄膜またはバルク状態での極限圧力下でのみ実現されてきた。本稿では、正方平面ニッケル酸化物と蛍石型スペーサー層の三層構造からなる結晶構造を持つバルクニッケル酸塩単結晶(La1-xPrx)4Ni3O8および(La1-xYx)4Ni3O8において、常圧下での超伝導の兆候を報告する。


Crystallographic imperfections and exotic superconductivity of UBe13
超伝導ギャップの対称性は結晶構造の対称性に関係しています。型破りな超伝導体では、たとえ格子の小さな摂動であっても、臨界温度、臨界磁場、さらにはギャップ構造の大きな変化が起こる可能性があります。この手紙では、我々は微細構造化を使用して、以前に研究されたアルミニウム成長単結晶よりも「完璧な」材料に近いと期待される、アルミニウムを含まないUBe13結晶を研究します。我々は、臨界温度と臨界磁場の値に対する微小な欠陥の影響を比較します。UBe13 の場合、これは劇的な影響を及ぼし、その型破りな性質を裏付けています。
これはウランの酸化状態に起因する可能性が高いと推測される。酸化状態は結晶環境に敏感である。今回の研究結果は、ウラン系材料が新たな非従来型現象の優れた宝庫であるだけでなく、非従来型超伝導体のギャップ対称性を特定する手段にもなり得ることを示唆している。

SmB6みたいな話だな。雑魚物質か~~

Encapsulation epitaxy of air-stable monolayer superconducting films for quantum circuits and qubits
二次元(2D)超伝導体は、強相関物理学および量子情報科学における新たなプラットフォームとして注目されています。その低次元性、原子レベルで平坦な界面、および高い結晶性は、超伝導回路におけるコンパクトな集中定数素子の実現に魅力的です。しかしながら、酸化しやすい性質のため、大面積の単層2D超伝導体の合成は依然として困難です。本稿では、大面積で空気中で安定な単層超伝導NbSe2薄膜の成長を可能にする「カプセル化エピタキシー」メカニズムを報告し、超伝導量子回路におけるその応用について検討します。


Electronic Reconstruction Towards Topological Superconductivity in FeTe
化学量論的FeTe薄膜における固有超伝導の最近の発見により、非従来型およびトポロジカル超伝導の研究において、鉄カルコゲナイドのTeリッチ端成分への関心が再び高まっているが、その固有電子構造は未解決のままである。本研究では、分子線エピタキシー、角度分解光電子分光法(ARPES)、電気輸送測定、密度汎関数理論、および埋め込み動的平均場理論を組み合わせて、Teアニーリングによって過剰な格子間Feが徐々に除去され、系が反強磁性金属から超伝導体へと変化する過程における、20単位セルFeTe薄膜の電子構造の再構成を追跡する。

FeTeをTeアニールを限界までやったら超伝導になるけど、それをARPESで追いかけたんだ。渋いな。



Bulk Superconductivity in Rocksalt LaN1−x
本稿では、レーザー浮遊炉内でランタン金属と高圧窒素ガスを直接反応させることにより、窒化ランタンを合成し、その特性を調べた結果を報告する。シンクロトロンX線および中性子回折測定を組み合わせた結果、化学量論組成LaN0.94の岩塩構造が確認され、これはLaNが化学量論的極限において動的に不安定であるという第一原理計算の予測と一致する。

最近窒化物が人気だな

Pressure-induced unconventional charge-density-wave states in kagome metal AV3Sb5 (A = K, Rb, Cs)
電荷密度波 (CDW) と超伝導の発見以来、カゴメ金属 AV3Sb5 (A = K、Rb、Cs) は、新しい多体量子現象を探求するための新しいプラットフォームを提供している。CsV3Sb5 では、中程度の圧力下で整合波ベクトル q = 3/8 のストライプ状の CDW が観測され、圧力依存相図で特異な超伝導ダブルドーム挙動につながる。これまでの密度汎関数理論 (DFT) 計算では、圧力誘起ストライプ状 CDW は従来のフォノン軟化シナリオを超えており、電子相関の非自明な役割を示唆している。しかし、圧力誘起非従来型 CDW の詳細な理解は依然として不明である。本研究では、KV3Sb5 および RbV3Sb5 に対して圧力依存 51V 核磁気共鳴 (NMR) 測定を行った。加圧されたKV3Sb5とRbV3Sb5では超伝導ダブルドーム挙動は見られないが、圧力誘起CDW相(不整合トリプルQ CDWの可能性に起因すると考えられる)が両方の材料のNMRスペクトルで確認されており、DFT計算を超える圧力誘起非従来型CDWがカゴメ金属AV3Sb5の共通の特徴であることを示している。

Comment on "Topography of Fermi arcs in t-PtBi2 using high-resolution angle-resolved photoemission spectroscopy" arXiv:2503.08841 (cond-mat)
角度分解光電子分光法(ARPES)と走査トンネル分光法により、ワイル半金属t-PtBi2の表面超伝導が確認されているが、O'Learyらは独立したARPES実験から、3 K以上では超伝導の兆候は見られないと結論付けている。本稿では、O'Learyらが提出した全データを再解析する。実験的に決定された運動量分布曲線(MDC)の最大値、エネルギー分布曲線(EDC)のピーク位置、およびリーディングエッジのみを用いて、Changdarらが独立に報告した大きさおよび角度依存性を忠実に再現する、強い異方性を持つ低エネルギーギャップと分散バックベンディングを発見した。

お、おう・・・

Raman scattering in cuprate oxychlorides high-temperature superconductors single-crystals
我々は、ナトリウムをドープしたオキシ塩化銅酸化物NaxCa2−xCuO2Cl2高温超伝導体のラマン応答を、反強磁性領域から超伝導領域までの全相図にわたって調査した。予想されるラマン活性フォノンモードに加えて、強い電子-フォノン結合によって可能となる共鳴過程を介して励起されると解釈できるいくつかの追加モードを検出した。

この系、ラマン分光やってなかったんだ

Smectic Superconductivity
我々は、ペア凝縮体のソフトな非ユニタリーゆらぎが、容易面強磁性秩序に近い2次元ラシュバ超伝導体における位相コヒーレンスを抑制するメカニズムを特定した。このスピン偏極は、リフシッツ不変量を介して超伝導電流と線形に結合し、超伝導U(1)相の創発ゲージ場として機能する。ソフトな磁気ゆらぎを積分消去すると、実効的な超流動剛性が再規格化され、有限運動量のらせん状位相構造と、一方向でゼロになる長波長剛性を特徴とする「スメクチック」超伝導状態へとシステムが移行する。

Staged emergence of anomalous Hall transport in a correlated uranium Weyl semimetal
電子相関がトポロジカル状態をどのように変化させるかを理解することは、量子材料研究における中心的な課題であり続けている。本研究では、磁気輸送、角度分解光電子分光法、熱力学的測定、および第一原理計算を用いて、ウラン強磁性体のUPSを調査する。共鳴光電子分光により、フェルミ準位に狭いU-5fスペクトル強度と、広帯域の非干渉状態が共存していることが明らかになった。これは、ウラン5f電子に特徴的な遍歴/局在の二重性と一致する。

Anisotropic Surface State Band Splitting and Low Energy Flat Bands in 3d Correlated Topological Kondo Insulator Candidate FeSb2
FeSb2は相関狭ギャップ半導体であり、3d電子近藤絶縁体の候補としてしばしば議論されており、表面支配伝導の可能性を伴う低温抵抗プラトーを示します。我々は、FeSb2の電子構造を調べるために、系統的な高分解能レーザーベース角度分解光電子分光法(ARPES)研究を実施しました。ゾーン中心付近の表面状態は、明確な異方性分裂を示します。温度が抵抗プラトー領域(<6K)まで低下すると、表面状態は安定していますが、その光電子放出ピークははるかにシャープになり、スペクトル強度が増します。

XJZ研もFeSb2に興味持ってるんだ。SmB6より個人的に興味深い

Carrier duality from the convergence of Dirac fermions and high-order van Hove singularities
高移動度ディラックフェルミオンとフラットバンド重電子の収束は、創発的な量子現象のパラダイムを提供する。しかし、このような興味深い状態の実験的実現は依然として困難である。本研究では、カゴメ金属Co3In2S2におけるデュアルキャリア領域を報告する。この領域では、電荷輸送は高移動度電子によって支配される一方、熱力学的応答は重電子の挙動を示す。


-2026/9/17--
What does "instant thermalization" in large-$q$ SYK models mean?
2体相互作用SYK模型のプランク的熱化率Γ∼Tに着想を得て、q/2体SYK模型の熱化を研究した。従来、1/qの主要次数で「瞬時熱化」が示され、発散する率Γ∼Tqが予想されていた。クエンチ後の有効温度を解析・数値計算した結果、プランク的だがΓ∼T/qと減衰する予想外の率を得た。一方、因果グリーン関数はt1,t2>0のブロックでは瞬時に熱的形を取るが、t1·t2<0の非対角ブロックは任意のqで非熱的であり、有効温度はこの非対角部分に由来する有限の熱化率を持つことを示した。

Entropy spectroscopy of a tunable two-site Hubbard molecule
単一量子ドットで確立された電荷検出によるエントロピー測定法を二重量子ドットへ拡張し、GaAs二重ドットで実現した可変2サイト・ハバード分子の全エントロピーを測定した。両ドット準位を一緒にシフトすることで、電荷センサー1つで正しく測定できる。ドット間トンネルを強めると、原子的な2ドットから混成分子状態、単一ドットへと変化し、トンネル分裂が熱エネルギーを超えるとエントロピーが減少する。反結合状態や一重項・三重項の寄与の変化を分離でき、2サイト・ハバード模型と定量的に一致した。

Assessing the Reliability of Anomalous Hall Conductivity Extraction in GdAlSi
SrRuO3とGdAlSiを用いて異常ホール伝導度の抽出手法を比較検討した。正常ホール成分が明確で磁気伝導が小さいSrRuO3では、正常成分の差し引きを抵抗率→伝導度変換の前後どちらで行ってもほぼ同じ結果となる。一方GdAlSiでは横応答が飽和せず、低磁場・高磁場の両領域が線形に見えるため、どちらを正常ホール背景とみなすか、縦抵抗の扱いによって全く異なる異常ホール伝導度が得られる。異常成分なしで正常ホールのみで非線形応答を説明できる可能性も検討し、量子物質での過剰ホール成分抽出に実践的な注意を与える。

Magnetically coupled charge-transport crossover and giant negative magnetoresistance in iodine-incorporated Cr$_2$Se$_3$
非ファンデルワールス型の準二次元磁性体であるヨウ素添加Cr2Se3を合成し、構造・磁気・輸送・分光・第一原理計算で総合的に調べた。TN≈52K以下で反強磁性秩序を示し、T*≈150K付近に抵抗の浅い極小を伴う金属-絶縁体的クロスオーバーが現れる。T*以下では非線形ホール応答や3次高調波の異常から、多チャネル・不均一な伝導が示唆される。25K・12Tで約−78%の巨大負磁気抵抗を観測。ラマンやARPESでは構造・電子構造の大きな変化はなく、短距離磁気相関、化学的乱れ、伝導チャネル間の再分配による磁気結合型クロスオーバーと結論した。

The quantum Mpemba effect in symmetric random Clifford circuits
平衡から遠い状態ほど速く緩和する量子ムペンバ効果を、U(1)電荷を保存するランダム・クリフォード回路で実証した。エンタングルメント非対称性を用いて対称性の動的回復を特徴づけ、厳密数値計算により、初期により非対称な状態が局所的により早く対称になることを示した。ダイナミクスを電荷保存量子オートマトンに写像し、非対称性の減衰が対称単純排他過程に従う2種粒子の遭遇統計で決まることを明らかにして解析式を得た。強い初期対称性の破れは高粒子密度に対応し、遭遇頻度が増えて対称性回復が加速されるという微視的機構を与える。

Experimental assessment of the Wiedemann-Franz law in thin metal films using thermoreflectance and electrical measurements
金属薄膜の熱伝導率は通常、ゾンマーフェルト・ローレンツ数L0を用いたヴィーデマン-フランツ(WF)則で電気抵抗から推定される。本研究では矩形パルス熱反射法とファン・デル・パウ法を組み合わせ、様々な成膜法によるAl、Ti、Ta薄膜の熱・電気輸送を80–300Kで評価した。熱容量はバルク値と±8%以内で一致した一方、熱伝導率はWF推定からAl・Tiで5–20%、スパッタTaでは300Kで最大40%ずれた。見かけのローレンツ数から、成膜由来の乱れや粒界散乱、相の効果が熱と電荷の輸送の相関を変えることが示され、高抵抗薄膜へのバルクL0適用の限界を明らかにした。


High-performance orbital-torque magnetic memory on the 300-mm platform
SOT-MRAMは高速・高耐久だが、書込み/読出し効率の低さや数nm程度の極薄スピン源層が量産上の課題となっている。本研究では300mmウェハ上で、比較的厚いTi/W二層膜から生じる軌道自由度由来の軌道トルク(OT)を活用してこれらを解決した。OTメモリ素子は182%の巨大TMR、ナノ秒応答、10^12回の耐久性、向上したスイッチング効率を示し、0.1pJ/bit未満の超低書込みエネルギーを達成した。軌道角運動量が省エネMRAMの実装に利用可能であることを示し、HPCやAI向け低遅延メモリへの実用的道筋を提示する。

Disentangling Strain and Ti3+ Contributions to the Anomalous Hall Effect in Epitaxial RuO2 Films
RuO2/TiO2エピタキシャル膜で報告された異常ホール効果(AHE)は歪み安定化磁性状態に起因するとされるが、Ru-Ti混合や界面電荷再分配によるTi3+局在モーメントとの切り分けが課題だった。Ti合金化RuO2ヘテロ構造でTi3+を保ったまま歪みを独立に変えたところ、組成とTi3+割合がほぼ同じでも、明瞭な非線形AHEはコヒーレントに歪んだ膜でのみ現れ、緩和膜はほぼ線形だった。分光エリプソメトリーでは歪み膜で金属性向上とキャリア緩和時間の増大が見られ、Ti3+だけではAHEは生じず、遍歴電子構造を変えるエピタキシャル歪みが支配的因子であると結論した。

Microscopic theory of spin-torque ferromagnetic resonance in nonmagnetic-metal/ferromagnetic-metal heterostructures
非磁性金属/強磁性金属ヘテロ構造におけるスピントルク強磁性共鳴(ST-FMR)の微視的理論を構築した。強磁性体の伝導電子自由度を積分消去し、局在スピンと隣接電子系の伝導電子スピンとの有効界面交換結合を導出した。これに基づき、電流誘起の駆動トルク、共鳴周波数シフト、ダンピング変調、およびdc電圧を計算した。具体例として乱れたラシュバ二次元電子ガスに適用し、ST-FMRスペクトルが隣接電子系の動的スピン応答を反映することを示した。幅広いヘテロ構造に適用可能な、ST-FMRスペクトルと電子スピン応答を直接結ぶ統一的枠組みである。

Direct observation of phonon mode with an antisymmetric Raman tensor
原子の円・楕円運動で特徴づけられるフォノン角運動量は、フォノンホール効果やアインシュタイン-ド・ハース効果など多様な現象で重要である。擬ベクトル対称チャネルで固有の角運動量を持つ反対称ラマンテンソルのフォノンモードは、これまでカイラルフォノン研究で見過ごされてきた。本研究では偏光分解ラマン分光により、反強磁性カイラル相のCr2O3でA2擬ベクトルチャネルの266cm⁻¹フォノンを観測した。格子とスピンを対等に扱う第一原理計算が振動数と楕円運動を再現し、Cr空孔が局所的に2回回転対称性を破ることでラマン活性になることを示した。

ERAF4XRD: A multimodal agentic framework for constructing validated experimental X-ray diffraction databases from scientific literature
論文中の実験データは図・キャプション・本文・表に分散しており、構造化データとして再利用するのが難しい。本研究は、論文から検証済みのX線回折(XRD)記録を再構築する、完全自動のマルチモーダル・マルチエージェント枠組みERAF4XRDを提案する。文献の取得・選別、XRD図の識別、メタデータの抽出と実験データへの紐付けを行い、独立した検証エージェントが原典と照合する。273報・3150図のベンチマークでXRD図識別精度最大98.7%、22項目で1400のメタデータ値を生成し、最終記録は適合率98.5%、再現率90.7%を達成した。AI・データ駆動科学向けの機械可読データセット構築手法を確立する。

Nonempirical Time-Dependent Density Functional Theory Framework for Nonlocal Exchange--Correlation Potentials
軌道依存の高度な交換相関(XC)汎関数は電子構造の記述を改善するが、標準的な線形応答TDDFTではスペクトル特性をかえって悪化させる。これはKS状態の問題ではなく、XCポテンシャルの非局所性を密度行列レベルで一貫して扱わないことによる形式的不整合が原因である。著者らは、非局所KSハミルトニアンの厳密なf総和則を回復する非経験的な動的XCカーネル補正Δf_xc(q,ω)を提案した。Al、Si、C、高温高圧Alの実験と比較し、追加計算コストなしで劇的な改善を得た。GPAWに実装・公開し、非局所擬ポテンシャルがプラズモン分散の再現に不可欠であることも示した。

Optical investigation of the electronic structure of a ferromagnetic Weyl semimetal CeAlSi
磁性ワイル半金属CeAlSiの強磁性転移における電子状態を調べるため、光学伝導度スペクトルの温度依存性を測定し、DFT+DMFT計算と比較した。強磁性転移温度TCの前後でスペクトルに大きな変化はなく、Ce 4f状態がほぼ局在していることが示唆された。ほぼ局在した4f状態を仮定したDFT+DMFT計算は、スペクトル形状とTC前後での不変性をよく再現した。拡張ドルーデ解析による動的有効質量は非常に小さく計算とも一致したが、低温での散乱確率は強磁性ゆらぎを示唆する。ワイル電子とCe 4f状態の相互作用は非常に弱いと結論した。

Hypothesis-Driven Autonomous Materials Synthesis with Multimodal LLM Agents
自律実験室の意思決定は通常ブラックボックス最適化で、成果は最適化試料のみで成功の理由は言語化されない。本研究のSynAgentは、LLMエージェントが自動実験系を操作し、合成過程に関する明示的で修正可能な「理解」を主要な成果として保持する枠組みである。事前定義の解析パイプラインなしに新データ用の解析スキルを自ら生成し、XRDや電子顕微鏡像のマルチモーダル推論で理解を更新する。失敗予測条件も試す検証-反証スキームを採用。LiCoO2(001)薄膜成長の18回の自律実験で高結晶性膜を得て、650–690°Cの狭い最適成長窓と急峻な結晶化閾値を発見した。

Electronic correlations shape the low-energy optical response of the kagome antiferromagnets Mn$_3$Sn and Mn$_3$Ge
光学分光と密度汎関数理論により、カゴメ反強磁性体Mn3Snでは電子間相互作用が物性を強く左右し、低エネルギーのバンド間遷移は相関で修正されたバンド構造に由来することを示した。Mn3Snの光学有効質量は同構造のMn3Geの約3倍である。Mn3SnはU=4eV、J=0.25eVのDFT+Uで遷移を再現できるが、Mn3GeはU=J=0で再現される。σ1(ω)の見かけの線形領域は複数のバンド間遷移の重なりによるもので、ワイルコーンの光学的特徴と解釈すべきではない。17Tまで磁場で応答は変化せず、相関トポロジカル金属の雛形を与える。

Divergence between long- and short-wavelength magnon damping in spinel ferrites
高速マグノニクス素子には広い周波数範囲で低損失な磁性材料が必要だが、光学・マイクロ波で評価されるq∼0モードのダンピングが高エネルギー・有限運動量モードにも当てはまるかは未解明だった。本研究では強磁性共鳴(FMR)と共鳴非弾性X線散乱(RIXS)を組み合わせ、スピネルフェライトLi0.5AlxFe2.5-xO4の長波長・短波長マグノンを調べた。Al置換はマグノンバンド幅を大きく減少させ、高qマグノン寿命を著しく短くする一方、FMRからは超低ダンピングが示された。非磁性置換が両極限で異なる影響を与えることを示し、マグノニクス材料評価に新たな視点を提供する。

-2026/9/16--
Topological superconductors and Majorana fermions based on $X$-wave magnets with $X=p,d,f,g,i $
s波超伝導体とX波磁性体(X=p,d,f,g,i)の結合系を調べた。スピン一重項形成との整合性から、アルターマグネット(d,g,i波)と奇パリティ磁性体(p,f波)では性質が本質的に異なる。磁気秩序の強さ・化学ポテンシャル・相互作用比に依存した豊かな超伝導相図が現れ、アルターマグネット秩序はChern数で特徴づけられるクラスDのカイラルp+ip波超伝導を安定化し、i波では2本のカイラル端モードが出現する。一方p(f)波奇パリティ秩序は巻き数で特徴づけられるクラスDIII超伝導を安定化し、Majorana平坦バンドはs波混成下でも頑健である。

Anderson localization in topological metals
トポロジカル金属が乱れの下で非自明な性質を保つかを論じた。乱れがあるとギャップレス性の概念は意味を失うため、清浄系のギャップレス相が持つ長距離エンタングルメントがアンダーソン局在から保護されるか、という問いに再定式化する。著者らは3次元ワイル半金属ではこの保護が存在する一方、2次元・3次元(I型)ディラック半金属や3次元ノーダルライン半金属では存在しないことを示した。トポロジカル応答としての非量子化アノマリーと、平均対称性保護トポロジカル相の議論に用いられるdecorated domain wall構成を組み合わせて結論を導いている。

Optical and magnetic signatures of drive-enhanced coherence in phase-disordered superconducting bilayers
光誘起の超伝導様応答を説明する、超流動剛性を周期変調した位相乱れ超伝導体の理論を二層系(YBCO型)に拡張した。二面が同時に硬化・軟化する層対称ドライブと、一方が硬化し他方が軟化する層反対称ドライブを比較すると、両者とも層平均位相の相関を強め同程度の超伝導様光伝導度を与えるが、相対位相のロッキングと面平行磁場への逆流応答を強めるのは対称ドライブのみである。つまり1/ω光伝導度の増強は磁気遮蔽の増強を意味しない。実験で活性な剛性変調が相当の層対称成分を含むはずという対称性診断を与える。


Quantum Critical Solids
横波フォノン速度が消失する量子固体の運命を調べた。この「フロッピー」固体は空間次元d<4で有意となる3次の弾性非線形性を持ち、d=3では強結合Lifshitz量子臨界点へと系を駆動する。著者らはこれをε=4-d展開で解析した。付随する相転移は一般に一次であり、強結合固定点への完全な到達は妨げられるが、転移近傍のGinzburg領域内では臨界データにアクセス可能である。d=2ではこの3次非線形性が厳密に消え、代わりに4次相互作用がマージナルとなって弱い対数的特異性を生む。量子物質におけるこの「結晶Lifshitz臨界性」の実現可能性を議論している。

Breaking the Wiedemann-Franz limit in thermoelectrics via separated flat bands
電荷輸送と熱輸送の分離という長年の課題に対し、エネルギー依存散乱を用いて伝導電子の熱伝導率を電気伝導率に対して抑える直接的な方法を提示した。フェルミ準位の周りに非対称なボックスカー型分布へ電子輸送を制限すれば、大きなゼーベック係数と高い電気伝導率を両立しつつ電子熱伝導を抑制できる。フェルミ準位近傍に2本の平坦バンドを持つ単層Ni3Inを例に、平坦バンド系が散乱位相空間の設計に有望で可変な舞台となると提案した。約5万件のデータをzT対S^2の「Wiedemann-Franzプロット」で俯瞰し、L≪L0報告の選別手段も与える。


Probing proximity-induced superconductivity in bilayer graphene using gate-defined quantum dots
超伝導NbSe2に近接させた二層グラフェン(BLG)による全2次元ハイブリッド素子を実現した。BLGは電場でバンドギャップを制御できるため、局所ゲートによりトンネル障壁と量子ドットを超伝導-半導体界面から異なる距離に定義できる。量子ドットは近接効果を受けたBLGチャネルの局所分光プローブとして働き、可変な超伝導-量子ドット-常伝導接合を構成する。クーロンブロッケードと有限バイアス分光から最大80 μeVの近接誘起ギャップを観測し、その距離依存性を追跡した。状態密度の抑制は1 μm超まで持続し、弾道的BLGチャネルを通じた近接効果と整合する。

Nonlinear Photocurrent Spectroscopy and Polarization-Tunable Shift Current in the Layered Semiconductor $\mathrm{CuScP_2S_6}$
層状チオリン酸塩CuScP2S6における一光子吸収(1PA)および二光子吸収(2PA)誘起光電流を報告し、この物質が光電子的に活性な非中心対称半導体であることを示した。スペクトル分解した1PA/2PA光応答度に発光と微分反射測定を組み合わせ、2.35 eVのバンドギャップ、複数の高エネルギー帯間遷移、サブギャップ多光子励起子遷移を同定した。グラファイト/CuScP2S6/グラファイト縦型素子はゼロバイアス光電流を示し、その極性は光子エネルギーとab面内の偏光方向の双方で制御できる。符号依存性と線形→平方根のべき則転移はシフト電流起源のバルク光起電力効果と整合する。

