狂気!室温超伝導体は脳内にあった!!!

 【イントロ】

博士「これはすごい・・・これはすごいぞ!!!」
学生「どうしたんですか?自分の愚かさのことですか?」
博士「そうではない!ワシは出会ったんじゃ!科学史上最高の論文に!」
学生「どんな論文ですか一体」
博士「なんと室温超伝導体が見つかったという話じゃ!」
学生「え!室温超伝導体といえば、室温で電気抵抗がゼロになる物質で、世界を支えるエレクトロニクスに不可避なエネルギーの散逸、発熱の問題を一気に解決し、世界のエネルギー問題を救うキーテクノロジーになる物質じゃないですか!」
博士「その通りじゃ!」
学生「気になってきました、早く教えて下さい、その論文!」
博士「うむ…驚くなよ、なんと、生物の脳の中では超伝導状態が実現しておるのじゃ!!!」

学生「・・・」
博士「ふふふ、あまりの衝撃に言葉もないようじゃな。」
学生「あの」
博士「では、今回は、
P. Mikheenko, Possible Superconductivity in the Brain, Journal of Superconductivity and Novel Magnetism, 2018, No 5, p. 1121-1134
Arxiv版
を読んでいくぞい!」
学生「帰っていいですか?」

【論文誌がすごい!】

博士「まずは、この論文のなにが凄いかといえば、査読を通って論文誌に掲載されておるのじゃ」
学生「ほんとですよ、どうなってんですか」
博士「そして、掲載されたJournal of Superconductivity and Novel Magnetismの2022年度のImpact Factorは1.8なんじゃ。これがどういうことかわかるか?」
学生「そ、それは日本の物理学会が発行するJournal of the Physical Society of Japan、いわゆるJPSJのImpact Factor、1.7を超えています・・・!」
博士「そうじゃな、つまり論文誌としての影響力としてはJPSJよりも大きな雑誌に掲載された論文ということじゃ」
学生「JPSJもっとがんばってくださいよ」
博士「しかもこの論文は8回も引用されておる」
学生「みなしPRLじゃないですか・・・」
博士「これだけで如何にこの論文が本物であるか納得してもらえると思う」
学生「あらゆる指標への価値観が風に吹かれて塵と消えました」

【脳内で超伝導が生じる必然!】

博士「脳内で超伝導が生じる、突飛な発想と思えるじゃろうが、実はロジカルな理由があるのじゃ」
学生「聴かせてくださいよ、論理<ロジック>の旋律<リズム>を」
博士「近年、量子コンピュータの研究開発が進み、その一方式として超伝導方式に期待が集まっている」
学生「それはそうですね」
博士「さらに、脳内では量子コンピュータが実現しているという興味深いアイデアが提案されておる」
学生「まあ、アイデアとしていいんじゃないですか?」
博士「つまり、脳内で超伝導状態が実現している可能性があるということなんじゃ」
学生「なんて?」
博士「さらに、別の傍証もある。近年、水素化物における高温超伝導が相次いて報告されておる。このまま研究がすすめば室温超伝導も夢ではないと考えられる」
学生「方向性としては異論はないですね」
博士「よく考えるんじゃ、脳を構成する生体物質、これも複雑に組織化された水素化物とみなすことができるじゃろ?
つまり脳も室温超伝導になりうることは現在の研究の潮流から自然な帰結なんじゃ」
学生「どうやら博士の自然と私の生きる自然は違うみたいですね」


博士「これまでの超伝導研究の流れも、脳内で超伝導が起きることを支持しておる」
学生「どんな流れですか」
博士「超伝導研究は単体元素の研究から始まり、その後NbNなど3次元的な多元素化合物に進展していったのじゃ。
その後さらに量子ゆらぎの強い二次元系、つまり銅酸化物などじゃな、その方向に研究が進んでいった。
更に近年、3次元的な水素化物で高温超伝導が発見されたわけじゃ」
学生「まあ流れとしてはそのとおりではありますね」
博士「なら次は、水素化合物においてより低次元な物質でより高温の超伝導状態が生じると期待するのは自然じゃろ」
学生「うーん、まあ言わんとしてることはわかります」
元論文より引用


博士「実際、1964年にLittleが提案した理論では、一次元有機物分子鎖における超伝導では超伝導転移温度Tc=2200Kの超伝導状態が実現することが予言されておる」
学生「理論はまあ理論なのでよいでしょう。それが脳内での超伝導とどうつながってくるんですか?」
博士「ふむ。そうした高度に構造化した有機物分子が実在するとしたらナニが考えられるか?そうじゃな、もっとも複雑な生体組織、脳じゃな。人間は100年かけて超伝導を研究してきたが自然は数十億年かけて無意識的に量子力学な方法で情報を効率的に処理する分子構造、すなわち脳を生み出してきたとしても不思議ではない、そうじゃろ?」
学生「はぁ、世迷言としては」
博士「もちろん、そうした分子構造が脳内に存在し、室温超伝導が実現している証拠は未だない、なぜか分かるかのう?」
学生「分かったら負けかな」
博士「そうした量子力学的状態を室温で検出するには、量子力学的な仲介物質が必要になるんじゃ。
しかし時代は変わった!
そのような機能性物質が2010年に見つかったのじゃ!
すなわちグラフェンじゃな!」
学生「風評被害ですか?」
博士「このグラフェンを使った電気抵抗測定により、室温でのラットの脳内超伝導測定がすでに実現しておる。そして最近の研究で豚の脳内でも実現してることがわかったんじゃ」
学生「わかるとは一体・・・何を測定したんですか?」

