2026年8月の気になった論文(暫定版)

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-2026/8/24--
Criticality in Neural Network Function Space through Wilsonian Fixed Points and Finite-Width Corrections
ニューラルネットワークを関数上の確率分布とみなし、NN-場の理論対応における臨界性をWilson流のくりこみ群の視点で定式化した。無限幅のガウス過程極限を自由場の固定点、有限幅補正を非ガウス的相互作用を生む摂動として扱う。幅・深さ・活性化関数の非線形性・初期化分散・学習ダイナミクスを、アンサンブルの有効作用を変える制御パラメータと位置づける。高次連結相関関数が無視できなくなる領域を臨界領域と同定し、有限幅効果こそが有限NNの臨界構造を与えると論じ、学習可能性・汎化・アーキテクチャの普遍性を議論する理論的基盤を提示した。

Graphon Spin Systems as Exactly Solvable Models
収束グラフ列の極限を表すグラフォンを用いてIsing模型を定式化し、平均場極限を導出して相転移の厳密な結果を得た。臨界温度がグラフ極限に対応するHilbert-Schmidt作用素の固有値で決まることを示し、多くの重要なネットワーク構造では固有値を陽に計算できる。Erdős-Rényi、スモールワールド、べき則の3つのランダムネットワーク模型で例示し、スモールワールドでは強磁性・反強磁性相への転移と自由エネルギー極小の共存(多重安定性)をモンテカルロ計算で確認した。厳密可解性と広範なネットワーク構造への適用性を両立する枠組みである。

An LLM agent for end-to-end computational materials discovery
金属有機構造体(MOF)の探索パイプライン全体を自律実行する大規模言語モデル(LLM)エージェント系MAESTROを報告した。膨大なMOF文献を処理し、関連論文を結晶構造と紐付けて計算可能なデータベースへ整備したうえで、計算コストを段階的に上げる戦略でスクリーニングする。湿潤排ガス条件下での分離に有望と同定された候補はいずれも互いに無関係な研究に由来していた。計算材料探索の異質な各段階を接続することで、応用分野を横断し、従来手法では見落とされる高性能材料を発掘できることを示した。

Photon-mediated thermodynamics and density fluctuations in an ensemble of laser-cooled Cesium atoms
磁気光学トラップ中のレーザー冷却セシウム原子雲について、トラップ光の離調依存性を実験的に調べた。蛍光画像から雲のサイズ、ショット間の幅ゆらぎ、光学的深さ、密度分布、空間密度ゆらぎスペクトルを抽出した。共鳴近傍では雲が空間的に広がり、幅ゆらぎ・光学的深さ・密度ゆらぎパワーが増大する一方、離調を大きくすると再現性が高く空間的に閉じ込められた雲が得られる。密度分布はポリトロープ状態方程式を用いた一般化Lane-Emden模型で現象論的に解析され、非平衡輸送や光子媒介相互作用の検証基盤を与える。

Interplay of nonrelativistic and relativistic spin splittings in altermagnets
交代磁性体(AM)に現れる非相対論的スピン分裂(NRSS)が相対論的効果をどう変えるかを解明した。強束縛模型により、空間反転対称性が破れたAMではRashbaスピン分裂の大きさが通常のようにスピン軌道相互作用の強さではなくNRSSのエネルギースケールで支配されることを示した。生じたRashbaバンドとNRSSの組み合わせは異常に大きな電荷-スピン変換をもたらし、スピン偏極をNéelベクトルで制御できる。非中心対称AMであるGdAlSiの第一原理計算でも実現を確認し、AMがスピン軌道エレクトロニクスの有望な舞台であることを示した。

Perspectives on Magnetic/Superconductor Hybrid Systems: Long-range Electromagnetic Phenomena Induced by Proximity Effect and Interfacial Spin-orbit Coupling
超伝導体-強磁性体ハイブリッド構造の物理と応用に関する最近の成果を展望した論考である。交換場によって変調された誘起超伝導相関の応答と、界面のRashba型スピン軌道相互作用に由来する付加的効果から生じる電磁現象に焦点を当てる。長距離電磁近接効果とそれによる磁気テクスチャの変形、自発電流、渦糸物質の性質と磁気秩序との相互作用、スピンガルバニック効果、光ガルバニック効果、非相反輸送現象などを取り上げる。さらに理論的課題と基礎実験の展望を含む今後の発展の方向性を提示している。


Note on proliferation transitions of non-Abelian anyons
編み込み融合部分圏に属するエニオンの増殖(proliferation)によって駆動される、(2+1)次元トポロジカル相からの相転移を研究した。位相的場の理論(TQFT)を部分圏のエニオンに対応する動的物質に結合させる一般的な理論的枠組みを与え、対称性TFT(SymTFT)の言葉で(3+1)次元スラブの対称性境界に局在するダイナミクスとして解釈する。いくつかの例を解析し、増殖転移を実現するChern-Simons-Higgs理論を明示的に構成した。有限群GのRep(G)一形式対称性のゲージ化や非可逆一形式対称性のゲージ化も扱う。

Distinguishing Mott and strain-induced anisotropic semimetals in magic-angle twisted bilayer graphene using Landau level spectroscopy
量子ツイスト顕微鏡実験で明らかになった魔法角ツイスト二層グラフェンの重い電子的性格と軽い電子的性格の二分性について、有力な2つの候補状態を区別する明確な判別基準を提示した。電荷中性点で、強い動的相関に支配される「Mott半金属」と、弱いHartree-Fock効果で特徴づけられる「歪み誘起異方的半金属」を比較する。面直磁場下のLandau準位ギャップの階層構造が鋭い判別プローブとなり、歪み誘起半金属ではChern数ギャップがΔ±4>Δ±8>Δ±12と頑健に減少するのに対し、Mott半金属では磁場依存性が敏感になる。

Phase control of magnon-phonon coupling via magnetic field
磁性薄膜におけるマグノンと表面弾性波(SAW)フォノンの結合の位相を研究した。外部磁場を下げると結合定数が実数から複素数へと変化し、転移磁場以下では虚部を持つ結合により、共鳴周波数がほぼゼロでSAW共鳴から大きく離れた過減衰マグノンにもSAWフォノンが結合できるようになる。虚数結合定数の強さと転移磁場の大きさはいずれも磁気ダンピングに比例する。大きなダンピングを持つNi/Ru/Ni人工反強磁性体で、ゼロ磁場近傍のSAW透過スペクトルに幅広く顕著な極小が現れることを実証した。

Time-Resolved Thermal Susceptibility Mapping via Low-Temperature Scanning Laser Microscopy
逆高速フーリエ変換を利用した多高調波ロックイン検出により、熱感受率の時間発展を高い空間分解能で再構成する手法を提示した。作動距離の短い光学クライオスタットでの動作を想定して自作したモジュール式走査レーザー顕微鏡に実装し、空間精度を入念に較正した。超伝導共振器を用いた実証研究により、本手法が本来の走査速度よりはるかに短い時間スケールで熱画像を生成でき、高い空間忠実度で動的な熱特性評価を可能にすることを示した。超伝導デバイス、二次元物質、ハイブリッド平面構造などの探索に有用である。


Broken Inversion Symmetry via a Magic Methyl Effect
分子双極子が強誘電・反強誘電的に秩序化する極性液晶は分子設計の自由度が極めて限られ、わずかな変更で極性秩序が消失しうる。本研究は予想に反し、1,3-ジオキサン環の5位にメチル基を導入すると極性秩序の発現温度が大幅に上昇することを実証した。この効果は複数の液晶系に転用可能で、メチル化体のみが極性相を示し母体化合物は示さない例もある。8組の対応化合物の比較から、5-メチル基が1,3-ジオキサン系材料の極性秩序発現温度を最大120℃も高めうることを見出し、単純かつ一般的な分子設計指針を確立した。

Quasi-one-dimensional topological band structure and van Hove singularities in monolayer TaIrTe$_4$ from laser $μ$-ARPES
単層1T-TaIrTe4では電荷中性点から離れたゲート領域で量子スピンHall絶縁体相が輸送実験により報告されたが、これはバンド計算では予言されず、van Hove特異点における強相関由来の電子不安定性が原因と考えられてきた。本研究は剥離した単層試料をマイクロ集光レーザー角度分解光電子分光で調べ、密度波不安定性を起こしやすい強い異方的バンド構造と、状態密度の鞍点特異点を見出した。しかし鞍点は輸送異常が観測されない密度に位置し、準粒子線幅も電子相関が弱いことを示唆する。

Soft and chiral phonons in chiral phase of K3NiO2
ラマン散乱測定により、400 K付近で起こる非キラル正方晶からキラル正方晶への構造相転移が、ブリルアンゾーンZ点の二重縮退したソフトフォノンによって誘起されるという理論予測を検証した。低温キラル相ではソフトモードがラマン活性となり、A1とB1対称性の2成分に分裂し、冷却に伴いCochran則に従って硬化する。円偏光ラマン散乱ではΓ点の非縮退フォノンに角運動量は観測されず理論と整合する。全ブリルアンゾーンのフォノン分散計算から、キラル相では有限波数のフォノンが角運動量を持つことが判明した。

Berry-Curvature Effect in Anomalous Transport
温度勾配や化学ポテンシャル勾配といった統計的力によって駆動される強磁性体の異常輸送におけるBerry位相効果は、Xiaoらにより磁場依存の状態密度が電流密度に付加的寄与を生むという形で定式化されてきた。本論文では、交代磁性体および非中心対称金属における異常輸送のBerry位相効果について、準古典的な行列運動論方程式に基づく代替的な導出を提示する。異常Hall効果に加え、異常熱流および異常熱電流も同じ枠組みから導かれることを示している。

Emergent Vibronic Spectral Hierarchy in a Kagome Flat-Band Insulator
カゴメ化合物Rb2Ni3S4がT*≈260-280 K付近で示す特異な絶縁化転移を、偏光分解ラマン分光、温度依存X線回折、走査トンネル顕微鏡、電気・熱・磁気測定を組み合わせて調べた。この転移は通常の構造秩序変数も磁気秩序変数も伴わない電子局在であることを示した。ラマンスペクトルにはほぼ分散のない333.7 cm⁻¹フォノンに伴う巨大なFranck-Condon進行と、40.6 cm⁻¹間隔の櫛状微細構造が現れる。両階層の入れ子状共存は局在格子座標を含む強結合電子-振動多重項の証拠と解釈される。

Neural quantum states in condensed matter: advances, best practices, and prospects
ニューラルネットワークによるパラメータ化とモンテカルロサンプリングを組み合わせ、量子多体波動関数の柔軟な変分表現を与えるニューラル量子状態について、物性物理への応用の最近の進展を展望した。フラストレート量子磁性体、相互作用する格子フェルミオン、非平衡ダイナミクスを中心に、最先端計算を支えるアーキテクチャ、対称性の制約、最適化手法、サンプリング戦略を論じ、信頼できるシミュレーションのための実践指針をまとめた。符号・位相構造の学習、変分バイアス制御、大規模化、安定な実時間発展といった課題も検討している。


Ultralow-Field Triplon Condensation in a Spin-Ladder Magnet
スピン梯子磁性体Henmilite(Ca2Cu(OH)4[B(OH)4]2)において、μ0Hc1=0.17 Tという極低磁場でトリプロンのBose-Einstein凝縮と量子臨界点を初めて実現した。梯子系はダイマー系と異なりギャップを持つ母状態でも一次元相関が残るため、ゆらぎが強く支配する。熱力学、磁気弾性、μSR、中性子回折測定は従来のゼロ磁場反強磁性秩序という解釈を覆し、低エネルギー励起の残る量子無秩序な結合梯子状態を確立した。秩序相ドームはμ0Hc2≈8.2 Tまで著しく非対称に広がる。


Maxwell's Demon in Markov Chain Monte Carlo: Cooling Information Flow and Entropy Balance
マルコフ連鎖モンテカルロ法を、提案された移動を目標分布と比較して受理・棄却を決めるフィードバック装置とみなす立場を提示した。Maxwellの悪魔を受理判定モジュールと同定し、提案された辺を測定して結果を受理/棄却ビットに記録し、そのビットを使って確率流を整形すると解釈する。判定ビットは提案に関する真のShannon相互情報量を担うが、そのうち方向性を持つ部分だけが冷却情報流へ変換される。相対エントロピーの緩和率はv(t)=İcool(t)+Ṡ(t)を満たし、非可逆連鎖において有用な冷却とハウスキーピング循環を分離する。

-2026/8/21--
Multi-Tool Robotics Enables In-Situ Sample Manipulation for Time-Resolved Synchrotron Measurements
放射光実験では放射線安全上、測定中に人が試料に触れられず柔軟な操作が制限される。本研究はX線散乱ビームラインのハッチ内にモジュール式マルチツール・ロボットを導入し、連続測定中のリアルタイム試料ハンドリングと処理を実現した。これによりペロブスカイト薄膜のこれまで観測できなかった過渡的その場ダイナミクスを捉え、自動・自律的な放射光実験の基盤を築いた。

Quantum Rényi-Jarzynski Equality
従来の量子Jarzynski等式はコヒーレンスを壊す測定に依存していた。本論文はリソース理論により、任意の熱浴オブザーバブルの測定結果に条件づけた非破壊的な等式を導出し、Rényi k-ダイバージェンスで有限熱浴の平衡からのずれを表すRényi-Jarzynski等式を得た。これは状態生成やゲート設計の最適制御で調整可能なコスト関数となり、熱浴ドリフト最小化には系-熱浴エンタングルメント生成が必要な場合があることも示した。

Cumulative X-ray Damage in Bismuth Selenide Examined by Simultaneous TXM and XRD
トポロジカル絶縁体Bi2Se3の放射線損傷を、XFELで透過X線顕微鏡とX線回折を同時測定し27,000パルスにわたり追跡した。100パルス以内の蒸発による急速な穴形成と、数千回の熱サイクルにわたる粒微細化・スパッタリングという異なる機構を観測。単結晶からナノ結晶への進行的変化と局所温度1600 K超を確認し、粒界形成が後続パルスの損傷を加速するフィードバック機構を明らかにした。

Hysteresis without coexistence: disorder-rounded first-order transitions in a van der Waals magnet
テラヘルツ分光でカゴメvdW磁性体Nb3Cl(8-x)Br(x)を調べた。Nb3Cl8ではマクロ相共存と熱ヒステリシスを伴う明瞭な一次転移が見られるが、乱れたNb3Cl7Brではヒステリシスは残る一方で転移が大きく広がり、マクロ相共存が消失する。これは低次元系の凍結乱れに関するImry-Wortis/Aizenman-Wehrのシナリオと整合し、一次転移の指標とされる共存とヒステリシスが乱れにより分離されうることを示す。

Layered matter that maintains spacing but loses stacking order
層状物質では層間隔と積層秩序は通常連動するが、剛直で帯電したナノシートの膨潤懸濁液では両者が分離する。平均層間隔は鋭く塩濃度で調整可能な一方、積層秩序はわずか2〜3層に留まる。X線・中性子散乱やDonnan解析から、間隔は1 Pa/nm未満の弱い浸透圧復元勾配で保たれると判明した。間隔は平衡にありながら積層欠陥の緩和は遅く、エージング的に緩和する準安定なレジストリが生じる。

Altermagnetic memcapacitors
交代磁性・マルチフェロイックに基づくメムキャパシタンス効果を提案し、具体例として希土類バナデートRVO3を同定した。振動電場下で電荷・スピン電流はゼロ電場で接するピンチドヒステリシスループを描き、電流密度は最適化STT-MTJの約3.6倍に達する。SSH型ボンド変調を持つ2軌道d波格子としてモデル化し、符号反転する履歴依存の「バタフライ」型微分容量を得た。電荷とスピンが同時にスイッチする不揮発メモリ基盤となる。


