BCS超伝導シミュレータ~これであなたもSuper Conductor!~

イントロ

身の回りにある物質、絶縁体や半導体、そして金属の振る舞いは、物質中に存在する電子の応答により決まる。こうした物質中の電子の振る舞いを記述しようとする物理学の一分野が Condensed matter physics、いわゆる凝縮系物理学である。Condensed matter の中でも最も劇的な現象が、超伝導現象であるといっても過言ではないだろう。超伝導現象は、ある温度以下で電気抵抗が突然ゼロになるという驚きの現象である。

この現象を説明する理論が、バーディーン、クーパー、シュリーファーの3人の理論物理学者が提唱したいわゆる BCS 理論である。BCS 理論に基づけば、物質中の電子が格子振動を媒介にクーパー対と呼ばれる2電子ペアを組むことが超伝導の起源であるとされている。この BCS 理論を使って計算すれば、例えば比熱の温度依存性や同位体効果といった超伝導に関わる各種現象を説明することができる。では、例えば超伝導の起源となる電子と格子の相互作用パラメータを変化させたら、各種物性はどのように変わるのだろうか?

そこで本記事では、BCS 理論に基づき、超伝導状態における各種物性が、温度や電子格子結合定数といったパラメータを変化させた時にどのように変化するか、一括で確認できるシミュレーター、その名も BCS 超伝導シミュレーターを作ってみたので、記事として紹介する。Claude Opus 5.5 を使って、赤子と動物園を回っている間に作れたのだから、すごい世の中である。パラメータをいじってみて、超伝導に関わる物性に興味を持ってもらえたら嬉しいな。

これであなたも超伝導の案内人、Super Conductor!

シミュレーター

ここから下が BCS 超伝導シミュレーター本体です。左のパネルでパラメータを動かすと、導出量とグラフがその場で更新されます。

BCS 超伝導シミュレーター

弱結合・等方的 s 波の BCS 理論で、ギャップ方程式を数値的に解いた Δ(T) を求め、そこから比熱、熱力学的臨界磁場、トンネルスペクトルを描きます。常伝導状態は「フェルミ液体シミュレーター」と同じく、3次元等方の単一放物線バンドで表します。