Room-temperature 1/3 suppression of diffusive shot noise
拡散的導体に普遍的な1/3のショットノイズ抑制は、量子散乱理論、ボルツマン-ランジュバン論、対称単純排他過程のいずれからも導かれるが、実験は極低温条件に限られ普遍性の理解も不完全であった。本研究はマイクロ流体ギャップ中のフェロセンの酸化還元サイクルが、この普遍性の室温における実現になっていることを示す。電流とそのノイズの解析モデルを導出し実験で確認した結果、拡散律速領域で普遍的な1/3抑制が再現された。メゾスコピック物理と電気化学を橋渡しし、室温ノイズ測定を通じて分子ダイナミクスを探る新しい道を開くものである。


SpectraFit XPS: a free, browser-based application for X-ray photoelectron spectroscopy peak fitting and quantification
SpectraFit XPSは、X線光電子分光データ解析のための無料Webアプリで、インストールもサーバー側処理も不要でブラウザ内のみで動作し、スペクトルが手元を離れない。対話的なLevenberg-Marquardtフィッティングに加え、真のVoigt、Doniach-Šunjić、ガウス-ローレンツ和の線形、Shirley(静的・動的)、線形、Tougaard背景、スピン軌道二重項生成、式によるピーク間拘束を備える。定量では10種の相対感度因子セットやTPP-2M非弾性平均自由行程を含む運動エネルギー補正、角度補正、原子・重量%に対応。ISO 14976(VAMAS)の読み書きと各社形式の取り込み、SVG/PNG出力も可能である。

Course on two-dimensional quantum gases
サンパウロのICTP-SAIFR第4回「光と冷却原子」スクール向けに用意された2次元量子気体の講義録で、3回の講義から成る。第1講は導入として理想気体のボース・アインシュタイン凝縮、弱相互作用極限での相互作用の効果、Gross-Pitaevskii方程式とその流体力学的定式化、および超流動性を扱う。第2講は2次元量子気体の主要な特徴、すなわち相互作用の重要性、増大した位相ゆらぎと擬長距離秩序の出現、Berezinskii-Kosterlitz-Thouless機構による超流動性、スケーリング対称性を論じる。第3講はセミナー形式で、高速回転する準2次元ボース気体と渦格子の熱的融解を扱う。

AI for Science with GPT-6 Astra: Thermal Design and Electrothermal Analysis of 2D CFET
2D CFETインバータの熱最適化では、構造提案をその電気的コストと突き合わせて検証する必要がある。本研究は与えられた電熱モデルの中でAIエージェントのワークフローを用いてこの研究課題を検討した。12 nmではAstraが再配置したソース配線形状を選び、調整役エージェントが基板方向の放熱経路を提案する。金属体積と20 μWを固定したまま、両者を組み合わせた設計はピーク温度上昇を1.67 K低減した。続く金属抵抗の感度解析では約0.6 Kの冷却と引き換えにnFETオン電流が2%低下する。実効接触長のスケーリングでは、電流低下時に熱抵抗が高いほど低温になり得ることも示された。


A transfer-rod-mounted rotatable sample holder enabling a compact modular vacuum system for ion-beam milling, oblique magnetron sputtering, and co-sputtering
小型研究用真空装置向けの多機能試料ホルダー概念を提案した。ホルダーは搬送ロッドに直接取り付けられ、搬入・搬送・成膜・イオンビームミリングを通じてロッドに機械的に接続されたままで、別基板ステージへの受け渡しが不要である。軸方向の並進、ロッド軸まわりの回転、独立した基板回転を組み合わせ、通常成膜、任意入射角の斜め成膜、基板回転、隣接ソースからの同時スパッタを可能にする。統合された遮蔽板がシャッターとソースシールドを兼ね、傾斜機構なしで2インチ源4台の放射状配置を実現。DN100CF部品で組んだ装置はベーク無しで5×10^-8 mbarに達し、Ta/CoFeB斜め成膜とAu-Ag組成系列で機能を実証した。

Bridging powder and multi-crystal diffraction with basis-adaptive texture tomography
細いビームを用いた空間分解X線回折では、多結晶の回折像が粉末的な滑らかなDebye-Scherrerリングと、粒ごとに指数付け可能な孤立スポットという2つの整備された領域の中間に落ちることが多い。塑性変形金属、複雑な双晶組織を持つマルテンサイトや強弾性材料、強い集合組織を持つ地質集合体などがこの領域に当たる。本研究は基底適応型テクスチャトモグラフィーを導入し、一様な方位格子の代わりにピーク指数付けから得た候補方位を用いて角度分解能を高めた。各ボクセルで完全な方位分布関数を再構成するため複数粒・亜粒の寄与を保持でき、模擬アルミと引張変形アルミの実験で粒界・亜粒界の描出が改善した。

Visualizing Berry curvature in a Floquet-Chern insulator
円偏光はギャップレスなディラック系にトポロジカルギャップを開いてFloquet-Chern絶縁体を作り出すが、そのベリー曲率は直接分解されていなかった。本研究は円二色性の時間・角度分解光電子分光(Tr-ARPES)を用い、Bi2Se3表面のFloquet-Bloch状態における光誘起ベリー曲率をマッピングした。中赤外ポンプの左右の円偏光スペクトルを比較して誘起された幾何学的応答を抽出し、ポンプ光子エネルギー間隔で繰り返し現れる符号交替のベリー曲率構造と、ポンプ電場強度に伴う再分布を観測、周期駆動ディラック模型の計算と一致した。ベリー曲率とFloquetギャップはレプリカ強度より速く減衰する。


-2026/9/15--
Strain-Induced Helical Superconductivity and the Zero-Field Diode Effect
PbTaSe2で観測された歪み誘起のゼロ磁場超伝導ダイオード効果を説明する機構を提案。一軸歪みが主要なs波秩序変数と副次的な2成分ペアリングチャネルを混合し、両者のLifshitz結合を増強する。臨界歪みを超えると、有限のクーパー対運動量が自発的に選ばれ時間反転対称性が破れたヘリカル状態へ転移する。ダイオード効果は歪みに対し非単調で、残存ミラー面に平行・垂直な電流で異なる応答を示し実験と整合する。主歪みの反転でダイオード方向が90度切り替わり、せん断歪みでは連続回転すると予言する。

Visualizing impurity-driven scattering phase textures in EuCd2As2
磁性半導体EuCd2As2において走査トンネル顕微鏡で散乱位相のテクスチャを実空間可視化した。単一の表面波数を抽出して局所状態密度の位相マップを再構成し、不純物サイト周りで2πの巻き付きをもつ位相転位を同定。これらの位相特異点はEu格子間原子が作る電荷パドル内に系統的に現れ、バイアス電圧とともに位置が変化する。空間構造はスピン軌道相互作用を含む複数散乱チャネルの干渉と整合し、位相勾配の減衰をスピン軌道散乱とスカラー散乱の強度比に関係づけるモデルを提示した。


Tripartite entanglement in chaotic eigenstates
カオス的量子系の固有状態がもつ普遍的な多体(三分割)エンタングルメント構造を解析した。エルゴード的二分割仮説を三分割に一般化し、Rényi三分割マルチエントロピーと反射エントロピーという二つの指標について、鞍点解析で集団平均の主要項の解析表現を導出。反射エントロピーを支配するRényi-2反射密度行列の平均も求め、それが通常の縮約密度行列と異なり部分系サイズの領域ごとに質的に異なる三つの形を取ること(部分系ETHの三分割版)を示した。混合場Isingモデルの厳密対角化で検証している。

Liquid-Phase Near-Field Infrared Nanoscopy of Ion-Exchange Reactions
薄いSiC膜を用いた液中赤外近接場ナノイメージング・ナノ分光により、テレフタル酸二ナトリウムとCaCl2溶液中のCa2+/Na+イオン交換反応をその場観察した。膜直下でMOF型配位相であるテレフタル酸カルシウム(CaTP)の生成を追跡し、カルボキシラート対称・非対称伸縮モードをCa2+配位の化学選択的な近接場プローブとして利用。nano-FTIRスペクトルはピークシフトと線幅変化を示し配位環境の変化を捉えた。水溶液環境下での触媒・電気化学・生物過程の研究に道を開く手法である。

Slow Thermalization and Long-Lived Coherence across Acoustic Phonon Branches in BAs
高熱伝導率をもつ立方晶ヒ化ホウ素BAsの非平衡フォノン動力学を時間分解X線拡散散乱で調べた。大きな音響・光学ギャップにより三フォノン散乱が抑制され四フォノン過程が無視できない特異な階層構造をもつ。一フォノン拡散散乱の分岐選択性を利用し、横波音響(TA)29.2 ps、縦波音響(LA)13.9 psという熱平衡化時間を分離した。LAでも通常半導体の3倍以上遅い。0.19と0.27 THzのコヒーレント振動をTA/LAモードに帰属し、50 psにわたりほぼ減衰せず持続することを示した。

Reducing the Gate-Induced Drain-Leakage Current of Carbon-Nanotube Transistors by Subliming Dispersants with Back-End-of-Line Compatible Temperature
シリコンCMOSとのモノリシック3D集積に向けたカーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNTFET)のオフ電流低減手法を開発した。昇華性のCNT分散剤を用いた250℃以下の低温洗浄プロセスはBEOL適合で、原子間力顕微鏡とラマン分光によりCNTの形態や格子構造を劣化させないことを確認。残留分散剤に起因するゲート誘起ドレインリーク電流を約1桁低減できた。加えてオン電流、サブスレッショルドスロープ、しきい値電圧ばらつきも改善し、低消費電力CNTエレクトロニクスへの実用的な道筋を示した。

Physics-aware global Rietveld refinement for high-energy X-ray diffraction microscopy with application to reconstructing intragranular orientation and strain fields
高エネルギーX線回折顕微法(HEDM)で粒内の方位・ひずみ場を再構成する物理情報を組み込んだ新手法を提案した。変形の物理(適合条件と釣り合い)を順方向の回折シミュレーションに組み込むことで、再構成場が物理的に意味をもつよう保証する。実測と計算のディフラクトグラム全体を微分可能な最適輸送型の目的関数で比較し、内部場と粒トポロジーについて勾配法で大域的にRietveld精密化を行う。合成データで検証し、酸化窒化アルミニウムの近接場HEDM実データで実証、実装をPARA-Xとして公開した。

Probing (sub)nanoscale ferrons in an electron microscope
分極ゆらぎの集団励起であるフェロンを、三次元強誘電体チタン酸鉛においてサブナノスケールで初めて直接検出した。電子エネルギー損失分光(EELS)の運動量移行を活用し、ソフトフォノンとフェロンを区別してHiggs型と擬Goldstone型の二種を同定。Higgsモードは分極軸に平行なソフト光学フォノン、擬Goldstoneモードは垂直なフォノンに由来する。長距離双極子相互作用により群速度はそれぞれソフトフォノンの8倍・6倍に達し、ドメインサイズによる閉じ込めで倍増し約15 km/sに達する。


Probing the anomalous symmetry-breaking in kagome material CsV3Sb5 via third-order nonlinearity
カゴメ金属CsV3Sb5における三次非線形縦応答およびホール応答を測定し、室温まで安定に持続することを報告した。非線形応答は電荷密度波秩序(約77 K)および異常対称性の破れ状態(約39 K)の下で顕著に増大する。スケーリング解析から、三次非線形輸送が量子幾何学的寄与と外因性散乱の両方に支配されていることが示された。巨大な三次非線形応答の実現とともに、CsV3Sb5の異常対称性の破れを検出する新たな手法を提供する成果である。


Thermodynamic geometry of inclusion statistics
負の統計パラメータg<0で特徴づけられるinclusion統計に従う理想量子気体の熱力学幾何を調べた。大正準分配関数は有限の最大フガシティをもち、熱力学スカラー曲率Rはg<0の全域で正となり、ボース系に似た実効的引力的統計相互作用を反映する。フガシティが最大値に近づくとRは発散しBose-Einstein凝縮型の相転移を示す。凝縮温度は通常のボース気体より高く、標準ボース粒子が凝縮しない1/2<D/σ≤1の次元領域でも有限温度凝縮が起こる。三つの独立な判定基準が同一点で一致する。

Unbiased first-principles construction of complete tensorial spin Hamiltonians
相互作用項を事前に選ばずに、対称性の観点から完全なテンソル型スピンハミルトニアンを第一原理から構築する一般的枠組みを提案し、AMATISとして自動実装した。密度汎関数理論から直接ハミルトニアンを構成し、量子スピン代数と結晶対称性を厳密に課す。代表的な二次元ファンデルワールス磁性体に適用し、既知の磁気相互作用を再現するとともに、準安定スキルミオンを安定化するカイラル相互作用、磁気相図を再構成する高階テンソル相互作用と競合するマルチQ相、創発的p波アルターマグネット電子構造といった新たな物理を発見した。

Phonon Scharnhorst effect: Acoustic analogue of the vacuum-fluctuation-boosted speed of light
二枚の鏡の間の真空ゆらぎにより低周波光子の速度が超光速的にずれるScharnhorst効果の、物性系におけるアナロジーを提案した。電磁真空中の光子をBose-Einstein凝縮体のフォノン励起に置き換える。周長Lの円筒表面という理想化された二次元系の絶対零度において、凝縮体の零点ゆらぎにより軸方向の音速がL≈2ξでδc/c≈5×10^-3 g̃だけ増大する。これは光子の場合より28桁大きく、フォノンが自己相互作用をもつことに起因する。観測には低温条件が主な制約となる。

Emergence of Subdominant Quadrupolar Order in the 5$d^2$ Multipolar Mott Insulator Ba$_2$CaOsO$_6$
5d2多極子モット絶縁体Ba2CaOsO6において、局所点対称性の破れ(BLPS)相をT*≈50 Kで発見し、八極子転移と正確に一致することを示した。従来この相は化学的乱れに起因する可能性が指摘されていたが、純良試料でも生じることが明らかになった。43Ca核磁気共鳴に加えスピンエコー章動測定により有限の電場勾配を検出し、平均構造が立方晶であるにもかかわらず自発的対称性の破れが起きていることを実証。既存の八極子秩序に加え副次的な四極子寄与が存在し、隠れた秩序が本質的に多成分であることを確立した。

Vestigial altermagnetism
正方格子上の反強磁性(AFM)秩序と軌道秩序(OO)の熱的融解から生じる「痕跡的(vestigial)交代磁性」を提案した。AFMとOOの共存は波数Q=(π,π)の通常のアルターマグネットを生むが、両者が熱的に融解するとQ=0の異なる痕跡的AM相が現れうることを示し、その相図を調べた。高温無秩序相からこの相への転移は、AFMとOOの裸の帯磁率と相互作用に応じて一次にも二次にもなる。二軌道最小モデルで電子スペクトル関数を計算し、AM対称性をもつスピン・軌道依存の準粒子寿命という実験的兆候を予言した。

Time- and Frequency-Resolved Observation of Inverse Orbital Hall Effect in Gallium Nitride via Terahertz Polarimetry
円偏光パルスとテラヘルツ偏光測定を用い、ヘテロ構造を使わず単一材料のバルク応答として逆軌道ホール効果を観測する非接触手法を開発した。半導体GaNにおいてホールの軌道角運動量から電荷電流への変換をTHz帯で直接捉えた。ホール伝導度の鋭い周波数依存性の解析から、直流極限では外因性寄与が支配的である一方、不純物散乱率を超えるTHz帯では内因性のベリー曲率機構に帰属できることを示した。さらにサブピコ秒の軌道角運動量緩和を明らかにし、緩和長がサブナノメートル級であることを示唆した。

Interfacial Engineering Enabled High-Resolution Stretchable Metal-Level Conductive Lines and Transparent Conductor
材料設計と界面エンジニアリングにより、チオール官能化導電性ポリマーと金のハイブリッド積層構造を開発した。標準的なフォトリソグラフィで線幅4マイクロメートルまでパターニングでき、高い伸縮性と金属並みの導電率(40,000 S/cm超)、環境安定性を同時に達成する。これを用いてITOの性能指数を上回るグリッド型伸縮性透明電極と、伸縮性配線で接続した1000 ppiの画像素子を実証した。電子皮膚やバイオエレクトロニクスを含む次世代ソフトエレクトロニクスの適用範囲を広げる成果である。

Avalanches can increase stored energy in a granular fault
圧縮された粒状断層について、トルク・層厚・アコースティックエミッション・光弾性による力鎖の同時測定を行った。ゆっくりせん断される粒状体は通常、破壊の間にエネルギーを蓄え膨張するが、本研究ではエネルギーの解放/蓄積と収縮/膨張の四通りの組み合わせすべてが観測された。特筆すべきは、層を膨張させると同時に境界へ伝わる弾性エネルギーを増加させるなだれの存在である。これらはせん断帯を越えて力鎖を再編し特徴的な音響応答を示す。なだれが必ずしも系を緩和させず、より高負荷の配置へ応力を再配分しうることを示した。

First Demonstration of Flip DRAM from Process, Architecture to System to Push DRAM Scaling beyond 4F2: 2F2 Self-aligned Flip Vertical Channel Transistor (FVCT) DRAM and Flip WL (FWL) 3D-DRAM
ウェハを反転させ裏面を活用する新しいDRAM積層技術を初めて実証し、4F2と3D-DRAMの双方に適用した。4F2縦型チャネルトランジスタに対し、自己整合的に背中合わせ積層した1T1Cセルからなる2F2 Flip VCTを構築し、積層縦型チャネル、BL/WL形成、ウェハ接合と反転、基板薄化、低抵抗Co蓄積ノードなどの主要プロセスモジュールを開発した。同一マットサイズの4F2 VCT比で寄生27.5%減、センスマージン11%改善、電荷共有速度16.3%向上、面積50%削減を実現した。


Conserved quantities in a bosonic tight-binding chain with non-Hermitian quartic terms
Yang-Baxter構造が不明な非エルミート・ボソン格子系における局所保存量を調べた。生成演算子の四次相互作用をもつ一次元ボソン鎖に着目し、SanataniとShiraishiが構成した局所保存量に対する新たな表現を与える。フーリエ変換と三角関数の恒等式を用いてこれらの保存量を系統的に導出し、それらが互いに可換な族をなすことを直接示した。さらに単一サイトを超えて広がる相互作用、三次相互作用、非対称ホッピング、オンサイトポテンシャルへと構成を拡張し、この種の非エルミート多体系に対する統一的枠組みを与えた。

Why 2D Models Fail to Capture Flow Properties in 3D Heterogeneous Media: A Connectivity Perspective
不均質媒体における等価透水係数Keqが、粗視化スケールλ/Iに対して2次元と3次元でどう変化するかを解析した。局所透水係数は対数正規分布に従い、空間的連結性は高連結から多ガウス的、低連結、無構造まで変化させた。確率論的手法でlog(Keq)の全分布と平均・対数分散・対数歪度を特徴づけたところ、2Dと3Dで顕著な差が現れた。低・高連結の場合は多ガウス媒体向けの既存解析式が適用できず分布も非ガウス的になる。連結性が2Dと3Dの巨視的流動特性に大きな差を生み、2Dモデルの限界は深刻であると結論した。

Colossal magnetostriction effect in rare-earth orthoferrites
斜方晶RFeO3(R = Dy, Ho)単結晶において、スピン再配列転移温度以下で前例のない大きな磁場誘起格子ひずみ(90 kOeでc軸方向に60〜100%以上)を観測した。a軸・b軸方向のひずみはこれより2桁小さい。磁気誘電効果も同様に強い異方性を示しc軸方向で非常に大きい。これらの巨大なひずみ・誘電効果は、大きなスピン軌道相互作用と巨大な磁気結晶異方性に起因すると考えられる磁場誘起の一次構造相転移から生じる。大きく可逆な磁場誘起ひずみを要する応用への道を開く。

Neural-Network Solutions to Real-Space Charge Density and Generalization
実空間電荷密度を求める等変ニューラルネットワークAIDENを提案した。元素依存の一中心密度と環境誘起の密度再分配を分離し、後者を原子中心・結合中心のテンソル相関で相補的に表現する。連続的な低ランクガウス型デコーダが任意の空間座標で密度を再構成し、原子エンコーディングを評価グリッドに依存せず再利用できる。周期結晶ベンチマークで最高水準の精度を達成し分子系でも競争力をもち、構造的に異なる分布外事例へのゼロショット転移性も示した。ベースラインモデルやSCF計算より大幅に高速である。

Observation of complex orbital order in MnV2O4
幾何学的にフラストレートしたパイロクロア構造をもつバナジウムスピネル酸化物の軌道秩序について、高精度単結晶シンクロトロンX線回折とコア差分フーリエ合成を組み合わせ、価電子密度を実空間で可視化した。多重散乱によるアーティファクトを注意深く検討した結果、低温構造がI41/amd空間群に属すると同定。V サイト周りの価電子密度は、従来提案されてきた実軌道モデルとも複素軌道モデルとも異なる軌道秩序状態を示した。MnV2O4に関する長年の論争を解決し、フラストレート系の軌道状態同定の道筋を確立した。


Band-Saddle-Point Engineering in Mixed $A$-site $A$V$_3$Sb$_5$ Kagome Metals
理想的なVan Hove充填近傍のカゴメ金属AV3Sb5(A = K, Rb, Cs)について、Aサイトを混合した試料の光学分光を行い、アルカリ金属が低エネルギー電子構造に及ぼす影響を明らかにした。密度汎関数理論計算に支えられ、Cs置換の化学的帰結としてバンドの鞍点反転を同定した。これによりAサイト組成が、カゴメ層自体は変えないまま、Van Hove特異点の軌道性格、フェルミ面トポロジー、電子格子相互作用を制御することが示された。

Borromean Criticality in Two Dimensions
N≥3成分からなる対向流超流動(ボロミアン超対向流体、BSCF)は、独立なGoldstoneモードがN-1個しかないにもかかわらずN種類の基本的トポロジカル励起(渦)をもつ。本研究は、成分間の対称性が厳密な場合からわずかから中程度にずれた条件下で、この顕著な性質がBSCFから常流動状態へのBerezinskii-Kosterlitz-Thouless型転移において明瞭に現れることを示した。解析はより一般に、ある複合渦が基本渦とエネルギー的に競合する値に成分間ドラッグが微調整された任意の多成分超流動にも適用できる。

Twinning of domains and spin anisotropy in K$_5$Fe$_4$Ag$_6$Te$_{10}$
鉄系超伝導体の局在電子極限に対応する類似物質とされる鉄系半導体K5Fe4Ag6Te10(KFAT)について、飛行時間型単結晶中性子回折で逆格子空間を全面マッピングし超構造と磁気ドメインを解明した。FeとAgが規則配列して2×2 Feブロックを含む√5×√5超構造を形成し二種の超構造ドメインを生む。TN≈35 K以下では磁気・ネマティック秩序が面内回転対称性を破りさらに二種の磁気ドメインが生じる。偏極中性子散乱により、c軸とブロック内反強磁性Fe-Fe結合方向が張る容易面をもつ顕著なスピン異方性を実証した。

Multigap superconductivity in Ising superconductors: The case of (LaSe)1.14(NbSe2)m misfit layer compounds
遷移金属ダイカルコゲナイド層と岩塩型層が交互に積層したミスフィット化合物(LaSe)1.14(NbSe2)mの超伝導秩序変数を、方向分解した走査トンネル分光で調べた。Γ点中心のフェルミ面ポケット上の脆弱なギャップと、K・K'ポケット上の頑健で本質的なギャップが共存する強い異方性をもつマルチギャップ状態を発見。これは異方的Migdal-Eliashberg計算による運動量分解ギャップと定量的に一致する。Γ中心ギャップの脆弱性と非磁性不純物に対するTcの強い感受性は、従来のs波を超えたトポロジカルな秩序変数の可能性を示唆する。

Thermal Hall effect in elemental niobium, a two-gap superconductor
元素超伝導体で最高のTcをもつニオブについて、1959年以来議論されてきた二ギャップ描像を熱ホール効果測定により決定的に実証した。Tc以下で横方向熱輸送に支配的キャリアがホール的から電子的へ切り替わるクロスオーバーを観測し、これが二つの異なる超伝導凝縮体の明確な証拠となる。二ギャップBRTモデルでフィットすると第二ギャップは約0.22 kBTc(主ギャップの11%)と小さく、過去の実験で分離が困難だった理由を説明する。マルチギャップ超伝導が従来考えられていたより普遍的であることを示した。


Twin Domains in Van der Waals Quaternary Oxides
強い面内光学異方性と二次非線形性をもつファンデルワールス四元系酸化物MgTeMoO6、MnTeMoO6、ZnTeMoO6、CoTeMoO6において双晶ドメインを報告した。ドメインは斜方晶構造中に自然に形成され数百マイクロメートルにわたって広がる。ドメイン壁が(1-10)または(110)面に平行な対角ミラー面として働き、隣接ドメイン間でほぼ逆符号の複屈折を生むことが安定性の起源と提案。偏光顕微鏡、和周波発生顕微鏡、透過電子顕微鏡で結晶軸の角度関係を決定し仮説を実証した。

Freestanding Antiferromagnetic Oxide Membranes: Synthesis and Characterization of Cr$_2$O$_3$
強い磁気電気応答をもつ反強磁性絶縁体Cr2O3の自立膜を作製した。格子定数が適合しエッチング可能な犠牲層が乏しいという課題に対し、La0.7Sr0.3MnO3を犠牲層として用いることでミリメートル規模の膜の作製に成功した。基板から切り離した状態での評価により、成長時の格子不整合ひずみが微小な多結晶ドメイン形成で緩和され、膜面積の約90%で単結晶秩序が保たれることが判明。透過電子顕微鏡、X線回折、ラマン、第二高調波発生でバルク同等の構造を確認し、室温以上のNéel転移も観測した。