【IV特性から室温超伝導は明らか!】

博士「興味を持ってくれたようじゃな」
学生「怖いもの見たさと言ってください」
博士「まずは脳のスライスを用意してこれをグラフェンのナノシートと接続するんじゃ、これにより、脳内中の一次元分子構造物がグラフェン電極と結合することにより4端子測定が可能になるんじゃな。この方法により、量子媒介物質であるグラフェンを介して、脳内の量子状態が古典系である測定系に情報伝達されるんじゃ」
学生「なるほどわからん」
博士「測定には新鮮なSus domesticusを使うんじゃが、食肉業者からすぐに提供して貰う必要があるんじゃな」
学生「Sus domesticusってなんですか?」
博士「豚じゃ」
学生「なぜ突然学名を」
博士「当然比較実験もしておる。豚の脳のスライスの代わりに紙を測定したり、
グラフェンを使わず測定もしており、
新鮮な豚の脳&グラフェン電極の組合せが室温超伝導の確認に必須であることを示しておるのじゃ」
学生「対照実験を真面目にやってるのはエライですね」


博士「この測定セットアップで、IV特性を測定すると電圧ジャンプが0.6V付近に見えるのじゃ。この値は、超伝導ギャップの大きさ2Δとみなせるのじゃ、ここで
2Δ=3.53KBTc
というBCS理論に基づく関係式に当てはめると脳内超伝導の転移温度は約2000Kとみなせるのじゃ。そして、この2000Kという値はLittleの理論予測とも一致しておる!!!」
学生「BCS理論に対する厚い信頼はなんですか。そしてBCS理論とLittleの理論は別物なのに、我田引水じゃないですか。それに脳内にある謎の1次元物質ってなんですか」
博士「それは、脳内のニューロンの中にある微小管じゃな。そして、微小管のなかに水分があることが重要なんじゃ。
実際、最近の研究でH3S、すなわち硫化水素が高温超伝導を示すことが判明しておる。
この高温超伝導では軽元素である水素が重要な役割をしておる。
一方で、もう一つの構成元素である硫黄はそれほど軽い元素ではない。
さらなる高温超伝導化には、硫黄より軽い元素が必要になる。
周期表をみてみるんじゃ。
硫黄より軽いのは酸素じゃな。
つまりH2Oが高温超伝導の重要な構成要素となるんじゃ」
学生「ろ、ロジカル過ぎる。。。」


博士「さらに同様の振る舞いはラットの脳でもみえておる。
つまり、異なる種類の哺乳類の脳で室温超伝導が観測されたことになる。
これは生物の脳内でユニバーサルに超伝導状態が実現していることを意味しておる」
学生「信頼性の概念がおかしくなっていく」
博士「さて、今回の実験で示されたように」
学生「示されたように!?」
博士「もし脳内で超伝導が実現し、量子力学的な情報処理が行われているならば、それは外界から保護されており、環境との相互作用ですぐに壊れてしまうはずじゃ。
そのため、実験的にその超伝導状態を検出するのは一般には難しいのじゃが、今回の報告では26個のサンプルのうち5個のサンプルで超伝導的なIV特性が観測されておる」
学生「かわいそうな豚さんが26匹も。。。倫理審査どうなってるんですか。
それから、超伝導状態とずっといってますが、磁場依存性とかどうなってるんですか」
博士「ふむ、実際数百mTの磁場をかけることで抵抗値が変化することが確認されておる
。これもしっかり超伝導的な振る舞いじゃな」
学生「転移温度に対して臨界磁場が小さすぎませんか」
博士「Little理論における臨界磁場は論文中に述べられていなからセーフじゃ」
学生「未定義ならなんでもセーフ理論。。。」
豚さんたちに安らかな眠りを

【室温超伝導は実現している!!!】

博士「最後にまとめじゃ。今回の研究の特色は3つある。
まず、脳内の微小管内で生じている超伝導状態を脳組織スライスをまとめて測定することで数百万本の微小管からの寄与を平均化して測定誤差を小さくできておる。
さらに、生きた脳内と近い環境で測定することでより現実に近い環境を再現しておる。
そしてグラフェンを測定に使用したことで神経回路内の量子的特徴を抽出することに成功しておる」
学生「トンチキ。。。」
博士「そもそも知的生命が誕生した海中というのは、高圧、室温、水という超伝導に適した環境が豊富に揃っていたわけじゃな。
そう考えると、脳内の微小管内で超伝導状態が実現し、量子情報処理が行われているというストーリーにも納得感がでるわけじゃ」


学生「そうですね、納得しました。私も室温超伝導の研究をはじめて、世界のエネルギー問題の解決に取り組み始めようと思いました」
博士「お、良いぞ!分かってくれたか!!」
学生「私は今回の研究をHomo sapiensにも拡張しようと思います!」
博士「それはどういう」
学生「これで私も世界の救世主になります!」

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