導出量

測定温度での値

グラフ

見たいグラフの名前を押すと、下に表示されます。選んだ組み合わせはこのブラウザに保存されます。

前提と注記

A. 文献にある式

  1. ギャップ方程式、Tc = 1.13 ħωD exp(−1/N(0)V)、Δ(0) = ħωD/sinh(1/N(0)V)、比熱の飛び 1.43、凝縮エネルギー ½N(0)Δ(0)²(N(0) は1スピンあたり)[1] [2]。BCS の原論文では係数を 1.14 としている。正確な値は 2eγ/π ≈ 1.134(γ はオイラー定数)。
  2. エントロピーは独立なフェルミ準粒子の式を、準粒子エネルギー E = √(ξ² + Δ²) で評価する [1] [3]。
  3. α モデル:Δ(T)/Δ(0) の温度依存と準粒子スペクトルは BCS のままとし、Δ(0)/kBTc だけを調整する。熱力学量はエントロピーから求める [3] [4]。自己無撞着な理論ではない。
  4. Dynes の状態密度 [5]。もとは Pb0.9Bi0.1 の SIS 接合で準粒子寿命を測るために使われた現象論的な式。
  5. コヒーレンス長 ξ0 = ħvF/(πΔ(0))、London の侵入長 λL = (m*/μ0ne²)1/2、Hc(T) の経験則 1 − (T/Tc)² [2]。
  6. Mattis–Bardeen の光学伝導度。汚れた極限(常伝導の σn が周波数によらない)での式 [10]。和則:欠けたスペクトル重み ∫(σn − σ1)dω が、超流体の重み (π/2) lim ωσ2 = (π²Δ/2ħ) tanh(Δ/2kBT) σn に等しい。
  7. コヒーレンス因子:超音波吸収はケース I で αs/αn = 2f(Δ)、NMR 緩和率はケース II で Tc 直下にピークをもつ [1] [11] [2]。
  8. 不純物散乱で決まる電子熱伝導率の比 [12]。常伝導は Wiedemann–Franz 則 κ = L0T/ρ、L0 = 2.44×10−8 W Ω/K²。
  9. スピン磁化率とナイトシフトのスピン部分は Yosida 関数 Y(T) に従って減る [13] [2]。常伝導はパウリ磁化率。
  10. 横磁場 μSR:理想的な三角磁束格子の磁場分布の幅。Brandt の式 [14]。
  11. 反射率:複素伝導度から誘電関数 ε = ε∞ + iσ/ε0ω と複素屈折率 N = √ε を作り、垂直入射のフレネル式 R = |(N − 1)/(N + 1)|² で求める [2]。数値の桁落ちを避けるため、1 − R = 4n′/[(n′ + 1)² + n″²] を直接計算してから R にする。
  12. BTK 理論:常伝導金属と超伝導体の界面での、アンドレーエフ反射の確率 A と通常の反射の確率 B。Z = 0 でギャップ内の伝導度は常伝導の2倍、Z → ∞ で状態密度に近づく [16]。準粒子の寿命は E → E + iΓ として入れる(後続文献で広く使われる形)。
  13. Ambegaokar–Baratoff の式:同じ超伝導体どうしのトンネル接合の IcRn [17]。SIS の準粒子電流は両電極の状態密度の畳み込み [2]。
  14. 可逆な磁化曲線の面積は凝縮エネルギーに等しい(熱力学の関係)。Hc1/Hc2 = (ln κ + α(κ))/2κ²、α(κ) = 0.49693 + exp(−0.41477 − 0.775 ln κ − 0.1303 ln²κ)(GL 理論の数値解へのフィット)[14]。高 κ では Hc1 ≈ Hc(ln κ + 0.5)/√2κ [2]。
  15. ARPES:強度はスペクトル関数とフェルミ分布の積に比例する。BCS のスペクトル関数は、重み uk²、vk² の2本のローレンツ関数で表される [15] [1]。k を固定した EDC ではピークは −Δ にずれるだけで鋭くならない。ギャップ端に積み上がるコヒーレンスピークは、運動量について積分した量(角度積分 EDC、トンネルの状態密度)に現れる。
  16. WHH 理論(汚れた極限、スピン常磁性とスピン軌道散乱なし)。Hc2(0) = 0.693 (−Tc dHc2/dT)。清浄極限ではこの係数が 0.73 程度になる [6]。
  17. GL コヒーレンス長の Gor'kov の係数:清浄極限 ξGL(T) = 0.74 ξ0/(1 − t)1/2、汚れた極限 0.852 (ξ0ℓ)1/2/(1 − t)1/2 [2] [7]。κ = λGL/ξGL。
  18. 汚れた極限の超流体密度 λ−2 ∝ τΔ tanh(Δ/2kBT) [8]、清浄極限は 1 − Y(T)(Y は Yosida 関数)[13] [2]。
  19. 常伝導の抵抗率 ρ0 + AT²(フェルミ液体の電子間散乱)。プリセットの A は、遷移金属の Rice の比 A/γ² ≈ 0.4×10−6 μΩ cm (mol K/mJ)² から見積もった [9]。