How Accurately Can We Describe Spin Crossover?
熱的スピンクロスオーバーを示す金属錯体の転移温度T1/2を電子構造計算で精度よく予測する方法を検討した。困難は分子分光学的量であるスピンクロスオーバーエネルギーと凝縮相の性質であるT1/2の複雑な関係にある。実験のT1/2データから逆算する手法として、LC-ωPBE汎関数の範囲分離パラメータωを一連の錯体の実験値を再現するようフィットする方法を提案。一般的な交換相関汎関数間で±15 kJ/mol以上のばらつきが生じる要因を分析し、転移温度の典型的不確かさを±50 Kと見積もった。

Induced superconductivity in selective-area grown SnTe devices
InP基板上に選択成長させたトポロジカル結晶絶縁体SnTeナノワイヤにおける近接誘起超伝導を、TEM/EDXと低温電気輸送測定で調べた。観測された超伝導は、基板中のインジウムがSnTeナノワイヤへ上方拡散し、界面に薄いInxSn1-xTe層を形成したことに由来すると考えられる。InxSn1-xTeはインジウム濃度2%以上で本質的に超伝導となるため、ヘテロ構造内で超伝導が生じる。ループ形状のナノワイヤ網で面直磁場下のLittle-Parks振動を観測したが、トポロジカル超伝導を示す半周期シフトは支配的な自明伝導チャネルにより現れなかった。

Hidden Magnetic Complexity Within a Simple van der Waals Ferromagnet Ce$_2$Te$_5$
層状f電子系ファンデルワールス磁性体Ce2Te5の磁気基底状態を、ミュオンスピン緩和、中性子粉末回折、非弾性中性子散乱で調べた。ゼロ磁場μSRはTC = 5.0 K以下での静的磁性の発現と、T2 = 2.3 Kでの内部磁場の追加異常を示す。一方で中性子回折は0.05〜8 Kで単一の長距離秩序相のみを示し、追加の構造・磁気転移の証拠はない。秩序状態は整合的な伝播ベクトルk=(0,0,0)とb軸方向のCeモーメント強磁性配列で特徴づけられ、結晶学的に異なる二つのCeサイトのうち片方のみが約0.85μBの秩序モーメントをもつ。

Chiral Antiferromagnetism from Momentum-Space Resonance in a 2D Semiconductor
金属のフェルミ面不安定性ではなく、半導体のバンド極値の単純さを利用してカイラル量子相を設計する戦略を提案した。単純な電子・ホールバレーからなる層状ファンデルワールス半導体GdGaIにおいて、従来予想される単一Q基底状態を超えて、絡み合ったカイラル三重Q反強磁性状態が電子・ホールバンド端の協調的再構成を伴って自発的に現れることを発見。この再構成は大きな運動量空間ベリー曲率を生み、半導体的で正味の磁化がほぼ無いにもかかわらず顕著な自発異常ホール効果をもたらす。


Stripe-Like Superconducting Enhancement and Coexisting Magnetic Texture in an Infinite Layer Nickelate
ニッケル酸化物薄膜で広く見られる超伝導転移の幅広化の起源を、走査SQUID顕微鏡による局所超流動密度と磁気テクスチャの観測から探った。分子線エピタキシーで成長した最適ドープNd1-xEuxNiO2(x=0.25)において、超伝導と共存する弱い磁気テクスチャを観測した。空間分解した帯磁率イメージングは著しく不均一な超伝導状態を明らかにし、相転移近傍で頑健なストライプ状の増強パターンが現れる。競合する磁気相が転移幅広化の主因であることを示唆し、この増強の理解がTc向上への道となりうる。

-2026/9/14--
Remarks on invertible phases with non-onsite symmetry
非オンサイト対称性に格子アノマリー指数が伴う場合の可逆相を論じる。格子アノマリーは通常、対称な短距離もつれ状態への障害と見なされるが、本研究は非SREな可逆相が許され、許容される相の集合自体がずれることを示す。(2+1)次元フェルミオン系Z4^F対称性で、c_-=1/2のp+ip超伝導体に厳密な準局所対称性を構成し、整数カイラル中心電荷が禁止されc_-∈Z+1/2へシフトすることを示した。フェルミオンパリティのゲージ化でZ4対称性に富むIsing位相秩序が得られ、融合2圏で記述される。

Real-space Visualization of Emergent Electron Crystals in Rhombohedral Graphene
菱面体6層グラフェンの電子結晶を走査トンネル顕微鏡・分光で実空間可視化した。弱電場かつ有限のホールドープ範囲で、ホール密度増加に伴い蜂の巣型から斜方型へ一次量子相転移する電子格子パターンを観測。準粒子干渉から得たフェルミ面は従来のネスティングでは説明できず、金属的輸送と低い結晶サイト密度から、キャリアの一部のみが結晶化する金属的電子結晶を支持する。蜂の巣相は多強性軌道磁性と同じ相空間を占め、金属的異常ホール結晶の可能性を示唆する。


Breakdown of Multipole Expansion in Emergent Electromagnetism
創発的電磁気学として記述される2次元格子模型群で、静電気学からの著しい逸脱を発見した。高次の多重極電荷配置が、より低次の多重極に特徴的な電場を誘起する。ハードコアダイマー模型とU(1)スピン1/2リンク模型の解析から、その起源が重ね合わせの原理の破れにあることを突き止めた。密な電荷配置では遠方場が線形予測に比べ非線形に抑制あるいは増強される。格子スケールのミクロな拘束が、長波長の有効連続体理論とは異なる遠方場挙動をもたらすことを示した。

Hierarchical Prototype Emergence in Modern Hopfield Models
階層的相関を持つ記憶を多項式活性化の密なHopfieldネットワークに格納する模型を解析した。階層の各レベルが局所的に安定(局所エネルギー極小)となる条件を解析的に導出。汎化の最小模型としてプロトタイプ再構成を用い、個別の記憶や階層内の特定グループを超えて汎化するのに準多項式量の情報しか要しないことを見出した。記憶数と活性化関数の鋭さ(多項式次数)に関する相図は、Fashion-MNISTの実データでも定性的に同様であった。

Selective coupling of coherent phonons to intertwined charge-orbital and magnetic orders in doped manganites
La1/4Pr3/8Ca3/8MnO3において時間分解X線回折と偏光分解超高速光反射率を組み合わせ、コヒーレントフォノンモードが異なる秩序相を選択的に追跡できることを示した。面内フォノン応答は主に電荷/軌道秩序に、c軸フォノン応答は磁気秩序に感度を持つ。さらに電荷/軌道秩序相のみを観測しても強磁性由来のヒステリシスが現れ、空間的に分離した両秩序相間の強いミクロな結合を示す。絡み合った電子・磁気ダイナミクスを時間領域で分離する道を開く。

Self-organisation in hard-soft granular mixtures
硬い粒子と柔らかい粒子の混合粉体の自己組織化を数値計算で調べ、接触ネットワークの最小ループである「セル」を構造記述子とした。等方圧縮下でセル統計は頑健な定性的特徴を示すが、粒子間摩擦μと軟粒子分率κに依存する。クアドロン面積分布はΓ型を保ち、最大エントロピーによるセル次数分布の予測は高次で不正確になる。規格化セル応力分布はμに依らずWeibull型のマスターカーブに収束し、セルは局所主応力方向に優先配向する。

Deterministic patterning and alignment of tellurium quantum wires using nanoscale templates
p型チャネル材料として注目される1次元半導体テルル(Te)について、従来困難だった原子鎖の配向制御とパターニングを実現した。理論に導かれ、ナノワイヤ形状のテンプレートを用いることでアモルファス基板上に配向した単結晶Teを成長させ、テンプレート幅を20nm以下にすると原子鎖が強く整列する。4D-STEMで確認された高い構造秩序により、77Kで1次元サブバンド由来の明瞭なコンダクタンスプラトー、1.7KでクーロンブロッケードをFETで観測した。


Emergent magnetism, heavy electrons and pressure-induced reentrant superconductivity in the iron substituted 4d transition-metal sulfides
d電子系ロジウム硫化物超伝導体Rh17S15に新奇な強磁性が出現し、平坦トポロジカルバンドと多体相関に由来する増強されたSommerfeld係数γを伴うことを報告する。RhサイトのFe置換で強磁性を制御でき、強磁性と反強磁性の競合によりスピングラス基底状態が生じる。x=0.67でγは312 mJ/mol K^2に達し、LiV2O4に次ぐ大きさである。加圧により超伝導は一旦抑制された後、高圧下でリエントラント超伝導が現れ、スピン揺らぎ媒介の非従来型超伝導を示唆する。


Revealing Hidden Inversion Symmetry Breaking in ZrTe$_5$ via Phonon-Assisted Heterodyne Amplification
従来は中心対称と見なされてきたZrTe5の隠れた空間反転対称性の破れを非線形光学分光で検出した。通常の第二高調波発生では平衡状態の信号が分離できないが、テラヘルツ電場誘起第二高調波発生(TFISH)がフォノン支援ヘテロダイン増幅を通じてこれを顕在化させる。コヒーレント励起した赤外活性フォノンが極微小なχ(2)の局部発振器として働く。変調の電場線形依存性からχ(2)は平衡感受率と判明し、室温まで持続するa軸方向のバルク極性歪みを同定した。


Observation of topological surface phonons in diamond with nonlinear optics
トポロジカルフォノン状態の決定的証拠である表面フォノンを、和周波分光という高感度な非線形光学手法によりダイヤモンドで観測した。硬度と熱輸送で知られるダイヤモンドが、バルクにトポロジカルなノーダルラインとネクサス三重点を持つフォノントポロジカル半金属であることを明らかにし、理論と実験の一致のもと(111)面と(100)面上のトポロジカル表面フォノンを解明した。さらに表面を化学修飾して乱れの効果も調べ、量子トポロジーと格子動力学を橋渡しする。


Chirality in Condensed Matter: Symmetry, Waves, and Quasiparticles
光学活性やカイラルフォノン、磁気励起、ハイブリッド準粒子まで広がる物性物理におけるカイラリティ概念のレビュー。角運動量・偏極・ヘリシティ・非相反性といった関連概念と混同され、対称性に基づく本来の意味が曖昧になっている現状を整理する。カイラリティは空間反転Pの破れと時間反転Tの保持に対応するが、普遍的な尺度は存在せず、系ごとに異なるP奇・T偶量が特定の現象を特徴づける。波・物質・準粒子間のカイラリティ選択的相互作用として理解すべきと論じる。


Tensor-network Monte Carlo approach based on time-evolving block decimation
時間発展ブロックデシメーション(TEBD)の圧縮手順に従ってユニタリ時間発展を扱うテンソルネットワーク・モンテカルロ(TNMC)法を提案する。特異値分解に基づく従来手法の打ち切り誤差と異なり、TNMCの結果は評価可能な統計誤差を持つため、有限のボンド次元でも統計誤差の範囲で不偏な期待値を推定できる。サンプリング導入により符号問題が生じうるが、ボンド次元の増大で緩和される。ハミルトニアン動力学とフロケ動力学に適用し、同じボンド次元のTEBDより高精度な期待値を得た。

Spin-polarized Superconductivity and High-Chern Insulators in Twisted Rhombohedral Graphene Family
ツイスト二層+多層の菱面体グラフェン(2+n、n=4,5,6)系で、スピン偏極超伝導と高Chern絶縁体が同時に広範囲で出現することを初めて報告する。超伝導状態は面内磁場に対し抑制・増強・誘起という異なる応答を示し、後二者はスピン三重項対形成と整合する。同時に、角度と層数に依存しChern数が可変な高Chern絶縁体が現れ、分数高Chern絶縁体は超伝導を誘起する強い面内磁場下でも生き残る。複数の共伝播カイラルMajoranaチャネルへの道を開く。


Efficient non-volatile electric control of magnetosensing in CrSBr
磁性2次元結晶CrSBrの磁気抵抗を不揮発に電気制御するデバイスを実証した。溶液プロセスで作製した強誘電体P(VDF-TrFE)層をCrSBrチャネル上に直接集積するという簡素な構造により、継続的なゲートバイアスなしにキャリア密度を所望の値に保持できる。広い温度範囲で磁気輸送応答を調べ、再現性が高く頑健なゲート依存性を示した。特に強誘電ゲートは従来のSiO2誘電体に比べ約1桁高いゲーティング効率を達成し、2次元磁性材料の電気制御における有用性を示す。

Nonequilibrium Quasiparticle Effects on Domain Wall Dynamics in Superconductors
二つの熱浴に接続された第二種超伝導体中の磁区壁(DW)の動力学を、超伝導秩序変数と非平衡準粒子分布を結合した動的変数として扱う一般化時間依存Ginzburg-Landau理論で解析した。熱バイアスは準粒子分布の境界条件として課される。数値計算と線形応答の双方でDWが高温側の境界へ動くことを示し、粘性力と秩序変数-非平衡分布結合に由来する力を同定した。非平衡分布は境界駆動成分とDW運動生成成分に厳密に分離され、前者が速度の符号を決める。

Cryogenic wafer probing below one Kelvin: Characterization of normal-metal Coulomb blockade thermometers at wafer scale
1K以下の温度計測需要の高まりを受け、クーロンブロッケード温度計(CBT)のウェハスケール極低温評価を実証した。CBTは校正不要な一次温度計としても、校正後の二次抵抗温度計としても動作する。従来のクライオスタットは測定サイクルが数日かかり試料数も限られ評価スループットの制約だった。300mm極低温ウェハプローバを用い、TiW/Al-AlOx/TiWトンネル接合技術の150mmウェハ全面で700mK以下の基板上電子温度を一次温度測定により確認した。

Magnetically activated optical visibility of many-body excitons in NiPS$_3$
層状ファンデルワールス磁性体NiPS3の反強磁性相で約1.47 eVに現れる極めて鋭い多体励起子共鳴の光学的可視性を説明した。従来の理論は局所基底状態とこの励起子をともに偶パリティのスピン三重項・一重項と割り当てたが、それではスピンとパリティの選択則により一光子遷移が禁止され観測を説明できない。群論解析と単・二クラスター模型の厳密対角化により、ジグザグ反強磁性秩序が関連する対称性を破り禁制遷移を活性化することを示した。三方晶歪みとクラスター間交換も寄与する。

Direct observation of reversible ionic polarization at a buried solid-state battery interface
全固体電池の埋もれた固体-固体界面が本質的なイオン可逆性を持つかを実験的に解明した。アモルファスLiCoO2/Li1.5Al0.5Ge1.5P3O12電解質界面に対し、飛行時間測定とナノメートル分解能を持つ弾性反跳検出分析(ERDA)と、リチウムを絶対定量する中性子深さ分析(NDP)を組み合わせた。±1 Vの印加で界面領域のリチウムの約9.3%が総量を保ちつつ可逆的に再分布し、極性反転で完全に元に戻る。埋もれた界面が電気的に再構成可能なイオン領域として振る舞うことを示す。

Fluctuation-induced antiparallel spin polarization near the boundaries of chiral metals
カイラル導体の非平衡電気揺らぎに対するスピン応答を理論的に調べた。ヘッジホッグ型スピン軌道結合を持つカイラル金属について、不純物散乱を緩和時間近似を超えて扱い、Gaussの法則と結合した低周波の準古典Boltzmann理論を構築する。局所交流電流への二次応答とその周波数依存性を求め、平均ゼロの定常的な電流・電場揺らぎが境界近傍の二領域で有限の時間平均スピン偏極を生むことを示した。偏極は境界に垂直で互いに反平行であり、無バイアス下のCISS関連偏極を説明しうる。

In-plane anomalous and third-harmonic Hall response in an easy-plane trigonal magnet
磁気異方性の制御により、易面型三方晶磁性系で面内異常ホール効果(IPAHE)と顕著な第三高調波ホール応答が出現することを報告する。角度依存ホール測定は従来の正弦的振る舞いからの明確な逸脱を示し、高磁場下で強いsin(3θ)成分が現れ、異方性を弱めるほど増大するとともに有限の面内ホール信号を伴う。非線形ホール信号は磁場の三乗依存性を示し、横伝導度への三次寄与が主要であることを示す。異方性・結晶対称性・高次ホール応答を直接結びつける。

Ultrastrong Au-Te bonding drives disorder in monolayer ZrTe$_5$ on gold
大ギャップ量子スピンホール相が予測される単層ZrTe5を金支援剥離で作製すると、強いTe-Au結合が層内の結合ネットワークと競合する。多数の試料に対する低温STM観察では、単層表面は圧倒的多数で乱れており、厚い試料では特徴的な準一次元鎖構造が保たれた。第一原理計算はこの非対称性を再現し、金に面したTeが化学吸着してZrTe3鎖を架橋する弱いジグザグTe-Te結合を切断する機構を明らかにした。化学吸着と乱れはいずれも予測された量子スピンホール相を阻害する。

Density-matrix quantum kinetics of spin-mode crossover and ac Edelstein response in spin--orbit-coupled chiral metals
ヘッジホッグ型スピン軌道結合(SOC)と非磁性不純物散乱を持つ3次元等方カイラル金属に対し、密度行列量子運動論を定式化した。バンド間コヒーレンスを保持し、衝突項は不純物散乱中の電荷・エネルギー・スピンを保存する。弱SOCでの長寿命D'yakonov-Perel'緩和モードと二つの強減衰歳差モードから、強SOCでの一つの緩和モードと二つのコヒーレント歳差モードへ連続的に移行する三つのスピンモードを同定。交流Edelstein感受率の極がこれらと一致しOnsager相反性も確認した。

Mesoscale Crystallographic Helicity in Confined Tellurium Quantum Wires
アモルファス基板上にテンプレート成長したテルル量子ワイヤにおいて、長距離の結晶学的ヘリシティを直接観測し定量評価した。4D-STEMによりナノメートル分解能で結晶方位を定量マッピングし、連続的なメソスケール格子ねじれを確認した。方位と歪みの相関マッピングは顕著な横方向歪み不均一性を示し、ワイヤ内部に圧縮歪みが集中する。高いねじれ率は弱い横圧縮歪み・細いワイヤ・良好な原子鎖整列と対応し、第一原理計算も含め歪みが優先ねじれ状態を偏らせる描像を支持する。

Visualizing Chiral Edge Modes in Twisted Cuprate Superconductors via Scanning-Probe Quantum Sensing
ツイストした銅酸化物超伝導体のナノスケール電磁応答を走査プローブ量子センシングで調べた。単一スピン緩和測定により、ツイストBi2Sr2CaCu2O8+x(BSCCO)に自発的に形成されるエッジモードを直接可視化した。エッジ状態が誘起する量子スピン緩和の温度依存変化から、ノーダル点に開くトポロジカルバンドギャップの大きさと、ツイスト角ごとの臨界温度挙動を実験的に評価した。さらにエッジモードが画定する交互カイラルドメインと、45°ツイストでの面内磁場誘起トポロジーの兆候を観測した。


Laser-induced metastable (anti-)skyrmion states with higher-order topological charge
トポロジカルに非自明なスピン構造の超高速生成と操作はスピントロニクス応用に大きな可能性を持つ。本研究では、本来スキルミオン基底状態を持たないCo/Ni多層膜の飽和磁化状態から、レーザー照射によってトポロジカル電荷が|Q|=3に達するスキルミオンおよび反スキルミオンを核形成させることを実証した。得られたスピン構造の配置は準安定で熱力学的に隠れた磁気状態を成す。生成されるスピン構造の個数と種類は、励起フルエンスと外部面直磁場によって制御できる。

-2026/9/11--
Generating is not discovering: a pre-registered physics judge for AI-proposed superconductors, calibrated on six known superconductors and one negative control
生成モデルが提案する「安定な」結晶構造は膨大だが、安定性は発見ではない。本研究は構造のみから超伝導のギャップ対称性と製造可能性を判定する物理審査系(DFT+U、Wannier模型、RPA帯磁率、線形化ギャップ方程式、既約表現分類、製造性フィルタ)を構築。事前登録した答え合わせでNb、Nb3Sn、MgB2、鉄系、銅酸化物の6物質を正しく再現し、Ru類似体では帰無判定を返した。MatterGenの1,248構造から新規かつ安定で対形成機構を持つ候補は0件で、生成は既知の再発見にとどまり、判定こそが律速だと結論づけている。

Consensus in Effective Model Inference for Disordered Ising Systems
同じ乱れた系のデータから独立に学習した複数の学習器が、有限かつノイズを含む標本ゆえに異なる物理描像に至る問題を「コンセンサス(合意度)」として定量化。2次元ランダムボンドIsing模型の教師-生徒枠組みで、生徒が一様な有効結合を推定する。合意分布の分散は、Fisher情報量で下限が決まる有限標本寄与と、クエンチ乱れ寄与に厳密に分離でき、その和は臨界領域近傍で最小となる。ただし一様結合で不均一格子を近似する誤設定バイアスにより、最も意見が一致する温度と最も正確な温度は一致しない。

Hyperspin Ferromagnets
交代磁性体(AM)の同定にはk空間でのスピン量子数が鍵となるが、自然界に豊富な非共線磁性体は明確なスピン量子数を欠き、複雑なスピンテクスチャがスピントロニクス応用を阻んでいた。本研究は高次元空間に住む「ハイパースピン」を提案。ある種の非共線磁性体ではスピンとハミルトニアンの交換関係を解析すると、通常のスピンではなくハイパースピンがハミルトニアンと可換であることを示した。これらは共線AM同様にk空間で共線的なスピン分裂バンドを示し、ハイパースピン・アルターマグネット(HAM)として分類される。

Measuring chiral phonons
カイラルフォノンは固体中の原子運動が非固有回転対称性を破る量子化振動で、多くの場合に角運動量を持ち円偏光に選択的に応答する。スピントロニクス、スピン選択的化学反応、熱輸送、量子情報処理、バイオセンシングなど多分野で注目され、双方向のスピン-格子結合が新機能をもたらす可能性がある。これまで各分野で独立に研究が進んできたが実験手法は相互に関連する。本展望論文はカイラル・アキラル物質におけるカイラルフォノン測定の現行手法の長所と短所を詳述し、新手法も議論して体系的研究の実験指針を提供する。


Silicon Solar Cell Design for >30% Efficiency via Singlet Fission
一重項分裂(SF)材料は高エネルギー光子を複数の電荷キャリアへ変換し、多接合タンデムの複雑さを避けつつ単接合シリコン太陽電池の効率限界を超える道を開く。2025年のSF増強シリコンセル初実証を受け、本研究は光学・電気結合シミュレーションにより産業的に重要な複数のセル構造とSF材料の組合せの効率ポテンシャルを評価。裏面電極(IBC)型が前面を自由に使えるため最も有望で33%超の効率が可能だが、前面パッシベーション品質に極めて敏感である。表面ドーピングと界面固定電荷の制御が再結合損失を緩和し、超薄励起子移動層への要求を緩められる。

A substrate booster for P-type 2D ferromagnetic semiconductor
電界で電荷とスピンの両方を制御するスピントランジスタは有望だが、基盤となる磁性半導体が極めて希少で、既存の希薄磁性半導体や2次元強磁性半導体はゲート可変性が不十分だった。本研究は数層Cr2Ge2Te6を反強磁性絶縁体CrOClと接合する基板エンジニアリングを提示。界面電荷移行結合により両極性半導体から高性能P型半導体へ劇的に転換する。キュリー温度以下でON/OFF比は10^5に達し、保磁力は200%以上可変で、ゲート支援磁化反転を実現した。界面電荷移行と電気的な磁気異方性制御が今後のスピントロニクス素子開発の有力な指針となる。

Interplay of spin-lattice and electronic coupling far above Neel ordering in 2D antiferromagnetic CrPS4 and its interface manifestation
層状ファンデルワールス反強磁性体CrPS4で、ネール温度(約38K)をはるかに超える温度域に、短距離スピン相関に駆動されたスピン-フォノン-電子の強結合状態を同定した。温度依存ラマン分光はT*~120Kまでスピン-フォノン結合が持続し、局所格子歪みを伴うことを示す。発光スペクトルの振電進行は電子-フォノン結合がT*付近で強まることを示唆し、電気伝導と光電応答もT*で顕著に変化する。さらにCrPS4/In2Se3ヘテロ構造では隣接In2Se3の格子ダイナミクスも変調され、人工ヘテロ構造での相関多機能性の可能性を開く。

Optically induced metallic state with persistent monoclinic symmetry in NdNiO$_3$
非平衡下で電子秩序と構造秩序が結合したままかは相関物質の中心的課題である。本研究はNdNiO3の光誘起絶縁体-金属転移について、時間分解光学反射率と対称性に敏感な第二高調波発生で金属性と対称性を同時追跡した。金属的反射率は、高温相の斜方晶対称性が回復するよりも著しく低い励起フルエンスで現れる。その結果、金属相の反射率と絶縁相の単斜晶対称性を併せ持つ準安定状態、すなわち光誘起単斜晶金属が安定化される。金属性と構造対称性の非平衡的な脱結合を実証し、同時多重プローブ分光の有効性を示した。

Vacancy Order and Physical Properties of a Ternary Compound Fe0.68Pd0.80Te with an α-Fe1+xTe-Type Structure
α-Fe1+xTe型構造をもつ新物質Fe0.68Pd0.80Teを同定し特性評価した。Fe1+xTeのFe正方格子と少量の格子間Feとは異なり、本物質はPd正方格子と約68%占有の格子間Feサイトを特徴とする。非接触原子間力顕微鏡とX線回折から、この層状物質に3×3×3のPd空孔秩序が存在する証拠を得た。磁性測定によりTg~40K以下でスピングラス基底状態が同定された。電気輸送測定からは10meV以下の非常に小さいバンドギャップをもつ半導体であり、弱い負の磁気抵抗と室温以下でホール的キャリアを示す。多様な量子現象探索の舞台となりうる。