Electronic and chemical phase identification in photoemission experiments using unsupervised machine learning
光電子分光は表面敏感なため未評価の表面で測定を始めることが多く、従来のラスタ走査による最適領域探索は時間がかかる。本研究は次元削減とガウス過程回帰を組み合わせた汎用フレームワークAARDVARKを提案する。UMAPをガウス過程の目的変数とすることで分光学的に異なる領域の境界を効率的に同定し、試料の変動に動的に適応する。測定選択のリアルタイム判断とデータ取得の最適化を可能にし、自律的試料探索の基盤を与える。

Dynamic Pseudogap Model
有限ネスティングベクトルの動的ゆらぎが生む擬ギャップ形成の微視的理論を構築した。古典ガウスランダム場に結合した電子から出発し、可換近似の下で一粒子グリーン関数の二重級数表現を導出。伝播関数は実効的動的ギャップで特徴づけられる一般化Bogoliubov構造を持つ。中心的成果は動的デコヒーレンススケールΓ_effの出現で、これがコヒーレントなサイドバンド形成と準静的ゆらぎギャップ領域とのクロスオーバーを支配することを数値計算で確認した。

Coherence protection of a silicon hole spin qubit with phase-modulated microwave driving
シリコン量子ドット中のホールスピンは強いスピン軌道相互作用で高速な全電気的制御が可能だが、同じ結合が電荷ノイズ感受性を高めコヒーレンスを制限する。本研究は位相変調型の連結連続駆動(CCD)法を実装し、マイクロ波の位相変調で低周波ノイズを抑制した。ラビ振動が安定化し減衰時間が延び、さらにCCD系で量子ビットを定義することでゲート操作中のコヒーレンス保護を確認した。ノイズ耐性のあるホールスピン量子ビットへの道筋を示す。

Tilted $p$-wave magnet candidate CeNiAsO
相関p波磁性体の候補CeNiAsOは秩序モーメントが小さく磁気構造の決定が困難だった。本研究は局所内部磁場に高感度な75As核四重極/核磁気共鳴測定により、面直成分が約0.05 μBという小さなモーメントを持つコメンシュレート反強磁性秩序を明らかにした。この傾いた磁気配置はスピン偏極軸をc軸から回転させるだけでなく非相対論的スピン分裂を増強する。著者らはこれを「傾いたp波磁性体」と呼ぶ新たな枠組みとして提示している。


Volatile resistive-switched state in a bulk organic conductor with a sharp metal-insulator transition
強相関系の揮発性抵抗スイッチングは重要だが物理機構は未解明で、従来の無機薄膜系は金属-絶縁体転移が広く放熱も大きいため、鍵となるジュール発熱の非線形熱効果の解読が難しい。本研究は極めて鋭い一次MITと弱い放熱を示すバルク有機導体(d7-DMe-DCNQI)2Cuを抵抗と1H-NMRで調べ、MITへの温度ロッキングや電圧と電流が反比例する「逆オームの法則」を観測した。抵抗スイッチングの非線形熱効果に基礎的知見を与える。

Pressure-tuning of electronic structure of CeTe3 probed by femtosecond collective mode spectroscopy
フェムト秒光学分光で電荷密度波(CDW)系CeTe3の秩序変数ダイナミクスの圧力変化を調べた。CDW転移温度は常圧の約570 Kから約6 GPaで室温付近まで低下する。回復ダイナミクスの圧力依存性は電子-フォノン結合の増強を示し、CDW抑制が主にフェルミ面ネスティングの低下によることを意味する。7 GPa以上ではCDW秩序が消え、低温で緩和が著しく遅くなり、Ce 4f と遍歴電子の混成増強による重い電子的振る舞いと整合する。

Fluctuation-Controlled Asymmetric Kinetics in Metal-Insulator Transitions
1T-TaS2の熱駆動金属-絶縁体転移における非対称な速度論を報告する。輸送・熱量・ラマン測定から、冷却時はバースト状アバランチで転移が進む一方、昇温時は連続的であることを示した。パルスジュール加熱による非平衡熱擾乱を用い、冷却時の相秩序化は強くアサーマルなままだが、昇温時はゆらぎが核形成障壁を徐々に超え滑らかに変態することを実証。アサーマル性の度合いが一次相転移の経路選択を支配する一般的枠組みを与える。

Josephson transport in YBa2Cu3O7 weak links created by focused-helium-ion-beam irradiation: Analysis based on diffusive-SNS-junction model
集束ヘリウムイオンビーム照射によるYBCO弱結合は高温超伝導ジョセフソン素子に有望だが輸送機構は不明だった。本研究はヘリウムイオン顕微鏡で作製した弱結合を調べ、拡散的SNS接合理論で統一的に記述した。IcとIcRn積の温度依存性は広い温度域でよく説明される一方、線量依存性は実効Thoulessエネルギーの変化だけでは説明できず、界面透過率低下と状態密度減少による伝導チャネル数の減少が示唆される。接合設計の指針を与える。

Quantum Dissipative Paraelectricity
二重井戸ポテンシャルを持つ量子系が対称性を破るかは、ポテンシャル形状だけでなく運動論や他の自由度との結合にも依存する。本研究は強誘電体を舞台にした準厳密可解モデルを導入し、量子常誘電領域を厳密に定義するとともに、トンネリング的特徴なしに対称性が破れる量子強誘電領域を同定した。さらに、二重井戸構造が零点ゆらぎに優る場合でも基底状態への発展中に観測可能な対称性の破れが抑制される「量子散逸常誘電性」を見出した。

A Unified Theoretical Framework for Photoemission and Its Inverse: Reciprocity, Spin, and Photon Polarization
スピン・角度分解光電子分光(SARPES)とその逆過程(SARIPES)を対等に扱う統一的理論枠組みを提示する。定式化は両過程の相反性を符号化する応答テンソルに基づき、SARPES計算内の偏光トモグラフィがテンソル要素を再構成する道筋を与える。独立成分は対称性で大幅に減り、スピン反転過程や強度変調の明示的表式が得られる。W(110)表面で例示し、SARPES計算からSARIPES強度を直接予測できることを示した。


Floquet Theory for Light-Driven Rotation of Dipolar and Multipolar Particles
光によるナノ粒子回転は光操作分野で知られるが、運動方程式に基づく微視的解析は進んでいなかった。本研究は円偏光レーザーを照射された双極子・多重極子粒子をモデル化し、散逸古典系のFloquet理論とモード分離法でLangevin型運動方程式を解析、時間発展も数値計算した。レーザー振動数・強度、質量、温度、摩擦への依存性を評価し、回転振動数がω^-1、ω^-3、Ω=ωとなる3領域からなる非平衡相図を決定。実験と定性的に整合する。

Three-dimensional imaging of oxygen dopant distribution in Sr2CuO(3+δ) by electron ptychography
銅酸化物超伝導体では酸素ドーパントが物性制御に決定的だが、原子スケールでの可視化は困難だった。本研究はマルチスライス電子タイコグラフィによりSr2CuO(3+δ)薄膜中の酸素ドーパントを直接イメージングした。ドーパントはCu-O鎖間の格子間サイトに存在し、転位や界面ステップに伴う引張歪み領域に強く偏析する。酸素分布がランダムではなく歪み場に敏感であることを示し、歪みをドーピング制御のパラメータとして使える可能性を示唆する。

Nonlinear Drude weight of the one-dimensional Hubbard model
一次元斥力Hubbard模型の非線形Drude重み(NLDW)を、厳密なBethe仮設計算と低エネルギー有効場理論を併用して調べた。1/4充填では強結合展開を導き数値的に確認。朝永-Luttinger液体記述ではウムクラップ相互作用が高次NLDWの発散を予言するが、Bethe仮設の有限サイズスケーリングは全NLDWが熱力学極限で有限に留まることを示し、有効場理論との食い違いを明らかにした。半充填ではMott転移近傍のハイパースケーリング仮説を提案・検証した。

Signatures of a light-induced exciton condensate exhibiting BEC-BCS crossover
光誘起の非平衡励起子凝縮とそのBEC-BCSクロスオーバーの証拠は乏しかった。本研究は時間・角度分解光電子分光により単層MnBi2Te4でその兆候を示した。光励起後、励起子を表すホール的分散が現れ20 ps以上持続する。価電子帯の先鋭化は時刻ゼロの2 ps後に生じ0.84 mJ/cm2で急峻に立ち上がり、BKT転移に支配される励起子凝縮の描像と整合する。高フルエンスではラクダ背状分散が現れBEC-BCSクロスオーバーと符合する。


Imaging the vacuum fluctuations of a quantum field
量子場では基底(真空)状態でも場のスナップショットにランダムな空間構造が生じる。この真空ゆらぎは自発崩壊やカシミール力、ホーキング輻射の根幹にあるが通常はその帰結しか観測されない。本研究は一様な平面型BECを用いてボゾン量子場の空間的真空ゆらぎを直接観測した。コヒーレント結合した2成分のスピン自由度が、相互作用優勢な領域でサイン・ゴルドン場を模擬する。場の像は複数スケールで同時に生じるゆらぎを示し、理論予測と整合した。

Strange Metal Hall Effect in Underdoped BaFe2(As(1-x)Px)2
ストレンジメタルの異常な輸送特性は準粒子描像の破綻を示唆する。本研究はストレンジメタル超伝導体BaFe2(As(1-x)Px)2のホール効果を調べ、量子臨界点とされる点の上方に広がる扇形領域内に、ドーピングに依存しない寄与が存在することを示した。この寄与は反強磁性的ホール応答の性質を反映しつつ、フェルミ面再構成の効果とは区別される普遍性を持つ。臨界ゆらぎ由来という描像と整合し、T線形抵抗率や非従来型超伝導と結びつく。


Competing triangular and stripe supersolid orders in a dipolar quantum gas
双極子超固体では二次元結晶の複数の空間秩序が競合する豊かな相図が予言されているが、実験的観測は限られていた。本研究は強磁性原子の量子気体をサーフボード型トラップに閉じ込め、接触相互作用強度と双極子の向きを調整して三角格子型とストライプ型の密度変調状態を生成した。構造秩序変数の統計解析から両相と相互の転移を同定し、臨界的振る舞いが非ガウス的ゆらぎの増大として現れることを示した。各構造は超固体領域と絶縁体領域の双方で観測された。

-2026/8/20--
Breaking the mutual exclusivity between metallicity and ferroelectricity in a non-polar covalent semiconductor via orbital selective doping
強誘電性と金属伝導は両立しないという通説を破った研究。非極性の共有結合半導体である立方晶SiC(3C-SiC)に窒素を高濃度ドープすると、金属化と同時に擬ヤーン・テラー効果によりF-43mからR3mへの極性構造相転移が生じる。伝導電子が占める反結合軌道の強い方向性がSi-C局所分極の遮蔽を妨げ、金属性と強誘電性が共存する。約180度の分極反転を原子スケールで直接観察し、強誘電トンネル接合で約50nsの高速応答、1Vの低電圧動作、85927回超の耐久性、100年の保持時間を持つ不揮発性メモリ動作を実証した。

Chern insulator boundary criticality
境界が存在する場合のチャーン絶縁体転移におけるカイラリティの痕跡を調べた理論研究。自明な絶縁体とC=1のチャーン絶縁体の転移は質量ゼロのディラックフェルミオンで記述され、パリティ異常により臨界ホール伝導度はe²/2hとなる。ディラック質量のドメインウォール構成により、臨界点でカイラルエッジモードはバルクへ非局在化する一方、境界フェルミオン相関関数はカイラル構造を保ちバルクの次元を獲得することを示した。半空間の共形対称性のみからパリティ奇の項を同定し、時間反転対称性の破れた一般の(2+1)次元CFTや高チャーン数転移、3次元トポロジカル絶縁体へも拡張した。

Learning constructive models of emergent systems
多スケール相互作用を持つ創発系を構成的に設計する枠組みの提案。統計系統学に着想を得て、系のエントロピーのスケールを推定し低エントロピー階層から高エントロピー階層への情報流を明示的に制約することで、データ駆動の段階的な「構成モデル」が得られることを示した。この構造をLayer-Restricted Boltzmann Machine(LRBM)と呼ぶ。数字画像・自然言語・酵素配列に同一手法を適用すると、下層が大域構造を、上層が細部を符号化する階層論理が現れた。合成160例と天然1130例のコリスミ酸ムターゼをin vivo活性評価し、最近縁天然配列から53%も配列が異なる機能的酵素を設計。フォールドは中間層で、機能は全層充足時に初めて出現した。

Writing and erasing skyrmions by single ultrafast laser pulses in monolayer Janus 2D magnets
2次元磁性体におけるスキルミオンの実現と超高速光制御を報告。ヤヌス型2次元クロムカルコゲナイドにおいて、放射光X線光電子顕微鏡と走査NV磁力計を用いてネール型スキルミオンを直接観察し、無磁場での安定性・不揮発性・サイズ可変性を確認した。第一原理計算とマイクロマグネティックシミュレーションから、ヤヌス表面による空間反転対称性の破れがジャロシンスキー・守谷相互作用を増強し、スキルミオンを安定化・可変化する微視的機構であることを明らかにした。さらに300 Oeという低磁場下で単一の超高速レーザーパルスによる可逆的な書き込み・消去を実現し、低消費電力スキルミオン素子への道を開いた。

Interface-Controlled Spin-Orbit Torques in Rare-Earth Synthetic Ferrimagnets Probed by Sagnac Magneto-Optics and Harmonic Hall Measurements
Co/Gd系人工フェリ磁性体のスピン軌道トルク(SOT)を、磁気輸送と磁気光学の相補的手法で定量評価した研究。サニャック磁気光学干渉法により電流誘起の磁化傾斜を直接測定し、ダンピングライクSOT有効磁場を電気伝導の指標に依存せず決定。複数のCo/GdおよびGd/Pt/Coヘテロ構造で高調波ホール解析と良好に一致した。Gd膜厚と積層順の変化から、ダンピングライクトルクが希土類・重金属界面でのスピン輸送と角運動量変換に強く支配されることを示した。Ptのスピンホール寄与が相殺されるはずのGd/Pt/Co/Ptでも有限のトルクが観測され、Gd層の能動的役割が示唆される。界面設計により2nm Co層で垂直磁気異方性を実現し、8-10 MA/cm²でSOTスイッチングに成功した。

Isolating the natural edges of bilayer graphene in gate-defined mesoscopic devices
二層グラフェンの自然端を素子から完全に排除するグラファイトゲート構造を提案。単一のパターニングされたグラファイトゲート層により、完全に静電的に定義されたホールバーを実現した。縦・ホール測定では、ホール効果の消失や境界散乱に由来する磁気抵抗ピークといったメゾスコピック輸送の特徴が観測された。実効チャネル幅がフェルミ準位とゲート境界での静電閉じ込めとともに増大することから、キャリアが静電境界で散乱していることが示される。ラマン分光とケルビンプローブ力顕微鏡から、この境界は作製手法に起因して乱れていることが示唆された。一方、同構造の電界効果トランジスタでは量子移動度が境界散乱に制限されず、4 mTまで量子振動が観測され、2.5×10⁶ cm²/Vsという記録的な値を示した。


Room-Temperature Polarity Control of the Anomalous Nernst Effect in a High-Magnetic-Anisotropy Topological Nodal-Line MnAlGe
高い磁気異方性(Ku)を保ったまま、室温で異常ネルンスト効果(ANE)の極性を制御できることを示した研究。準二次元ノーダルライン物質MnAlGeのエピタキシャル薄膜において、Al/Ge組成を調整することで、堅牢な高Kuを維持しつつANEの極性反転を実現した。この反転は、副格子選択的なキャリアドーピングによって変調される内因性ベリー曲率の寄与に由来し、スピン分解バンド構造解析と硬X線光電子分光により裏付けられた。実用性の実証として、正負両極性のMnAlGeを組み合わせたメアンダ構造素子を作製し熱電出力を増大させた。ノーダルライン電子構造に対するフェルミ準位の調整が、単一材料内でのANE極性制御を可能にする。