B. このシミュレーター独自の仮定と数値処理

  1. Tc は 1.13 の式ではなく、同じギャップ方程式で Δ → 0 とした数値解から求める。Δ(0)/kBTc も同じ数値解から出るので、N(0)V が大きいと 1.764 から少しずれる。1.13 の式の値は比較用に導出量へ並べる。
  2. カットオフ ħωD = kBΘD とみなす。積分は E < 40kBT の範囲をシンプソン則で、それより上を tanh = 1 として解析的に計算する。Δ(T) は T/Tc を 200 等分した点で二分法により解き、間は Δ² の線形補間とする。
  3. 比熱は数値化したエントロピーの中心差分、Tc 直下は後退差分で求める。Hc(T) はエントロピー差を台形則で積分した自由エネルギー差から求める。Hc(0) は凝縮エネルギーと一致することを確かめてある(弱結合で 0.236γTc²)。
  4. 常伝導状態は単一放物線バンド。m*/m は比熱の質量とみなすので、電子格子相互作用による増強を含む。λL と ξ0 にも同じ m* を使う。実際の物質ではこれらの質量は一致しないので、桁の目安として読む。
  5. 残留抵抗 ρ0 は Drude 式で平均自由行程 ℓ を決めるだけで、Tc と Δ には効かせない。非磁性不純物で Tc が変わらないという Anderson の定理に基づくが、文献はまだ照合していない。
  6. α モデルで拡大縮小した Δ をトンネルスペクトルにも使うのは独自の拡張。α モデル自体は熱力学量のための現象論である。
  7. トンネル伝導度は、接合の透過率がエネルギーによらず、対向電極の状態密度が一定(常伝導金属)とした場合。
  8. 警告を出す目安(N(0)V > 0.3、ΘD > 0.05TF、Γ > 0.2Δ(0)、kFℓ < 1)は独自に置いた値。
  9. 抵抗率は Tc で階段状に 0 にする。超伝導ゆらぎによる転移幅、フォノン散乱(T⁵ 項など)、磁場は入れない。平均自由行程 ℓ は ρ0 だけから決め、AT² は ℓ に入れない。
  10. 超流体密度は局所近似(London 型の応答)で、不純物散乱を含む松原和の式を使う。この式が文献のどこに載っているかは未照合だが、ħ/2τ → 0 で清浄極限の 1 − Y(T)(Y は Yosida 関数 [13]、Tc 近傍の傾き 2)、ħ/2τ → ∞ で汚れた極限の式 [8] に一致することを数値で確かめた。ξ0 > λ では非局所効果で実際の λ は長くなるが、それは扱わない。
  11. ξGL は 1/ξGL² = 1/ξ清浄² + 1/ξ汚れ² で内挿する(独自)。その Tc での傾きに、汚れた極限の WHH の温度依存をすべての ℓ で掛ける。ξGL の ξ0 は弱結合のギャップで計算し、α モデルでも変えない。λGL は T/Tc = 0.99 での超流体密度から外挿する。
  12. α モデルの Δ を超流体密度にも使う。Johnston [4] の定義では λ(T)/λ(0) は BCS のままなので、これとは異なる(独自)。
  13. 光学伝導度にはこの温度の Δ を使い、Dynes の Γ は入れない。α モデルの Δ を使うのは独自の拡張。ħω の積分は端点の特異性を変数変換で消してから中点則で計算した。
  14. 超音波と NMR は、異常状態密度 Ms にも Dynes の Γ を同じ形で入れてギャップ端の発散を抑えた(独自)。ピークの高さは Γ に強く依存し、実際の物質では異方性や強結合効果でも抑えられる。低温では Γ がつくるギャップ内の状態が残るため、比は exp(−Δ/kBT) より上で頭打ちになる(片対数表示で見える)。超音波は ħω ≪ Δ、NMR は核のゼーマンエネルギー → 0 の極限。
  15. 熱伝導率は不純物散乱だけで決まる電子の寄与で、格子の熱伝導と電子–フォノン散乱は入れない。常伝導の値は ρ0 だけから Wiedemann–Franz 則で決め、AT² 項は入れない。熱伝導率の比の式は、準粒子の群速度の減少と散乱時間の増加が打ち消すとして導いたもので、F1 関数を使う BRT の形と一致することを確かめた。原文での形は未照合。