A Community-Developed Domain Ontology for Magnetic Materials
磁性材料はエネルギー技術や移動体、センシングで重要だが、複雑なマルチスケール挙動と複数の単位系の併存がデータ交換と解釈を困難にしている。本論文はEU出資のMaMMoSプロジェクトで開発され、EMMOに整合した磁性材料ドメインオントロジーを提示する。固有特性、ヒステリシス特性、微細組織特性を複数の長さスケールで形式化し、シミュレーションツール・データベース・実験ワークフロー間の意味的相互運用性を支える。EMMOntoPyによりコードベースで可読な構造をとり、不透明なowl/ttlファイルに依存せず版管理できる点が特徴で、FAIR原則に対応し公開されている。

Skyrmion nucleus resolves the Landauer paradox
ランダウアーのパラドックスは、理想的な単一ドメイン強誘電体では3次元の反転核が過大な減極エネルギーを伴うため速度論的に分極反転できず、非現実的に大きな抗電場が必要になると主張する。本研究は大規模分子動力学により、欠陥のないPbTiO3では真性の臨界核が3次元極性スキルミオンであることを明らかにした。連続的な分極回転とNéel型境界壁が束縛電荷を自己補償し減極エネルギーを桁違いに抑え、抗電場が実験値と一致する。さらに60年来のJanovec-Kay-Dunn則を覆し、膜厚依存の抗電場則を解析的に導出した。


Out-of-equilibrium relaxation dynamics of the superconducting order parameter in CsV$_3$Sb$_5$
時間変化するひずみ場は超伝導秩序変数を非平衡へ駆動し、その緩和はギャップ構造と準粒子散乱の性質に依存する。本研究はカゴメ超伝導体CsV3Sb5の超伝導状態内部に超音波吸収ピークを発見した。これはTc近傍で秩序変数の緩和時間が超音波駆動周波数と一致することの自然な帰結である。ピークの周波数依存性から微視的散乱時間τN=25 psを抽出した。これは抵抗率から求まる弾性散乱時間より2桁長く、熱輸送から得られる非弾性散乱時間に匹敵する。弾性散乱が凝縮体を緩和しないことを意味し、アンダーソン定理に従う符号保存のs波状態と整合する。


Hilbert-space selected switch of helical edges in an artificial quantum Hall insulator
量子ホール効果は1次元のトポロジカル保護端状態を持つが、ランダウ準位トポロジーを人為的に再構成することは実験的に困難だった。本研究はCrOClと大角度ねじれ二層グラフェンの界面電荷移行により、各層の独立なディラック・ランダウ準位梯子をずらし、新たな複合充填配置列を作り出した。電荷中性点の(+2,-2)状態は零次ランダウ準位のみを含み完全絶縁化してGΩ級の縦抵抗を示す一方、(+6,-6)や(+10,-10)は逆向き伝播のヘリカル端チャネルを保ち局所応答の50%に達する非局所輸送を示す。波動関数選択的な端状態制御の道を開く。

Sub-cycle doublon-holon dynamics in one-dimensional Mott insulators revealed by two-color high-harmonic spectroscopy
固体高次高調波分光は非平衡多体ダイナミクスの新しい探針となりつつあるが、高調波発生中の相関物質における光サイクル以下の強駆動ダイナミクスの直接測定はほとんど未開拓だった。本研究は典型的な1次元モット絶縁体で高次高調波のチャープを測定し、光サイクル以下の時間スケールにおけるダブロン-ホロンのダイナミクスを読み取った。バンドギャップ以上の高調波では正のチャープが観測され、高調波がダブロン-ホロン再結合に支配されることを示す。さらに高調波次数依存の位相緩和は各次数に対応する遠足距離の違いで理解でき、フロッケ工学などにも関連する。


High-Temperature ferromagnetism from site-selective filling in (Fe,Ni)$_{6-δ}$GeTe$_2$
金属的ファンデルワールス磁性体FeNGeTe2の高温強磁性は2次元磁性を実用温度域へ引き上げた。特にN=5ではNi置換による磁気モーメント希釈が逆に478Kという最高のキュリー温度をもたらす。本研究は構造と電子状態の同時評価により、この高Tc相がひずみで安定化されたFe6GeTe2ナノ析出物に由来すると同定した。第一原理計算とスピン・角度分解光電子分光から、内側のFeが局在モーメントを担い、Te層に隣接する外側のFeがvdWギャップを越えるスピン偏極遍歴キャリアを生むサイト選択的な電子構造を解明。均一Ni置換の高いエネルギーコストが清浄な高Tc相の自発析出を促す。

Sparse data limit what a mechanistic corrosion model can predict
機構論的腐食モデルは4~6個のパラメータを少数の測定に当てはめ供用寿命まで外挿されるが、データがそれらを決定できているかは滅多に検証されない。本研究は沸騰水型炉模擬水中のNb安定化AISI 347上の二層酸化皮膜について、3つの暴露時間の深さプロファイルから縮約点欠陥モデルを微分可能な逆解析で同定した。プロファイル尤度、1000回のブートストラップ、事前分布緩和試験のいずれも、5個中1個のパラメータが未決定、もう1個も弱くしか決まらず、適合度の95%が3点のクロムデータに依存すると示す。10年後の予測は経験的べき則から3.5~6.3倍乖離する。


Low temperature thermodynamics of $S_{\mathrm{eff}}=1/2$ triangular lattice quantum spin liquid candidate TlYbS$_2$
幾何学的フラストレーションをもつ三角格子反強磁性体は磁気秩序と量子スピン液体(QSL)が拮抗し、Yb系デラフォサイトAYbX2は清浄な研究舞台を与える。本研究は単結晶TlYbS2を直流磁化、交流帯磁率、電子スピン共鳴、比熱でミリケルビン域まで調べた。単結晶X線回折はサイト無秩序のない三方晶R-3m構造を確認。零磁場で約530mKに弱い熱力学的異常が現れ、300mK以下の磁気比熱はC∝T^1.8とほぼ2乗則に従い、姉妹物質TlYbSe2の線形依存性と対照的である。強い面内異方性を示し、磁場中では1/3磁化プラトーなど一連の磁場誘起相が現れる。

Effective Ionic Valence and Local Magnetic Moment in Kagome Superconductors
カゴメ超伝導体AV3Sb5(A=K,Rb,Cs)とATi3Bi5(A=Rb,Cs)の予想外の類似性と相関的挙動を理解するため、これらのハートリー・スケールの局所電子構造を調べた。その結果VイオンとTiイオンはともに2+価であり遍歴キャリア密度が同程度で、電子数の違いは量子ゆらぐイオン磁気モーメントに反映されることが分かった。ただし格子のフラストレーションのため通常の手法では局所モーメントの観測が難しい。非磁性Sn不純物を導入して局所的にフラストレーションを解くと、磁化率とμSRで明確な局所モーメントが確認され、遍歴キャリアのみの描像から強相関を含む描像への転換を促す。

-2026/9/10--
Tuning Charge Density Wave transitions through lattice strain in NbSe3
擬一次元電荷密度波(CDW)物質NbSe3に対し、鎖軸bに平行および垂直な引張応力を加え、X線回折と輸送測定を組み合わせて格子構造とCDW特性の変化を調べた。格子は特異なポアソン比と強い異方性を持つヤング率を示し、電気抵抗の変化から2つのCDW転移温度(145K、59K)がいずれも格子定数と強く相関してシフトすることが判明した。2つのCDW転移は応力下で異なる挙動を示し、バンド曲率の変化が観測された輸送応答をもたらすことが示唆される。

Quantum Phase Transitions and Fractional Quantized Anomalous Hall Insulators in Rhombohedral Graphene
菱面体5層グラフェン/hBNモアレ超格子で系統的な抵抗測定を行い、変位電場Dが駆動する量子相転移を調べた。複合フェルミ液体、フェルミ液体、分数チャーン絶縁体、絶縁状態の間の転移が、縦・横抵抗率(伝導率)の半円則で記述されることを見出した。これは空間的に分離した二相描像と整合し、新たな絶縁相「分数量子化異常ホール絶縁体」の存在を示唆する。熱活性化模型との比較から3つの分数チャーン絶縁体状態の輸送ギャップを見積もった。


Temperature-induced effective topology in many-body ultracold atomic quantum systems
冷却原子系の温度制御性が、絶対零度には対応物のない実効的トポロジカル領域を作る資源になることを示した。有限温度行列積状態計算により、相互作用するボース粒子SSH模型、スピン1 XXZ鎖、さらに基底状態にトポロジカル秩序を持たないフェルミオン双極子ラダー模型を調べた。有限サイズ系では大きさの異なる励起ギャップが中間温度窓を規定し、小さいギャップに伴う相関が抑制される一方で大きいギャップが守る相関は残存する。これが実効的な有限温度トポロジカル相を生む。

Light-Driven Ultrafast Control of Time-Reversal Symmetry in SrTiO3
非共鳴の楕円偏光THzパルスにより、立方晶SrTiO3で磁気対称性の低下と時間反転対称性の破れを同時に実現した。第二高調波発生(SHG)偏光測定では、立方晶m3m対称性下の三次非線形過程では説明できないSHG円二色性が出現し、SHG極パターンの鏡映対称性の破れは正方晶4/mm'm'磁気対称性への過渡的低下を示す。さらにSHG応答がTHzパルスの角運動量に線形比例することが、THz電場誘起の時間反転対称性の破れの直接的証拠となる。

Eight-unit-cell electronic modulations in cuprates originating from local molecular orbitals
8単位胞(8a0)周期の対密度波(PDW)は銅酸化物の主要秩序と広く見なされてきたが、その存在と起源は議論が続いていた。分光イメージングSTMにより、ホールドープCa2CuO2Cl2の超伝導領域と絶縁領域の双方で約8a0周期の電子状態変調を観測した。この8a0パターンはドープされたホールが作る分子軌道に由来し、4a0×4a0のプラケットを基本単位として組織化される。4a0分子軌道こそが銅酸化物の基本的電子構成要素であり、8a0 PDWは高ドープ域で現れる空間的分数調波である。

Renewal process's guide to fractional Navier-Stokes equations
ミレニアム問題の一つであるナビエ・ストークス方程式に対し、ヒルベルトが提唱した微視的力学と巨視的連続体方程式を結ぶ道筋を追究した。任意分布の待ち時間を持つ衝突再生過程を用いて、粒子の速度と変位の確率の時間発展に対するボルツマン方程式を導出。待ち時間が指数分布の再生過程は古典的ナビエ・ストークス方程式と等価であり、べき則分布の場合は分数階ナビエ・ストークス方程式と等価であることを証明した。軌道の確率シミュレーションによる解法が可能となる。

Anomalous Hall Response Induced by Correlated Disorder in the Breathing Kagome Lattice Mn3Sn
カゴメ反強磁性ワイル半金属Mn3Snでは、平均結晶構造と共面逆三角磁気秩序により異常ホール伝導度σyxは禁止されるとされてきた。しかし本研究は、ほぼ化学量論組成のMn3SnがTN1≈440K以下の逆三角相で大きなヒステリシスを伴う有限のσyxを示し、TN2≈280K以下の振幅変調円錐相では全AHE成分が消失することを報告する。全散乱・磁気PDF解析は相関した斜方晶歪みと非共面Mnモーメントを明らかにし、相関無秩序が対称性を破る能動的自由度であることを確立した。

A discrete Stiefel-Whitney invariant with twofold rotation symmetry
シュティーフェル・ホイットニー不変量を概観し、2回回転対称性と時間反転対称性を持つ2次元スピンフル絶縁体(層群p1121')に対する追加のZ2不変量の離散的定式化を与える。特異ゲージ変換によりブリルアントーラスの商上に実バンドルが定まり、その第二シュティーフェル・ホイットニー数が不変量を定義する。補助ゲージ関数の選択への依存性を導出し、ブロッホフレームの変更に対する不変性と直和に対する加法性を証明。3つの量子化Z2部分分極と占有数と合わせ、安定分類Z⊕Z2^4を標識する。

Record-Breaking Elemental Superconductivity in Tetralayer Kagome Borophene
第一原理計算と完全異方的Migdal-Eliashberg理論により、ABAB共有結合積層で安定化される4層カゴメボロフェン(TKB)が液体窒素温度超伝導体になると予測した。予測転移温度102Kは既報の元素超伝導体で最高値である。面内σ結合状態と高周波B-B伸縮モードが支配する既知の高Tcホウ素系超伝導体とは異なり、TKBは面直s-pz結合を介した対形成機構を実現し、フェルミ準位の層間s-pz結合状態が低周波の面直振動と強く結合する。共有結合積層工学が高Tc実現の道筋となる。

Facile hBN-hBN Interfacial Overlap Engineering for Enhanced Quantum Emitter Formation
hBN中の量子エミッタは量子技術の有望な基盤だが、光学的品質を保ちつつ所定位置に高密度で形成することが課題であった。本研究は簡便かつ低コストな二層全乾式転写法により、hBNフレーク間の重なり領域を決定論的に作製した。この被覆領域ではエミッタ密度が非被覆領域比で最大15倍に増加した。しかも品質は損なわれず、高い信号対背景比・信号対雑音比、大きなDebye-Waller因子、高輝度、優れたスペクトル安定性を示す。拡張性ある量子フォトニクス基盤への実装に道を開く。

Semi-Dirac States and Quantum Linear Magnetoresistance in Helimagnetic Pnictide MnP
複数の磁場誘起磁気転移を持つらせん磁性体MnP単結晶で、相依存磁気輸送を実験と理論の両面から包括的に調べた。ホール測定は高温での歪散乱由来の異常ホール効果と、非共線的なファン(FAN)相および低温スクリュー(SCR)相での有限のトポロジカルホール効果を明らかにした。低温では4K・15Tで約800%に達する非飽和の大きな線形正磁気抵抗を観測。第一原理計算はY点の強異方的半ディラック的バンドを示し、小さなフェルミポケットが量子極限に到達することで説明される。

Dimensional Control of Excitonic Interactions in Exfoliated 2D Molecular Crystals
分子結晶では結晶秩序を保ちつつ原子スケールで膜厚を制御することが難しく、次元性による励起状態制御の実現が限られていた。本研究はテトラセンを含む4種の分子結晶が結晶秩序を保ったまま単層・数層・多層フレークに機械的剥離できることを示した。膜厚依存スペクトルから、薄くなるにつれてダビドフ分裂が減少し、ストークスシフトが増大し、より非局在的な励起子の兆候が現れることが判明。電子回折と励起子モデル解析により分子充填、分子間結合、誘電遮蔽の変化と対応づけた。

Observation of Magnetic-Anisotropy Crossover and High-Temperature Skyrmions in the Dirac Magnet Fe3Ge with a Distorted Kagome Lattice
高いキュリー温度約650Kを持つディラック・カゴメ磁性体Fe3Geで、頑健なスカーミオンの観測を報告する。室温で非自明なバンドトポロジー由来の大きな固有異常ホール伝導度約380Ω^-1cm^-1を示す。磁化測定は約375Kでのスピン再配列転移を明らかにし、易面から易軸磁気異方性へのクロスオーバーを示す。この温度以下では微視的非共面スピン構造による大きなトポロジカルホール効果が現れ、ローレンツTEMは375〜650Kという極めて広い温度域でスカーミオンが安定化することを示した。

広くね???


Fast, Accurate, and Scalable Fermionic Neural Networks via Translation Equivariance
ニューラル量子状態をハミルトニアンの対称性の厳密な固有状態として設計することで、学習速度と最終的な変分エネルギーが大きく改善することを示した。2次元電子ガスに対し、全運動量の厳密な固有状態であるニューラルネットワーク波動関数TorFormerを設計。教師なしでフェルミ液体とウィグナー結晶の双方を記述し、大規模系までPsiformer系の参照値を大きく上回る。rs=40.0・N=91でマーデルング項を除いたエネルギー改善は0.12%で、相を隔てる微小差と比べて極めて大きい。

A First-Principles Multiscale Framework for Topological Superconductivity
実材料のトポロジカル超伝導(TSC)理解に向け、密度汎関数理論、Wannier低エネルギーハミルトニアン、Bogoliubov-de Gennes理論、松原グリーン関数によるチャーン数計算を統合した枠組みを構築した。バルク的・単層FeTeSeとFeSe/GaAsヘテロ構造に適用し、内在的および近接効果誘起TSCを統一的に調べた。フェルミ準位近傍のRashba活性状態、強い誘起対形成、軌道混成が頑健なTSCの鍵と特定。FeSe/GaAsが特に有望で、実験的に到達可能な化学ポテンシャルと低ゼーマン場で転移を示す。

WannierNLQG: A Julia package for nonlinear optical responses and quantum geometry from Wannier tight-binding models
Wannier強結合模型から非線形光学応答と量子幾何量を計算する拡張可能なJuliaフレームワークWannierNLQGを紹介する。ゲージ整合的かつ縮退に対応した設計により、任意次数の摂動応答と量子幾何量を扱える。現行版は通常・スピン・光子ドラッグの注入電流とシフト電流をブリルアンゾーン積分およびkスライス上で評価する。シフト電流には従来法、射影子トレース、一般化ウィルソンループ、有限運動量幾何ループの4形式を統一インターフェースで提供。GeSと2層MoS2の実例を収録する。

Overcoming Transport Layer Bottlenecks to Quantify Ionic Parameters from Transient Ion Current Measurements of Perovskite Solar Cells
ペロブスカイト太陽電池の過渡イオン電流(TIC/BACE)測定では、実験で得られるイオン密度がドリフト拡散シミュレーションの飽和限界を桁違いに超えることが多い。本研究は輸送層(TL)の静電容量が本質的なボトルネックであり、定量可能なイオン密度がペロブスカイト/TL界面に蓄積できる電荷量で制限されることを明らかにした。C60厚とSpiro-OMeTADドーピングを系統的に変えた実験で確認し、TL厚の傾向をTLなしの状況へ外挿することで真のイオン伝導度が得られることを示した。

Hydrodynamic magnetotransport in a GaAs Corbino geometry
高移動度GaAsコルビノ素子で正の磁気抵抗を観測した。広い中間温度域で抵抗は垂直磁場に対し二次依存性を示す。電流透過性接点に適した有限すべり境界条件を含め、拡散的領域と粘性的領域のクロスオーバーを記述するコルビノ配置の流体力学的磁気輸送理論でデータを解析した。抽出された緩和率は電子間散乱寄与の約T^2温度依存性と整合し、粘性緩和パラメータはホールバー測定の結果と一致する。コルビノ磁気輸送が粘性電子流のバルク敏感な相補的プローブとなることを示す。

-2026/9/9--
A magneto-mechanical gyroscope with spintronic readout
磁気トンネル接合(MTJ)の整流機能を読み出し機構かつ機械ダイナミクスのトランスデューサとして利用する、MEMS型2自由度ジャイロスコープを提案した。実測MTJ特性で較正し、マイクロマグネティクス理論と2自由度力学方程式を組み合わせたモデルを構築。出力が角速度に対し線形であり、ホモダイン復調により動的条件下でも角速度を抽出できることを示した。微細な容量ギャップに依存しないCMOS互換の小型読み出し経路を拓く。

Ultrafast electron crystallography reveals the atomic pathway of a light-driven correlated insulator-to-metal transition
超高速三次元電子回折を導入し、VO2の光誘起絶縁体-金属転移における過渡的な単位胞とV・O原子座標を精密化した。V-V二量化とジグザグ運動が明らかになり、原子座標は実空間で線形軌道をたどることが判明。従来の間接観測から推定された非線形・逐次的経路とは対照的である。量子多体計算により、二量化が電子ギャップを生む準位分裂を作り、非局所相互作用がこれを増強することを示した。

Extended strange metal regime in a pure nematic quantum critical superconductor
強パルス磁場を用い、非磁性FeSe1-xTexの超伝導ドーム下に隠れた異常金属基底状態を明らかにした。この系は純粋な電子ネマティック量子臨界点を持つが、臨界扇形領域ではなく広い組成範囲にストレンジメタル性が広がる。よりクリーンなFeSe1-xSxとは対照的で、乱れによるネマティック揺らぎの空間的ランダム性が臨界領域を拡張したと考えられる。非磁性ネマティック揺らぎが対形成を強化することを示唆する。

この研究自体は面白いんだが、PureなFeTeが超伝導だ説を考慮すると、この物質ってほんとにクリーンなのか?


Large Nernst effect in chemically derived multilayer graphene at millitesla magnetic fields
化学的手法で作製した多層グラフェン膜において、低磁場での大きな横方向熱起電力を観測した。走査型レーザー加熱により、B*≈4 mT・常温でネルンスト起電力が縦方向熱起電力に匹敵することを見出した。横方向ゼーベック係数はB*で約10 μV/K、315 mTでは250 μV/Kまで準線形に増大する。ホールプローブでの測定により信号がさらに増大し、大面積多層グラフェンの熱電発電への可能性を示した。

カラースケール揃えてよ


Microscopic calculation of coherence lengths and magnetic penetration depth in multiband superconductors
転移温度より十分低温での超伝導コヒーレンス長と磁場侵入長を計算する拡張ギンツブルグ-ランダウ(GL)法を提案した。従来のGL理論と異なり、共変勾配項のみを摂動展開し、秩序変数への完全な依存性を保持する。係数は小さな対運動量下での微視的自由エネルギーの差分から決定する。単バンド・多バンド超伝導体の双方に適用でき、実空間BdG計算と広い温度範囲で良く一致しつつ計算コストが大幅に低い。

Altermagnetism from the viewpoint of chemistry
強磁性体と反強磁性体の特徴を併せ持つ新しい磁性体クラスである交代磁性体を、化学の視点からレビューした。対称性、軌道性格、電子構造のシグネチャーといった基礎概念を導入し、アルターマグネット性が確認された多様な物質群を配位環境や構造-物性相関に注目して概観する。実験的characterization手法、対称性・結合の制約を活用した第一原理材料探索、強誘電性や超伝導との結合による応用可能性と課題を論じる。


Near-Field Spin Seebeck Effect
近接場熱放射により駆動される、光子媒介型のスピンゼーベック効果を提唱した。真空ギャップを介して熱放射体から隔てられた単層遷移金属ダイカルコゲナイドにおいて、ラシュバスピン軌道相互作用が光学的軌道励起を電子スピン偏極に変換することを示す。これはキラル熱光子からの角運動量の直接移行と、磁化された二次元電子ガスによる無偏極熱揺らぎの整流という二つの機構で生じる。ナノスケールのスピン操作への放射的経路を開く。

NMR evidence of pressure-induced structural transition and enhanced spin fluctuations up to 14 GPa in SrCu2(BO3)2
磁気フラストレーション系であるShastry-Sutherland化合物SrCu2(BO3)2に対し、14 GPaまでの高圧11B NMR測定を行った。スペクトルは二つの圧力誘起単斜晶相の存在を示す。4 GPa以上・10 K以下ではスペクトルの急速な広がりと1/T1のべき則挙動から、ギャップレスな三次元反強磁性相の証拠が得られた。20 K付近では磁場依存の線分裂が二次元短距離秩序相を、30 K以上では相関のある常磁性領域を示す。

Superfluidity in active quantum flocks
アクティブ量子物質のフロッキング相が超流動になりうるという新たな量子秩序の層を明らかにした。指向運動に伴う対称性の破れに加え、さらにU(1)対称性を破って非対角長距離秩序を生じる。リンドブラッド動力学に従うアクティブ硬芯ボソンの微視的模型について、一粒子密度行列の有効長波長記述を導出し、フロッキング相が超流動に特徴的な非対角長距離秩序へ不安定化することを示した。非平衡量子相の新たな探索方向を示す。

Emergent Chiral Metal Phase in Compressible Quantum Hall Fluids
充填率νの圧縮性量子ホール流体に接続した無反射コンタクト間の透過コンダクタンスを測定し、その総和が普遍的にホールコンダクタンスν(e^2/h)に近づくことを見出した。この総和則は整数・分数量子ホール領域を通じ、温度、試料形状、材料品質、準粒子相互作用に依らず成立する。フローティングコンタクト測定でキラル輸送を確認。縦抵抗はバルク散逸ではなくコンタクトでの電気化学ポテンシャル平衡化に由来すると論じる。

Discovery of Superconductivity in a Bulk Moire Superlattice Material
格子不整合により結晶全体にコヒーレントなモアレ超格子が生じるバルクモアレ物質(Sr6TaS8)1+x(TaS2)8の単結晶において、常圧下でのバルク超伝導を報告した。電気伝導、磁化率、比熱の測定によりTc = 2.5 Kの超伝導転移が単結晶・多結晶の双方で一貫して確認された。また270 K付近に電荷密度波転移を示唆する顕著な異常を観測。バルクモアレ結晶が相関量子現象の有望な舞台であることを示す。

抵抗マイナスワロタ



Ginzburg-Landau Theory for Non-Invertible Symmetry-Breaking Transitions
一般化されたランダウのパラダイムでは、従来の枠組みを超える非従来型相転移が一般化対称性の破れとして理解される。本論文ではギンツブルグ-ランダウの哲学に従い、非可逆対称性の局所秩序変数の揺らぎによる臨界点の場の理論的記述を構築した。対称性トポロジカル場の理論の形式が中心的役割を果たし、(2+1)次元トポロジカル秩序のラグランジアン代数から局所秩序変数の代数を同定する。Rep(S3)対称性を例に手順を示す。