Room-temperature ferroelectrically switchable quantum geometry in few-layer WTe2 for complementary in-memory computing
少数層WTe2において、量子幾何を強誘電的にスイッチできることを室温で実証した研究。強誘電分極と量子幾何の本質的な結合を利用し、2次および3次の非線形異常ホール効果(NLAHE)を不揮発かつ相関した形で決定論的に電気スイッチングできることを示した。このスイッチングは室温で約10⁴サイクル、保持時間約10⁵秒の耐久性を持つ。さらに2次と3次のNLAHEが室温で逆向きにスイッチする性質を活かし、相補的インメモリコンピューティングとハードウェアレベルの相補的畳み込みカーネルを実装した。このカーネルは従来の畳み込みネットワークが持つ方向依存性の制約を克服し、テクスチャ認識で98%の精度を達成、物理現象に根ざした計算への道筋を示した。

Topology is not silent in the transport noise of multiband bosons
フェルミ面上の電子ではベリー曲率のトポロジカル成分が輸送ノイズから消えるが、ボソンではこの相殺が破れることを示した理論研究。マグノンやフォノンは各バンドを固有のチャーン数とともに熱的に占有するため、曲率のホッジ分解の調和成分が単一定数にならず、分散が消えない。残るのは占有数で重み付けされたチャーン数の分散であり、これは複数バンドが異なる重みで占有される場合にのみ存在する、零温度に対応物を持たない量である。揺らぐボルツマン方程式から導出し、エネルギー磁化の差し引き項が有界な磁化密度の回転であるため輸送測定に寄与しないことを示した。駆動プロトコルでは信号が平衡ノイズより12桁小さく測定不能だが、平衡下の電流交差スペクトルの反対称成分の総和則なら測定可能で、周波数分解形式ならトポロジカル成分と幾何学的成分を分離できる。Cu(1,3-bdc)向けの具体的手順を提示した。

High-field fate of the Kitaev quantum spin liquid in $α$-RuCl$_3$
キタエフ量子スピン液体(KQSL)が強磁場下で生き残るかを、α-RuCl₃の24 Tまでの高磁場比熱測定により調べた研究。面内磁場約7 Tで反強磁性秩序が抑制され、マヨラナ励起と整合する量子無秩序相が現れるが、飽和に向かう高磁場での微視的な変化は未解明だった。本研究ではμ₀H*≈15 Tで明瞭なクロスオーバーが現れ、そこを超えると摂動的キタエフ描像が破綻することを示した。H*以上では比熱の6回対称な角度変調が消失し、励起ギャップも予測されるH³スケーリングから外れる。一方でギャップは磁場とともに減少し、面内磁化異方性は約24 Tまで残存しており、これは自明なスピン偏極状態とは対照的で、磁化飽和の約90%でもKQSLの痕跡が保たれることを意味する。


Hubb_DMFT and Wan2mb_DMFT: Continuous-Time Quantum Monte Carlo Solvers for Single- and Multi-Orbital Hubbard Model
強相関電子系の動的平均場理論(DMFT)方程式を解くための2つのソフトウェアパッケージを発表。Hubb_DMFTは単一バンドハバードモデル向けに調整されており、局所自己エネルギーに加え、2粒子フェルミオン頂点および三角型のフェルミオン・ボソン電荷・スピン頂点を高速に計算できる。Wan2mb_DMFTはこれを現実的な多軌道系へ拡張し、ワニエ強束縛ハミルトニアンを多体ソルバーに直接接続する。両コードはiQIST v.0.7の不純物ソルバーを基盤とし、混成展開(CT-HYB)による連続時間量子モンテカルロ(CT-QMC)コアを内部統合・改良して用いる。密度密度型相互作用に対する改良自己エネルギー・頂点推定量を備え、量子不純物問題の数値的に厳密な解を保証する。

Floquet engineering of topological bands in semiconductor van der Waals heterobilayers
近赤外から可視光による周期駆動が、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)ヘテロ二層のフォトンドレスバンド構造にトポロジカル相転移を引き起こすことを示した理論研究。光と結合した最低次のk・pハミルトニアンにフロケ形式を適用し、第一フォトン共鳴近傍でtype-II TMDヘテロ二層の本質的なフォトンドレスバンドを正しく捉える有効4バンドモデルを導出した。0フォトンセクターと1フォトンセクターの交差が実効的にバンド反転を生み、チャーン数±2に達するトポロジカル相と10 meV程度のギャップをもたらす。TMDが高チャーン数バンドの設計や固体中の駆動トポロジカル状態の探索に有力な候補であることを示した。

Magnetism and Electrical Conduction in Lightly-Doped Single-Layer High-$T_c$ Cuprate $\mathrm{La}_2\mathrm{CuO}_{4+δ}$
反強磁性(AF)秩序と超伝導(SC)秩序が共存する単層銅酸化物La₂CuO₄₊δ(ホールドープ量p≅0.03)単結晶において、磁化と電気抵抗率の温度・磁場依存性を調べ、p≲0.015の極低ドープ領域と比較した研究。p≅0.03の超伝導試料では、Cuサイトの副格子モーメントとそのAF結合はモット絶縁体である母物質より約15%小さいだけであり、Cu 3d電子の局在が依然として非常に強いことを示唆する。さらに超伝導試料では、2次元AFスピン相関がT*≅280 Kからネール温度T_N=266 Kに向かって急速に発達し、この温度で面直抵抗率が大きく減少し始める。これがp≅0.03の単層銅酸化物における高温でのAF秩序の起源である可能性を指摘した。

Revisiting the topological properties of XMg2Bi2 (X = Ca, Sr, Ba, Yb and Eu)
密度汎関数理論は半導体のバンドギャップを過小評価し、反転ギャップを過大評価するため、物質のトポロジカル相図を誇張しがちである。本研究ではハイブリッド汎関数を用いてトポロジカル不変量を計算し、CaAl2Si2型構造の化合物でこの過大評価が特に顕著であることを示した。その中でXMg2Bi2(X = Ca, Sr, Ba, Yb, Eu)はすべての陽イオンについてトポロジカルに自明であり、直接ギャップ0.24-0.34 eVの狭ギャップ半導体で、Xの原子量増加とともにギャップがわずかに減少する。一軸歪みと静水圧を加えた計算でもこの結論は確認された。自明な半導体も表面ディラック点を持たない表面状態を持ちうるため、表面状態の観測だけでは非自明なトポロジーの証拠にならず、実験で観測されるトポロジカルな兆候はドーピングや表面再構成などの外因的効果に帰すべきだと論じている。

A miniature evaporator for in-operando deposition of isolated atoms in a low-temperature scanning tunneling microscope
低温走査トンネル顕微鏡(STM)内で希薄な原子を冷却試料上に蒸着するための小型蒸発源を開発。市販の豆電球を改造したミリワット級の蒸発源で、露出したタングステンフィラメントにマイクロメートル厚のFe膜を被覆し、試料から約1 cmの位置に設置してミリケルビンSTMヘッドに直接組み込んだ。約5 Kで動作させたまま、MgO/Ag(100)上に孤立Fe原子を蒸着することに成功。蒸着によるSTM本体の温度上昇はわずか約2 Kで、蒸着後も同じナノスケール領域を5 nm未満の横方向ずれで再走査できる。±14 mV付近の対称な非弾性ステップを示す微分コンダクタンス分光により、蒸着原子がFeであることを同定した。局所蒸着フラックスは1.5×10⁻⁵ nm⁻²s⁻¹で、蒸発源寿命は約150時間と見積もられる。

Predicting critical temperature in quantum simulators for high-$T_c$ superconductivity: the matrix product state plus mean field approach
冷却原子光格子による量子シミュレーションで高温超伝導を実現するための理論的基盤を整備した研究。近年提案され部分的に実現している混合次元(mixD)模型は、高い対形成エネルギーとペアの高い可動性を両立できる点で有望である。本研究では異方的トンネリングを持つ2次元mixD模型を対象に、フェルミオン向けの行列積状態+平均場理論(MPS+MF)を用いて解析し、これらの模型が高温超伝導相に入りうることを示した。この解析は、2次元系の構成単位となる1次元mixD系の包括的な特徴づけに基づいており、現在実験的に到達可能な系のサイズ範囲を網羅している。さらに、有限サイズ効果によって1次元mixD系から2次元系を構築できなくなる条件を判定する実用的な経験則も確立した。

Synthesis and stability of high-$T_c$ LaH$_{10\pmδ}$ films at high pressures
高圧水素化物LaH₁₀±δの薄膜合成とその安定性を報告した研究。ランタンデカハイドライドは二元系で最高のTc≈250 K(140-180 GPa)を示す。本研究では168 GPaと176 GPaの2つのダイヤモンドアンビルセル内で、アンモニアボラン(NH₃BH₃)を水素供与体としてランタン薄膜をその場レーザー加熱することでLaH₁₀±δ膜を合成した。放射光X線回折により高対称なfccランタン副格子(空間群Fm-3m)が分解され、格子定数はバルク試料の先行研究とよく一致した。電気測定により176 GPaで最高Tc=247 Kの高温超伝導を確認し、磁場による超伝導の抑制も観測した。さらに回折と電気測定を組み合わせ、レーザー加熱後約300日間にわたり結晶構造とTcが顕著に安定であることを明らかにした。物理蒸着による膜前駆体が三元系水素化物合成や微細加工素子の統合への実用的な道筋となる。

Ultrafast order-selective electron imaging and spectroscopy
量子物質の非平衡ダイナミクスを調べる超高速ポンプ・プローブ分光は、超高速エネルギー変換や光誘起相転移の経路解明に不可欠となっている。異なる測定手法はそれぞれ格子・電荷・スピンの結合した自由度に固有のアクセスを与えるが、技術的に重要なナノスケール素子の研究には高い空間分解能も必要となる。電子顕微鏡はナノメートル分解能の撮像を提供する一方、超高速の時間分解能と分光的特異性を同時に備えないことが多い。本展望論文では、暗視野電子顕微鏡と光電子顕微鏡の最近の進展、特にフェムト秒光電子運動量顕微鏡と超高速透過電子顕微鏡という相補的な2手法を概観する。これらの秩序選択的な電子撮像・分光技術は、量子物質やナノ構造、素子における非平衡現象の微視的理解に広い可能性を開く。


Anti-spin Laue groups: classification of anti-altermagnets and their representative minimal models
反交代磁性体は奇パリティの非相対論的スピン分裂を示すが、偶パリティの交代磁性体と異なり、スピンラウエ群に相当する運動量空間対称性の簡約分類が存在しなかった。本研究は3つのクラスに整理される「アンチスピンラウエ群」を導入し、この非従来型磁性の奇パリティ部分波的性格を記述する21個の群を同定した。アルターマグネットの10個のスピンラウエ群と併せて、共線的な運動量空間スピン偏極を持つ非相対論的非従来型磁性体の分類が完成する。アンチスピンラウエ群はスピン空間(点)群を、共線的運動量空間スピン偏極への作用のみを残す形で多対一に簡約し、対称性が強制するノーダルなスピン分裂の性格を直接符号化する。これに基づき、物質志向の最小4バンド模型を生成する系統的なモデル構築アルゴリズムを開発した。

Ultrasonic attenuation in inhomogeneous superconductors
サブギャップ束縛状態は状態密度に顕著な構造を作るが、必ずしも超音波減衰に対応する信号を生まない。本研究は、コヒーレンス因子が束縛状態の超音波減衰への寄与に対するフィルターとして働くことを示した。位相バイアスをかけた超伝導体・常伝導体・超伝導体接合では、フォノン周波数がサブギャップ準位の位相依存的な間隔と一致するときアンドレーエフ束縛状態が減衰に共鳴を生む。一方d波超伝導体の(110)粒界では、非磁性不純物由来の束縛状態は大きなスペクトル重みを持つにもかかわらず、コヒーレンス因子がほぼ相殺するため減衰は弱い。境界近傍で局所磁性が発達するとこの相殺が解け、束縛状態がスピン分裂して明瞭な減衰ピークが現れる。実空間ボゴリューボフ・ド・ジャン形式で計算し、超音波が対称性やスピン構造の異なる束縛状態を区別できることを示した。

Ultra-low energy (20 - 300 eV) electron imaging and diffraction
20-300 eVという超低エネルギー電子を用いた撮像と回折に関する講義録。市販の透過型電子顕微鏡で用いられる従来のエネルギー領域の電子と比較しながら、低エネルギー電子の性質を論じている。さらに低エネルギー電子回折と低エネルギー電子ホログラフィーの原理および実験構成を提示し、その特徴を議論している。

JANUS: A Multi-modal Foundation Neural Sampler for Disordered Materials
乱れた材料では組成と体積を固定しないサンプリングが必要となるが、原子種と構造の変化が結合するため離散・連続の混合サンプリングは計算量が膨大になる。本研究は、連続拡散とマスク付き離散拡散を等変グラフニューラルネットで結合し、平衡データを用意せずエネルギー評価のみから学習するマルチモーダル神経サンプラーJANUSを提案する。イジング模型や等圧ΔμNPT合金系のベンチマークで、参照モンテカルロの平衡量を再現し、3桁以上少ないエネルギー評価で自由エネルギーと相挙動を得た。多元合金では所望の化学的短距離秩序や体積弾性率への条件付き誘導が可能で、大規模言語モデルの進化的エージェントと組み合わせて光学・機械特性の逆設計も行った。シリコンやダイヤモンドではμVTアンサンブルで15元素の空孔・ドーパントを探索し、既知のE中心を再現するとともにSi中のS-Tiやダイヤ中のB-O-Oなど深い準位を持つ新規欠陥候補を同定した。

Chiral bosonic mean-field Ansatz and spin dynamics in spin-1 Kitaev magnets
キタエフ模型は量子スピン液体の代表例だが、高スピン拡張は厳密に解けずスピンダイナミクスの理解が進んでいない。本研究は反強磁性S=1キタエフ模型に対する三重項対形成のφ_t=π/2フラックスパターンを再検討し、弱い対称非対角交換ΓおよびΓ'へ解析を拡張した。ボンド演算子によるシュウィンガーボソン平均場理論を用い、三重項0フラックスとπ/2フラックスのアンザッツについてキタエフ相互作用に適した相関スキームで動的スピン構造因子を計算した。純キタエフ極限ではπ/2フラックスの方が平坦なスペクトルを与え、実空間相関では長距離相関がより強く抑制され、キタエフ極限で期待される短距離的な相関パターンに近い。S(q,ω)の平坦さは短距離スピン相関に起因し、時間反転対称性の破れの直接的診断にはならないと注意を促す。Γ'=Γの弱い非対角交換では有限サイズ厳密対角化と定性的に一致するギャップのある解が得られた。

-2026/8/19--
PowderLine: a programmatic powder diffraction analysis application
リートベルト解析などの全パターンフィッティングは粉末回折データから構造・化学・微細組織情報を引き出せるが、専門知識とソフト固有の知識を要し、大規模適用には個別スクリプトが必要だった。本研究はPython製アプリPowderLineを提案する。精密化の全工程を単一の宣言的レシピに集約し、バージョン管理されたスキーマで検証したうえで精密化ソフトを介して実行し、構造化された結果を返す。レシピは機械可読・可書きで、リートベルト法と単一ピーク解析の両方を記述でき、利用者・スクリプト・自律エージェントが同一の方法で実行できる。高い合成性により、対話的・スクリプト的・自律的ワークフローのいずれにも自然に組み込める。