  16. スピン磁化率には、フェルミ液体の交換増強(ストーナー因子、F0a)を入れない。そのため χP と γ は同じ N(0) で決まり、ウィルソン比は 1 になる。ナイトシフトの軌道部分と、スピン軌道散乱による低温の残留シフトは入れない。マクロな磁化率は Tc 以下でマイスナー効果の −1(SI)が支配し、スピンの寄与は直接は見えない。
  17. μSR は局所近似の λ(T) を使い、磁束のピン止めや格子の乱れ、核双極子による緩和、反磁場効果は入れない(B ≈ μ0H とする)。b はその温度での WHH の Hc2(T) で計算する。Brandt の式は κ ≫ 1 を想定しており、ごく低い磁場(Hc1 近傍)では成り立たない。
  18. ARPES では準粒子の重み Z = 1 とし、m* をバンド分散の質量にも使う。幅 Γq はエネルギーと運動量によらない定数で、AT² やフォノンによる寿命は入れない。分解能はエネルギー方向のガウス関数だけで、運動量分解能、行列要素、終状態、kz の効果は入れない。等方的なフェルミ面を動径方向に切った線上で描く。α モデルの Δ を使うのは独自の拡張。角度積分 EDC は、状態密度一定として ξ について ±(2W + 20Γq) の範囲で数値的に和をとり(W は表示するエネルギー範囲)、常伝導の平坦部を 1 に規格化する。この和は Dynes の状態密度とは厳密には一致しない。対称化 EDC は粒子–正孔対称性を仮定しており、f(ω) の影響を除く目的で使う。表示するエネルギー範囲は 5Δ(0)、分解能の3倍、10kBT、5Γq のうち最大のものにする(独自)。
  19. 反射率では ε∞ = 1 とし、フォノンやバンド間遷移は入れない。常伝導の伝導度は Mattis–Bardeen の前提にそろえて σn = 1/ρ0(周波数によらない)とし、Drude 型の周波数依存は入れない。このため常伝導の反射率は Hagen–Rubens 型の 1 − R ≈ (8ε0ω/σn)1/2 に従う(数値で一致を確認)。ħ/τ が ħω より小さい清浄な試料では、この前提は成り立たない。応答は局所的(電場と電流がその場で比例)で、試料は半無限、光は垂直入射とする。平均自由行程が表皮深さより長い異常表皮効果の領域では、この扱いは成り立たない。
  20. BTK は1次元模型で、界面に垂直な運動量だけを考える。スピン偏極や、超伝導体側の近接効果による Δ の減少は入れない。Γ は Dynes の幅を共用する。
  21. SIS 接合は両電極が同じ超伝導体(同じ Δ(T))とし、異なるギャップどうしで有限温度に現れる eV = |Δ1 − Δ2| の構造は扱わない。ジョセフソン電流は V = 0 の縦線として最大値だけを示し、接合の動的な振る舞い(ヒステリシス、シャピロ段など)は入れない。状態密度には Dynes の Γ を使う。
  22. 磁化曲線は、反磁場、ピン止め、表面障壁のない理想的な可逆曲線。κ は温度によらないとする。Hc1 は Brandt のフィットで Hc1/Hc2 を求め、Hc2 = √2κHc として Hc1/Hc に直す。フィットの係数は記憶によるもので未照合だが、κ = 1/√2 で Hc1 = Hc2(= Hc)になることを確かめた。混合状態は −M = Hc1[ln(Hc2/H)/ln(Hc2/Hc1)]p の形で内挿し、指数 p を面積が Hc²/2 になるように決める(独自)。Hc はエントロピーから、Hc2 は WHH から求めた値で、両者が独立に計算されているぶん Hc2 = √2κHc とは厳密には一致しない。
  23. プリセットの値(Tc、ΘD、γ、n、Pb の α)は記憶にもとづく概数で、まだ照合していない。N(0)V は ΘD と Tc から 1.13 の式で逆算し、m*/m は γ に合わせて選んだ。Nb の n と m*/m は、γ と λL の両方に合うように選んだ有効値で、d バンドを単一バンドで代表させている。