Human-agent discovery of reconfigurable in-plane ferroelectric superdomain control
コーディングエージェントと人間の実験者が一台の顕微鏡、一冊のノート、二つの永続メモリファイルを共有する枠組みSPARCを提案した。(111)配向PbZr0.2Ti0.8O3膜の面内スーパードメイン方向の再構成に適用し、エージェントは交互極性の静止バイアスパルス格子を開発。格子と層状周期の一致ではなく空間的な極性交替が方向選択を決めることを示し、ラスタ走査との併用で文字「UTK」を描画した。

Spin-orbit-enhanced correlation sensitivity and anomalous magnetic response in non-dimerized 4d4 ilmenite CdRuO3
稜共有RuO6ハニカム層を持つ4d4イルメナイトCdRuO3を合成し物性を報告した。粉末X線回折から等価なRu-Ru結合を持つ非二量化R-3構造を確認。抵抗率は非金属的だが非アレニウス的で、比熱には有限の残留線形項がある。計算ではスピン軌道結合なしでは金属的だが、SOCを含めると相関への感度が著しく高まり約55 meVの直接ギャップが開く。磁化率はパウリ応答ともS=1局在モーメントとも矛盾する。

Scalable machine learning framework for multiphase identification from powder X-ray diffraction
粉末X線回折からの多相同定を、全候補相を一つのモデルで識別する閉集合分類ではなく、相ごとに特化した独立な一対全二値分類器へ分解する枠組みGALAXIを提案した。事前学習分類器で候補を絞り込み、リートベルト解析で最適な相の組合せを決定する。実験パターンでmicro-F1 0.935を達成し従来手法を上回る。各モデルが独立なため再学習なしに拡張でき、64,594構造分の分類器を公開Webで提供する。

Restoring the Surface Magnetic Gap in MnBi2Te4
磁性トポロジカル絶縁体MnBi2Te4で量子異常ホール効果の実現を阻む表面磁気ギャップ消失の起源を解明した。表面欠陥が静電ポテンシャルを下げ、トポロジカル表面状態を表面下層へ押しやり交換相互作用を弱めてギャップを閉じる。外部電場やvdWヘテロ構造の界面電場で表面静電ポテンシャルを調整すればギャップが回復し、そのトポロジーも制御できる。AlOxキャップによるQAHE増強の実験結果を説明する。

Excitons probe intrinsic flat band Mottness in a van der Waals heterostructure
ゲート可変光学分光と第一原理計算を組み合わせ、vdWモット絶縁体Nb3Cl8に直接接した単層WSe2を調べた。WSe2の励起子共鳴のゲート変化は、単粒子バンド描像には現れないNb3Cl8の相関再構成モットギャップの兆候を示す。電子ドープ領域ではWSe2の2sリュードベリ励起子が層間の引力・斥力ポーラロン分枝へ発展する。面直磁場下ではスピン偏極状態が谷選択的結合を誘起し円偏光度を増強する。

Coupled structural and electronic evolution under pressure in CuIr2Se4, CuRh2S4, and CuRh2Se4
放射光粉末X線回折と電気抵抗測定により、スピネル型カルコゲナイド3種の従来より広い圧力範囲での圧力応答を調べた。高圧下で3化合物とも類似の単斜晶超格子が現れ、CuIr2Se4とCuRh2S4は結合不均化したPhase-IV型構造と整合する。絶縁体的輸送はCuIr2Se4では急峻に、Rh系では緩やかに発達し構造変化と対応する。またCuIr2Se4で常圧・0.29 Kのバルク超伝導を新たに確認した。

Modular and Cost-effective Scanning Photocurrent Microscopy System for Sub-micron characterization of 2D optoelectronic devices
従来の金属顕微鏡を改造した自作の走査型光電流顕微鏡(SPCM)プラットフォームを構築した。ファイバ結合レーザーや高出力LED、電動XYステージ、デジタルカメラ、電子読み出しモジュールを組み合わせ、最小限の改造で光電流像と反射強度像の同時取得を実現。InSe、MoS2、WSe2、グラフェンなど異なる材料・基板の素子でサブミクロン分解能と高い忠実度を達成し、安価で再現性の高い測定環境を提供する。

Layer-Dependent Phonons, Excitons, and Magneto-Optical Phenomena in CrSBr: A Mini Review
大気安定性、半導体性、強い面内異方性、A型反強磁性秩序を持つ二次元層状磁性体CrSBrについて、層数依存の振動特性・励起子特性および磁気光学応答の最近の進展をレビューした。バルクから単層極限まで、結晶構造、磁気異方性、層間スピン再配向を概観し、スピン-フォノン結合、磁場感受性の発光、局在励起子、フレンケル型とワニエ-モット型励起子の共存を論じる。応用上の課題と展望も示す。

Direct Realization of Near-Ideal Carbyne in Ultrathin Boron Nitride Nanotubes
sp混成の一次元炭素同素体カルビンを、極細窒化ホウ素ナノチューブ内に水素終端ポリインを内包・熱変換することで、ほぼ理想的な状態で実現した。絶縁性のホストにより端基効果・有限長効果・ホスト-ゲスト相互作用が副次的に抑えられる。245箇所のラマン統計解析で、炭素ナノチューブ内より一桁狭い振動数分布、普遍的非調和性、自由鎖の計算と一致する結合長交替を確認。発光は予想通り検出されない。

Nearly Isotropic Vortex Solid in (La,Pr)3Ni2O7 Thin Films
(La,Pr)3Ni2O7薄膜で抵抗と反磁性を同時測定し、面内・面直磁場に対する渦糸融解相図を作成した。H∥cでは幾何学的閉じ込めによりパンケーキ渦が生じる。渦糸融解磁場の異方性パラメータは低温に向かって単調に減少し1に近づく。これはほぼ等方的な超流動密度を意味し、厳密に二次元的な3dx2-y2バンドでは説明できず、3dz2由来のγバンドによる層間超流動寄与を強く示唆する。


Raman signatures of a non-reciprocal magnetic phase transition in Ca2RuO4
強相関、磁気弾性相互作用、大きなスピン軌道結合が絡み合うCa2RuO4において、c軸方向の面直磁場が駆動する磁気的一次相転移の証拠を報告した。磁場中ラマン測定で磁気起源のモードの出現と、フォノンとヒッグス振幅モードの結合の変化を観測し、いずれも磁場に対し非相反的ヒステリシスを示す。面内マグノンの散乱は変化せず双極子的反強磁性秩序は保たれており、新たな四重極的状態の発現と整合する。

Encapsulated macroscopic WS2 monolayers enable room-temperature exciton-polariton lattices
1-ドデカノールで被覆したWS2単層により、ミリメートル級の被覆と約300 μmにわたる均一な光学特性を両立した。可変オープン微小共振器に組み込むと、室温で明瞭な反交差とラビ分裂ħΩR≈31 meVの強結合を示す。この均一性を活かして二次元ポラリトンカゴメ格子を実現し、s帯内にディラック分散と弱分散のフラットバンド的分枝を分解。大面積WS2が常温下の合成量子物質の舞台となることを示す。

Microcanonical Hamiltonian Monte Carlo and the Helmholtz Theorem
近年提案されたミクロカノニカル・ハミルトニアンモンテカルロ法を熱力学的観点から詳細に分析した。熱力学的状態変数とポテンシャルを導出し、このアルゴリズムの構成が形式的にミクロカノニカル集団を表すことを示す。特に、熱力学第一法則の別表現であるヘルムホルツの定理を満たすことを解析的・数値的に実証した。さらに低次元推論問題へ拡張する新たなサンプリング法を構築し、カノニカルMCMCの方が自然だと論じる。

Simple invariants for band topology
ハミルトニアンと位置演算子から構成されるスペクトル局在化作用素を再検討し、これを親ハミルトニアンの高次元位相を符号化する補助的なゼロ次元ハミルトニアンとして扱えることを示した。その分類により、あらゆるトポロジカル不変量が行列のシグネチャーかパフィアンの符号に帰着し、実空間で効率的に計算・解釈できる。弱い位相や回転対称結晶相、対称性指標法で捉えられない相など、これまで不変量がなかった相にも適用できる。

Vertical quantum confinement in bulk MoS2
角度分解光電子分光(ARPES)により、バルクMoS2中の量子閉じ込め状態を実験的に観測した。Γ点のバンド構造に現れる量子井戸状態は、kz分散の消失と光子エネルギーに対する強い強度変調から垂直方向の閉じ込めに由来すると確認された。束縛エネルギーの量子数依存性は二次元電子ガスの二乗則ではなく線形であり、放物線状の量子井戸と整合する。機械的剥離で多層スタックが分離したことが原因と第一原理計算が裏付ける。

Selective coupling of high-order phonons in La2-xSrxCuO4
共鳴非弾性X線散乱によりLa2-xSrxCuO4で新たな電子-フォノン結合の領域を明らかにした。母物質では約85、180、330 meVに分散のない鋭いピークが現れ、ラマンで見える他のモードの強度はほぼない。180と330 meVは面内Cu-O伸縮モードの2フォノン・4フォノンに対応し、共鳴励起された価電子がこのモードに強く結合することを示唆する。10%ホールドープで消失し、フランク-コンドン描像を超えた異常な結合を示す。

Signatures of nodal superconductivity in stoichiometric FeTe
走査SQUID顕微法、電気伝導、STM/S、平均場計算を組み合わせ、化学量論組成FeTe薄膜の局所超流動応答と対称性を調べた。超流動剛性とTcにμmスケールの空間変動が見られ、ロンドン侵入長は0.02Tcまで飽和せず指数1〜1.5のべき則に従う。V字型の低エネルギー状態密度と2ギャップ解析と併せ、d波あるいはノーダルs波のノードまたは深い極小を持つ超伝導状態を示唆する。


Textures as a phase-transition probe for quantum spin chains
近年提案された量子テクスチャの概念を量子相転移の探索に応用し、粗さ(rugosity)指標が有効な相転移プローブとなることを示した。計算基底における粗さとスピン相関子の階層との関係を確立し、全体基底状態および各磁化セクターの基底状態で定義した粗さを用いてハイゼンベルクXXZ模型の相図を調べた。両転移点で明確なシグネチャーが現れ、特にΔ=1では小さな系でも鋭い特徴が観測された。

Observation of multipartite spin entanglement in a cuprate chain
共鳴非弾性X線散乱(RIXS)を多体スピンエンタングルメントのプローブとして用いた。RIXS断面積を適切なスピン励起チャネルへ射影することで、測定されたスピン揺らぎスペクトルから量子フィッシャー情報を直接抽出できることを示す。一次元銅酸化物Sr2CuO3において少なくとも7分体のスピンエンタングルメントを検出し、固体で報告された中でも最大級のエンタングルメント深さを、ハバード模型の予想と整合する形で観測した。


Speed Limit for Information Acquisition in Stochastic Learning Dynamics
確率的勾配降下法(SGD)をマルコフ確率過程として定式化し、学習パラメータがデータ生成過程の潜在変数に関する情報を獲得する速度を制限するフィッシャー情報流の速度限界を導出した。この不等式は情報流をドリフト項とノイズ項に分解し、決定論的な学習力とSGD由来の揺らぎの役割を情報理論的に定量化する。解析可能な基底関数線形回帰で検証し、潜在変数が符号化される順序と時間スケールを再現した。

From London to Morse via Binnig, Quate, and Gerber
原子間力顕微鏡(AFM)40周年特集への展望論文。ノッティンガム大学の20年にわたる研究から、探針を受動的な観測者ではなく能動的な参加者として捉える視点で成果を概観する。ファンデルワールス力・ハマーカー力から水素結合、共有結合、さらには垂直移送による金属クラスタの原子単位組み立てまでを扱う。探針誘起の不均一性が分子拡散の初通過ダイナミクスを支配する証拠や、機械学習の役割にも触れる。

Thermal response of an in-situ STEM MEMS chip under rapid pulse heating
その場STEM用の市販MEMSチップ(Protochips Fusion)の冷却応答を定量化する簡便な測定系を提示した。任意波形発生器で温度プログラムを与え、直列シャント両端の電圧からチップ抵抗と温度をサブミリ秒分解能で再構成する。最大冷却ステップの解析から時定数τ=1.80 msの指数緩和が得られ、ΔTの95%到達時間から平均冷却速度約7.9×10^4 K/sを測定。実験計画時の実用的な限界を明らかにした。

High-resolution angle-resolved photoemission spectroscopy with tunable magnetic field
磁場中ARPESでは電子軌道の収差により小さな磁場でもスペクトルが大きく歪むが、強い収差があっても高い運動量分解能を保ったまま電子構造を高精度で復元できることを示した。レーザーARPESでコイルの双極子磁場中のBi2Se3を測定し、詳細な電子軌道シミュレーションを用いた後処理で電子構造を再構成。二次元運動量マッピング、μmビーム径、精密な磁場計算が要件であり、円二色性がスピン結合の情報を与える。


The Hidden Cost of Alloying: Disorder-Driven Transport Collapse in TMDs
MoS2xSe2(1-x)合金を模型系として、組成・膜厚・乱れの相互作用を調べた。光学遷移と価電子帯分散は組成と層数に対し連続的に変化し、バンドギャップのボウイングはほぼない。一方、時間分解空間マッピングでは中間組成でキャリア拡散係数が顕著かつ非対称に崩壊する。これは有効質量やバンド整合では説明できず、ランダムなカルコゲン置換による局所エネルギー地形の実空間揺らぎに由来する。

Polymorph Engineering of the Layered Rare-Earth Magnet GdAlGe
相安定性と次元性の相互関係を利用し、見過ごされてきたGdAlGeの層状多形のエピタキシャル薄膜を作製した。三角格子のGd層とハニカム格子のAlGe層が交互に積層し、5単層までの極薄膜で安定である。より厚い膜では不要な別相が現れる。電子線・X線回折と電子顕微鏡で構造品質を確認し、磁化測定は異方的強磁性状態を示す。異常ホール効果と負の磁気抵抗も観測され、Geとの整合性が応用を後押しする。

Observation of linear magnetoresistance and planar Hall effect in the Dirac semimetal PdTe
超伝導も示すディラック半金属PdTeの高品質単結晶で、線形磁気抵抗(LMR)と平面ホール効果(PHE)を初めて観測した。磁気抵抗は臨界磁場Bcで放物線的から線形へ移行し、その起源はアブリコソフの量子極限機構ではなく乱れによる移動度揺らぎであると解析された。PHEは面内で磁場を回転させると顕著に現れ、カイラル異常ではなく異方的軌道磁気抵抗に主に由来する。準古典的輸送の枠組みで理解できる。

g-wave altermagnetic order parameter in hematite
非弾性中性子散乱により、ヘマタイト(α-Fe2O3)における交代磁性なマグノン分裂の運動量依存性をマッピングした。分裂はノード方向で消失しノードから外れた位置で最大となり、秩序変数のg波対称性を明らかにした。線形スピン波理論の計算とも一致し、非縮退の分枝が互いに逆のカイラリティを持つマグノンであること、分裂が対称性の異なる長距離交換相互作用に由来することを示す。


Decorated electronic kagome lattice in twisted bilayer germanene
Ge2Pt上の整合ツイスト二層ゲルマネンが、電子的に異なる二つの大角度モアレ相を生むことを示した。走査トンネル顕微鏡と密度汎関数理論計算により、副格子交換に対して奇のパリティを持つ整合二層は半導体的、偶のパリティを持つものは金属的であることが判明。偶パリティの二層は空状態共鳴を持ち、C3対称性を備えた装飾カゴメ構造が発現する。バックリングした二次元材料でのカゴメ状電子状態の設計基盤となる。

Time-Dependent Density Functional Theory with Coulomb Interactions
連続体における時間依存密度汎関数理論の初の完全に厳密な正当化を与えた。時間依存の密度が与えられたとき、対応するシュレディンガー方程式がその密度を再現するような外部ポテンシャルが時間依存定数を除いて一意に存在することを証明する。このポテンシャルは反復スキームで得られる。議論はクーロン相互作用を含み、時間に関するテイラー展開を必要とせず、代わりに空間的解析性を要請する。

Topological Impurity Bands
乱れがトポロジカル相に及ぼす効果は通常、位相の保存か破壊だが、局在欠陥が関わる場合には別の効果が現れうる。ランダムに分布した有限密度の欠陥が新たなトポロジカル相転移を生み、トポロジカル不純物バンド(TIB)の形成として理解できることを示した。もとの清浄な模型が自明なバンド絶縁体でも成立する。理論は不純物束縛状態の軌道依存の渦度に基づき、欠陥密度3%の数値相図で頑健な転移を確認した。


Anderson orthogonality scaling in the Rabi-driven heavy Fermi polaron
超冷却6Li-133Cs混合系で重いフェルミポーラロンをコヒーレントに駆動し、アンダーソンの直交性カタストロフ(AOC)の兆候を探った。測定されたラビ周波数は駆動強度に対しべき則依存性を示し、その指数はAOCの予測と整合する。有限温度シミュレーションがこのスケーリングを定量的に再現し、理想的な零温度・無限質量極限を超えてもAOCの兆候が残ることを示す。ラビ振動の減衰は非単調な駆動依存性を示す。

-2026/9/7--
Dual Charge-Density-Waves in Two-dimensional DyTe3 and Their Distinct Impacts on Magneto-Transport Properties
電荷密度波(CDW)は電子密度の周期変調と格子歪みが結合した巨視的量子状態だが、CDW存在下での電磁輸送特性の変化はほとんど未解明である。本研究では、低温で直交する2つのCDW(CDW1、CDW2)が共存するDyTe3の電子輸送特性を調べた。CDW1転移では明瞭な磁気輸送異常が観測されないのに対し、CDW2の出現は磁気抵抗の劇的な増大と多バンド起因の非線形ホール応答を引き起こす。両CDWは本質的に異なり、準二次元物質における複数CDWの輸送への影響を理解するモデル系となる。

Layer Architecture Shapes Electronic, Magnetic, and Lattice Interactions in Ruddlesden-Popper Nickelates
Ruddlesden-Popper型ニッケル酸化物の超伝導発見を受け、層構造が電子・磁気・格子相互作用をどう規定するかをNi L3端およびO K端RIXSで調べた。La3Ni2O7の2つの多形(単層-三層交互のLNO-1313、二層のLNO-2222)とLa4Ni3O10を比較した結果、LNO-1313とLa4Ni3O10は酷似した励起を示す一方、LNO-2222は異なる特徴を持つ。LNO-1313らは軌道分極が弱く3d8L性が強く、面間磁気交換が小さく電子格子結合が強い。層間結合が支配的なLNO-2222では、絡み合ったダイマー描像がスピン波理論より優れる。

Evidence of Crystal-Field-Mediated Anisotropic Orbital Rashba Effect in Epitaxial Ru/FM Heterostructure
軌道角運動量の電気的生成は電流誘起トルクの有望な手段だが、軌道ラシュバ構造の制御、特に界面結晶場の役割は未解明であった。本研究はエピタキシャルRu/強磁性体ヘテロ構造において、結晶場が媒介する界面異方的軌道ラシュバ効果(AORE)の実験的証拠を報告する。全軌道トルクを等方的バルク寄与と面内異方的界面寄与に分離したところ、後者は構成層の結晶性劣化やCuスペーサー挿入で強く抑制され、コヒーレントな界面軌道混成と直接接触が本質的であることが示された。軌道トルクの対称性と方向性を制御する指針となる。

Interlayer Exciton Condensate Stiffness Is Non-Monotonic in Quantum Metric
平坦バンド物理において、電子対・電子正孔対凝縮体の超流動剛性の起源の解明は重要課題である。本研究は厳密対角化と現実的クーロン相互作用を用い、ランダウ準位・混合ランダウ準位・モアレバンドなど多様な平坦チャーンバンド系で二層励起子凝縮体の剛性を調べた。剛性は量子計量のトレースに対して非単調であり、波動関数がランダウ準位に近いとき極大を示す。平均場理論は最適な場合のみ定量的に一致し、それ以外では過大評価する。同一の量子幾何テンソルでも剛性は大きく異なり、非零チャーン数のモアレ平坦バンドでは剛性がより大きくなりうる。

Thermodynamic learning
ミクロ変数がハミルトニアンと通常の統計力学規則で完全に決まる熱力学系を訓練し、記憶や汎化といったタスクを遂行させる可能性を論じる。訓練は「データ」の役割を果たす適切な外場の印加によって行われ、従来の機械学習と異なり論理的・アルゴリズム的規則は一切導入しない。この系は原理的に厳密な解析計算が可能である。一般的枠組みを、焼きなまし二値結合を持つ典型的なイジング系に適用して学習能力を調べた結果、小さな系でも優れた記憶能力と良好な汎化能力を示し、系のサイズとともに向上する傾向が見られた。

Orientation selection and superconducting properties of epitaxial Al on ferromagnetic semiconductor (In,Fe)As
超伝導体/強磁性体ヘテロ構造は界面近接効果によるスピン依存超伝導現象の探索基盤となる。本研究では、歪んだFeドープ強磁性半導体(In,Fe)As上に分子線エピタキシーでその場成長させたAl薄膜の構造と超伝導特性を調べた。X線回折と透過電子顕微鏡から単結晶Al層のエピタキシャル成長が確認され、(In,Fe)Asの面内格子定数増大に伴い成長方位が(110)から(111)へ変化した。Alの超伝導転移温度は表面形態と結晶粒径に応じて系統的に変化し、臨界磁場は0.5 K以下で異常な減少を示す。半導体ハイブリッド量子デバイスの材料設計指針となる。

Cross-Layer Anomalous Hall Transport driven by Néel-Vector rotating in the Altermagnet candidate V2Te2O
ファンデルワールス(vdW)物質では弱い層間結合により面内輸送が支配的とされてきた。本研究は第一原理計算と磁気対称性解析により、vdWアルターマグネットV2Te2Oで巨大な層間異常ホール伝導度(AHC)を見出した。ネールベクトルがz方向の基底状態では水平鏡映対称性がスピン偏極ノーダル鎖を保護し異常ホール応答をゼロにするが、傾けると対称性が破れスピン軌道結合がギャップを開き応答が生じる。面内配置(N//x)ではσ_yzが約255 S/cmに達し、面内成分σ_xyを2桁近く上回る。低障壁スピンキャンティングによる層間異常ホールスイッチを実証した。

Semiclassical thermoelectric transport in disordered Dirac electron system Ag2Te
磁場下でのディラック電子系Ag2Teの熱電効果を調べた。ボルツマン半古典モデルに基づく解析により、線形磁気抵抗、線形ネルンスト効果、階段状ネルンスト効果、ネルンスト効果の符号変化といった非従来的な磁場応答が乱れ(不純物)に起因することを明らかにした。解析はまたフェルミ準位近傍の不純物バンドの存在を示した。さらに、ネルンスト効果の測定に熱ホール効果が深刻な影響を与えることを明確にし、その決定的な解決策を提案した。本研究の慎重な測定と解析は、磁場下熱電研究の標準となるものである。


Breakdown of Anomalous Hall Scaling in Dilute Kondo System
強い電子相関とベリー曲率駆動輸送の融合、特にf電子ではなく平坦バンド由来の相関を持つ系は未開拓領域である。本研究は、フェルミ準位近傍にファンホーブ特異点を伴う平坦バンドを持つ非f電子ホイスラー合金Ru2Mn0.5Ti0.5Geという希薄近藤系で、内因性ベリー曲率駆動の異常ホール輸送を報告する。異常ホール応答は著しく非単調で、磁気転移近傍でフェルミ液体スケーリング則を破り、近藤コヒーレンス発現に伴う低温でのみ回復する。第一原理計算は、近藤混成による平坦バンドとスピン軌道結合起因の反交差の相互作用がベリー曲率の起源であることを示す。

Remote epitaxy beyond polarity
単層二次元material被覆基板を介したリモートエピタキシーは、ファンデルワールス面越しに結晶方位の整合を確立し、単結晶膜の成長・剥離・転写を可能にする。この現象には強いイオン性を持つ基板が必須と信じられてきた。共有結合性や金属性材料では原子間静電ポテンシャル揺らぎが二次元材料で著しく減衰するためである。本研究は金属的・共有結合性基板でもリモートエピタキシーが可能であることを示し、金属と半導体を含む幅広い材料系で無極性のリモートホモ/ヘテロエピタキシーを実証した。基板の導電性と微斜面ステップ端密度を利用して設計されている。


Customized spin spirals in ferromagnetic thin films
スピントロニクスデバイスの発展には薄膜積層中の磁気スピン構造を精密かつ柔軟に設計する能力が不可欠だが、安定な非共線スピン配置、特に垂直スピンスパイラルの実現は困難であった。本研究では斜め入射蒸着を用い、外部磁場なしの室温で磁性薄膜中に垂直スピンスパイラルを設計・安定化した。薄膜界面に2つの交差した一軸磁気異方性を誘起し、その方向と強度を調整することでスパイラルの角度範囲と深さ方向プロファイルを制御する。偏極中性子反射率法と核共鳴散乱により深さ依存スピン配置を直接決定した。単一膜設計手法を確立した成果である。

-2026/9/4--
Battery open-circuit voltage is not purely chemical
電池の開回路電圧(OCV)は電極材料固有の化学的性質と見なされてきたが、本研究は力学状態と微構造にも依存することを示した。有限要素解析と漸近解析により、粒子の膨張や外部荷重が粒子間接触を促し圧縮応力を生じさせ、挿入イオンの化学ポテンシャルを変化させることを明らかにした。この補正は非線形でHertz接触則に従い粒子配列に依存するため、同一材料でも微構造次第でOCV曲線が異なる。フルセルでは電極がスタック応力を介して力学的に結合し、OCVは電池全体の化学-力学的性質となる。

