イントロ
身の回りにある物質、絶縁体や半導体、そして金属の振る舞いは、物質中に存在する電子の応答により決まる。こうした物質中の電子の振る舞いを記述しようとする物理学の一分野が Condensed matter physics、いわゆる凝縮系物理学である。Condensed matter の中でも最も劇的な現象が、超伝導現象であるといっても過言ではないだろう。超伝導現象は、ある温度以下で電気抵抗が突然ゼロになるという驚きの現象である。
この現象を説明する理論が、バーディーン、クーパー、シュリーファーの3人の理論物理学者が提唱したいわゆる BCS 理論である。BCS 理論に基づけば、物質中の電子が格子振動を媒介にクーパー対と呼ばれる2電子ペアを組むことが超伝導の起源であるとされている。この BCS 理論を使って計算すれば、例えば比熱の温度依存性や同位体効果といった超伝導に関わる各種現象を説明することができる。では、例えば超伝導の起源となる電子と格子の相互作用パラメータを変化させたら、各種物性はどのように変わるのだろうか?
そこで本記事では、BCS 理論に基づき、超伝導状態における各種物性が、温度や電子格子結合定数といったパラメータを変化させた時にどのように変化するか、一括で確認できるシミュレーター、その名も BCS 超伝導シミュレーターを作ってみたので、記事として紹介する。Claude Opus 5.5 を使って、赤子と動物園を回っている間に作れたのだから、すごい世の中である。パラメータをいじってみて、超伝導に関わる物性に興味を持ってもらえたら嬉しいな。
これであなたも超伝導の案内人、Super Conductor!
シミュレーター
ここから下が BCS 超伝導シミュレーター本体です。左のパネルでパラメータを動かすと、導出量とグラフがその場で更新されます。
グラフ
見たいグラフの名前を押すと、下に表示されます。選んだ組み合わせはこのブラウザに保存されます。
ρ(T) = ρ0 + AT²(T > Tc), ρ(T) = 0(T < Tc)
常伝導の式はフェルミ液体版と同じ。転移を階段とするのは独自の単純化(注記 B-9)。プリセットの A は [9]
1/N(0)V = ∫0ħωD tanh(E/2kBT)/E dξ, E = √(ξ² + Δ²) 破線は Tc 近傍の Δ ≈ 3.06 kBTc (1 − T/Tc)1/2
出典 [1] [2]。α モデルでは大きさだけ [3] に従って拡大縮小
C = T dS/dT, S = −4kBN(0) ∫0∞ [f ln f + (1 − f) ln(1 − f)] dξ, f = 1/(eE/kBT + 1)
出典 [1] [2] [3]
熱力学的臨界磁場 Hc(T)
μ0Hc²/2 = Fn − Fs = ∫TTc (Sn − Ss) dT′, ずれ D = Hc/Hc(0) − [1 − (T/Tc)²]
出典 [2] [3]。積分による求め方は独自(注記 B-3)
λL²/λ² = 2πkBT Σωn>0 Δ²/[(ωn² + Δ²)(√(ωn² + Δ²) + ħ/2τ)], 汚れた極限:λ²(0)/λ²(T) = [Δ(T)/Δ(0)] tanh(Δ/2kBT)
出典 [2] [8]。松原和の式は両極限での一致を数値で確認(注記 B-10)
ln(1/t) = ψ(1/2 + h̄/2t) − ψ(1/2), h̄ = (4/π²) Hc2/(−dHc2/dt)t=1, μ0Hc2 = Φ0/2πξGL²(T)(Tc 近傍)
出典 [6] [2] [7]。ξGL の清浄・汚れた極限の内挿は独自(注記 B-11)
状態密度とトンネルスペクトル(SIN 接合)
Ns(E)/N(0) = Re[(E − iΓ)/√((E − iΓ)² − Δ²)], dI/dV ∝ ∫ Ns(E) [−∂f(E + eV)/∂(eV)] dE