Hidden Ergodic Relaxation in the Quench Dynamics of a Bichromatic Mott Lattice
有限の二色性モット格子中の強相関ボソンについて、副格子振幅を急激にクエンチした後の非平衡ダイナミクスを調べた。展開係数エントロピーと第2レニーエントロピーはランダム行列理論のGOE予測へ向けて顕著に増大し、多配置表現におけるGOE的な統計的広がりと整合する。一方で運動量分布、フラグメンテーション、グラウバー相関関数といった実験的に観測可能な量は時間発展を通じてほぼ変化しない。強いクエンチでは各エントロピーとN体係数の広がりが摂動強度にほぼ依存しない共通の緩和軌道に collapse する。局所的なモット秩序が保たれたまま進行する「隠れたエルゴード緩和」の存在を示し、埋め込みランダム行列模型が制限的からヒルベルト空間全体への広がりへの crossover を再現する。

Over what length scale does an inorganic substrate perturb the structure of a glassy organic semiconductor?
蒸着ガラスのバルク構造は広く研究されてきたが、有機エレクトロニクスで重要な埋もれた界面の構造はほとんど注目されてこなかった。本研究では有機半導体DSA-Phの蒸着ガラスについて、膜厚を10〜600 nmで変化させ、シリコンおよび金基板上での構造を斜入射X線散乱で調べた。その結果、界面近傍の分子パッキングはバルクよりも無秩序であることが示された。室温付近の蒸着温度では、基板近傍およそ8 nmの領域で分子パッキングが変化すると見積もられる。DSA-Phの粗視化モデルによる分子動力学シミュレーションも同程度の長さスケールを与えた。実験・計算のいずれでも、この数ナノメートルの界面層より外側のガラス構造は蒸着温度によって制御される。

Demonstration of a scalable all-solid-state refrigerator exploiting diffusion geometries and limiting interfacial conductances at temperatures below 1 Kelvin
常伝導金属/絶縁体/超伝導体(NIS)接合による固体冷凍機は電子冷却には優れるがフォノン冷却が難しかった。超伝導ギャップをエネルギーフィルターとして高エネルギー電子を選択的にトンネルさせ、準粒子として排熱する。本研究は、準粒子が電場のない超伝導体中を濃度勾配により拡散的に流れる点と、超伝導体-トラップ界面の形状と材料設計により高温側からの熱の逆流を抑えられる点に着目し、冷却性能を高めた。W/TiW、酸化アルミ、アルミ、金を用い、1121対のSINIS接合を直列接続し、バンプボンディングで高温側金トラップと接合した。3.9×3.9×0.65 mmのシリコンチップの実効フォノン温度を、浴温120 mKから70 mKへ、271 mKから174 mK(-97 mK)へ低下させた。NIS接合でチップ全体を1 K以下に冷却した初の実証である。

Second Harmonic Generation Spectroscopy of the Surface Charge Density Wave in the Weyl Semimetal CoSi
温度依存の回転異方性第二高調波発生(RA-SHG)を用い、ワイル半金属CoSiの(001)面に転移温度90.0±0.8 Kの電荷密度波(CDW)不安定性を同定した。SHG応答は秩序変数の振幅を反映し、2つの非線形テンソル成分が支配的で、背景を差し引いた強度は温度に対しべき則で変化する。抽出した臨界指数β=0.30±0.03は3D XYユニバーサリティクラスと整合し、名目上は二次元的な表面層としては予想外の結果である。バルクの応答には対応する異常が見られず、この転移が純粋に表面駆動の相転移であることが確立された。この三次元的スケーリングは、表面フェルミアーク状態とそれが結び付くバルクトポロジーとの結合に起因すると考えられ、既報の単位胞内での表面副層間の位相関係が秩序変数に本質的な三次元構造を与えていると解釈される。


Fresnel diffraction imaging of surface nanostructure using coherent resonant X-ray scattering
反強磁性体MnBi2Te4の表面ナノ構造を、実空間・実時間コヒーレントX線イメージング(direct-CXI)という新しい手法で調べた。この手法は反強磁性テクスチャに関する新知見、たとえば逆位相反強磁性ドメインの形成やドメインおよびドメイン壁の熱的ダイナミクスをもたらしてきたが、複雑な位相回復処理を要さず実空間像が得られる一方で、その結像機構は十分に理解されておらず、テクスチャや含まれる情報の深い理解を妨げていた。本研究ではMnBi2Te4上に作製した構造の明確な特性を調べることで結像原理を解明した。観測像はフレネル回折積分でよく説明でき、古典光学の単純なモデルによる計算が実験像を再現する。direct-CXIが実空間像に加え位相情報も含むことを示した。


Flux-tunable global and local superconductivity in a topological insulator nano-SQUID
トポロジカル系は局所的な境界モードの存在を強制する大域的性質で定義される。三次元トポロジカル絶縁体(TI)はトポロジカル超伝導の初期候補だったが、研究の中心は他のプラットフォームへ移った。本研究は柱状のナノSQUID構造を用いバルク絶縁性TIを再検討する。この形状はTI表面への近接効果を最適化し、ナノSQUIDの臨界電流による大域的超伝導特性と、両端のトンネル接合による局所状態を同時に観測できる。周期的な臨界電流振動や超伝導ダイオード効果の符号反転など、トポロジカル領域への磁束駆動の大域的相転移と整合する特徴が観測され、トンネル分光でも局所・非局所コンダクタンスの跳びが対応した。しかしゼロバイアスピークは理論上自明な領域(ゼロ磁場含む)にも現れ、局所と大域の兆候が相関しないことから、マヨラナ束縛状態の確定には大域的トポロジー確立と高度な局所プローブの併用が必要と強調する。

Undo研の新作だ


Unconventional Pressure Evolution of Spin-Density-Wave State in La$_{3}$Ni$_{2}$O$_{7}$
二層ニッケル酸化物La3Ni2O7における圧力誘起高温超伝導の発見により、スピン密度波(SDW)状態が超伝導領域へ向けてどう変化するかが問われている。本研究は単結晶に対し16.51 GPaまでの静水圧下で系統的な電子ラマン測定を行った。SDWギャップエネルギーと転移温度T_SDWはともに圧力とともに全体として増大する一方、無次元結合比2Δ_SDW/(k_B T_SDW)は約7.5でほぼ一定に保たれ、SDW状態が強結合的性格を保つことを示す。同時にラマンのSDWピークは加圧により幅広くなり、長距離SDW秩序が徐々に弱まることを示唆する。SDWのエネルギースケールは増大するのに秩序のコヒーレンスは低下するという異例の圧力変化を明らかにし、超伝導に関わる磁気相関への分光学的制約を与える。

やっぱり電子ラマン分光なんだなぁ


Growth of Altermagnetic α-MnTe Films: Substrate Variation and Surface Modification
六方晶α-MnTe構造のテルル化マンガンは交代磁性体の代表物質となっており、薄膜合成は基礎科学とデバイス応用の双方で重要である。本研究ではMnTe薄膜およびヘテロ構造のエピタキシャル成長を報告し、X線・電子線回折と軟X線角度分解光電子分光で評価した。透明バンド絶縁体、トポロジカル絶縁体、金属的遷移金属カルコゲナイド、ファンデルワールス強磁性体Fe3GeTe2まで多様な基板上に高品質α-MnTeを成長できることを示した。絶縁性基板は輸送測定や光学分光に、金属的トポロジカル表面状態はスピン軌道トルクなどの界面効果に、金属基板は電子分光での帯電回避に、強磁性基板は界面越しの磁化制御に有用である。さらにMnTe(0001)表面で成長直後、Te蒸着後、熱処理後に現れる超構造の形成についても議論する。

Absence of nontrivial local conserved quantities in a class of $U(1)$-symmetric spin-1 chains
四重極結合の一部が消える、これまでの研究で扱われていなかったクラスのU(1)対称・最近接相互作用スピン1鎖について、自明でない局所保存量が存在しないことを証明した。白石の手法を適用し、N サイトの周期鎖上のこのクラスの任意のモデルで、3≤k≤N/2 のいかなる k についても k-局所保存量が存在しないことを示す。特に、一次元でゼロ温度の自発的U(1)対称性の破れを示すフラストレーションフリーなスピン1鎖では、系のサイズの半分までを台とするあらゆる局所保存量が恒等演算子、全磁化S^z、ハミルトニアン自身の線形結合に限られる。これによりハイゼンベルク強磁性体と異なりハミルトニアンと可換な局所秩序変数が存在せず、連続対称性の破れがフラストレーションフリー構造によることが厳密に示された。周期的モツキン鎖でも同様の結果を証明した。

Chiral Spinterfaces as an Overlooked Component of the Chiral-Induced Spin Selectivity Effect
キラル誘起スピン選択性(CISS)効果は通常キラル分子中のスピン選択的輸送に帰されるが、分子-電極界面の役割はほとんど未解明である。本研究では、アミノ酸由来のキラル分子を強磁性Ni薄膜に吸着させると、分子-Ni/NiO界面に局在した残留的でキラリティ依存の磁気光学応答が生じ、外部磁場で可逆的にスイッチできる、すなわち真に磁気的な性質をもつことを示した。多数の対照実験により、この応答が分子層やバルク強磁性体ではなく界面領域に由来することを確立した。第一原理計算は、Boc-メチオニンが硫黄結合型とカルボキシル結合型のエネルギー的に到達可能な配置で吸着し、異なる分子配向とリガンドp-Ni d混成、ひいては構造的・電子的に異なる界面を作ることを示す。キラルなスピンインターフェースの形成を支持し、界面電子構造がスピン選択的分子デバイスの設計因子であることを示した。

Dispersive Shock Waves in a 1D Quantum Liquid
一次元量子液体に移動境界条件を実装し、非線形波の砕波と分散によるその正則化を調べた。プログラム可能な光ポテンシャルにより、アトムチップ上に捕捉された弱相互作用の極低温ボース気体を音速の最大3倍までの可変速度で圧縮し、準その場の密度分布を測定して衝撃波端のダイナミクスを抽出した。前縁と後縁の速度を分解し、衝撃波の幅が時間に対して線形に増大することを観測した。これらは分散性衝撃波の特徴であり、Whitham法による漸近予測と整合する。結像過程やピストンポテンシャルの有限の高さを考慮した有限温度の非多項式シュレディンガー方程式シミュレーションとも定量的に一致した。微視的ダイナミクスが厳密に可積分な一次元領域から外れても粗視化された分散衝撃波の現象論が頑健であることを示す、制御された定量的検証である。

Bridging ambient- and high-pressure superconductivity in La$_2$LnNi$_2$O$_7$ films
二層ニッケル酸化物における高圧下80 K付近の超伝導の発見以降研究が活発化し、圧縮歪みを加えた薄膜では常圧でも40 Kを超える超伝導が見つかったが、常圧と高圧の領域の関係は未解明である。本研究は圧縮歪みLa2LnNi2O7薄膜(Ln=ランタノイド)の超伝導を常圧・高圧で系統的に調べた。59 Tの磁場で超伝導を抑制して得た常圧の常伝導状態の抵抗率はT^2的な振る舞いに向かう。キュービックアンビルセル中の高圧下では、T_cは常圧の41〜42 Kから16 GPaで67〜73 Kへ上昇した。一方、圧力効果を模すと期待されるLn置換による格子圧縮ではT_cは低下する。いずれの場合もT_cは常伝導輸送のT^2とT線形の間の変化と相関し、格子構造と超伝導の相互関係に知見を与える。


Entropy mapping under uniaxial pressure utilizing the elastocaloric effect
一軸圧力は量子物質の強力な制御パラメータだが、比熱などの従来の熱力学的測定は歪み印加装置の狭い形状では困難である。本研究は交流弾性熱量効果測定の定量的解析枠組みを構築し、複雑な相図全体にわたる絶対エントロピー、ひいては比熱の再構成を可能にした。低周波の強結合領域での測定と、高周波の準断熱領域での高S/N測定を組み合わせることで絶対精度を達成した。相関超伝導体Sr2RuO4に適用し、超伝導状態の深部の相転移を含む相図全体の絶対エントロピーマップを得た。これにより他の手法では不可能な絶対比熱の導出が可能となる。データは、超伝導ギャップがファンホーベ特異点で最大化されることと整合し、エントロピーの抑制が臨界歪みで最も強いことを裏付ける。一方Δc/(γT)のVH歪みでの増大は従来の間接的熱量測定からの推定より弱いことも示した。




Observation of magnetic quantum phase crossovers in a semiconductor spin ladder
強相関量子磁性体の集団相の理解には、微視的に精密制御できる理論的に扱いやすいモデル系が必要である。反強磁性スピンはしごは半充填でギャップのある相とない相を磁場で制御でき、ドープすると非従来型の対形成傾向を示す。本研究は、サイト分解された連続可変の交換相互作用をもつ半充填のゲルマニウム量子ドット配列でプログラム可能なハイゼンベルクスピンはしごを実現した。一定磁場下でラング・レッグ結合を変化させ、ラング一重項相、傾斜反強磁性相、完全分極相をマップした。平衡測定と動的測定を組み合わせたハミルトニアン学習により、スピン軌道相互作用も取り込んで観測されたクロスオーバーを定量的に再現した。従来のバルク測定では到達できない4点相関を含む高次スピン相関の測定は、有限サイズにもかかわらず相構造の兆候を明らかにした。

Heat capacity as a marker for shape and jamming transitions in active systems
持続性はアクティブ粒子の定常状態に影響し、単一粒子では境界への蓄積を、相互作用系ではクラスタリングやジャミングを生む。持続性が下がるとこれらは消え、系はより受動的な定常状態に近づく。本研究はこれらの転移に固有の熱量的シグネチャがあることを示す。局所詳細釣り合いを満たす格子上のrun-and-tumbleダイナミクスを用い、微小な温度摂動後に放出される過剰熱から非平衡熱容量を計算した。反射境界に閉じ込められた単一粒子では、形状転移に対応する持続性領域で熱容量が極大を示す。周期格子上のアクティブ粒子に排除相互作用を加えると、ジャムしたクラスターの再構成が熱応答のピークとして現れる。遷移率の時間対称部分の影響も議論し、AC熱量測定により実験でも同じシグネチャを観測できる可能性を示す。非平衡熱容量が非平衡相転移の熱量プローブになりうる。

Electronic Reconstruction at the Quasicrystal-Moiré Crossover in Twisted Bilayer Graphene
ツイスト二層グラフェンの大きなねじれ角は、層間結合が無視でき電子的再構成も起きない自明な領域と広く考えられてきた。本研究は、準結晶秩序と整合秩序の間をまたぐ29°付近でこの常識が破れることを示す。原子分解能の透過電子顕微鏡により、ほぼ12回対称の準結晶的秩序と出現しつつあるモアレ周期性の共存が直接観測され、中間的で非周期的な構造領域の存在が示された。磁気輸送測定では、ウムクラップ散乱を介した強い層間混成が、磁気サブバンド間振動と極めて非従来型のランダウ準位スペクトルとして現れた。特にランダウ準位の縮退度が温度上昇に伴い4重から12重へ変化し、これは独立な2枚の単層グラフェンでは説明できない。大角度ツイスト二層グラフェンが、準周期対称性により従来のモアレの枠を超えて低エネルギー電子状態が根本的に再構成される舞台であることを確立した。


Quantum Geometric Tensor Preconditioning for Stable Training of Recurrent Neural Quantum States
ニューラル量子状態(NQS)は多体波動関数の表現と基底状態計算に有力な変分枠組みを与える。中でも回帰型ニューラルネットワーク(RNN)は計算コストが比較的低く、自己回帰性により完全サンプリングが可能な点で有望である。近年、RNNは最小ステップ確率的再構成(minSR)などの曲率に基づく最適化手法の下で不安定になると報告されていた。本論文はこの限界とされる点に取り組み、単純な正則化によりminSRを安定化でき、少数サンプルでもRNNベースNQSを頑健に訓練できることを示す。提案手法は一次元横磁場イジング模型と一次元クラスター状態でAdam最適化器を上回り、二次元ハイゼンベルク模型およびJ1-J2模型でも競争力のある結果を与える。自己回帰NQSに現代的な最適化手法を用いて量子シミュレーションの未解決問題に取り組む道を開く。