Direct Validation of Superconductivity through Contact-Free Detection of Persistent Supercurrents Using Room-Temperature Quantum Magnetometry
新超伝導体の迅速な実験的検証、とくに高圧下の微小試料での検証がボトルネックとなっている。本研究は室温・非接触で残留超電流を検出する一段階の超伝導判定法を実証した。無冷媒の光ポンピング原子磁力計で超電流由来の磁場の温度依存性を測り、転移温度以上での磁場消失と印加磁場反転に伴う超電流反転から超伝導を直接同定する。YBCO微結晶とREBCOテープで検証し、地磁気で誘起されたピコテスラ磁場や100μm以下の微結晶からの信号も検出。電気接点もコイルも不要で高スループット探索に適する。


Deterministic nanofabrication for engineering nanowire quantum dot devices
半導体量子ドットは単一光子・もつれ光子対源の有力platformだが、ナノワイヤ量子ドット(NWQD)では垂直成長形状を保ったまま周辺構造を作り込むことが難しかった。本研究は成長基板から任意テンプレートへNWQDを垂直姿勢のまま転写する決定論的ピック&プレース技術を開発した。底面金ミラーにより光取り出し効率を75%に向上させ、静電ゲートで発光波長を3.6GHz調整。転写後もg2(0)=0.002の低多光子確率と±100psで80%超の識別不能性を維持し、スケーラブルな光子源への道を開く。

Large deviations for linear regressions
線形回帰の訓練損失(残差二乗和の最小値)について、大偏差統計を解析的に導出した研究。ガウス型の計画行列とノイズを仮定し、教師係数を一般分布から独立に生成、RidgeやLassoを含む分離可能な正則化項の一般クラスを扱う。ゼロ温度レプリカ法を用い、予測子数Pと観測数Nがともに大きくr=P/Nを固定した極限で、最小訓練損失のレート関数を計算した。これは試料ごとの稀な揺らぎを支配する。大規模数値実験は理論と非常によく一致し、裾部で典型的なガウス揺らぎからの顕著なずれを示した。

Antiferromagnetism-altered plasmon dynamics
プラズモンとマグノンの結合は基礎物理とスピントロニクスの両面で長年求められてきたが、3次元系ではエネルギースケールの不一致で抑制される。本研究は2次元材料を用いた初のハイブリッドplatformとして、グラフェン/NiPS3界面を散乱型近接場光学顕微鏡とテラヘルツ光で観測し、伝搬プラズモン波束の動力学をNiPS3の反強磁性転移をまたいで追跡した。反強磁性秩序の発現と同時にプラズモンポラリトン分散が繰り込まれることを観測。ラマン散乱とナノTHz分光から、多マグノン連続体に伴うスペクトル重み再配分と誘電遮蔽変化が機構と示唆される。

Thermal history controls the optoelectronic response of lead halide perovskites through structure and dynamics
鉛ハライドペロブスカイトの本質的不安定性として、格子ダイナミクスに隠れた新たな構造不安定性を同定した。Cs、MA、FA系とCl/Br/I及び混合X-siteの多様な組成を、単結晶X線・中性子散漫散乱、機械学習支援MD、八面体傾斜の現象論モデル、ハイパースペクトルPLで全相にわたり調べ、ほぼ全組成が数nmの相関した八面体傾斜からなる動的ナノドメインを平衡状態で持つことを発見。Aサイトが対称性と異方性を、ハライドが動的乱れと相転移系列を、そして熱履歴が第三の制御因子となる。MAPbI3では昇温速度だけでPL量子効率が変化し、熱履歴が設計変数となる。

A Strategy Toward Room Temperature Topological Hall Effect via Local Moment Magnetism
局在モーメント系のトポロジカルスピン構造は大きな磁気モーメント、強いスピン軌道結合、高い可制御性から応用が期待されるが、室温付近で安定なものを見つけることが鍵となる。本研究は室温近傍で磁気秩序化する希土類磁性体を選ぶという戦略を提案し、Tc=285Kの六方晶Gd5Pb3で実証した。トポロジカルホール効果が100-200Kの温度域で観測され、これは他の希土類系より一桁高い。スピン軌道結合、異方的交換、幾何学的フラストレーションの役割を探る機会を与え、室温トポロジカルスピン構造への道筋を示す。


Resolving the Magnetic Ground-State Controversy in RuO2 through A Flat Magnetic Energy Landscape
ルチル型RuO2は交代磁性体の有力候補だが、非磁性か反強磁性秩序かで実験結果が対立している。本研究は局在ハイゼンベルグ交換、ランダウスピン揺らぎによる遍歴ストーナー磁性、スピン軌道結合を介したスピン格子相互作用を統合した環境依存スピン格子モデルを構築。第一原理データベースと機械学習でパラメータ化し大規模モンテカルロで解いた結果、RuO2の磁気エネルギー地形は極めて平坦で、非磁性状態と複数のアルターマグネット配置がほぼ縮退していることが判明。欠陥などの摂動が局在交換の変化を通じて基底状態を選択し、対立する実験を統一的に説明する。

Doping dependence of local moments in infinite layer nickelates
無限層ニッケル酸化物は銅酸化物と異なり長距離反強磁性秩序を示さず、代わりに短距離グラス的挙動を示すため、局在モーメントが超伝導とは独立に存在すると考えられる。本研究はミュオンスピン回転(μSR)を用い、(La,Sr)NiO2のSr置換量0-25%のドーピング系列について、母物質から超伝導ドームを経て過剰ドープ常伝導状態までの磁気基底状態と静的・動的挙動を調べた。ドーピング量によらず数十K程度でスピンがグラス状態に凍結し、ホールドープ増加でグラス状態がわずかに不安定化することを見出した。磁性と超伝導はほぼ独立した現象と示唆される。

Universal scaling of fluctuations and correlations across the superfluid transition
連続相転移近傍の臨界現象は普遍的臨界指数だけでなく、全ての観測量が普遍スケーリング関数に従い、物質固有の詳細はわずか2つのスケール因子に集約されるという、より根源的な普遍性を持つ。本研究は超流動転移を起こす超低温格子ボース気体でこの予言を実験的に検証した。異なるエントロピーで測定した秩序変数のキュムラントを重ね合わせることでスケール因子を抽出し、それが秩序変数分布と2点相関の両方のスケーリング関数を規定することを示した。さらに臨界指数β、γ、νを決定し、複数の観測量が同時に普遍スケーリングに従うことを実証した。

Such stuff as magic is made on: compact operator algebra, stabilizer polytope and the structure of reduced density matrices in a Kitaev spin liquid
マジック(非スタビライザー性)は多体エンタングルメントを補完する多体系の新たな診断量である。本研究はキタエフ蜂の巣模型を対象に、部分系がマジックを獲得し始める温度を同定した。その発現時に有効なマジック証人が、その後の局所熱状態を捉え続けるコンパクトな演算子空間を明らかにする。6サイト六角形マージナルではこの空間が局所対称性からも独立に現れ、対称性分解されたプラケット代数を成す。対称性が厳密なとき局所状態はこの代数内に完全に収まり、還元されたマジックのロバストネスが全体値と一致する。演算子空間は有限次元ユークリッドジョルダン代数の構造を持つ。

Competing lattice structures induced by Sn substitution in CsV$_3$Sb$_5$
カゴメ金属における化学置換の効果を理解することは、局所構造歪みと電子不安定性の絡み合いを解きほぐす上で重要である。本研究はCsV3Sb5-xSnxについて121Sb核四重極共鳴(NQR)測定と密度汎関数計算を組み合わせ、Sn置換の原子スケールの効果を調べた。低Sn濃度でSn置換による局所構造歪みを示すサテライトNQRピークが観測され、計算結果と定性的に一致する。この不純物誘起の特徴はx=0.65まで、また室温まで持続する。x=1の理想化された場合には、V三量体を特徴とし層間位相が0またはπで異なる、ほぼ縮退した2つの平衡構造の安定化が示唆された。

Non-Resonant Impulsively Stimulated Raman Scattering by a Terahertz Field: a Case Study of 1T-TaS2
超高速・非線形テラヘルツ分光は集団励起の研究に広く使われるが、反転対称系ではラマン活性モードがTHz電場と直接結合しないため、光と物質の相互作用機構が明確に議論されてこなかった。本研究は整合・準整合・非整合の豊富な電荷密度波相を持つ1T-TaS2に対し、THzポンプ-光プローブ測定とTHz第三高調波発生を行った。相転移は動的ラマン応答に明瞭な痕跡を残す。広帯域単サイクル場と狭帯域多サイクル場に対するラマン活性フォノンの結合を調べた結果、二光子吸収を伴う非共鳴誘導ラマン散乱が格子モードの励起機構であることが示された。

Low-Frequency Charge Noise in Bilayer Graphene Quantum Dots
二層グラフェン(BLG)量子ドットは半導体量子ビットの有望なplatformだが、コヒーレンスを制限しうる低周波電荷ノイズはほとんど調べられていなかった。本研究は輸送測定によるノイズ分光でゲート定義BLG量子ドットの電荷ノイズを系統的に評価し、1Hzでの中央値1.16μeV/√Hzという既存半導体量子ドットと同等の値を得た。電荷占有数、閉じ込め、ソース-ドレインバイアス、電荷センサ動作条件を変えても再現性のある傾向は見られず、半導体固有のノイズを抽出できたと判断される。二重量子ドットや超伝導共振器読み出しでも同水準で、遷移金属ダイカルコゲナイド積層でも増加は見られない。

Ion-Engineered Insulator-to-Semiconductor Transition in Natural 2D Biotite
天然の層状ケイ酸塩は豊富な2D材料資源だが絶縁性が応用を阻む。本研究は液相剥離した黒雲母ナノシートをNaOH処理し、絶縁体から可変な2D半導体へ転換する化学的手法を実証した。転移はNa導入、欠陥生成、局所構造再構成に由来し層状骨格は概ね保たれる。格子歪み、層間再編、水酸化、Na+-K+部分交換が確認された。光学応答は221nm吸収が280nmと975nmへ移り、光学バンドギャップは5.2eVから3.2-3.5eVに低下、1.12-1.17eVの低エネルギー遷移も出現。10μA近い非線形電流を示し、超高速過渡吸収ではホットフォノンボトルネックも観測された。

Coherent interaction of WS$_2$ and quasi-2D perovskite excitons over micrometer distances via a cavity field
共振器光子と励起子共鳴のコヒーレント結合はポラリトンを生む。複数の励起子共鳴が同一光子モードに結合すると、空間的に離れ直接の電子的結合がない物質共鳴どうしのコヒーレント相互作用が実現する。本研究は単層WS2と層状準2次元ハライドペロブスカイトを1.5μm隔てて開放型光共振器に封入し、室温でそのような結合を実証した。系は3本のポラリトン分枝を形成し、中央分枝は両励起子と光子モードをほぼ等分に含む。白色光反射率と発光測定は結合調和振動子模型およびWannier-Hopfield理論とよく一致し、その場可変なポラリトニクス機能への基盤となる。

Experimentally constrained modeling of the Pockels response of KNbO3 and KTaNbO3
電気光学ペロブスカイトのソフトモードはポッケルス応答を決定づける。タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)は最先端のBaTiO3の2.5倍の内因的ポッケルス応答を示し、高性能電気光学素子への応用が期待される。本研究は密度汎関数法による第一原理計算と遠赤外測定を組み合わせ、調和近似とsemi-local交換相関汎関数ではKNbO3とKTNのソフト横光学Slaterモード(r51係数を支配)を正確に再現できないことを示した。計算値を実測周波数で置き換える実験制約付き手法により予測精度が大幅に向上。KTNの未報告のTO Slaterモード周波数も遠赤外反射率から抽出した。

Evolution of electron spin resonance through a metallic quantum critical phase diagram
重い電子系金属YbRh2Si2では、抑制された反強磁性秩序における量子臨界性が局在磁気モーメントと遍歴伝導電子の相互作用で支配される。本研究は極低温で広い周波数・磁場範囲にわたり電子スピン共鳴(ESR)を観測できる新手法を導入し、常磁性フェルミ液体相から反強磁性秩序相、そして量子臨界領域までの広い相図を網羅した。ESRのg因子と線幅は3つの領域で明確に異なる振る舞いを示す。特に量子臨界点に向かう磁場中で冷却するとg因子と線幅がともに連続的に減少し、磁場掃引と温度掃引によるg因子の振る舞いがよく一致することを見出した。

グラフ、笑っちゃうでしょ


A Superconducting Peierls Instability
パイエルス不安定性は1次元金属で2kFのコーン異常を介してフォノンが軟化し、格子歪みと電荷密度波が生じて電子スペクトルにギャップを開く基本機構である。本研究は2次元超伝導体の端で、分散するアンドレーエフ束縛状態がボゴリューボフ・フェルミ点±kcを持つ場合に類似の不安定性が生じることを示した。2kcでの準粒子応答増大が対揺らぎと結合し「超伝導コーン異常」として対モードを軟化させ、その凝縮が端の対密度波(PDW)を生んでギャップを開く。s+d+ip混合対称性を持つ拡張ハバード模型の自己無撞着BdG計算で実証し、広く非従来型超伝導体に適用しうる。

超伝導パイエルス不安定性、その発想はなかった

-2026/9/3--
Kelvin-Helmholtz instability in annular superfluids across the UFG-BCS crossover
時間依存超流動密度汎関数理論を用い、逆回転する円環状フェルミ超流動のケルビン・ヘルムホルツ不安定性を調べた。二つの超流が合流すると界面に量子渦のネックレスが形成され不安定化する。ユニタリ極限から中程度のBCS領域では成長率は点渦模型とおおむね一致し、相互作用強度や約0.3Tcまでの温度にほとんど依存しない。一方BCS領域深部では境界で生成される反渦の増殖が不安定性より速く、渦ネックレスが発達前に破壊される。フェルミ超流動における微視的ベンチマークを与え、実験と理論の食い違いの説明を制約する。

Symmetry-selective nonrelativistic spin splitting in antiferromagnets driven by coherent phonons
コヒーレントフォノンによって共線的反強磁性体の非相対論的スピン分裂(NRSS)を動的に誘起・制御できることを示した。Γ点の赤外活性フォノン励起が基底状態のスピン縮退を解き、残存する副格子連結対称性が運動量空間でのスピン分裂の形を決める。関与する赤外モードは直交する面内偏光に結合するため、駆動光の偏光で異なるスピン分裂相を選択的に活性化できる。MnPS3の第一原理計算により、全対称性を破るモードはs波型(Δ(Γ)≠0)、鏡映対称性を保つモードはd波交代磁性状態(Δ(Γ)=0)を生むことを示した。分裂はフォノン振幅に線形に増大し、変位反転で符号が反転する。

Molecular spin qubits in a van der Waals bottle
分子スピン量子ビット(MSQ)を固体素子に組み込みつつコヒーレンスを保つ課題に対し、二次元物質のファンデルワールス(vdW)閉じ込めを解決策として提案した。コバルトセンをモデル系とし、SnS2やCdPS3単結晶中への閉じ込めが単イオンのエネルギー地形を再構成し、非閉じ込め時に比べスピン格子緩和を2桁以上遅くすることを示した。閉じ込められたMSQは決まった配向をとり、原子レベルで精密な規則的超格子を自己組織化する。vdW閉じ込めが機能的量子デバイスへのMSQ統合の道筋となることを確立した。

Observation of g-wave altermagnetic multipole
代表的交代磁性体CrSbにおいてg波アルターマグネット多極子を直接可視化した。高エネルギー放射光X線回折と価電子密度(VED)解析を組み合わせ、Cr副格子間で交互に変化するVED分布の顕著な方向異方性を明らかにし、g波アルターマグネットで予言された電気十六極子の反強的秩序を実証した。これが反強的磁気双極子と共存することで強的な磁気多極子が誘起されることを偏極中性子回折で確認。さらにg波多極子とg波スピン分裂を直接結び付ける微視的モデルを提示し、隠れた多極子秩序の一般的プローブを確立した。


Persistence and emergence of quantum defects through pressure-induced phase changes
ダイヤモンドアンビルセル内の高圧下計測は試料体積とアクセスの制約で困難だが、量子欠陥は局所測定の手段となる。六方晶窒化ホウ素(hBN)中の光学活性なスピンペア欠陥を用い、圧力センサとしての堅牢性と欠陥エンジニアリングの両面を実証した。このスピン1/2系は20 GPaまで圧力に依存しないスピン共鳴を保ち、発光も維持ないし増強される点で同材料中のスピン1ホウ素空孔中心と対照的。同時に圧縮によりhBNは不可逆的にウルツ鉱型BNへ相転移し欠陥環境が再構成されるが、スピンペアは相転移を越えて存続し、出発材料によっては強蛍光の新規欠陥も出現する。

EuIn2Sb2: epitaxially stabilized axion insulator candidate with strong spin-orbit coupling
EuA2X2系Eu三角格子層状化合物のうち、強いスピン軌道相互作用により堅牢なアクシオン絶縁体・高次トポロジカル絶縁体状態が予言されながら未実現だったEuIn2Sb2を、分子線エピタキシー法により初めてエピタキシャル安定化した。構造解析から、この薄膜はEuA2X2族でこれまで予測されていた構造とは異なる、In-on-In積層に基づく新しい三層構造をとることが判明した。面内反強磁性秩序(TN=10.5 K)に加え、強いスピン軌道結合とIn-In混成の増大により、磁性トポロジカル相を探索する優れたプラットフォームとなることを示した。

Charge-Transfer Electronic Structure of NiX$_2$ (X = S, Se)
NiS2およびNiSe2の電子構造を密度汎関数理論と動的平均場理論の組み合わせ(DFT+DMFT)で調べた。二重計上補正を実験の価電子帯光電子スペクトルを再現するよう最適化して現実的な電子構造を決定し、Ni 2p内殻光電子分光とNi L端X線吸収スペクトルの再現によりモデルの妥当性を確認した。その結果、従来想定より小さな電荷移動エネルギーが得られ、配位子からNiへの実質的な電荷移動とNi局所モーメントの減少が示された。Ni上部ハバードバンドとカルコゲン二量体の反結合状態の相対位置と相互作用が、NiS2-xSex系の低エネルギー電子構造の変化を支配する機構を明らかにした。

Room-temperature local strain control of moiré excitons in MoS$_2$/WSe$_2$ heterobilayers
遷移金属ダイカルコゲナイド・ヘテロ二層のモアレ超格子は励起子を捕捉し量子化モアレ励起子状態を作るが、従来は極低温でしか研究されていなかった。本研究はMoS2/WSe2ヘテロ二層において、局所歪みエンジニアリングによりモアレ励起子を室温で活性化・制御することに成功した。改造したAFM探針で機械的歪みを加え、モアレポテンシャルに閉じ込められた層間励起子状態に対応する一連の共鳴を観測。励起強度依存フォトルミネセンスから占有ダイナミクスを解明し、局所歪み制御で発光波長を第二テレコム窓の中心まで連続的に調整できることを示した。理論モデルは非従来型のスペクトル形状を含む全ての実験的特徴を再現する。

Direct observation of flat bands in near-magic-angle twisted bilayer CVD graphene
化学気相成長(CVD)グラフェンで、脆弱なマジック角ツイスト二層グラフェン(TBG)のフラットバンドや相関状態を実現できるかは未解明だった。本研究は銅上への低圧CVDによる成長・積層プロトコルで作製したマジック角近傍TBG試料において、室温ナノARPESによりフラットバンドを直接観測した。得られた電子バンドは剥離法試料で測定されたものと遜色なく、マジック角近傍ドメインの最大サイズは電気伝導測定に適合することも明らかにした。CVDグラフェンにおけるフラットバンド物理のさらなる実験を動機づける成果である。

Prominent Dimensional Effects on High-order Harmonic Generation in Strongly Correlated Electron Systems
次元性は相関量子物質の素励起に強く影響するが、極限的非線形光学応答への影響はほとんど未探索だった。本研究は擬一次元SrCuO2と擬二次元Pr2CuO4の高次高調波発生(HHG)実験を、ハバード模型の非平衡シミュレーションと組み合わせた。顕著な次元性の対比が見られ、SrCuO2は温度依存性の弱い堅牢なプラトー状スペクトルを示す一方、Pr2CuO4は高調波収率が単調に減少し、特に高次で強い熱的抑制を受ける。シミュレーションはこの傾向を定性的に再現し、スピン・電荷結合に支配される次元依存のダブロン-ホロン脱位相が微視的起源であることを同定した。


'pySNOW': a Python Suite for the NanO-World
計算材料科学において数値シミュレーションは原子スケール過程を解明する不可欠な手段であり、ナノ粒子やナノ合金といったナノ世界の構成要素については、原子論的シミュレーションが多様な条件下での振る舞いに詳細な知見を与える。これにより形成・成長機構、輸送現象、化学物理的安定性、触媒過程を含む化学反応の研究が可能になる。ナノ物体を特徴づける複雑な構造-物性相関を解きほぐすには、原子構造の大域的・局所的な堅牢で洞察に富む表現の開発が鍵となる。こうした記述はナノ粒子の挙動理解を深め、応用に向けた計算機上での合理的設計を導く。

Direct Observation of the Zigzag Edge States of a Supramolecular Diatomic Kagome Lattice
格子幾何は結晶中のブロッホ電子の振る舞いを本質的に決める。ハニカム格子とカゴメ格子を拡張した二原子カゴメ格子は創発的・トポロジカル現象を生むと予言されるが、実験的研究は限られていた。本研究はフェナジン部位を持つトリプチセン誘導体(Trip-Phz、C3対称の非平面π共役分子)の自己組織化により二原子カゴメ格子を作製した。STM観察から、Trip-PhzがPb(111)表面上でジグザグ端で終端された高秩序な二原子カゴメ格子を形成することを示した。STM測定と強束縛計算により、グラフェンに対応する端状態の存在を直接実証し、これらがZak位相の量子化とバルク-エッジ対応に支配されるトポロジカル端状態であることを明らかにした。

Magnetic-Field-Calibration-Free Determination of the Hyperfine Constant $A$ in Ultracold Fermi gases of $^{40}$K
超微細構造定数Aは精密分光・計測の基盤となる重要パラメータである。本論文は超冷却40Kフェルミ気体において、磁場に鈍感な一対の「クロック」遷移を利用することで、磁場較正を必要とせずに基底状態の超微細構造定数Aを決定する手法を開発した。これにより従来法の厳しい磁場較正要求を回避できる。広い磁場範囲でこれら二つの磁場非感受性遷移間の周波数差をHzレベル分解能で測定し、A = -h×285.730536(2) MHz(絶対不確かさ約2 Hz)を得た。この値は従来の決定値に比べ不確かさを約3桁改善し、40Kを用いる高精度分光・計測の基準を大きく向上させる。


Colossal reversible conductivity switching by room-temperature oxygen-vacancy ordering in Aurivillius oxide films
酸素空孔は酸化物の機能性の中心だが、通常はランダムな点欠陥として存在し集団的振る舞いの精密制御が難しい。本研究は単結晶オーリビリウス相Bi2WO6薄膜において、穏和な窒素プラズマ処理により室温で長距離秩序化した酸素空孔超構造を形成させた。この構造変化により電気伝導度が9桁以上にわたり可逆的に変調され、透明から黒色への光学転移も伴う。原子分解能イメージングと分光から、空孔がペロブスカイト様タングステン酸化物層内に選択的に整列しコヒーレントな欠陥格子を形成することが判明。酸素プラズマ処理で元に戻り、窒素プラズマで再構築でき、室温での反復スイッチングが可能。Bi2MoO6でも観測され、系統的な一般性が示唆される。

Nonreciprocal Magnon Hanle Effect in Antiferromagnetic $α$-Fe$_2$O$_3$
反強磁性体におけるマグノン固有励起の性質を捉える平衡擬似磁場のまわりでマグノン擬スピンが歳差運動することで、マグノン・ハンレ効果が生じる。反強磁性絶縁体で電気的にスピンを注入・検出して実現すれば、デバイス応用とマグノン固有モードやスピン相互作用の簡便なプローブとして高い潜在力を持つ。本研究はα-Fe2O3上の空間的に離れた2つのPt電極をスピン注入器・検出器として用い、ハンレ信号の非相反性を観測した。両者の役割を入れ替えると検出信号が変化し、その差は印加磁場に依存し、いわゆる補償磁場での信号極大を越えると符号が反転する。反強磁性マグノニクスの応用可能性を切り拓く成果である。

Spin Hall Magnetoresistance in Antiferromagnetic Insulators
反強磁性体は外部磁場擾乱に強く高速な磁化ダイナミクスを持つがマクロな磁化がないため状態観測が難しい。本研究はスピンホール磁気抵抗(SMR)が単純な電気伝導測定で反強磁性スピン構造を調べる汎用手段になることを、易面型反強磁性絶縁体α-Fe2O3およびNiOとPt重金属電極の二層構造で示した。外部磁場を3つの直交面内で回転させながらPtの縦・横抵抗率を測定し、SMR効果に整合する特徴的な変調を観測。振幅と位相を解析し、典型的フェリ磁性Y3Fe5O12/Pt二層と比較した。磁場依存性は二副格子と磁場誘起の磁区構造変化を考慮したモデルで説明でき、SMR振幅は副格子磁化の絶対値の和にスケールする。α-Fe2O3/Ptでは2.5E-3と予想外に大きな振幅を得た。