出典 [5] [2]。Δ は測定温度での値
光学反射率
ε(ω) = 1 + iσ(ω)/ε0ω, σ = σn(σ1/σn + iσ2/σn), σn = 1/ρ0, R = |(N − 1)/(N + 1)|², N = √ε = n′ + in″
出典 [10] [2]。横軸の単位と周波数範囲は光学伝導度と共通。局所応答・半無限の試料・垂直入射(注記 B-19)
光学伝導度(Mattis–Bardeen)
σ1/σn = (2/ħω) ∫Δ∞ [f(E) − f(E + ħω)] g(E) dE + (1/ħω) ∫Δ−ħω−Δ [1 − 2f(E + ħω)] g(E) dE, g = (E² + Δ² + ħωE)/[(E² − Δ²)1/2((E + ħω)² − Δ²)1/2]
出典 [10]。ω = 0 の超流体のデルタ関数は描かない。欠けたスペクトル重みは和則(注記 A-6)を満たすことを数値で確認
超音波吸収と NMR 緩和率(コヒーレンス因子)
比 = 2 ∫0∞ [Ns² ∓ Ms²] (−∂f/∂E) dE, Ms = Re[Δ/√((E − iΓ)² − Δ²)] (− が超音波のケース I、+ が NMR のケース II)。Γ → 0 でケース I は 2f(Δ)
出典 [1] [11] [2]。Γ は Dynes の幅を共用(注記 B-14)
κes/κen = (6/π²) ∫y∞ x² ex/(1 + ex)² dx, y = Δ/kBT, κen = L0T/ρ0
出典 [12]。不純物散乱で決まる電子の寄与のみ(注記 B-15)
χs/χn = Ks/Kn = Y(T) = 2 ∫Δ∞ Ns(E) (−∂f/∂E) dE, χn = χP = μ0μB² · 2N(0)
出典 [13] [2]。清浄極限の超流体密度は 1 − Y(侵入長のグラフと数値で一致を確認)
μSR(横磁場、磁束格子による緩和)
σsc [μs−1] = 4.83×104 (1 − b)[1 + 1.21(1 − √b)³] λ−2 [nm−2], b = H/Hc2(T)。b → 0 で ⟨ΔB²⟩ = 0.00371 Φ0²/λ⁴
出典 [14]。λ(T) は侵入長のグラフ、Hc2(T) は WHH の値を使う(注記 B-17)
ARPES(ボゴリューボフ準粒子の分散)
I(k, ω) ∝ A(k, ω) f(ω) ⊗ 分解能, A = (1/π)[uk² Γq/((ω − Ek)² + Γq²) + vk² Γq/((ω + Ek)² + Γq²)], vk² = (1 − ξk/Ek)/2
出典 [15] [1]。マップの破線:青緑は常伝導の分散 ξk、銅色は ±Ek。強度はマップごとに最大値で規格化(注記 B-18)
点接触スペクトル(アンドレーエフ反射、BTK)
G/GN = (1 + Z²) ∫ [1 + A(E) − B(E)] [−∂f(E − eV)/∂(eV)] dE, A:アンドレーエフ反射の確率、B:通常の反射の確率
出典 [16]。Γ は Dynes の幅を共用(注記 B-20)
ジョセフソン効果と SIS 接合
IcRn = (πΔ/2e) tanh(Δ/2kBT), eRnIqp(V) = ∫ Ns(E) Ns(E + eV) [f(E) − f(E + eV)] dE
出典 [17] [2]。両電極は同じ超伝導体。I–V は正の電圧側だけを描く(注記 B-21)
第1種:−M = H(H < Hc)。第2種:Hc1/Hc2 = (ln κ + α(κ))/2κ²、Hc1 < H < Hc2 は混合状態。どちらも ∫0 (−μ0M) dH = μ0Hc²/2
出典 [14] [2]。混合状態の曲線の形は独自の内挿(注記 B-22)
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