これであなたもNature & Science



【イントロ】
  あけましておめでとうございます。2017年はいろんな方たちと出会えて楽しい一年でした。その分いろいろと後悔もありますが。おみくじによると、「絶好調のとき。攻めの気持ちが大切」らしいので、2018年も楽しいことができればいいなぁと思っています。
 ということで、やっぱりNature & Science誌[1][2]に論文出したいですよね。研究の良し悪しは個々の論文の出来で決まるわけですが、できるだけ多くの人の目に触れて価値判断に晒されたいと考えると、やはり高インパクトファクター雑誌であるNature & Science誌に論文を出したいというのは自然な思いです。
 しかし、どちらの雑誌も採択率は厳しく投稿した論文のうち掲載されるのは10%未満[3]という話もあるくらいです。噂では力強いラボの先生だと、投稿する前に知り合いのエディターに「これから投稿するぞ」と連絡してエディターリジェクトを避けるとかなんとか[4]。 
 また商業誌ということで科学的な重要性よりも話題性が優先されることもあるとかないとか。どうしても流行りの研究でインパクトのある研究が載りやすい傾向があるんだろうなあと思います(個人の感想です)。
 本記事では、2017年度のNature & Science誌の論文タイトルに含まれる単語を調べ、この1年間の流行を調査することでどんな論文が掲載されやすいかを明らかにすることを目的にしました。

【方法】
  2017年度に発行されたNature79冊(1381論文)[5]、Science51冊(701論文)[6]のタイトルをPythonを使用したWebスクレイピングにより取得し、Excelのピポットテーブル機能を使って集計を行いました。今回は各タイトルを取得するごとに2秒待機することでアク禁対策に重点を置きました。また、タイトルだけでなくその長さの分布も気になったので、やはりPythonを使って各タイトルの長さを集計しました。
簡単な作業でも自分でプログラムかけると楽しいなぁと思いました。

【結果】
 図1、2、3がNature & Science誌の頻出単語上位60単語です。前置詞、冠詞、be動詞は除いています。ちなみにどちらも最多の前置詞は”Of”でした。

図1、Nature & Science誌の頻出単語1-20位

図2、Nature & Science誌の頻出単語21-40位

図3、Nature & Science誌の頻出単語41-60位

 とりあえず、「細胞の構造」を研究するのがNature & Science誌掲載への近道じゃないですかね。。。という結果になりました。
 どちらの雑誌も医学・生物関係の単語が上位に来ていることが図から見て取れます。2017年度にノーベル賞を受賞した「クライオ電子顕微鏡」[7]などを筆頭に細胞の構造を研究する手段が発達し様々な研究が行われていることが、流行語から感じられます。また、医学・生物関係のほうが人間の生き死に直結するだけあってより多くの読者の関心を引くことも関係しているのではないでしょうか。
 一方物理関係と思われる”Quantum”という単語が10位前後に来ており他にに”Graphene”や”Gravitational”といった単語も40位付近にあらわれていることから、量子コンピュータや量子通信、グラフェンの物性や重力波関係の話題が今年のNature & Science誌を賑わせたことが見て取れます。
 Physical Review誌等、専門誌の物理分野ではTopological物性が流行していますが、Nature & Science誌に頻出するほどの単語ではなかったのは少し意外でした。本誌ではなくNature PhysicsやScience Advanceのような姉妹誌に掲載される方が多かったのかもしれません。
 さて、こうした頻出単語が含まれる論文タイトルですが、どれくらいの長さが一番多いのか気になったので調べたのが図4です。(2,3単語のタイトルはタイトルの取得ミスが含まれていると思われるのでちょっと信憑性はありません)
 
図4、論文タイトルに含まれる単語数の分布
キレイな分布を描いていますねぇ。。。Nature & Science誌ともに10語くらいがタイトルに含まれる単語数の平均のようです。長すぎず、短すぎずとなるのが10語くらいなのかな?

【まとめ】
  今回はNature & Science誌の2017年度の掲載論文タイトルの頻出単語を調べることで、その流行を調べました。結果としては、「細胞の構造」に関する研究が流行しているといったものとなりました。Nature & Science誌に掲載したいと考えている研究者の皆様はなんとか「細胞の構造」に関連させた研究をして、10文字程度のタイトルで投稿するのが掲載を実現する近道ではないでしょうか?
「量子効果を用いた細胞の構造の研究」とか?

【参考文献】
1, Nature
2, Science
3, 超一流誌による論文選定は恣意的なのか?(Chem-Station)
4, Private communication.
5, Nature 2017.
6, Science 2017.
7, The Nobel Prize in Chemistry 2017 "for developing cryo-electron microscopy for the high-resolution structure determination of biomolecules in solution".

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