Dynamical stabilisation of a quantum fluid using a single topological defect
平衡状態の量子流体のサイズと形状は粒子間相互作用に強く影響される。引力相互作用領域では原子量子流体は最終的に激しく崩壊し、粒子の大半がマクロに占有された状態から放出される。本研究は伝搬幾何における光の量子流体を、強い引力相互作用を持つ2次元BECのアナログとして用い、非自明なトポロジーが崩壊のダイナミクスを大きく変え、BECの安定性を高めて崩壊時間を1桁遅らせることを示した。トポロジーが量子流体力学に及ぼす影響の直接的な実験的兆候を測定し、崩壊を導く引力非線形性と多重電荷渦のトポロジカル電荷保存との競合を明らかにし、最終的な「ソリトン化」を励起スペクトルのモード構造と関連付けた。

Electronic Structure and Superconductivity in La$_{1.55}$Sr$_{0.45}$CuO$_4$/La$_2$CuO$_4$ Artificial High-$T_c$ Superlattices Probed by Hard and Soft X-ray Spectroscopy
量子物質設計により作製したLa1.55Sr0.45CuO4/La2CuO4(LSCO/LCO)人工高Tc超格子では、LCO層厚Lと超格子周期dの比L/dを変えることで超伝導ドームを制御できる。本研究は硬X線光電子分光(HAXPES)と偏光依存軟X線吸収分光(XAS)を組み合わせ、L/dで調整された超伝導ドームを横断して電子構造がどう変化するかを調べた。系統的な化学ポテンシャルの変化に加え、フェルミ準位近傍のスペクトル重みの増大、局所的・非局所的スクリーニングの兆候の増強、ドーム頂上付近での面内軌道分極の増大が観測された。これらはLSCO/LCO系におけるファノ・フェッシュバッハ共鳴超伝導の発現機構に知見を与える。

-2026/9/2--
AutoXRD: Autonomous LLM Agents and Comprehensive Evaluation for Powder Diffraction Analysis
粉末X線回折(XRD)の信頼できるエンドツーエンド自動化は依然困難である。本研究はXRD解析を段階的リートベルト精密化として整理し、観測証拠に基づいて行動を決定し、結果採択前に決定論的な結晶学的・物理的チェックを行う自律LLMエージェント枠組みAutoXRDを提案。診断課題100問と実行可能ワークフロー34件からなるXRDBenchで10種のLLMを1,340回評価した結果、平均57.8点にとどまり、精密化行動の選択や相定量に弱点があると判明した。

Green-function Zeros Encode Competing Mott and Charge-ordering Scales
相関絶縁体は低エネルギー準粒子ポールを欠くが、そのグリーン関数は零点を通じて明瞭な運動量構造を保持する。拡張Hubbard模型を解析的・数値的に研究し、グリーン関数零点の分散が微視的なスピン相関と欠陥の運動学の双方で決まるという新しいパラダイムを確立した。この分散はMott相と市松模様電荷密度波相の間の転移で1次転移らしく不連続に変化する。零点の分散こそが強相関に起因する秩序の物理を符号化している。

Temporal Signature of Bosonic Stimulation Induced by Dark Exciton in a Two-photon Pumped Polariton Condensate
強結合した励起子ポラリトンは高温でも凝縮が可能で、アクセス不能な「ダーク」状態との相互作用を含め光学的に制御できる固体プラットフォームである。本研究は時間分解フォトルミネッセンス分光により1光子および2光子励起下の凝縮を調べ、ダーク励起子誘起のボソン誘導放出の時間的兆候を初めて示した。2光子励起では2p励起子から下部ポラリトンへのTHz遷移が追加の誘導チャネルを与え、高効率THzレーザーの実現を促す。

Higher-Winding Fractionalization
高巻き数スキルミオン構造は単位胞あたり複数の磁束量子を持つ創発磁場を生成でき、微視的単位胞の整数フィリングでも分数化された量子異常ホール状態が生じうる。本研究は、創発磁場の格子スケールでの不均一性が増すと分数化液体と結晶性誘電体状態との間のBKT転移が駆動されることを示した。この転移はトポロジカルな指標を伴い、磁束挿入下の多体分極が定義する量子化された巻き数は分数化相で非零、誘電体結晶で消失する。

Duality between the level statistics of Hermitian and non-Hermitian random matrices
ランダム行列理論において、エルミートおよび非エルミートランダム行列の準位統計の間に大N極限での厳密な双対性を発見した。フェルミオン非線形σ模型で与えられる2つのレプリカ分配関数が解析接続で結ばれ、対称性クラスごとに作用する。3つのWigner-Dysonクラスに適用すると非エルミート行列の普遍的バルク固有値対相関関数が得られ、転置対称性で整理されるDyson三重の非エルミート版を確立した。7つの非標準AZクラスにも適用した。

A Human-AI Theorem Connecting Spontaneous and Field-Induced Mechanisms of Collective Behavior in One Dimension
AIが人間の共同研究者の能動的仮説空間の外側にある科学的仮説を生成できるかを問い、その実例を示すとともに定理を証明した。任意の不均一な最近接・次近接相互作用を持つゼロ磁場O(n)ベクトル開鎖が、温度に依らないハミルトニアンレベルの写像により、最近接相互作用と軸方向単一スピンポテンシャルを持つより単純なO(n)開鎖と等価であることを示す。フラストレートJ₁-J₂模型を正準J-h磁場模型へ写像し、Potts鎖の厳密解も導く。

Multi-image Overlap Stitching and Automatic Image Construction for Coherent X-ray Imaging
実空間コヒーレントX線イメージング(direct-CXI)は単一視野を超える磁区構造の可視化を可能にするが、広域測定にはラスタ走査が必要で数百枚の部分的に重なる画像を正確に位置合わせ・結合する必要がある。本研究は自動スティッチングワークフローMOSAICXを提示する。反強磁性トポロジカル絶縁体MnBi₂Te₄の434枚のdirect-CXI画像に適用し、撮像アーティファクトや検出器欠陥を抑制しつつ広域の磁区・磁壁構造を再構成した。

Comment on "Distinct Behaviors of Inner and Outer CuO$_2$ Planes in Quadruple-Layer Cuprate (Cu,C)Ba$_2$Ca$_3$Cu$_4$O$_{11 + δ}$"
Sunらは4層系銅酸化物CuC-1234の光電子分光から内側面(IP)と外側面(OP)に対応する2つの超伝導ギャップを報告し、大きいギャップがバルクTc(117 K)で、小さい方が70 Kで閉じることを見出した。本コメントは、観測されたTcとTc2の値が、結晶学的結合長から計算される結合原子価和パラメータV+とTcの長年の相関と完全に整合すると指摘する。あたかも2つのほぼ非結合の超伝導体が単一化合物内に存在するかのようである。

XUV Transmission Spectroscopy Using a Tabletop High-Harmonic Source
高次高調波発生(HHG)は極端紫外(XUV)域のコヒーレント超短パルス光源を提供する。本研究はYb:KGWレーザー(PHAROS)を駆動源、Arガスを非線形媒質とするHHG系を構築し、59次に相当する光子エネルギー70.6 eVまでの高次高調波を観測した。応用としてMg薄膜とSi₃N₄メンブレンの透過率を測定し、XPSによるMg薄膜の表面化学状態評価と比較して、表面酸化などの表面状態とXUV透過率の関係を検討した。

Heavily Sr-Doped La$_{2}$SrNi$_{2}$O$_{7-δ}$ as a Tetragonal Ruddlesden-Popper Phase at Ambient Pressure
2層Ruddlesden-Popper(RP)ニッケル酸化物では高圧下や薄膜の圧縮歪みで高温超伝導が見出され、超伝導状態ではc軸方向のNi-O-Ni結合が直線的な正方晶構造が共通して観測される。本研究は高圧高温フラックス法で高濃度SrドープLa₂SrNi₂O₇₋δの合成に初めて成功した。正方晶(I4/mmm)で結合角180°を確認したが、圧力・酸素量のいずれでも超伝導は誘起されない。Ni-3d_z²バンドのハーフフィリングからの大きなずれが原因と帰結した。

Expanding the trilayer Ruddlesden-Popper nickelate family: Synthesis and characterization of Sm$_4$Ni$_3$O$_{10-δ}$ single crystals
3層RPニッケル酸化物La₄Ni₃O₁₀₋δとPr₄Ni₃O₁₀₋δは加圧下でバルク超伝導を示すが、より小さい希土類元素での3層相合成は極めて困難であった。本研究はサマリウム系Sm₄Ni₃O₁₀₋δの高圧高温合成に初めて成功した。磁化・輸送測定は常圧で約180 Kの密度波転移を確認する。層間頂点酸素に関わるNi-O-Ni結合角は180°より遥かに小さく、80 GPaまで加圧しても超伝導は観測されなかった。

Anti-higher-order topological insulators
双対性は粒子と正孔のような相補的対極を結ぶ物理の基本概念である。トポロジカル絶縁体では状態が境界に局在するが、その双対的対応物は未探索であった。本研究は反トポロジカル状態を導入し、反高次トポロジカル絶縁体を例示する。高次トポロジカル絶縁体で状態が角に局在するのとは逆に、反高次トポロジカル絶縁体では状態が辺に沿って存在し角には現れない。逆向きチャーン数を持つ2層チャーン絶縁体でこの現象を実証した。

Anti-higher-order Weyl semimetal
高次トポロジーは角やヒンジに局在する状態によりバルク境界対応を拡張する。本研究は従来の境界階層が反転した3次元位相である反高次ワイル半金属を同定した。従来の高次ワイル半金属ではバルクトポロジーがヒンジフェルミアークを強制するのに対し、この相では特定のヒンジ方位で状態が消失する反ヒンジ状態が生じる。最小2バンド模型により、ワイル点が量子異常ホール領域と反高次トポロジカル絶縁領域にブリルアンゾーンを分割することを示した。

Agentic programs: an emerging form of scientific software in computational materials science
計算材料科学は従来、アルゴリズム的タスクを計算機に委ね、科学的判断は人間に残してきた。本論文は、近年のLLMベースのエージェントハーネスにより「エージェント的プログラム」という新しい形態の科学ソフトウェアが可能になったと論じる。これは決定論的アルゴリズムと限定されたLLM判断、タスク固有の検証、エピソード的な成熟、本番環境での完全委譲を組み合わせたものである。実験で測定された無秩序結晶構造から原子モデルを構築するDeMARSで例示する。

Magnetic quantum defects in a uniaxial antiferromagnetic insulator
点欠陥は量子ビットや単一光子源、ナノスケールセンサとして量子技術に利用されてきたが、適切な欠陥-母体系の発見が課題である。本研究は偏光分解ラマン分光とテラヘルツ吸収分光により、一軸性反強磁性絶縁体Cr₂O₃中に3種のクロム空孔誘起励起を発見した。最低の64 cm⁻¹モードは鋭く容易軸方向の磁場に敏感で、6 T付近のスピンフロップ領域で27 cm⁻¹まで軟化する。第一原理計算から空孔状態の局所磁気励起と解釈した。

Resolving unconventional gap structure in kagome superconductors with hybrid microwave circuits
非従来型超伝導では対称性の決定が微視的起源の解明に不可欠だが、カゴメ超伝導体のペアリング対称性は未解明である。超伝導ギャップ構造は通常電磁応答で調べられるが、薄片試料には適用困難であった。本研究は薄片をマイクロ波回路に組み込み、非接触結合により超流動応答へ非侵襲的にアクセスした。二準位系損失を抑制する素子設計により固有応答を分離した結果、超流動密度は低温で線形となりノード的ギャップ構造と整合した。

First-Principles Electronic Structure Calculation of Crystals in Laboratory Magnetic Fields
外部磁場は結晶の電子構造を質的に変えるが、実験室スケールの磁場での第一原理計算は磁束量子化のため磁気単位胞が巨大となり困難であった。本研究は磁気並進対称性が要求する位相因子を組み込んだゲージ込みガウス型原子軌道の線形結合から磁気ブロッホ基底を初めて構築した。実空間や平面波表現より遥かに少ない基底関数で済み、原子中心基底の疎性も保持する。グラフェンのランダウ準位スペクトルを第一原理から再現し検証した。

Probing Nonlinear Interactions of Dipolar Interlayer Excitons in MoSe$_2$/WSe$_2$ Heterobilayers
遷移金属ダイカルコゲナイド・ヘテロ2層の層間励起子は固有の面外双極子モーメントを持ち、高密度での励起子間相互作用の研究に適する。CVD成長MoSe₂/WSe₂について励起エネルギー依存のPLE分光で非線形応答を調べた。共鳴励起は層間励起子PLの飽和と面内1s共鳴の見かけの広がりをもたらす。層間励起子発光は4 Kで約2.5 meV、75 Kで1 meVの顕著な青方偏移を示し、双極子間反発を含む正味の斥力相互作用と整合する。

Robust thermodynamics constrain disorder and pairing in far-overdoped Tl$_2$Ba$_2$CuO$_6$
オーバードープ銅酸化物における超伝導のホールドープ抑制の物理的起源は未解明である。マイクログラム級のTl₂Ba₂CuO₆結晶の電子比熱を測定し、Tc=14-25 Kという深いオーバードープ域まで鋭い超伝導異常が持続し、Δγ(Tc)/γn≈0.6となることを見出した。既知のフェルミ面と陽イオン乱れを取り込んだ弱結合BCS的枠組みが観測された異常とその弱いドープ依存性を定量的に再現する。Tc(p)は乱れの増大ではなく対相互作用の滑らかな減少で説明される。

Geometry-Controlled Magnetic and Electronic Landscapes in Anisotropic van der Waals Materials
ファンデルワールス材料の電子構造は通常、組成や歪み、静電ゲート、ヘテロ構造で制御される。本研究は基板形状が異方的結晶を局所的に再配向させ、一様な外部摂動をプログラム可能な磁気・電子ランドスケープへ変換する概念「ジオメトロニクス」を導入した。反強磁性半導体CrSBrの2層を逆ピラミッド型ナノ圧痕上に転写すると、単一連続結晶内で反強磁性相と強磁性相が共存し、最大10-12 meVの切替可能な励起子ポテンシャル井戸が生じる。

Interferometry reveals spin-singlet fractional quantum Hall edges in graphene
スピン一重項分数量子ホール相の端モードは多成分トポロジカル秩序とSU(2)スピン対称性の現れである。原型であるν=2/3の非偏極状態の端では電荷モードと中性スピンモードが逆伝播しつつ空間的に共存すると期待される。本研究はp-n接合により逆極性の整数量子ホール状態をプローブとして接続し、スピンに敏感な端プローブを開発した。同一スピンのときAB干渉計が形成され、非偏極端でのスピン電荷分離と再結合による新奇な多粒子AB干渉が現れた。

Tunneling characteristics of twisted double bilayer graphene heterostructures
異なる小さな角度でねじられたベルナル型2層グラフェンシート間の電子トンネリングを実験・理論の両面から研究した。電流電圧特性は共鳴ピーク、ステップ、負性微分抵抗領域を示し、その起源は隣接層のエネルギー・運動量シフトした電子分散の交差で説明される。理論解析により、同種バンド間と異種バンド間の2つの寄与の競合が鍵であることを示した。変位電場による副層間の波動関数偏極がトンネル確率に強く影響し、負性微分抵抗を増強する。

Simulating Continuous-Rotation 3D Electron Diffraction: A Multislice and Bloch Wave Framework
3次元電子回折(3D ED)実験の実測強度と計算強度の一致を高めるには、種々の構造的・実験的パラメータの影響を評価するシミュレーションパイプラインが必要である。本研究はabTEM Pythonパッケージ上に、ブロッホ波法とマルチスライス法の両方で連続回転3D ED データをシミュレートするパイプラインを構築した。立方晶シリコンとその歪み変種で主要パラメータの収束性を検証し、SrTiO₃やα-グリシンなど7化合物で妥当性を確認した。

No source-free exchange-correlation magnetic fields in non-collinear spin DFT
交換相関磁場B_xcに対するマクスウェル的条件∇·B_xc=0は非共線スピンDFTの厳密条件ではなく、大域的スピン回転対称性を破ることを示す。実際上どの程度問題かを調べるため、無発散のB_xcを与えつつ汎関数微分であり一様電子ガスで厳密な形に親汎関数を修正した。LSDAを親とするMn₂では、この構成は実験通りの¹Σg⁺反強磁性状態を与える一方、磁化の剛体回転でE_xcが約1 eV変化するなど対称性の破れが深刻な帰結をもたらす。

Understanding the superconducting proximity effect in semiconductors through quantum oscillations
超伝導体-半導体ハイブリッドは新奇量子ビットの舞台だが、超伝導金属が輸送を短絡するため従来の半導体特性評価ができない。本研究はAl, Sn, V, Nb, Ta, Re膜下に埋め込まれたInAs量子井戸のShubnikov-de Haas振動から、短絡を考慮したDingle解析により密度、質量、g因子、移動度、サブバンド占有を決定した。全ての金属が界面サブバンドを付加するが、埋込井戸の質量とg因子は10%以内で不変であり、AlとSnは量子寿命を延ばした。

-2026/9/1--
Emergent hydrodynamic response and dynamical backreaction: Magnon bound-state propagation in a Bose-Hubbard fluid
1次元Bose-Hubbard媒質中を伝播する2マグノン束縛状態の非平衡応答を研究。Holstein型結合によりマグノン密度が化学ポテンシャル摂動とボソン源の両方として働く。長波長流体力学理論を導出し行列積状態シミュレーションと比較した。Mott領域では変形が対に局在し、圧縮性領域では2つの逆伝播フロントが分離して音速に近づく。結合は束縛状態を減速させる動的バックリアクションも誘起し、流体力学が定量的に有効な範囲を明らかにした。

Statistical Properties of a Fluctuation-Driven Nanomechanical Duffing Resonator
両端固定ナノ機械ビーム共振器の複数モードにおける揺らぎ駆動非線形ダイナミクスを調査。各モードを共振周波数近傍のガウス型力ノイズで駆動し、力の大きさを増大させて調和領域から非線形Duffing領域への遷移を誘起した。モード揺らぎ振幅に基づく有効温度を導入して特性評価を行い、大振幅で非線形性が顕著になると有効熱エネルギーが減少し、応答統計がガウス分布から扁平尖度分布へクロスオーバーすることを観測した。

Determinant Quantum-Quantum Monte Carlo: Coherent Auxiliary-Field Sampling
行列式量子モンテカルロ(DQMC)の補助場サンプリングを量子計算機上に持ち上げる量子アルゴリズムDQ²MCを提案。量子特異値変換により行列式オラクルがDQMC振幅を直接合成し、指数的に多いHubbard-Stratonovich重みを列挙・保存する必要がない。固定補助場でフェルミオンが自由なため単粒子レベルで動作し、O(log N)量子ビットのみを要する。フェルミオン符号問題が量子弱値に厳密に対応することも示した。

Floquet engineering of competing antiferromagnetism and $d$-wave superconductivity on the square lattice
駆動Lieb-Hubbard量子シミュレータを提案し、その前熱化ダイナミクスが独立に調整可能な斥力オンサイト相互作用と引力ボンド相互作用を持つ正方格子スピン1/2フェルミオン模型を実現することを示した。サイト軌道とボンド軌道間の電荷移動オフセットを周期変調することで合成的な負U中心を生成する。ハーフフィリングの平均場計算では反強磁性とd波超伝導が隣接する相と狭い共存領域が現れ、両秩序の激しい競合が示唆される。

Benchtop Momentum-Resolved Phonon Spectroscopy: Unlocking Lattice Dynamics via X-ray Diffuse Scattering
運動量分解フォノン分光は通常大型放射光施設や中性子施設を必要とするが、市販の卓上型SAXS/WAXS装置を用いた熱散漫散乱(TDS)パターンの高精度測定と定量解析を実証した。低エネルギー(8 keV)X線源とカスタム真空配置により、シリコン(111)と(100)基板の特徴的なTDSパターンを取得。大域最適化により原子間力定数を抽出でき、ブリルアンゾーン全体のフォノン情報への低コストなアクセスを可能にする。

Direct Evidence of Unconventional Superconductivity in Doped Kagome system RV$_3$Sb$_5$
カゴメ金属の超伝導ペアリング対称性を、不純物束縛状態分光により解明。電荷密度波不安定性が完全に抑制された最適ドープRbV₃Sb₅を走査トンネル顕微鏡で調べた。超伝導状態は完全ギャップ型で、多バンド秩序変数と整合する2つの異なるエネルギースケールを示す。非磁性欠陥まわりの束縛状態は顕著な粒子正孔非対称性を示し、従来のs波やs±ペアリングとは非整合で、カイラル秩序変数と完全に一致する。


Revealing low-energy surfaces of multinary compounds by controlling surface coordination environments
多元系化合物の表面モデリングでは、従来の劈開面が強く結合した多面体を切断し非物理的な表面エネルギーを与えてしまう。本研究は対称・電荷中性・双極子なしの低エネルギースラブモデルを生成するPythonパッケージSALAMIを開発した。組合せ探索により表面原子を選択的に除去し最適な配位環境を保つ。Li₃PS₄とZnSb₂O₆に適用し、局所配位環境の制御が表面エネルギー予測に不可欠であることを示した。

Design and Modeling of the Charge Readout of a SiMOS Quantum Dot with a Single Electron Transistor and CryoCMOS
SiMOS量子ドットに捕捉された単一電子スピン量子ビットは成熟したCMOS製造プロセスとの互換性から百万量子ビット規模へのスケーリングに有望である。単電子トランジスタと極低温CMOS増幅・デジタル化チェーンを組み合わせた読み出し系は、大型RF部品や室温相互接続を回避できる利点を持つ。最適化された量子ビット-SET-cryoCMOSインタフェースの設計手法とシミュレーション結果を示し、QNDR1 ASICの設計に結実させた。

Chiral Tubular Magnonic Crystals with Periodic Dzyaloshinskii--Moriya Interaction
界面Dzyaloshinskii-Moriya相互作用(DMI)を周期変調した強磁性ナノチューブからなるカイラル管状マグノニック結晶を提案。円筒形状に適合した平面波形式でスピン波バンド構造を計算した。管状形状は周期DMIの役割を平面系と質的に変え、曲率が界面DMIの一部を有効異方性的な内部磁場に変換する。その結果DMI被覆領域がポテンシャル井戸にも障壁にもなり、平面系に対応物のない平坦マグノンバンドが出現する。

Giant staggered Dzyaloshinskii-Moriya vectors emerged in synthetic antiferromagnets with spatially alternating stress
DM相互作用はカイラル磁性物理の源であり、その制御とDMベクトルの秩序化がスピントロニクスの新パラダイムに不可欠である。独自の応力機構により交互の機械歪みを導入して構造対称性を明確に破ったCo/Ru磁性超格子で、強い層間DM相互作用が発現することを報告。理論解析からこの超格子がDMベクトルの千鳥状(staggered)秩序を持つことが明らかになり、DM相互作用の強度とベクトル秩序の制御が可能であることを実証した。

Coherent phononic frequency combs in ferroelectric CMOS oxides
現代の電子システムは多数のクロック周波数を必要とし、各々に専用PLLを要する負担がある。強誘電性ハフニア・ジルコニアのCMOS酸化物ナノ電気機械共振器で広帯域フォノン周波数コムを実現した。2:1内部共振の離調をリソグラフィで規定して生成機構を選択でき、2音波混合では2オクターブに170本超、自律的Hopf経路では200本超のコムが得られる。0.44-2.1 GHzに拡張可能で、短期・長期安定性の二重時間スケール則を確立した。

Surface-mediated frequency aging beyond quality-factor saturation in an AlScN-on-silicon resonator
微小電気機械共振器の真空封止健全性は通常Q値で評価されるが、Qは残留ガス減衰を測るのみで周波数経年変化を支配する表面状態変化を捉えない。64.21 MHzのAlScN-on-Si共振器で0.01-760 TorrにわたりQと共振周波数f₀の圧力応答を分離した。Qは可逆で履歴によらず約1 Torr以下で飽和する一方、f₀は10⁻⁵ Torrまで応答し履歴依存で数時間緩和する。Q飽和だけでは真空封止の適格性判定に不十分である。

Can a Spin Liquid State Persist as the Ground State in the Presence of Competing Interactions and Disorder?
幾何学的にフラストレートした格子において、下地の相互作用が競合して異なる磁気相を安定化することを示した。揺らぎと相まってこれらの相互作用は特異な秩序相の形成をもたらし、揺らぎ駆動のorder-by-disorder現象の理解への道筋を与える。この競合は2次元フラストレート格子に内在する構造乱れによりさらに変化する。乱れの局所性のため多くの試料はグラス的ダイナミクスへ向かい、スピン液体的振る舞いを模倣して真の候補物質の同定を困難にする。

Probing spin order via magnon transmission across quantum Hall ferromagnet heterojunctions
2次元材料の希薄なスピン密度は従来の磁気プローブを無効にするが、量子ホール強磁性体(QHFM)中のマグノンは磁気秩序の探索に有効である。本研究は単層-二層グラフェンQHFMヘテロ接合を横切るマグノン伝送を初めて実証。単層グラフェンのν=1でマグノンを生成し、二層グラフェンを通した伝送を非局所電圧測定で検出した。ゼーマンエネルギーでの急峻な立ち上がりなど特徴的な兆候を示し、モジュール型の磁気秩序プローブを確立した。