参考文献

各種論文が実在することは確認済み。

  1. J. Bardeen, L. N. Cooper, J. R. Schrieffer, “Theory of Superconductivity,” Phys. Rev. 108, 1175–1204 (1957). 概要:電子–格子相互作用による引力で電子がクーパー対をつくって凝縮するという、超伝導の微視的理論を示した原論文。 参照:ギャップ方程式、Tc と Δ(0) の式、比熱の飛び 1.43、凝縮エネルギー ½N(0)Δ²。超音波と NMR のコヒーレンス因子(ケース I・II)、スペクトル関数の重み uk²、vk²。
  2. M. Tinkham, Introduction to Superconductivity, 2nd ed. (McGraw-Hill, 1996). 概要:超伝導の標準的な教科書。BCS 理論、GL 理論、磁束と磁束格子、ジョセフソン接合、ゆらぎまでを扱う。 参照:Tc 近傍の Δ ≈ 3.06kBTc(1 − t)1/2、状態密度とトンネル伝導度、ξ0、λL、Hc の経験則、Yosida 関数、超音波の 2f(Δ)。GL コヒーレンス長の係数、SIS の準粒子電流、高 κ での Hc1、反射率の扱い。
  3. H. Padamsee, J. E. Neighbor, C. A. Shiffman, “Quasiparticle phenomenology for thermodynamics of strong-coupling superconductors,” J. Low Temp. Phys. 12, 387–411 (1973). 概要:強結合超伝導体の比熱などの熱力学量を、ギャップ比だけを変えた準粒子模型(α モデル)で整理した論文。 参照:α モデルの考え方(BCS の Δ(T)/Δ(0) と準粒子スペクトルを保ち、ギャップ比だけを変えてエントロピーから熱力学量を求める)。比熱、Hc に使用。
  4. D. C. Johnston, “Elaboration of the α-model derived from the BCS theory of superconductivity,” Supercond. Sci. Technol. 26, 115011 (2013). 概要:α モデルを BCS 理論から改めて組み立て直し、熱力学量や侵入長の式と数値表をまとめた論文。 参照:α モデルが自己無撞着でないことと、λ(T)/λ(0) を BCS のままとする定義。本シミュレーターの扱いとの違いの説明に使用。
  5. R. C. Dynes, V. Narayanamurti, J. P. Garno, “Direct measurement of quasiparticle-lifetime broadening in a strong-coupled superconductor,” Phys. Rev. Lett. 41, 1509–1512 (1978). 概要:Pb–Bi 合金のトンネル接合でギャップ端の広がりを測り、準粒子の寿命による幅 Γ を状態密度に入れた論文。 参照:状態密度の寿命幅 Γ(E → E − iΓ)。トンネルスペクトル、超音波・NMR のギャップ端、SIS の準粒子電流、BTK に使用。
  6. N. R. Werthamer, E. Helfand, P. C. Hohenberg, Phys. Rev. 147, 295 (1966). 概要:不純物を含む第2種超伝導体の上部臨界磁場の温度依存を、スピン常磁性とスピン軌道散乱も含めて求めた理論(WHH 理論)。 参照:汚れた極限の Hc2(T) を与えるディガンマ関数の式と、Hc2(0) = 0.693(−Tc dHc2/dT)。清浄極限の係数 0.73 は警告文に使用。
  7. J. R. Clem and V. G. Kogan, “Kinetic impedance and depairing in thin and narrow superconducting films,” Phys. Rev. B 86, 174521 (2012). 概要:細く薄い超伝導膜の力学的インピーダンスと対破壊電流を理論的に論じた論文。 参照:汚れた極限の GL コヒーレンス長 0.852(ξ0ℓ)1/2/(1 − t)1/2。ξGL の内挿と Hc2 の傾きに使用。
  8. H. Kim, V. G. Kogan, K. Cho, M. A. Tanatar, R. Prozorov, “Rutgers relation for the analysis of superfluid density in superconductors,” Phys. Rev. B 87, 214518 (2013). 概要:比熱の飛び、Hc2 の傾き、超流体密度の傾きを結ぶ Rutgers の関係を、超流体密度の解析に使う方法を示した論文。 参照:汚れた極限の超流体密度 Δ tanh(Δ/2kBT) の式。松原和の式の極限の検算と、侵入長のグラフの参照線に使用。
  9. M. J. Rice, “Electron-electron scattering in transition metals,” Phys. Rev. Lett. 20, 1439 (1968). 概要:遷移金属の低温で支配的な電子間散乱による T² 抵抗を、Baber の模型で解釈できることを示した論文。T² 係数と状態密度(比熱係数)の関係も論じている。 参照:遷移金属での A/γ² の比。プリセットの T² 係数 A の見積もりだけに使用。
  10. D. C. Mattis and J. Bardeen, “Theory of the anomalous skin effect in normal and superconducting metals,” Phys. Rev. 111, 412–417 (1958). 概要:常伝導・超伝導金属の異常表皮効果を扱い、超伝導体の複素伝導度を BCS 理論から導いた論文。 参照:光学伝導度 σ1、σ2 の式(汚れた極限)。光学伝導度と反射率のグラフに使用。
  11. L. C. Hebel and C. P. Slichter, “Nuclear spin relaxation in normal and superconducting aluminum,” Phys. Rev. 113, 1504–1519 (1959). 概要:Al の NMR 緩和率を超伝導状態で測り、Tc 直下の増大を見いだして BCS 理論のコヒーレンス因子で説明した論文。 参照:NMR 緩和率が Tc 直下で増大すること(Hebel–Slichter ピーク)。超音波と NMR のグラフの解説に使用。
  12. J. Bardeen, G. Rickayzen, L. Tewordt, Phys. Rev. 113, 982 (1959). 概要:BCS 理論にもとづき、超伝導状態での電子と格子による熱伝導率を計算した論文。 参照:準粒子による電子熱伝導率の比 κes/κen(不純物散乱)。熱伝導率のグラフに使用。
  13. K. Yosida, “Paramagnetic susceptibility in superconductors,” Phys. Rev. 110, 769 (1958). 概要:超伝導体のスピン常磁性(パウリ磁化率)が低温で消えていく温度依存を BCS 理論から求めた論文。 参照:スピン磁化率が Yosida 関数 Y(T) で減ること。スピン磁化率とナイトシフトのグラフに使用。
  14. E. H. Brandt, “Properties of the ideal Ginzburg-Landau vortex lattice,” Phys. Rev. B 68, 054506 (2003). 概要:GL 理論の理想的な磁束格子について、磁場分布、磁化、μSR の緩和率などを広い磁場と κ の範囲で数値的に求めた論文。 参照:磁束格子による μSR の緩和率 σsc の式と、Hc1/Hc2 の数値フィット α(κ)。μSR と磁化曲線のグラフに使用。
  15. A. Damascelli, Z. Hussain, Z.-X. Shen, “Angle-resolved photoemission studies of the cuprate superconductors,” Rev. Mod. Phys. 75, 473 (2003). 概要:銅酸化物超伝導体の ARPES 研究の総説。手法の原理や、スペクトル関数による強度の解釈も解説している。 参照:ARPES の強度がスペクトル関数とフェルミ分布の積に比例すること。ARPES のグラフに使用。
  16. G. E. Blonder, M. Tinkham, T. M. Klapwijk, “Transition from metallic to tunneling regimes in superconducting microconstrictions: Excess current, charge imbalance, and supercurrent conversion,” Phys. Rev. B 25, 4515 (1982). 概要:常伝導金属と超伝導体の微小接点の電流–電圧特性を、金属的な接触からトンネル接合まで、障壁の強さ Z で連続的に記述した理論。 参照:界面でのアンドレーエフ反射と通常の反射の確率 A(E)、B(E) と、障壁の強さ Z。点接触スペクトルのグラフに使用。
  17. V. Ambegaokar and A. Baratoff, “Tunneling between superconductors,” Phys. Rev. Lett. 10, 486 (1963);正誤表 11, 104 (1963). 概要:トンネル接合のジョセフソン臨界電流の温度依存を BCS 理論から求めた論文。 参照:同じ超伝導体どうしのトンネル接合の IcRn = (πΔ/2e) tanh(Δ/2kBT)。ジョセフソンのグラフと導出量に使用。