-2026/8/18--
Trimer Thouless Pump: Topology, Symmetries, and Multigap Structure
Rice-Meleモデルなど2バンド系に限られていたトポロジカル電荷ポンプを、3バンドに一般化した「トライマー・チューレスポンプ」を提案。1次元3サイト格子のホッピングと反対称オンサイトポテンシャルを断熱変調し、独立な2つのバルクギャップを持つマルチギャップ輸送を実現する。量子化電荷輸送はパラメータトーラス上のディラック回避交差に対応する局在ベリー曲率のホットスポットが駆動し、中間バンドは自身のチャーン数をゼロに保ちつつ上下バンド間でベリー流束を仲介する幾何学的媒介役を果たす。冷却原子と光超格子による実験手順も提案。

No-Go Theorem and Routes towards Cavity-Enhanced Superconductivity
空洞真空揺らぎが超伝導転移温度を上げうるかを、量子化空洞モードに最小結合したギンツブルグ・ランダウ理論から検討した。空洞誘起の自由エネルギー補正は正の反磁性項と負の常磁性交換項からなり、受動空洞では後者が前者を超えられないことを証明。すなわち最小限の空洞電気力学の枠内では真空揺らぎは超伝導を増強せず抑制するというノーゴー定理を確立した。回避策として、空洞活性な集団励起が常磁性寄与を増幅する経路と、競合秩序を空洞が弱めて間接的に超伝導を強める経路の2つを示し、設計指針へ転換した。

Exact Thermoelectric Transport Coefficients and Figure of Merit for Graphene Photothermoelectric Devices from a Finite Zeta-Function Mott Series
温度がフェルミエネルギーに比して低くない領域で精度が落ちる標準的なモット公式を、リーマンゼータ関数級数による全次数展開へ拡張した。輸送関数が多項式なら級数は有限項で打ち切られ、モデル内で厳密な結果を与える。これを2次伝導度モデルのグラフェン光熱電デバイスに適用し、ゼーベック係数・ローレンツ比・電子性能指数の閉形式表現を導出。ゼーベック係数は発散せず極大を持ち、高温ではヴィーデマン・フランツ則が大きく破れること、無秩序が性能を下げ、清浄グラフェンでは性能指数に上限があることを示した。

Coherent Phonon Blocking in Superlattices
極低温ではフォノンが主要なエネルギー担体となり素子性能を左右する。本研究は、全音響ブランチ・モード変換・入射角を保持したまま任意厚の超格子のフォノン透過率と熱抵抗を予測する波動力学的枠組みを構築した。位相コヒーレンスを課すことで多層構造の周波数依存透過を予測し、遺伝的アルゴリズム(NSGA-II)で材料と層厚を同時最適化する。目標温度の主要フォノン周波数に対する1/4波長条件を成功基準とし、従来報告の超格子より最大3000倍大きい熱抵抗を持つ新規二層組合せを同定。超伝導フリップチップの断熱やMEMS応用が期待される。

Antiferroquadrupolar Order in Altermagnetic CoF$_2$
アルターマグネットの非相対論的スピン分裂は隠れた電荷秩序に起因すると理論的に示唆されてきたが実験例は乏しい。本研究はルチル型d波アルターマグネットCoF2について、共鳴弾性X線散乱・対称性解析・第一原理計算を組み合わせ、電荷秩序を直接観測し反強四極子秩序であると同定した。電子構造計算により、この反強四極子秩序が特徴的なアルターマグネット的スピン分裂を生むことを示し、秩序変数が磁気自由度と電荷自由度に分解されるという描像に実験的根拠を与えた。ルチル系一般へ適用可能な手法である。


What makes a useful molecular model of biochar? A community roadmap
バイオマス熱分解で得られる無秩序炭素材料バイオチャーの分子モデリングについて、CECAMワークショップから生まれたコミュニティ・ロードマップ。実験誘導型トップダウン再構成、模倣的ボトムアップシミュレーション、ハイブリッド手法を批判的に整理する。十分な長さスケールとミクロ孔・バルク化学の明示的制御があれば第一世代モデルも有効と論じ、構造・界面平衡物性は古典力場で扱える一方、動的・反応的挙動には反応力場のマルチスケール利用が必要とする。鉱物灰分と土壌中の経年変化が未対応の空白であり、7つの未解決課題と5つの優先事項を提示した。

Information, order, complexity, and entropy in materials including biological systems: a thermodynamic theory based on state variables
情報理論的概念を材料や生体系に適用するとエントロピーの解釈が曖昧になる。例えばDNAの配置エントロピーはT=0で消えず熱力学第三法則と矛盾するように見える。熱力学ではエントロピーは状態量であり、状態を一意に定める状態変数の同定が本質的だと著者は論じる。平衡と状態変数の整合的定義から、固体の状態変数は時間平均した原子位置であり、固定した温度・体積でも固体は多数の平衡状態を持つと結論づける。エントロピーは情報ではなく状態変数に伴う不確定性であるとし、秩序・複雑さ・ヒステリシス・残留エントロピーを第三法則と両立させて統一的に説明する。

A cold-insertable scanning probe microscope for dry dilution refrigerators with picometer stability and ultra-low electron temperatures
無冷媒希釈冷凍機での原子間力顕微鏡(AFM)は、パルス管の機械振動と100mK以下でのピエゾ駆動段の熱化というトレードオフに阻まれてきた。本研究は標準的な低温挿入プローブに統合したAFMベースの走査型マイクロ波インピーダンス顕微鏡を実証する。機械的に剛性の高いAFMモジュールと磁場対応の臨界制動された内部バネ支持を組み合わせ、相対振動雑音密度10^-11 m/√Hz以下、積分変位約10 pmを達成し、既存の高速装填型乾式SPMより100倍以上安定。RFフィルタと熱接触最適化で電子温度60mK以下を実現し、冷凍機を恒久改造しないモジュール構成とした。

Zero-point theorems in quantum many-body physics
量子スピン系の相図におけるスペクトルギャップの零点が不可避であることに基づく、いくつかの「零点定理」型の議論を提案する。従来の零点定理が1パラメータのみを扱うのに対し、本研究は多パラメータのハミルトニアン族へ拡張する。零点定理と同様に、低エネルギー動力学や応答を特定することなく、パラメータ境界に沿ったモデルに依存しない変換関係のみを課す点が特徴である。さらに主張を統一的に一般化する一連の予想を与え、任意の高次元における量子スピン模型の臨界現象で許される関連演算子に対し、強力かつ普遍的でモデル非依存な制約を与える。

Observation of nonlocal ferron-drag thermoelectricity
ペルチェ効果は通常異種導体の接合界面で発熱・吸熱を生じるが、本研究は強誘電体絶縁体に近接させた接合のない一様金属でも吸熱・発熱信号が現れることを報告する。アクティブサーモグラフィ計測により、金属中の伝導電子が隣接強誘電体の秩序の集団励起「フェロン」を非局所的に励起するフェロンドラッグ効果の予言を実証した。温度変化信号が電気分極方向に依存すること、電荷遮蔽長を超える金属膜厚でむしろ増大することを見出し、金属中の電子・フォノン・フェロン相互作用の存在を明らかにした。熱電デバイス設計への波及が期待される。


Uncovering the deformation mechanism of glasses during indentation through high-resolution X-ray scattering
圧痕試験はガラスの実使用時の損傷を模擬できるが、従来研究は除荷後の表面変形に着目しがちで、押し込み中の表面下変形の評価手法は限られていた。本研究は放射光X線ナノ散乱を用い、構造の異なる4種の酸化物・酸窒化物ガラスの押し込み中の変形機構をその場観察した。X線構造因子の第一鋭回折ピークの位置と強度の変化を約100 nmの空間分解能で測定した結果、変形域の形状・大きさ、および緻密化とせん断流動の相対寄与が荷重に応じて変化し、ポアソン比と相関することを見出した。耐損傷ガラス設計への指針となる。


Linear response functions from inhomogeneous dynamical mean-field theory
非一様動的平均場理論を用いて静的な格子帯磁率を計算する手法を提案する。系の外部磁場に対する応答を利用することで、計算が困難な2粒子バーテックス関数を回避できる点が特徴である。数値くりこみ群を不純物ソルバーとして用い、正方格子ハバード模型の磁気帯磁率に適用してこの手法の有効性を実証し、標準的なバーテックスを用いる手法の結果とよく一致することを示した。バーテックス関数を必要とせず事実上あらゆる不純物ソルバーと組み合わせられるため、他手法では到達が難しい低温領域まで計算できる。

Topological Altermagnetic Insulators
相関交代磁性体の典型模型であるリーブ格子模型において、イジング型スピン軌道結合によって安定化されるアルターマグネティックなトポロジカル相の出現を調べた。電子相関をハートリー・フォック近似と厳密対角化で扱い、単位胞あたり平均電子数2および4の場合に、量子スピンホール効果とアルターマグネティックなスピン秩序が広いパラメータ領域で共存することを確立した。さらに端におけるスピン構造が対応するトポロジカル端モードの電子的振る舞いにどう影響するかを調べ、それらの端モードが空間反転対称性を破る項に対して頑健であることを実証した。

Morphology-Guided Deterministic Fabrication of Low-Noise High-Temperature Superconducting Quantum Interference Devices
バイクリスタル型高温超伝導SQUIDの再現性は、ジョセフソン接合となる粒界に沿った局所的ばらつきに阻まれてきた。本研究は、リソグラフィ前に原子間力顕微鏡で接合予定領域を計測し、見かけの粒界幅を定量化して空孔の多い区間を排除し、近傍に位置合わせマークを描画するサイト選択的作製手法を開発した。見かけの粒界幅は実用的な形態指標となり、狭い領域ほど臨界電流と特性電圧が大きい。反復最適化により液体窒素温度で40 fT/√Hzの磁場雑音を達成し、粒界の不均一性を制御不能な変動要因から作製指針へ転換した。


Crystal-structure design by agentic AI in a language of motifs
データ駆動型材料探索は外挿に弱く新規構造型に到達しにくい。本研究は、根拠を明示しながら候補を提案・検証するエージェント型AI枠組みMatEvolveを提示する。エージェントは結晶を構成する反復的な幾何パターン「モチーフ」の言語で推論し、各結晶をモチーフプロファイルとして記述する。プロファイルは記述手段にとどまらず設計の媒体であり、編集したプロファイルから結晶を構成し有望候補を第一原理計算で検証する。希土類希薄永久磁石設計に適用すると、微調整なしのClaude Fable 5上で、同等の検証予算下で生成モデルの3倍以上の頻度で新規構造プロトタイプに到達した。

Synthesizing like a chemist: an iterative, feedback-driven loop for materials discovery
計算予測された材料の多くが合成されないのは、合成条件の最適化が遅く専門知識に依存するためである。本研究は、文献から合成知識を抽出する大規模言語モデル、薄膜を高速評価する高スループット・ハイパースペクトル撮像、実験フィードバックに導かれる多目的ベイズ最適化を組み合わせた閉ループ枠組みを提示する。対照実験では、LLM支援の初期化がラテン超方格サンプリングより多くのパレート最適解と高い超体積を同試行数で達成し、その優位は反復中も持続した。未報告のペロブスカイト類似化合物Rb3BiI6の薄膜合成で実証した。

Toward the Ultimate Limit: Elemental Metals in One Dimension
低次元材料研究は層状の二次元材料に偏ってきたが、本研究は原子レベルに薄いメタレンの進展を踏まえてさらに次元を下げ、密度汎関数理論により40種の非磁性一次元元素金属原子鎖の幾何構造・エネルギー・弾性・電子構造を調べた。ほぼすべての鎖が座屈した基底状態をとり、9種は歪み、Cd・Hg・Srの3種は電子ギャップを持つ半導体となる。遷移金属は1次元でも3次元バルクの凝集エネルギーの相当部分を保持する。分子動力学により26種が100 Kで熱力学的に安定と判定し、引張シミュレーションで直線化の動力学も調べた。


Dimensionality Mismatch Enables Decoupled Heat and Charge Transport
熱輸送と電荷輸送の分離は熱電材料の重要課題である。本研究はMaterials Projectデータベースの高スループット探索により、擬一次元材料でフォノンとキャリアの輸送経路を空間的に分離する方策を見出した。代表例のSn2S3とSbTeIは鎖内結合が強く鎖間が弱い階層構造を持ち、フォノンは鎖方向に伝わる一方で横方向の格子熱伝導は抑制される。対照的に価電子帯の横方向状態が鎖間の電子的結合を与え、正孔は比較的軽い。この格子と電子の輸送次元の不一致が熱・電気異方性を反転させ、SbTeIでは900 K付近でzT≈2.1を与える。

Theory of Magnetic Excitations in the Heavy-Fermion Spin-Triplet Superconductor UTe$_2$
混合次元周期アンダーソン模型を用い、UTe2の動的スピン応答をBCS-RPA形式で調べ、準粒子のf軌道性が常伝導・超伝導両状態の磁気励起に与える影響を検討した。常伝導状態では局在f電子と伝導電子の混成が混成ギャップを生み、Q_Y=(0,π,0)でのスピン応答を増強することから、磁気励起が混成ギャップを跨ぐ粒子正孔散乱に由来すると分かる。超伝導状態では4つの奇パリティ既約表現を比較し、d ベクトルに平行な成分でQ_Yに顕著なスピン共鳴が現れるのはB2u状態のみであることを見出した。符号変化の判定基準も一般化した。

Optical Response Beyond Magnetic Symmetries
磁性体の光学応答は通常、スピンと格子が相対論的スピン軌道相互作用で結びついた磁気空間群で分類される。しかし多くの光学観測量は主に非相対論的物理に支配されるため、磁気空間群のみの記述では見落としが生じる。本研究は非相対論的レベルで働くスピン空間群がより広く予測力の高い枠組みとなることを体系的に示す。線形光吸収に対する変換則を導き、実効的な実空間点群が電荷応答係数間の関係を課すことを明らかにした。リーブ格子模型、UCr2Si2C、RbMnF4の第一原理計算、さらにScMnO3のスピンホール応答でも有効性を実証した。


Field-controlled breaking and restoration of parity-time symmetry in Josephson interference
NbTi/PtTe2/NbTi横型接合において、電流と磁場の相対方位を制御することで対称性選択的なジョセフソン干渉を実証した。超電流干渉パターンから磁場・電流の対称性マップを構成し、素子レベルのパリティP、時間反転T、およびPT対称性を満たす配置と破る配置を同定する。面内磁場がない場合は対称なフラウンホーファーパターンを示し、電流に平行な面内磁場は顕著なサイドローブ非対称性を生む一方、垂直な面内磁場は強磁場下でもPT対称なパターンを回復させる。無秩序ポテンシャルとマイスナー集束による磁束双極子の競合で説明される。

Raman-detected quantum dot microscopy for nanoscale electrostatic potential imaging
ナノスケールの静電ポテンシャル定量には、走査プローブ探針先端に吊るした分子量子ドットの帯電応答を動的力分光で測る手法が有力だが、本研究は測定を高速化・簡素化するため光学的検出の可能性を検討した。探針増強ラマン散乱の積分強度が量子ドットの電荷状態と強く相関することを示し、これを用いて単一原子の静電ポテンシャルをマッピングした。確立された力分光法との定量的な等価性も確認した。励起波長と分子量子ドット電荷を変えたラマンスペクトル測定から、強度変化は共鳴・非共鳴ラマン散乱領域間の遷移が主因と解明した。