Real-space manifestation of ferroic multipoles in altermagnetic MnF$_2$
交代磁性体は磁気多極子秩序変数を持つが、その実空間での直接観測は困難だった。本研究は偏極中性子回折により代表的アルターマグネットMnF₂の3次元磁化密度を再構成した。対称性選択的な磁気反射を利用し、支配的な球対称Mn²⁺寄与から微弱な異方的Mn磁化とフッ素配位子の共有結合スピン偏極を分離。対称性が許すランク5磁気多極子O₅₂と整合する異方的Mn磁化が観測され、強的多極子秩序の実空間証拠を与えた。

Electronic phase separation and emergence of a nondimerized insulating phase in VO$_2$ $(110)_{\mathit{R}}$ ultrathin films
その場光電子分光とX線吸収分光により、VO₂/TiO₂(110)超薄膜における電子構造とV-V二量体化の膜厚依存性を調べた。(110)面では二量体化に幾何学的制約が課されないはずだが、金属絶縁体転移に伴う特徴的なスペクトル変化は1.5 nmまで残り、1 nmでは二量体化なしの絶縁相が現れる。次元性低下によるMott不安定性の増強が非二量体絶縁相出現の共通の駆動力であり、有効臨界膜厚は2.2 nmと見積もられる。

Evolving charge order in the CDW state of AV$_3$Sb$_5$ metals
AV₃Sb₅カゴメ金属では電子秩序と構造秩序が絡み合うが、超伝導相に先行する電子状態の詳細は未解明である。本研究はRbV₃Sb₅に関する先行研究を、回避交差(ALC)ミュオンスピン分光によりA=CsおよびK系へ拡張した。内部磁場だけでは説明できない第2の転移を同定し、V面内の電荷分布を微妙に変化させる追加の電子機構の関与を示唆する。CsとRbではT*<T_CDWで、KではT_CDW近傍で追加の電荷変調が生じる。

Topological pair density waves in kagome superconductors
ペア密度波(PDW)は有限運動量Qでの対形成による周期的変調を示す非従来型超伝導状態である。2次元では複数のQ成分が非自明な相対位相を持ち時間反転対称性を破ってトポロジカル電子構造をもたらす。本レビューはFFLO状態から出発してトポロジカルPDW(TPDW)の概念を紹介し、カゴメ格子での実現可能性、AV₃Sb₅における実験的兆候、超伝導ダイオード効果や異常熱ホール効果など関連する量子効果を議論する。

Quantitative Disentanglement of Terahertz Spin and Orbital Pumping in 3d Ferromagnetic Heterostructures
スピンポンピングと軌道ポンピングは磁気ヘテロ構造における角運動量生成・輸送の基礎過程だが、両者は同時に生成され同一のテラヘルツ放射に加算的に寄与するため定量的分離が困難だった。スピンホール角と軌道ホール角が逆符号のTa, W, Nbを用い、くさび形試料の膜厚制御とテラヘルツ放射分光を組み合わせて両チャネルを定量分解。軌道ポンピング寄与はFeからNiへ増大しスピン寄与の数十%に達し、理論予測を大きく超えることを示した。

Single-pulse strain-induced precessional dynamics of magnetization in Co-doped iron garnet
格子励起による磁化の超高速制御において、過渡歪みの役割は未解明だった。単発ポンププローブ磁気光学顕微鏡により、Coドープイットリウム鉄ガーネットの5 psの中赤外パルス1発に対する構造・磁気応答を分解した。励起は局在歪み場と外向きの弾性波を生成し、磁気コントラストは減少後約1.5-2 nsで反転し初期状態に回復する。マイクロマグネティックシミュレーションは歪みによる磁化の歳差再配向を再現し、過渡格子変形が両者を結ぶ機構と同定された。

Crystal electric field excitations and an effective-spin-$1/2$ ground doublet in the hyperkagome magnet Yb$_3$Sc$_2$Ga$_3$O$_{12}$
非弾性中性子散乱により、希土類ハイパーカゴメ磁性体Yb₃Sc₂Ga₃O₁₂中のYb³⁺の結晶場励起を決定した。58, 68, 74 meV付近に3つのほぼ分散のない磁気励起が観測され、基底Kramers二重項からJ=7/2多重項の3つの励起二重項への遷移に対応する。局所222対称性で拘束したStevens演算子解析はIsing型gテンソルを与える。第1励起二重項が約58 meV上方にあり、有効J=1/2自由度が十分孤立していることを確立した。

Evaluating LLM-based AI agents integrated with materials synthesis tools: the case of atomic layer deposition
大規模言語モデル(LLM)に基づくAIモデル・エージェントの材料合成における性能評価戦略を概観する。現世代のLLMエージェントを支える主要技術を概説した後、材料科学、特に材料合成の文脈での評価手法を、モデルが実験装置と直接統合される場合に重点を置いて整理する。知識・推論ベンチマーク、ツール利用ベンチマーク、実験系との相互作用を伴う閉ループベンチマークを議論し、原子層堆積(ALD)を事例に実践的な評価フレームワークを提示する。

Experimental observation of decoupled spin subsystems in decorated square kagomé lattice magnets of the nabokoite family
正方カゴメ格子(SKL)は2次元系の幾何学的フラストレーション研究の模型プラットフォームである。ナボカイト族化合物は2次元SKL層が層間スピンで装飾された3次元ネットワークを持つ。電子常磁性共鳴(EPR)により、この複雑な交換ネットワークが実質的に非結合な2つのスピン部分系へ劇的に分裂することを実証した。EPR活性なのは銅スピンの一部のみでこれがNéel点で秩序化する。単一化合物内での磁気秩序とスピン液体的ダイナミクスの共存を直接観測した。

Collinear and noncollinear antiferromagnetic ordering in a highly frustrated decorated square kagomé lattice antiferromagnets of the nabokoite family
ナボカイト族化合物ACu₇(TeO₄)(SO₄)₅Xの磁気秩序を、多周波電子スピン共鳴と熱力学測定で研究した。低温基底状態の選択が軽アルカリイオン(K, Na)系と重アルカリイオン(Rb, Cs)系で質的に異なることを明らかにした。重アルカリ系は容易軸異方性を持つ従来型の共線的反強磁性秩序を示す。軽アルカリ系では25-90 Kの強誘電転移がフラストレーションを解消した後、2段階転移を経て非共線的磁気秩序が発達する。

Analogue Phase Change Computational Memory with High Precision Reads and Energy Efficient Writes
抵抗変化型メモリはインメモリコンピューティングに有利だが、高い計算精度・効率・密度を同時に達成する素子構造はトレードオフのため実現困難だった。本研究は、電熱効率を高める超微細な活性スイッチング体積と、時間的なコンダクタンス揺らぎを抑制する非絶縁性薄膜を組み合わせた小型相変化メモリ素子を提案。従来の無添加相変化材料でも6ビットに迫る計算精度と50 μS以下の低コンダクタンスを実現した。

Controlling Intertwined Electronic Orders in FeSe with Exfoliation
2次元超伝導体における絡み合った電子秩序の制御は通常複雑な化学・歪み・界面工学を要する。本研究は非従来型超伝導体FeSeの次元削減という純粋な代替手法を示す。剥離はバルクの電子ネマティック応答を抑制し、超伝導対称性をバルクのs波からd波支配へ切り替える。清浄な結晶端での角度依存アンドレーエフ反射分光では、接合方位の回転に伴いゼロエネルギー束縛状態からコヒーレンスピークへとスペクトルが変化することを確認した。

PINN-Phase: A physics-informed neural network for curvature-driven multiphase-field evolution
多結晶組織のフェーズフィールドシミュレーションは多数の関連事例を長時間発展させる際に高コストとなる。本研究は初期条件から全マルチフェーズ場を発展させ、各ステップで相の上下限と総和1を課す物理情報付きニューラル時間積分器PINN-Phaseを導入した。25結晶粒モデル1つで未知の8組織中7つが所定基準を満たし、粒ラベル不一致は0.94-3.71%。12,000ステップのロールアウトが単一GPUで約5.2分、学習範囲の約3倍の時間まで外挿できる。

Extreme Polarization of the Optical Gap and High-Energy Exciton Landscape in CrSBr
光吸収分光とGW-Bethe-Salpeter第一原理計算により、単層およびバルク的CrSBrの強い異方的励起子構造を明らかにした。面内2つの偏光固有軸に対する最低明励起子X₀ᵃとX₀ᵇの直接測定から、面内光学ギャップ異方性は470±15 meVと決定され、近赤外-可視域の材料として既知最大値である。1.25-3.1 eVには直交2軸に選択的に整列した複数の強偏光励起子を同定し、偏光選択的オプトエレクトロニクスへの可能性を示した。

Evaluating a 4B open-weights local LLM for agentic DFT workflows: a literature reproducibility audit
商用ホスト型モデルに依存する材料科学のエージェント的ワークフローは再現性・経済性・データプライバシーの制約に直面する。本研究は完全ローカルなオープンウェイトQwen3:4Bモデルが自律的科学パイプラインを実行する性能を評価した。五角形2次元材料に適用し、非構造テキストからパラメータを抽出しDFT入力に変換して収束まで駆動する。抽出精度95.7%、再現率67.3%を達成し、対象57研究のうち再現可能なのは19件(33.3%)のみと判明した。

From Freezing to Terminal Packing: A Puzzle and a Paradox
平衡凝固のために開発された密度汎関数理論が、終端充填に近い高密度端点も生成することを示す。非線形Ramakrishnan-Yussouff分岐の枠組みを再検討し、最初の結晶折り畳み、熱力学的共存、終端的マージナリティを区別した。終端点では有限波数密度モードに沿ってグランドポテンシャルの曲率が消失する。1次元剛体棒で厳密な最密充填、剛体円板で約0.8407、剛体球で約0.629(ランダム最密充填に近い)を与え、持続的な謎を提起する。

Magnetic Field-Tunable Repulsive Exciton-Exciton Interaction in the van der Waals Antiferromagnet NiPS$_3$
2次元ファンデルワールス結晶NiPS₃の1.5 eV付近に現れる2本の極めて鋭い吸収ピークは、スピン軌道もつれ三重項から一重項への遷移に由来すると考えられている。本研究は最大178 Tのパルス磁場で系統的な磁気光学測定を行い、2本の鋭い励起子ピーク間の顕著な相互反発と振動子強度の再分配を観測した。一方バンド端には磁場シフトが検出されない。最小2準位相互作用模型と比較し、磁場可変な励起子間結合を明らかにした。

High-Field Terahertz Spin Resonance in Cr$_2$O$_3$ above the Spin-Flop Transition
最大30 Tのパルス磁場中でCr₂O₃の単発テラヘルツ時間領域分光を行った。スピンフロップ磁場より十分高い20-30 Tの範囲で、共鳴周波数はほぼ線形の磁場依存性を示し、その傾きは約22 GHz/Tであった。これは低磁場測定で報告されている28 GHz/Tより小さい。この低減は温度に対しても15°の磁場傾斜に対しても鈍感であり、高磁場領域に固有の性質であることを示唆している。

Harnessing the skyrmion Hall effect for low-power skyrmion transport in a tubular synthetic antiferromagnet
最適制御によりスキルミオンホール効果を、通常は望ましくない横方向運動の源からオーム損失低減の機構へ転換できることを示す。管状形状に閉じ込められた反強磁性結合スキルミオン対では、相対的な横変位が周期的な内部座標となる。有限の層間結合により電流と縦速度の関係が非線形になり、同じ平均速度を異なる電流プロトコルで実現できる。ジュール熱を最小化する最適電流を決定し、非結合極限より低電力での輸送を可能にした。

Magnetic contacts on freestanding superconducting LaAlO$_3$/SrTiO$_3$ micromembranes
LaAlO₃/SrTiO₃界面の超伝導2次元電子ガスは超伝導スピントロニクスの有望なプラットフォームだが、強磁性接点との統合が課題であった。本研究はサイドコンタクト構造によりニッケル強磁性接点を接続した超伝導LAO-STOマイクロメンブレン素子を実現した。低温輸送測定は強磁性接点存在下でも超伝導が保たれることを示す。超伝導状態はニッケル接点の磁気履歴に強く影響され、2DEG中に可変な有効磁場を生成する。

Phonon-Localization-Driven Decoupling of Dual-Channel Transport for Record-Low Intrinsic Lattice Thermal Conductivity
無機結晶固体の格子熱伝導率を最低限まで下げる際の根本的障壁は、粒子的伝播と波動的トンネリングの2チャネル間の競合にある。本研究はフォノン局在がこの2チャネル輸送を分離する頑健な経路を与えることを実証した。弱い鎖間相互作用と重元素が多数の分枝をほぼ分散のない平坦バンドに圧縮する。InSeIで総熱伝導率0.198 W/mK、GaSeIとAlSeIでは0.086、0.089 W/mKという記録的低値を達成した。

Thermal Hall Signatures of Distinct Schwinger-Boson Flux Sectors on the Honeycomb Lattice
熱輸送はフラストレート磁性体の電荷中性励起のバルクプローブとなるが、同一スピン系の異なるパートン平均場構造を区別できるかは未解明である。ハニカム格子で提案されている0フラックス、πフラックス、カイラルπ/2フラックスの3セクターについて自己無撞着な鞍点解を比較した。有限温度Schwingerボソン平均場理論とKubo公式でスピノン熱ホール伝導率を評価し、κxy/Tの符号と温度依存性がフラックスに敏感な輸送シグナルとなることを示した。

Ballistic-to-Localized Dynamics as Signature of Quantum Phase Transition in Josephson Junction
最先端の数値手法により、小容量ジョセフソン接合における量子位相揺らぎと準粒子トンネリングの振る舞いを、オーミック・サブオーミック・スーパーオーミックの各散逸領域で調べた。オーミック散逸の増大はBKT量子相転移を駆動する。スーパーオーミック領域では相転移が起こらず、サブオーミック領域ではスピンボソン模型の普遍性クラスと整合する連続的2次転移が現れる。実周波数線形応答計算は拡散的-局在的ではなく弾道的-局在的な変化を明らかにした。

Chiral superconductors and competing states across a Lifshitz transition in rhombohedral pentalayer graphene
菱面体積層グラフェンではクーロン相互作用と非自明な量子幾何が絡み合い、カイラル超伝導の兆候が報告されている。本研究は5層系のカイラル超伝導周辺の常伝導フェルミオロジーを解明した。量子振動測定は単連結な円形と環状のクォーターメタルフェルミ面間の電気的に制御可能なリフシッツ転移を明らかにする。転移の両側で有効質量が強く増大し、カイラル超伝導がウィグナー結晶相や再入型量子ホール状態と競合する強い不安定性領域を生む。


Van Hove singularities at the $L$-face of the lutetium nitride phonon dispersion
ランタニド窒化物LnNの代表的な4f充填非磁性メンバーであるLuNについて、4 Kでの弾性・非弾性中性子散乱により構造的および振動的性質を報告する。一般化状態密度にピークを見出し、DFT+U計算からの情報を援用してブリルアンゾーンの4重縮退したL面上のファンホーブ特異点に帰属した。本研究はLnNにおけるフォノンダイナミクスの理解をΓ点を超えて前進させるものである。

Chemical Perspectives on Cuprate Superconductivity: Hole-Protected Spin Dimers as d Wave Cooper Pairs
銅酸化物超伝導体のコヒーレンス長が極めて短いことに動機づけられ、CuO₄ユニットへのホールドープの帰結を調べて実空間構造を探索した。本研究で定義した偏析圧力指数の観点から、ホールドープCuO₂層から相分離するホールドープCuO₄ユニットの集合体を解析した。各d波クーパー対は反強磁性ホール二量体(AHD)に保護された反強磁性結合スピン二量体であり、AHDの反強磁性鎖がスピン二量体の集団移動チャネルを与えると示唆される。

Experimental Observation of Mesoscopic Dynamic Fluctuations in Water-Alcohol Mixtures
独自に開発した動的揺らぎ測定法を、幅広い組成と温度の水-メタノール混合液に適用した。この手法は超音波と非弾性X線散乱を組み合わせ、音波を用いて液体中のメゾスコピックな不均一性を検出する。動的揺らぎの強度はアルコール組成が減少するほど、また温度が低下するほど増大した。この傾向は水-エタノールや水-グリセロール混合でも観測され、揺らぎの起源が過冷却水単独の領域にあり、混合が揺らぎを消失させると結論した。

Attosecond Reconstruction of Strain Tensors via Electronic Fingerprints
アト秒過渡吸収分光(ATAS)により2次元材料の歪みテンソルを再構成する手法を実証した。歪んだグラフェンをプロトタイプとして、ATASのフィッシュボーン構造が歪みの特徴的スペクトル指紋となり、ファンホーブ特異点のシフトと分裂が歪みテンソルの大きさと方位をそれぞれ符号化することを示した。密度行列シミュレーションと解析モデルにより過渡吸収スペクトルと歪みテンソルの直接対応を確立し、アト秒歪み計測の枠組みを導入した。

Superconductivity of Tellurium Polyhydride with Tc above 90K
テルル(Te)ポリハイドライドにおける超伝導の実験的発見を報告する。ダイヤモンドアンビルセルとレーザー加熱により高圧高温条件で合成し、その場輸送測定を温度と磁場の関数として実施した結果、263 GPaで臨界温度Tc約91 Kの超伝導転移が観測された。放射光X線回折から超伝導相は面共有TeH₁₂ケージが準分子的H₂ユニットを形成するTeH₄と同定された。GLコヒーレンス長は約47 Åで、H₃Sに続くカルコゲンポリハイドライド超伝導体となる。

Universal tuning of Förster resonance energy transfer in gate-programmable conductor-dielectric-conductor heterostructures
導体-誘電体-導体ヘテロ構造における自発放出とFörster共鳴エネルギー移動(FRET)の普遍的チューニングに関する量子電磁力学理論を構築した。周囲材料からの唯一の微視的入力は2枚のシートのTM/TE反射振幅である。透明極限では近接場FRET速度がバルクのx⁻⁶則を回復し、Dirichlet/PEC分枝では指数関数的に遮蔽される一方、Neumann/PMC的分枝ではほぼギャップレスな横モードが非局所結合を増強する。

Coexisting Large and Small Polarons in Photoexcited CeO$_2$
時間分解テラヘルツ分光によりCeO₂におけるポーラロン形成を探索した。超高速THz光伝導度は大きな正孔ポーラロンと小さな電子ポーラロンの寄与に支配される。非局在的な大正孔ポーラロンは820±50 fsの時間スケールでFröhlich型として形成され、その光伝導度は単純なDrudeモデルで良く記述され過渡正孔移動度は100 cm²/Vsである。小電子ポーラロンはCe格子サイトへの局所結合で形成され、過渡的フォノン軟化として現れる。

Switchable Magnetoelectric Transport in Graphene via a Van der Waals Multiferroic
単層極限まで誘電秩序と磁気秩序を併せ持つファンデルワールス多強性体は界面制御の有望な舞台だが、その特性を活かした電子機能の実現は困難であった。本研究はグラフェンと多強性CuCrP₂S₆のヘテロ構造を実現し、ゲート切替可能な磁気電気輸送を実証した。グラフェンの電荷中性点抵抗ピークは分極反転に由来する顕著なヒステリシスを示し、面内磁場が分極依存的にピークをシフトさせ磁気電気効果の直接的証拠を与える。

Real-space overlap is not enough: ambiguity in nanobeam iterative ptychography
高分解能反復タイコグラフィは通常よく調整された大収束角電子プローブに依存する。本研究は小収束角での実施可能性を検討し、回折ディスクが重ならないほど収束角が小さいと再構成が曖昧になることを実験とシミュレーションで示した。ブラッグディスク間の干渉がないため各反射の位相情報が失われ、格子の剛体並進やコントラスト反転が同じ誤差を与える縮退解が生じる。格子間隔と方位は常に正しく得られるため誤った解が説得力を持ってしまう。

Moiré-induced lattice reconstruction at buried atomic interfaces
ねじれた2次元界面での原子再構成は多くの創発特性を支配するが、多層結晶間のファンデルワールスヘテロ界面の構造変化はほとんど未解明である。本研究はマルチスライス電子タイコグラフィにより、厚い遷移金属ダイカルコゲナイド結晶間のわずかにねじれた菱面体界面の3次元原子構造を非破壊で再構成した。約3 pmの位置精度と約1 nmの深さ分解能で層ごとの再構成場と埋没界面の転位網を分解し、予想を超える強い面内再構成を観測した。

Exact fluctuation relations in voltage- and temperature-biased Laughlin-edge constrictions
量子ポイントコンタクト(QPC)を介して結合した2つのLaughlin端状態について、実験的にアクセス可能なカイラル電流の自己相関・相互相関を、トンネル電流ノイズとコンダクタンスに結び付ける非平衡ゆらぎ散逸関係を包括的に解析した。異なる温度と電圧に保たれた2つの端状態について、これらの関係が任意のトンネル強度・電圧バイアス・端状態温度で厳密に成立することを示し、空間的に広がったQPCなどへの一般化も行った。

Fine structure of the M-center in Si
シリコン中の色中心はスケーラブルな量子技術に有望である。炭素-水素複合体に由来するとされるMセンターは通信波長帯発光と常磁性基底状態を提供する。本研究はMセンター近傍の発光線を報告し、温度・注入量・注入同位体・アニール温度への依存性を調べた。761 meVのゼロフォノン線から1.1, 2.8, 3.6 meV青方偏移した3本を観測し、うち2.8 meV線は負の熱消光を示すためMセンターの第2励起状態に由来すると提案する。

On the relaxation problem in statistical mechanics
統計力学における緩和問題を、緩和の対象となる操作的対象、すなわち記録された信号Z(t)の局所時間統計を明示することで再定式化する。この局所時間統計は、時計を持たない観測者が一様ランダムな時刻に行った観測のヒストグラム推定値に他ならない。有限の束縛された系では予測の大域的不可逆緩和が起こりうるが特別な初期条件も存在する。エントロピーは観測者と系の未知の過去との間の相互情報量として学習論的に解釈される。

Breakdown of Charge-Conjugation Symmetry of Disclinations in 2D Crystals
ディスクリネーションは2次元結晶膜の基本的トポロジカル欠陥だが、その弾性的性質はほとんど未解明である。原子論的シミュレーションにより自立グラフェン中のディスクリネーションのエネルギー・形態・相互作用を扱った。正の位相電荷は予想通りの振る舞いを示す一方、負のディスクリネーションは電荷に対して劣線形なエネルギースケーリングと従来の鞍型仮定から大きく外れる平衡形状を示す。正同士は反発し負同士は長距離引力を示す。

Interfacial Spin-to-Charge Conversion in Sputtered MoTe2 Heterostructures Probed by Spin Pumping and Spin-Torque Ferromagnetic Resonance
MoTe₂などのワイル半金属相の遷移金属ダイカルコゲナイドはスピン軌道トルク応用で注目されるが、変換がバルク由来か界面由来かは不明だった。本研究はスピンポンピングとスピントルク強磁性共鳴でMoTe₂のスピン電荷相互変換を調べた。膜厚依存測定は変換効率がMoTe₂膜厚にほとんど依存しないことを示し、変換がバルク輸送ではなくPy/MoTe₂界面のRashba-Edelstein効果に支配されることを明らかにした。

Orbital and Spin Edelstein Effects in KTaO$_3$(110) Two-Dimensional Electron Gases
軌道Edelstein効果は電場を非平衡軌道分極に変換しオービトロニクスの新展開を開くが、その微視的機構と定量的検証は不十分である。本研究はKTaO₃(110)2次元電子ガスの原子構造をバンド分散に直接結び付け、スピン対応物をほぼ打ち消す軌道Edelstein効果を予測し実験的証拠を与えた。STEM/EELSで界面原子配置を分解し、ARPESでバンド構造を確認、高調波磁気輸送から約20%の軌道寄与が必要であると示した。

Device characterization of Si$/$SiGe double quantum dots using exchange oscillations in Earth's magnetic field
交換相互作用ベースの半導体量子ビットは零磁場動作が可能なものを含むが、その特性評価は多軸制御較正や意図的な磁場勾配に依存しがちである。本研究は同位体濃縮Si/SiGe中の残留核スピンによる内在的磁場勾配を利用し、マイクロマグネットや動的核偏極なしで2量子ドット間の交換振動を実現した。CPMG列によりコヒーレンス時間をT₂*=1.17 μsからT₂=74.8 μsへ延長し、数十kHz域の残留交換を分解した。

Overcoming critical slowing down in frustrated spin systems by learned multiscale sampling
SwendsenやWolffなどのクラスターアルゴリズムは臨界緩和の抑制に有効だが、極めて弱いフラストレーションが存在するだけで破綻する。本研究はクラスターを構成するのではなく学習することでこの限界を回避した。ウェーブレット条件付き繰り込み群(WCRG)により2次元ソフトスピン模型の集団揺らぎの確率分布を学習し、粗いスケールから細かいスケールへ再帰的に配置を生成する。サンプリング複雑度はO(log L)となり局所MCMCより大幅に効率的である。

Microwave-Induced Optomagnetism in High-Temperature Superconductors
高温超伝導体において定常的なマイクロ波駆動の逆ファラデー効果を初めて実験的に観測した。円偏光マイクロ波がエピタキシャルYBa₂Cu₃O₇₋δ膜にヘリシティ依存応答を生じ、ホモダインホール輸送で検出された。この光磁気応答はTc以下でのみ現れ常伝導状態では消失し、直線偏光では対応物がない。実効変換効率は1.75 T/(W cm⁻²)に達し光学的基準を数桁上回る。高出力では渦糸位相スリップ領域の開始により信号が崩壊する。

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