用語解説

超伝導の基本

超伝導ギャップ Δ
クーパー対を壊して準粒子を1個つくるのに要する最小のエネルギー。BCS 理論では温度とともに小さくなり、Tc で 0 になる。
結合定数 N(0)V
フェルミ面の状態密度と、電子間に働く実効的な引力の強さの積。0.3 程度より小さいときを弱結合と呼ぶことが多い。
強結合
電子格子相互作用が強く、準粒子の寿命やフォノンの遅延効果が無視できない場合。Δ(0)/kBTc や比熱の飛びが BCS の値より大きくなる。厳密には Eliashberg 理論で扱う。
コヒーレンス長 ξ0
クーパー対の広がりの目安。平均自由行程 ℓ との比で、清浄極限(ℓ ≫ ξ0)と汚れた極限(ℓ ≪ ξ0)を分ける。

電磁応答

侵入長 λ
超伝導体の表面から磁場がしみ込む深さ。超流体密度の平方根に反比例する。
超流体密度
電流を散逸なく運べる電子の密度。λ²(0)/λ²(T) で表し、低温での振る舞いがギャップの大きさを反映する。
非局所効果
クーパー対の広がり ξ0 が λ より長いと、電流がその場の磁場だけでは決まらなくなる効果。Al のような第1種で強く効く。
GL パラメータ κ
λ と ξGL の比。1/√2 より小さいと第1種、大きいと第2種になる。
上部臨界磁場 Hc2
第2種超伝導体で、磁束が侵入した混合状態が完全に壊れる磁場。軌道効果だけを考えると、磁束量子1本が ξGL² 程度の面積を占めるところで決まる。

熱力学

凝縮エネルギー
常伝導状態と超伝導状態の自由エネルギー差。絶対零度では ½N(0)Δ(0)²。
熱力学的臨界磁場 Hc
磁場を排除するのに要するエネルギー μ0H²/2 が凝縮エネルギーに等しくなる磁場。第1種超伝導体では実際に超伝導が壊れる磁場になる。
比熱の飛び
Tc での電子比熱の不連続。2次相転移の特徴で、BCS 理論では ΔC/γTc = 1.43。