Absence of critical scaling in the Schelling segregation model
シェリングの分居モデルについて、ムーア近傍でもチェビシェフ半径r0=6までの高密度近傍拡張でも、臨界スケーリングの証拠が見つからないことを示した。L=320までの周期格子で各点50試行(計12,500回超)を行い、有限サイズスケーリングの診断はすべて失敗する。Tcはドリフトせず、Var(S)~L^-2.02は単純平均と整合し、γ/ν≈0でスケーリング崩壊は有限の最適点に達しない。分岐比の計算は平均サイズ1/(1-R)の劣臨界カスケードを予言し摂動実験と15%以内で一致する。階段構造とカスケード機構だけで転移を説明できる。

Data-driven discovery and rapid, direct synthesis of MXenes
二次元遷移金属炭化物・窒化物であるMXeneは通常MAX相から得られるが、過去の報告は未開拓の広い化学空間を示唆する。本研究は機械学習支援のデータベース探索と実験を組み合わせ、見落とされていた多層MXeneを掘り起こした。リポジトリの探索から、既に合成されながら認識されていなかった38件の多層MXene候補という「宝箱」を発見。これに導かれ、外部加熱を継続せず数分で完了する自己伝播高温合成により5種のMXeneを再発見し、さらに未探索の希土類系M2CT2 MXeneを11種実現した。半導体的挙動と多様な磁性状態を確認した。

Proximity-induced superconductivity in a bilayer graphene quantum point contact
単一のアルミニウム超伝導電極を近接させた二層グラフェンに、ゲートで定義した量子ポイントコンタクト(QPC)を実現した。バリスティックチャネルに誘起された超伝導相関はコンダクタンスプラトーを常伝導値以上に増強する。さらにギャップ以上のエネルギーで顕著なコンダクタンス異常が現れ、超伝導の消失とアンドレーエフ超過電流の崩壊の分光的な指標となる。非線形電流電圧特性の再構成から、超過電流の大きさはQPCモードが順次占有されるにつれ増大することが分かった。スイッチング電流もQPCのモード構造に従い離散的な準位を示す。

Engineering two-qubit gates via anisotropic exchange in germanium spin qubits
ゲルマニウムのホールスピン量子ビットでは強いスピン軌道相互作用によりg テンソルが異方的かつ電気的に可変となり、雑音に鈍いスイートスポットが得られる。同じ相互作用は2量子ビット交換結合を異方的テンソルに変える。本研究は歪みGe量子井戸中の2つのホールスピン量子ビットと磁場のベクトル制御によりこの交換テンソルを測定し、縦成分と横成分に分離して、それぞれが制御位相動作とSWAP的動作を支配することを示した。磁場方位により縦交換を正からゼロ、実効的に負まで連続制御でき、純横交換点で単一パルスのiSWAPを実現した。

Resolving the Magnetic Ground State and Field-Induced Transitions in Magnetic Dirac Semimetal Candidate EuMnSb$_2$
磁性トポロジカル半金属EuMnSb2の磁気構造を、偏極・非偏極中性子回折、パルス磁場X線磁気円二色性、パルス磁場磁化測定により30 Tまでの磁場下で調べた。EuとMnの各副格子のゼロ磁場磁気構造を決定し、2 T以下の磁場で誘起される磁気転移はEuスピンの磁気秩序の変化のみに対応し、Mnスピンの秩序には検出可能な擾乱を与えないことを見出した。Euスピンの飽和磁場近傍ではさらに別の磁気転移が観測される。主要な振る舞いを記述する平均場モデルを提示し、磁性と電子的トポロジーの結合を担うEu-EuおよびEu-Mn交換相互作用を見積もった。

Automated Burgers Vector Identification for Individual Dislocations in Bulk Crystals
暗視野X線顕微鏡(DFXM)の弱ビーム法はバルク結晶中の個々の転位を分解できるが、そのコントラストからバーガースベクトルを割り当てるには通常、順方向シミュレーションとの手作業の比較が必要である。本研究は面心立方アルミニウム中の孤立転位を幾何光学的にシミュレートしたデータで、結晶学的制約を学習過程に組み込んだ物理情報付き畳み込みニューラルネットワークを訓練した。弱ビーム積分ロッキングカーブ像からバーガースベクトルを同定し、合成テストデータで約93%の精度を達成。実験的な交差すべりの事例では層ごとの予測の72.7%が参照値と一致した。

-2026/8/17--
Comment on: Microscopic signatures of an imaginary charge density wave in a kagome metal
カゴメ金属でループ電流の兆候として報告された実験結果に対する反論。厳密対角化と定量解析により、報告された signatures は結晶のモザイク性(配向の広がり)とCDW転移前の揺らぎで説明できることを示した。NQR線幅は異常のない標準的なCurie-Weiss則に従い、非対称な線形は角度モザイク分布で再現でき、創発磁場は特定のフィッティング拘束の産物であると指摘。したがって元論文のデータは、T*~120 Kでの時間反転対称性の破れや相転移を立証するには不十分だと結論づけている。

バトル勃発きたな。戦争が起こるテーマほどホットだからね、重要だね

On first-order thermodynamic equilibrium conditions for fluid-fluid and solid-phase interfaces
流体と接する固体に対するLarché-Cahnの拘束付き変分定式化を出発点に、界面熱力学を統一的に扱う枠組みを構築した研究。バルクと界面の平衡条件がいずれも単一の熱力学汎関数の停留条件として自然に導かれる。従来理論は界面寄与を十分に扱えず表面効果が重要な系を記述できなかったが、本定式化は界面熱力学を変分原理に直接組み込む。まず流体-流体系で数学的構造を確立し、次に固体-流体界面へ拡張。不均一系の古典的平衡関係が許容される変分のクラスごとに自然に現れ、バルク・界面・配置熱力学の共通基盤を与える。

Sasa研の研究とか引用されてないんだ

Far-from-equilibrium topological phase transition in one dimension
ランダム初期条件から決定論的に時間発展する1次元コンパクト位相モデルを用い、平衡から遠く離れた領域でのトポロジカル相転移の機構を解明した研究。現象論的仮定ではなくトポロジーと対称性のみに基づく点が特徴で、位相のコンパクト性が渦の存在を許す一方、位相シフト対称性が保証する一様固定点が渦の生成を抑制する。渦による無秩序化と一様化への緩和の競合が連続的な非平衡転移を駆動し、その普遍性クラスが有向パーコレーション(DP)であることを、有効場の理論の構成と動的スケーリング解析の数値計算により確認した。

Far-from-equilibrium scaling of non-abelian Goldstone modes
連続対称性の破れと弱い非平衡駆動の相互作用が生む非熱的相の広いクラスを同定した研究。KPZ物理をSO(2)クロノンを超えてSO(2)×O(N)対称性へ拡張し、時間的秩序と内部秩序が共存する非アーベル時間結晶の非平衡非線形シグマ模型を構築した。1ループ繰り込み群解析により、d=1,2では任意に弱い非平衡摂動が平衡固定点を不安定化して強結合の非熱的固定点を生む一方、d>2では実効的平衡が回復するというKPZ的な次元構造を示す。回転相では同一秩序変数内で異なる普遍動的指数が現れる非従来型の弱い動的スケーリングを予言し、1+1次元の数値計算で裏付けた。

Complete Suppression of Thermomagnetic Instabilities in Nb Superconducting Films by Combined Metallic Layers and Ion Irradiation
超伝導薄膜の熱磁気不安定性は磁束アバランチェを引き起こし臨界状態やデバイス性能を損なう。本研究は垂直磁場下のNb薄膜について、常伝導金属層の付与とArイオン照射という二つの相補的手法による安定化を調べた。磁化測定と磁気光学イメージングから、金属層は低磁場側でのアバランチェ発生を抑え、イオン照射は不安定領域の上限磁場を下げて高磁場側を縮小することが分かった。両者を同一試料で組み合わせると不安定性が完全に消失し、5×10^16 ions/cm2照射後に1 μm厚のCuを被覆したNb膜は滑らかな磁化曲線とアバランチェのない磁束侵入を示した。

Stochastic twinning in confined volumes of Mg: Insights from in-situ micromechanical testing and atomistic simulations
Mgのc軸塑性を担う引張双晶は、バルクでは低い臨界応力で決定論的に働くのに対し、微小体積では大きなばらつきを示す。本研究は部位特定のマイクロピラー圧縮と原子論シミュレーションを組み合わせ、この確率性の起源を調べた。a軸圧縮下では{10-12}双晶が塑性を支配し、応力-ひずみ曲線の各応力降下が双晶の活性化と急速な進展に対応する。シミュレーションは、核生成と長手方向伝播がシャッフル支援の高応力機構、横方向の肥厚がディスコネクション滑りに支配される低応力機構であることを示し、降伏応力のばらつきは局所欠陥分布に支配された競合経路の確率的選択に由来すると結論した。

Strong photoresponse of edge two-dimensional electrons in a magnetic field
面直磁場下の2次元電子ガスでは、電子がフェルミ速度程度の高速度で端に沿って伝播する。マイクロ波やテラヘルツ照射下でのこれらの端電子による光子吸収は、高感度な放射検出への道を開く。本論文はこの系で入射電磁波により生成される光電流の詳細な量子論を構築し、予言される現象を観測するための実験配置を提案した。適切に配置した放射閉じ込め構造を用いれば強い光電流生成効率が得られること、さらにIII-V族半導体構造での光応答がグラフェンで測定された値より桁違いに大きくなり得ることを示している。


SPEAR: Structure Property Explainability with Attention Regularization
分光・回折データから構造-物性相関を学習する機械学習は、予測の解釈性の低さが材料探索での活用を妨げている。注意機構は本質的に説明可能と見なされがちだが、正則化のない注意は不安定・断片的・強度依存の帰属を生む。本研究はSPEARを提案し、学習中に注意分布を制約して安定性・選択性・物理的解釈性を高める。学習可能な温度で注意の集中度を制御し、平滑化ペナルティで近接スペクトル位置間の一貫性を課す。合成ベンチマークと希土類ジルコネート薄膜ライブラリのXRDへ適用し、220ピーク位置と正方晶歪み・局所熱伝導率の相関という新知見を得た。

Realizing record-high transverse thermoelectric figure of merit at room temperature in artificially tilted multilayers based on high power factor NiFe alloy
人工傾斜多層膜(ATML)を用いた横型熱電変換は、従来の縦型熱電の構造的制約を回避できるが、外部磁場なしでの室温性能の確保が課題だった。本研究はNi50Fe50/Bi0.2Sb1.8Te3系ATMLにおいて、無磁場・室温で横型熱電性能指数 zyxT = 0.36 という最高値を達成した。Ni50Fe50合金の高い縦型パワーファクタと、n型Ni50Fe50とp型Bi0.2Sb1.8Te3の電気・熱輸送特性の大きな対比を利用し、高電気伝導・大きな横型熱起電力・低熱伝導を同時に実現する異方性構造を設計。界面抵抗が低く解析予測値と良く一致した。


Posterior Inference of Hamiltonian Parameters from RIXS Spectroscopy
共鳴非弾性X線散乱(RIXS)分光へシミュレーションベース推論を初めて適用した研究。切断周辺化ニューラル比推定で事前分布を効率的に絞り込み、条件付きフローマッチングを同時密度推定器として用いることで、控えめな計算予算で完全な事後分布を推論する。共有結合性の代表例NiPS3と、より原子的なK2NiF4の2つのNi2+化合物で実証した。RIXSマップの物理的配置に合わせてトークン化するVision Transformerエンコーダが、汎用画像エンコーダより良好で鋭い事後分布を与える。点推定では見えないパラメータ相関を明らかにし、不確かさ定量や能動的実験設計を可能にする。

Small-world structure of quantum computer hardware
量子ビット間の残留2体相互作用で結合した量子コンピュータのレジスタ状態のネットワークが、人間社会の複雑ネットワークと同様のスモールワールド性を示すことを明らかにした研究。任意の2状態間の最頻Erdős数は約9で、Milgramが社会ネットワークで報告した六次の隔たりに匹敵する。局所エネルギー間隔を超える相互作用のみを残すÅberg基準で有効ネットワークを構成すると、臨界結合強度を超えたところでほぼ全レジスタ空間に及ぶ巨大成分へパーコレートする。この転移は厳密対角化で確立された量子カオスと動的熱化の発現とよく一致し、30量子ビットまで解析可能になる。

Observation of in-plane anomalous Nernst effect
ネルンスト効果は熱流を横方向電圧に変換でき、エネルギーハーベスティングや熱管理への応用が期待されるが、印加磁場や自発磁化が温度勾配と電圧の張る面に垂直でなければならないという直交条件に本質的に制約されてきた。本研究は、対称性を制御した典型的強磁性酸化物の超薄膜が、面内の自発スピン磁化との内因的結合に由来する異常ネルンスト効果を示すことを報告する。磁場の球面回転下での系統的測定により、面直応答に匹敵する大きさのネルンスト信号が面直軌道磁化と関連して頑健に現れることを明らかにし、直交条件の制約からの解放を実証した。


Quantum Geometric Kondo Cloud
金属中の磁性不純物はフェルミ面準粒子に遮蔽されてサイズ ξK~ħvF/(kB TK) の近藤クラウドを形成するが、vF=0 の平坦バンドではこの運動論的描像が破綻する。本研究は、代わりの支配原理が量子幾何であることを示した。孤立平坦バンドに結合した不純物は、混成因子v(k)で重み付けされたブロッホ状態の重ね合わせという単一の活性浴モードのみを選び、他は暗状態のままとなる。結果として代数的な近藤スケールを持つ「量子幾何分子」が現れ、クラウドサイズテンソルは量子計量・ベリー接続共分散・混成勾配項へゲージ不変に分解され、量子計量による下限を与える。

Superconductivity in strongly overdoped cuprates: beyond the single-band model
強くオーバードープした銅酸化物で超伝導領域が広がるというドーム描像と矛盾する観測を説明するため、高圧下でy=7.4まで酸素を過剰ドープしたYBa2Cu3Oyの結晶構造を中性子・放射光X線粉末回折で調べた。ボンド原子価和解析から、過剰酸素が生む正孔の1/5がCuO2面へ移り、ホール密度がp=0.27/Cuに達することが分かった。ドーム描像では超伝導が消失するはずだが、Tcはyに依らず一定であるという先行観測が確認された。著者らは頂点酸素と面内Cuの結合が著しく短いことから、余剰正孔がd(3z^2-r^2)由来のa1対称性状態を占める二バンド描像を提案している。

Simplified Silicon Nitride Nanomembrane Circuits for van der Waals Integration
2次元材料やファンデルワールス(vdW)ヘテロ構造は量子デバイスの有力な舞台だが、従来の微細加工は原子層結晶の性質を損なう。転写可能な回路は回路作製とデバイス組立を分離し、活性材料を直接加工せずに電気的接続を可能にする。本研究は、従来のボトムアップ手法より工程数と専用装置を大幅に削減した簡略トップダウン法によるSiNxナノメンブレン回路を提案する。厳しいベンチマークとして4単位胞厚の最適ドープBi2201フレークを電気的に集積し、母結晶の磁化率測定によるTc onset ~34 Kに近い ~32 K の超伝導転移を観測、脆弱な層状材料の性質保存を実証した。

Eisaki一族のサンプルだ


Probing intrinsic magnetic phases in low-dimensional nearly twin-free NiPS$_3$ single crystals
低次元vdW反強磁性体NiPS3の本質的な熱的・磁気的性質を、結晶双晶を制御することで調べた研究。ほぼ双晶のない結晶を用いることで、バルク試料では多ドメイン効果に隠されていた真の物性を分離した。磁化測定では強い異方性を持つ鋭いスピンフロップ転移が現れ、ドメイン純度の高さを裏付ける。高精度の熱力学・輸送測定から、ネール温度TN=157.5 K近傍に広い揺らぎ領域があり、比熱異常と熱伝導率の抑制が同時に生じることが分かった。磁場依存の熱輸送はスピン格子結合の寄与を示し、理論モデルとの良い一致も得られた。

Disorder signatures emerging at millikelvin temperatures in Si/SiGe field-effect stacks
アンドープSi/SiGe電界効果構造上のゲート定義量子ドットを用いた電子スピン量子ビットは、ゲートスタック由来の乱れに性能とスケーラビリティを制約される。本研究はホールバー型FETの温度依存磁気輸送測定により、移動度に基づく乱れの指標が量子井戸深さと電荷履歴にどう依存するかを1.5 Kからミリケルビン域まで調べた。1.5 Kでの評価は誘電体界面との結合低減による主要な移動度改善を捉える一方、ミリケルビンで、特に低密度領域で顕在化する乱れの差を過小評価し得ることを示し、量子ドット動作温度での評価の重要性を指摘している。

Orbital Hall Effect in Weyl Semimetals from quantum geometric band interference
軌道ホール効果に代表される固体中の軌道角運動量(OAM)輸送は、スピンに基づく対応物を凌駕し得る基本現象として注目されるが、その微視的機構、特にバンド幾何の役割は未解明な部分が多い。本研究はトポロジーとOAMテクスチャがよく確立されTaAs系ワイル半金属(TaAs, TaP, NbAs, NbP)を舞台にこの問題に取り組んだ。第一原理密度汎関数計算に、断熱摂動論に基づく最小ワイル模型の解析を組み合わせることで、OAM輸送とバンド幾何・トポロジカル電子構造との直接的な関係を数値的にも解析的にも確立している。

Skyrmion Fractional Chern Insulator: An Intrinsically Multiband Route to Fractionalization in Rhombohedral Graphene
菱面体グラフェンのモアレ超格子における分数量子異常ホール(FQAH)効果に対し、スキルミオンの分数化という非従来型の微視的起源を提案した研究。占有率ν<1の状態を、ν=1の相互作用起源スキルミオン格子チャーン絶縁体から層擬スピンスキルミオンを取り除いた電荷+eの「スキルミオン空孔」の金属と見なす。この空孔は本質的に多バンド自由度であり、単一チャーンバンド射影の研究には現れない。ν=2/3に注目して有効場理論と変分波動関数を構築し、この過程がエネルギー的に有利であることを数値的に示した。

-2026/8/14--
Quantum-Geometric Bound on Dynamical Instability in Bosonic Systems
駆動量子系における量子幾何学的速度と動的不安定性の関係を明らかにした研究。任意の多モード二次ボソン系について、裸モード真空を基準とするとFubini-Study速度v_FSが流れの対称な伸長部分のFrobeniusノルムに等しいことを示した。これにより最大リアプノフ指数に対する厳密な上限λ_max ≤ √2 v_FSが導かれ、共鳴的な純スクイーザーでこの限界が飽和する。ただしこの関係は可逆ではなく、離調されたパラメトリック増幅器では一方の速度を固定したまま他方を変化させられることを示した。

Is the Aharonov-Casher phase geometrical or dynamical?
垂直電場によるRashbaスピン軌道相互作用を持つ2次元電子系について、Aharonov-Casher(AC)位相の性質を調べた研究。2次元Schrödinger方程式で記述される非相互作用電子系と、質量ゼロフェルミオンのDirac方程式で記述される単層グラフェンを比較した。SU(2)Rashbaベクトルポテンシャルはゲージ変換で消去できないが、平面波解に対してはAC位相因子となるSU(2)行列で除去できる。Dirac系ではAC位相が時間依存のユニタリ変換で消せる動的位相となる一方、Schrödinger系のAC位相は幾何学的位相であることを示した。

The "Moiré Capacitor Effect" and Stabilization of Fractional Chern Insulators in Rhombohedral Graphene Superlattices
菱面体グラフェン/hBN超格子における分数チャーン絶縁体(FCI)の起源を説明する「モアレキャパシタ効果」を提唱した理論研究。価電子帯の電荷密度が静電的に伝導帯へ転写されることでモアレポテンシャルが増強される機構を解析的に導出し、充填率ν=1でチャーン数C=1の親状態を安定化する上で決定的役割を果たすことを示した。チャーン絶縁体の安定性とホール励起の平坦性がFCI出現に必要という親状態理論を提案し、多バンド厳密対角化によりν=2/3でのFCI出現を確認。整合試料でのFCI存在と非整合試料での不在を統一的に説明した。

Floquet Quasiparticle Poisoning of Frozonium
周期駆動によりJosephson非線形性を抑制しほぼ調和的なFloquetスペクトルを実現する「フロゾニウム」回路において、準粒子による散逸が抑制されるとは限らないことを示した理論研究。Floquet枠組みで準粒子過程を定式化し、駆動によるCooper対の破壊と既存準粒子のトンネリングの両方を解析した。対生成は高駆動周波数ではギャップ破壊のしきい値に支配され、低周波数では多光子共鳴が顕著な速度増大を生む。準粒子トンネリングは凍結点近傍の調和的Floquet-Magnusスペクトルに従う共鳴構造と回避交差を示し、動的凍結と準粒子損失を両立する駆動パラメータ選定の指針を与えた。

Emergent trans-moiré orbitals and topology in rhombohedral graphene
菱面体6層グラフェンにおける分数量子異常ホール効果(FQAHE)の微視的機構を走査トンネル顕微鏡で解明した研究。小ツイスト角のモアレ界面が必要でありながら電子はそこから離れているという一見矛盾する条件を、モアレ界面の反対側に現れる未知の「トランスモアレ軌道」の発見によって説明した。これらの軌道は全ての充填率でモアレ周期性を強制し、最低エネルギー軌道は中空ケージ状の形状を持つ。ツイスト角が約1°を超えると軌道もQAHEプラトーも消失する。シミュレーションから相互作用駆動の電荷再分配機構が明らかとなり、人工的FQAHEプラットフォームへの道を開いた。


The nature of the "pseudogap" in the insulating phase of highly disordered superconductors
強く乱れた超伝導体の絶縁相における擬ギャップの正体を、実験と理論の両面から解明した研究。非晶質酸化インジウム薄膜への超高抵抗平面トンネル分光と、引力Hubbard模型の量子モンテカルロ計算を組み合わせ、絶縁領域深部の一粒子励起スペクトルを調べた。一粒子ギャップは超伝導-絶縁体転移を越えても消失せず、むしろ乱れの増大とともに超伝導側の2倍以上まで増大する。温度上昇に伴いギャップは閉じるのではなく埋まり、コヒーレンスピークは抑制される。局在Cooper対からなるCooper対絶縁体状態を実証し、Tc以上の擬ギャップと絶縁ギャップを位相コヒーレンスなき対形成として統一的に理解した。

Resonant Far-Infrared Spectroscopy of Flat-Band Fermions in Magic Angle Graphene
マジック角ツイスト二層グラフェン(MATBG)の平坦バンド電子について、遠赤外(FIR)共鳴を初めて観測した研究。新開発のミリケルビンFIRプラットフォームを用い、平坦バンドを構成する軽い電子と重い電子の相互作用に由来する高い可変性を持つ分光信号を捉えた。トポロジカル重い電子(THF)模型により、遍歴トポロジカル電子が「アンテナ」として光場に強く結合し、局在した重い電子との混成によって共鳴周波数が繰り込まれることを示した。MATBGの光学選択則を確立し、電荷中性点ではオンサイトCoulombエネルギー以下に顕著な共鳴が現れ、新たな多体モードの出現を示唆した。


Thermal Hall tomography of chiral superconductivity in rhombohedral graphene
カイラル超伝導体のBogoliubov-de Gennes(BdG)チャーン数を熱ホール伝導度から直接測定する手法を提案した理論研究。従来の磁気的指標はトポロジカルに保護されず整数の測定が実現していなかったが、菱面体グラフェンでは磁気イメージングで時間反転対称性の破れたドメインが観測できる。バンド射影された対形成では、低温熱ホール伝導度は占有領域が囲む対波動関数の渦巻き数に等しい。三方晶歪みと有限のCooper対運動量を分離し、525点のパラメータでチャーン数の不変性を確認。プラトー κ_xy/T = (π²k_B²/6h)C_BdG が整数を直接読み出し、符号はドメインとともに反転する。

Dipolar-driven mean-field criticality in the ferrimagnet Eu$_2$MnSi$_2$O$_7$
メリライト型フェリ磁性体Eu2MnSi2O7において平均場的な臨界挙動を報告した研究。この物質はスピンのみのEu2+とMn2+モーメントを持ち軌道の寄与が無視できる。磁化測定と中性子粉末回折の組み合わせにより、臨界指数が平均場理論の値に近いことが判明し、長距離双極子相互作用がこの絶縁性フェリ磁性体の漸近的臨界挙動を支配することを示した。精密化された磁気構造は磁気空間群P2_12_1'2'で記述され、格子の非中心対称性を反映したDzyaloshinskii-Moriya相互作用による傾いたフェリ磁性配置を示す。双極子相互作用が平均場臨界性をもたらす初の絶縁性フェリ磁性体である。

Observation of Time-Domain Braiding of Non-Abelian Anyons at $ν= 5/2$ State
分数量子ホール状態ν=5/2において非可換エニオンの「時間領域ブレイディング」を観測した研究。エニオンはボソンでもフェルミオンでもない交換統計を持ち、可換エニオンの交換は統計位相を与えるのに対し、非可換エニオンの交換は縮退した状態空間内でユニタリ変換を実装する。ν=1/3での可換エニオン実験を拡張し、希薄化した1次元エッジモードの弱い分割によって生じる電流ゆらぎを測定した。下流の電荷モードと上流の中性モードの分割ノイズを独立に測定した結果は、「粒子ホールPfaffian」トポロジカル秩序における理論予測と一致し、非可換エニオンの存在を裏付けた。


Engineering Chirality in Halide Perovskites
ハライドペロブスカイトのキラリティを結晶成長そのもので制御できることを示した研究。従来はキラル分子や外部の光学構造に依存していたが、本研究では斜め角度蒸着と基板回転の制御を組み合わせ、結晶学的なねじれを持つ高配向PbI2ナノ構造を作製した。X線集合組織解析により、基板回転がc軸配向を保ったまま結晶方位を漸進的に回転させ、ねじれた集合組織を形成することが判明。楕円率19°、吸収非対称因子約0.6という巨大かつ可変なキラル光学応答を示す。このキラリティは気相変換を通じて複数のペロブスカイト組成へ転写され、g_lum最大0.23の円偏光発光を実現した。

Acoustic Tweezers for Magnetic Skyrmions
磁気スキルミオンを個別に捕捉・輸送する「音響ピンセット」を提案した理論研究。従来の駆動法はスキルミオン集団を一括で並進させるだけで単一粒子選択性を欠いていた。本研究では空間的に閉じ込められた縦波が非自明なフォノンスピンを担い、その音響スピン組織に対しカイラリティが固定された磁気弾性場を誘起することを明らかにした。これにより保存力である勾配力とは異なる極性選択的な放射力が生じ、スキルミオンを局所的なフォノンスピン極大へ引き寄せる。直交するビームの交差により再構成可能な引力点を作り出せ、非破壊的でオンチップな高精度トポロジカルスピントロニクスの道を開く。


Emergence of moiré magnetic chaos in twisted bilayer CrI3
ツイスト二層CrI3において外部駆動なしに生じる新種の磁気カオス「モアレ磁気カオス」を提示した研究。従来の磁気カオス研究は外部駆動下の巨視的変数に着目してきたが、本研究はメゾスコピックな磁区変数に関わるカオスを扱う。磁区は特徴的な層間交換フラストレーションによって安定化され、自律的カオスに必要な複数の力学的自由度を供給する。マイクロマグネティックシミュレーションにより、モアレ磁気テクスチャへの緩和が初期状態の微小な局所摂動に極めて敏感であり、有限時間Lyapunov指数が大きく、摂動振幅の5桁にわたり終状態敏感性が持続することを示した。得られる磁区配置は確率的で対ごとに無相関である。


Landau theory and exchange instabilities in Mn$_5$Si$_3$: A case against altermagnetism
交代磁性体候補として最も研究されている薄膜Mn5Si3について、その仮定が成り立ちにくいことを示した理論研究。仮定されたアルターマグネット構造は伝播ベクトルがゼロだが、バルクの共線的反強磁性相AFM2はM点で秩序化する。Landau理論、常磁性不安定性の第一原理計算、モンテカルロシミュレーションで両相を解析した結果、第一原理計算は主要な交換不安定性を正しくM点に同定し、古典Heisenberg模型は妥当な温度で直交3M相へ秩序化した。アルターマグネットを含むΓ点E_2gモードは著しく弱く、異常輸送を示す膜に相当するエピタキシャル歪みでさらに抑制されるため、当該相の安定化は困難と結論した。

Inductively-protected Andreev (IPA) spin qubit
量子ドットJosephson接合に捕捉された準粒子スピンを利用するAndreevスピン量子ビット(ASQ)を、線形インダクタで分路することで大幅に改善する手法を提案した研究。インダクタによる分路はスピン量子ビットの2状態を位相空間内の異なるポテンシャル井戸に分離し、波動関数の重なりをほぼ完全に排除することで緩和時間を延ばす。得られる誘導保護型Andreev(IPA)スピン量子ビットは、各スピンに対応する2つのheavy領域フラクソニウムと等価である。これにより長いコヒーレンス時間、低周波の基底状態多重項、大きな非調和性という保護超伝導量子ビットの利点と、スピン自由度の操作上の利点を両立できる。


-2026/8/13--
Discriminating superconducting fluctuations from the pseudogap in Bi$_2$Sr$_2$Ca$_{n-1}$Cu$_n$O$_{2n+4+δ} (n = 2,3)$: A magnetotransport study
Bi2212およびBi2223単結晶について広いドープ領域で磁気輸送測定を行った。面内抵抗率とホール係数は擬ギャップに起因する強い温度依存性を示す一方、ホール角のT^2則と修正コーラー則は全ドープ域で成立する。擬ギャップの発現温度は超伝導ゆらぎのそれと明確に区別され、両者の比はd波超伝導体と整合する。擬ギャップは超伝導ゆらぎ起源ではなく、BCS-BECクロスオーバー領域における先行形成クーパー対に由来する可能性を示した。

The Fate of Crystalline Topological Phenomena in the Continuum
ギャップのあるボゾン系について連続極限を代数トポロジーと圏論を用いて厳密に定式化し、結晶トポロジカル相から連続可逆トポロジカル相への全射的な大域写像を構成した。その結果、連続極限を持たない格子相が存在すること、また異なる格子相が同一の連続極限像を与えてトポロジカル情報が失われうることを示した。逆に任意の連続可逆相は忠実な結晶実現を持つ。2D回転対称相、高次トポロジカル相、DQCPの混合異常などに適用した。

Thermodynamic Spectroscopy of Emergent Excitations in Quantum Spin Ice
量子スピンアイスの創発励起を検出する新しい熱力学的プローブを提案した。従来、リング交換エネルギースケールに対応する低エネルギー比熱異常は、非Kramers Pr系では核Schottky異常に隠れ、Ce系ではスピノン寄与と分離困難だった。本研究では擬スピンの横成分に結合する弱い摂動下で、共役量の温度微分がリング交換スケールに鋭敏になることを示す。具体的には[100]と[010]方向の熱膨張係数差、あるいはdM/dTにピークが現れ、その符号がゼロフラックス相とπフラックス相を区別する。

Light induced superconducting diode effect in patterned films
非対称な穴を配列した超伝導薄膜に構造化光を照射することで、静的バイアスや材料改変なしに超伝導ダイオード応答を生成できることを、時間依存Ginzburg-Landau計算で示した。接合のない構造で整流された直流光起電力とゼロバイアス方向性超電流の不均衡が生じ、連続駆動で10^-3、パルス駆動で10^-2程度の効率を得た。穴の数の増加で整流が強まり、円偏光のヘリシティ反転で極性が反転する。直線偏光では局所的なカイラル超電流運動を介した逆ファラデー効果的機構が働く。