トンネル分光

SIN 接合
超伝導体(S)と常伝導金属(N)を薄い絶縁体(I)で隔てた接合。微分伝導度が、熱的にぼけた超伝導体の状態密度を表す。
コヒーレンスピーク
状態密度がギャップ端 E = ±Δ で鋭く高くなる部分。ギャップ内の状態がギャップ端に押し出されてできる。
Dynes の幅 Γ
準粒子の寿命などによるぼけを、エネルギーに虚部を加えて表す現象論的なパラメータ。ギャップ内にも Γ に比例した状態が残る。

分光と輸送

吸収端
クーパー対を壊して準粒子を2個つくるのに要するエネルギー ħω = 2Δ。低温ではこれより低い周波数の光を吸収しない。
欠けたスペクトル重み
超伝導になって σ1 から失われた面積。ω = 0 のデルタ関数(超流体)に移っており、その大きさが侵入長を決める。
異常表皮効果
電子の平均自由行程が表皮深さより長いとき、電流がその場の電場だけで決まらなくなる効果。純粋な金属の低温・高周波でよく起こる。
アンドレーエフ反射
常伝導金属から超伝導体に入ろうとする電子が、クーパー対をつくって超伝導体側に入り、正孔として跳ね返される過程。ギャップ内のエネルギーで電荷 2e が運ばれるので、きれいな接触では伝導度が2倍になる。
ジョセフソン効果
2つの超伝導体を薄い障壁で隔てた接合に、電圧ゼロで超伝導電流が流れる現象。最大電流 Ic と接合の常伝導抵抗 Rn の積はギャップで決まる。
下部臨界磁場 Hc1
第2種超伝導体に磁束が入り始める磁場。これより下では完全反磁性、Hc2 までは磁束が渦糸として入った混合状態になる。
コヒーレンス因子
準粒子が散乱されるときの遷移確率に掛かる因子。摂動の時間反転に対する性質で、超音波(ケース I)と NMR(ケース II)とで符号が逆になる。
Hebel–Slichter ピーク
NMR 緩和率が Tc 直下で常伝導状態より大きくなる現象。ギャップ端の状態密度の発散とケース II のコヒーレンス因子が重なって生じ、BCS 理論の決定的な検証になった。
ナイトシフト
伝導電子のスピン偏極が核に及ぼす超微細磁場による、NMR の共鳴周波数のずれ。スピン磁化率に比例するので、s 波のスピン一重項超伝導では低温で小さくなる。
Yosida 関数
芳田奎が超伝導体のスピン磁化率の計算で導入した関数 Y(T) = 2∫Ns(E)(−∂f/∂E)dE [13]。準粒子が熱的に励起された割合を表す。Tc で 1、低温で exp(−Δ/kBT) のように 0 に近づく。
横磁場 μSR
スピン偏極したミュオンを試料に打ち込み、磁場中での歳差運動の減衰から内部磁場の分布を測る方法。磁束格子の磁場分布の幅 σsc は 1/λ² に比例する。
ボゴリューボフ準粒子
超伝導状態の素励起。電子と正孔の重ね合わせで、重み uk²、vk² は kF を境に入れ替わる。
バックベンディング
ARPES で見える占有側の分岐 −Ek が、kF で最も EF に近づき、その外側で再び深いエネルギーへ折り返す振る舞い。粒子–正孔の混成の直接の証拠になる。
角度積分 EDC
すべての運動量について足し合わせた光電子スペクトル。状態密度にフェルミ分布を掛けたものに当たり、ギャップ端に状態が積み上がったコヒーレンスピークが見える。
EDC と対称化
EDC は運動量を固定したエネルギー分布曲線。kF での EDC を I(ω) + I(−ω) と対称化すると、フェルミ分布の切り落としが消え、ギャップが ω = 0 のくぼみとして見える。
Wiedemann–Franz 則
弾性散乱が支配的な金属で、熱伝導率と電気伝導率の比が L0T になる関係。

常伝導状態

平均自由行程 ℓ
電子が不純物などに散乱されるまでに進む平均距離。ℓ = vFτ。
比熱係数 γ
常伝導状態の電子比熱 C = γT の係数。フェルミ面の状態密度に比例する。

コメント

このブログの人気の投稿

「素粒子理論の職が欲しい」「引用数1000、h-index=10ありますか?」

お金のあるラボが一番!~東大物工教授の科研費取得状況を調べてみた~

トンビは鷹を生むし、東大教授は東大教授を生む