Yttrium Superhydrides Revisited: Advanced Experimental and Theoretical Studies of YH$_6$, YH$_9$ and YH$_{10}$
140-213 GPaの圧力域でYH6、YH9、YH10を接触輸送測定、非接触RF測定、パルス磁場実験、第一原理計算により再検討した。YH6はTc=218-221 K、YH9は235-237 Kで転移幅2-5 Kと鋭い。YH6のパルス磁場測定(60 Tまで)でdBc2/dT=-0.52 T/Kを得た。Pd混入やAl合金化は高温超伝導を強く抑制する。非調和効果を取り入れた計算では立方晶YH10のTcは260-270 K程度に低下し、二元系イットリウム超水素化物での室温超伝導は否定的である。

Layer-Number-Controlled Symmetry Breaking and Surface-State Transport in Rhombohedral Graphene Multilayers
菱面体積層グラフェン多層膜の電気輸送測定から、層数が対称性の破れと表面遮蔽を支配する様子を明らかにした。層間反強磁性相から半金属への転移の臨界変位電場Dcは4層から6層まで一定である一方、半金属から層分極絶縁体への転移のDcは層数とともに増加し、遮蔽なしのクーロン相互作用模型では説明できない。6層では表面状態が支配する輸送が現れ、隣接ゲートで選択的に制御されるランダウ準位が観測され、強い層間遮蔽の存在を示す。


Accurate Evaluation of Nanoscale Spatiotemporal Dynamics with Electron Correlation Microscopy
電子相関顕微法(ECM)にX線光子相関分光(XPCS)の規格化手法をそのまま適用すると誤差を生む。ナノビーム電子回折では試料体積が制限されスペックルが大きいため、時間平均・散乱ベクトル平均が人為的な反相関やベースライン上昇を招き、緩和時間や伸長指数に系統誤差を与える。本研究は第一回折リングの時間・方位角平均強度に基づくECM専用の規格化法を提案し、CuZr過冷却液体のMD計算で検証、Pt基ナノワイヤの4D-STEMデータで従来法が誤分類していた安定結晶相を正しく同定した。

Soft-Phonon-Driven Effective Inversion-Symmetry Crossover in Quantum Paraelectrics
量子常誘電体KTaO3において、光第二高調波発生、拡散X線散乱、微視的理論を組み合わせ、局所的な反転対称性の破れの光学的発現をフォノンが制御する機構を明らかにした。酸素欠陥が媒介する非線形光学チャネルはホストのソフト極性モードと強く結合し、その熱ゆらぎが電子的位相コヒーレンスを乱すため高温では非線形応答が抑制される。結果として構造変化を伴わずに、局所的対称性の破れが光学的に見える領域から実効的に中心対称に見える領域へのクロスオーバーが生じる。

Spatially Resolving the Pre-Thermal Anatomy of a Driven Bosonic Fluid
NV中心磁力計を用い、室温YIG薄膜中のマグノンダイナミクスをミクロンスケールで空間イメージングした。二トーン波混合により素過程である四マグノン相互作用を分離し、散乱生成物の空間成長から結合強度を抽出した。強磁性共鳴近傍の強い単一周波数励起では、マグノン間相互作用が自発的な多世代散乱カスケードを引き起こす。各世代で優勢な散乱チャネルは散乱後マグノンの一方が低群速度領域にある場合に対応し、スロー光における非線形性増強を想起させる。

Realization of Arbitrary Gauge Fields via Symmetry-Protected Zero Modes
副格子の不均衡な二部グラフ単位の対称性保護ゼロモードを用いて、任意の静的O(N)格子ゲージ配位を実現する一般的手法を提案した。各ボンド上の目標O(N)リンクは正の微視的ホッピングの接続と強度に符号化される。ゼロモード多様体を他のモードから切り離すことで、目標ゲージハミルトニアンは摂動的近似ではなく微視的強束縛模型の厳密なスペクトルブロックとなる。音響結晶でZ2四重極トポロジカル絶縁体、SO(2)ホフスタッター模型、SO(3)非可換トポロジカル絶縁体を実験的に実証した。


Thickness-Driven Superconductor-Insulator Transition in (Cu,C)-1234 and Proximity-Induced Superconductivity Recovery in (Cu,C)-1234/YBCO Heterostructure
LAO(001)上に150 nmのYBCO層と厚さを188 nmから1.2 nmまで変えた(Cu,C)-1234層からなるヘテロ構造を作製した。単層の(Cu,C)-1234膜は薄膜化に伴い劣化し、18 nm以下で超伝導-絶縁体転移を示す。一方、絶縁化した(Cu,C)-1234層をYBCOと結合させると輸送測定上で超伝導が回復し、1.2 nmまで薄くすると再び強く抑制される。この厚さ依存性は界面結合による超伝導回復と、二次元極限での乱れ・次元閉じ込めの競合で説明される。

Light-induced effective magnetic fields in Landau quantized graphene
円偏光パルスを用い、グラフェンの非等間隔なランダウ量子化準位間を選択励起することで光誘起の実効磁場を生成した。磁場でランダウ準位間遷移共鳴を他の低エネルギー励起から離調させることで、静電的に制御可能な系を実現し、副格子結合に依らない微視的起源を同定した。異なるランダウ準位が異なる光学ホール伝導度を持つため、占有数の光励起による変化が分散的な磁場依存性を持つ過渡ファラデー回転信号を生む。得られた実効磁場は電子起源の逆ファラデー効果の典型値を上回る。

Spin nematic liquid crystal and scalar spin chirality in tetragonal lattice YbMnBi$_2$
偏極中性子散乱により、正方晶AMnBi2(A=Ca,Yb)がc軸に厳密に揃ったC型共線反強磁性体(TN≈270 K、290 K)であることを示した。YbMnBi2では450 KからTNへの冷却過程で低エネルギースピン励起が等方的から正方面内で異方的へ自発的に変化し、Yb由来の強いスピン軌道結合により400 K付近で動的スピンネマティック相を形成する。面内磁場下でYb3+モーメントがこの相と結合してスカラースピンカイラリティを誘起し、常磁性相での異常ホール効果・異常ネルンスト効果を生む。


NN&CF&PCDの激アツメンツでPRX

Lithography-free patterning of SrTiO$_3$-based two-dimensional electron gases using direct atomic layer processing
TiO2をパターニングしたSrTiO3(100)基板にマグネトロンスパッタでAlを堆積することで、リソグラフィ不要で二次元電子ガス(2DEG)を実現するスケーラブルな手法を提案した。直接原子層プロセスで成膜した15 nmのTiO2層が導電領域を空間的に規定し、後工程の微細加工なしに輸送測定が可能となる。Al堆積により絶縁性AlOx層が形成され、TiO2のない領域では酸素欠損が生成してTi 3d伝導帯を占有し2DEGを形成する。シート密度は約5-7×10^13 cm^-2で、静電制御性も示した。


Magnetic active matter across scales
固有の磁気双極子モーメントを持ち自らエネルギーを消費して運動する自己駆動粒子に焦点を当てたレビュー。外場駆動ではなく、双極子モーメントが相互作用と自己組織化を媒介する系を対象とする。走磁性細菌のような生物系から、コロイド微小遊泳体、磁性ナノ粒子、マクロな粉体ロボットまで、あらゆる長さスケールの実験・理論研究を概観する。対相互作用と閉じ込めを含む模型、鎖形成・群れ形成・可変パターン形成といった創発現象を議論し、設計・制御・応用の課題と展望を示す。

Magneto-optical magnetoelectric voltage sensor
歪み媒介の磁気電気結合と磁気光学読み出しを組み合わせた新しい電圧センシング原理を実証した。ビスマス置換YIG磁気光学指示膜を圧電アクチュエータに機械的に結合させ、電圧誘起応力が磁気弾性結合を介して面直磁化を変化させるのをファラデー回転で検出する。バイアス磁場により磁区構造を臨界状態に設定し、電圧誘起の核生成と磁壁移動が応答を支配する高感度領域を実現した。交流・直流両方の読み出しモードを実証し、等価電圧ノイズ密度はmV/√Hz域である。


Dimensional crossover and local strain induced deflection of the spin spiral state in multiferroic NiI2
スピン偏極STM、層単位の膜成長、マルチスケール理論計算を組み合わせ、マルチフェロイックNiI2薄膜のスピンスパイラルを調べた。膜厚が1原子層から7原子層に増えるにつれてスパイラル波長が連続的に増大し、波数ベクトルが[110]方向付近から[1-10]方向へ回転する。これは層間交換エネルギーの増大による次元クロスオーバーを示す。さらに膜のしわが局所曲率による交換相互作用の変調を通じてスパイラル波数を偏向させる。膜厚と局所歪みが非共線螺旋磁性と電気分極の制御手段となる。

Ideal heat engine cycles at maximal efficiency -- the ideal gas and beyond
与えられた熱機関サイクルに対し、最高効率を与える最適な作業物質は何かを問う。モル体積と温度に多項式的に依存する一般的なヘルムホルツポテンシャルから出発し、理想スターリング、オットー、ブレイトンサイクルの厳密な表式を導出した。その結果、最大効率は作業物質が温度に線形な熱力学系で普遍的に達成されることが分かった。これには理想気体だけでなく古典調和振動子やゴムひもの現象論的模型も含まれる。

Mismatch between Raman shear modes and ferroelectric polarization in 3R-MoS$_{2}$
hBN基板上の剥離3層3R-MoS2について、ケルビンプローブ力顕微鏡(KPFM)と低周波ラマン分光を組み合わせて分極ドメインと積層構造を調べた。正味分極がゼロのABA積層とBAB積層はKPFMでは区別できないが、低周波せん断モードは大きく異なる。この結果は複数のフレークで再現され、低温フォトルミネッセンスでも裏付けられた。標準的な結合分極率模型ではこの差を説明できず、層間ラマン応答が単純な分極率描像を超えた物理に支配されることを示す。

Beam Routing through Excitons in Transition Metal Dichalcogenide Monolayers
低温角度分解カソードルミネッセンス分光により、半導体固有の励起子遷移そのものが指向性発光を生み出すことを示した。WSe2、MoSe2、MoTe2単層を測定し、単層WSe2の明励起子、トリオン、スピン禁制の暗励起子を異なる角度発光プロファイルで分離した。明励起子とトリオンの面内双極子は主に表面法線方向に放射する一方、垂直入射の光励起ではアクセスできない暗励起子の面直双極子は大角度に指向性発光チャネルを生む。ナノ構造化なしの小型フォトニクス応用の可能性を示す。

Macroscopic fluctuation theory for the multi-time statistics of current in non-stationary diffusive systems
巨視的ゆらぎ理論(MFT)を拡張し、無限一次元上の拡散系の非定常状態における電流の多時刻統計を調べた。非相互作用格子気体と剛体球ブラウン粒子の場合にMFTを厳密に解き、多時刻大偏差統計を得た。一般の系については摂動的に解いて二時刻相関の明示的結果を導いた。その結果、平坦初期条件で見られた電流ゆらぎと非整数ブラウン運動の対応は、ステップ初期条件では成立しないことが分かった。非相互作用気体と対称単純排他過程の微視的計算および数値シミュレーションで検証した。

Two routes to quantum anomalous Hall states in altermagnets
交代磁性物質で量子異常ホール状態を実現する二つの経路を理論提案した。斜方晶構造に伴う反対称スピン軌道結合を持つ正方格子ハバード模型は自明なアルターマグネット状態を持つが、ラシュバ型スピン軌道結合と外部摂動を導入すると位相的相へ転化できる。第一の経路は結晶学的に等価な副格子を結ぶ対称性を破る交替ポテンシャルによるもので、チャーン数C=1、|σxy|=e^2/hを与える。第二の経路は面直磁場によるもので、磁気ヒステリシス中の準安定状態としてC=2が現れる。

Shortcuts to Parameter Sweeps
広いパラメータ範囲での定常的な感度評価は、影響力のある訓練データの同定、力場のフィッティング、材料応答の予測に重要だが、従来の逐点法は繰り返しの緩和とサンプリングを要する。本研究はShortcuts to Parameter Sweeps(STPS)を提案し、補助制御により有限時間のパラメータ掃引中に確率密度を所定の瞬間定常状態列に沿って輸送する。これにより共分散に基づく応答関係を用いて、単一の制御掃引から全区間の連続的応答曲線を推定できる。平衡系・非平衡定常系の双方に適用可能である。

Lectures on ultrathin film ferromagnetism
3d遷移金属超薄膜の強磁性研究から得られた基本原理を概説する講義ノート。層状成長により垂直方向に量子井戸が形成され、物性に大きく影響する。垂直方向の閉じ込めは二次元的なスピン集団を生み、磁気的な「デッド層」や磁気モーメント増大、振動的な層間磁気結合、垂直対面内の異常な磁気異方性といった基底状態の性質をもたらす。有限温度では強磁性秩序が繰り込み群の枠組みで説明され、相転移は二次元イジング普遍クラスに近い。再配向転移やストライプ秩序の相転移も論じる。

Wormhole Geometry from a Magnetic Vortex
磁気テクスチャへの強結合により電子は創発的な曲がった空間を伝播する。本研究は、素な磁気渦がEllisワームホールの外部空間幾何を実現することを示した。喉部の半径はトポロジカル電荷とフント交換で決まり、短距離では微視的なコアで切断される。二つの分離可能な兆候として、電子の偏向が渦の巻き数と交換結合で決まる単一のEllis曲線に収束すること、スピンBerry位相が巻き数の偶奇でオンオフされる半フラックスAharonov-Bohm応答を生むことが挙げられる。人工ハニカム格子でも同じ計量を模擬できる。


Interface phases and dynamics in two-dimensional quantum magnets: A "holographic" approach from universality to quantum simulation
2次元量子磁性体で秩序バルク領域を隔てる界面(双対格子ゲージ理論では閉じ込め弦)の量子相、相転移、非平衡ダイナミクスを、幾何学的ゆらぎを支配する有効1次元ハミルトニアンに基づいて分類する枠組みを提案した。厳密なボゾン化として再解釈される「ホログラフィック」手法により、ギャップのある/ない1次元基底状態に対応する硬い界面相と粗い界面相の豊富な構造を明らかにした。曲率駆動の非平衡界面ダイナミクスの時空スケーリング則を予言し、中性原子アレイ実験の数値シミュレーションで実証した。

Probing Impurity Quantum Criticality with Entanglement Witnesses
測定可能なスピン・電荷ゆらぎが二不純物近藤模型における量子臨界性のエンタングルメント目撃者となることを示した。DMRGと数値繰り込み群により、独立に近藤遮蔽された二つの不純物と不純物間一重項を隔てる非フェルミ液体臨界点を解析し、これを各局所モーメントの主要なエンタングルメント相手が伝導電子から他方の不純物へ移り変わる現象として解釈した。同じ構造が集団スピン・電荷演算子の量子フィッシャー情報に符号化されることを示し、実験的に測定可能な動的応答関数と結びつけた。

-2026/8/12--
Numerical modeling of microstructure evolution in nanocrystalline alloys - grain boundary segregation, solute drag and mechanics
ナノ結晶合金は微細粒により高強度を示すが、平均粒径20nm付近に強度の最適域があり、その範囲に粒径を安定化させることが合成上の課題である。本研究は粒界への溶質偏析、溶質析出、外部荷重の影響を統一的に扱う3次元有限要素・有限変形フェーズフィールド定式化を提示する。複数のケーススタディで枠組みの適用性を示し、粒界エネルギーの変化に基づく熱力学的・速度論的議論から、溶質ドラッグ、粒界ピン止め、機械的変形の効果を説明した。

Cell Natural Orbitals in Quantum Materials
相関量子物質の理解には低エネルギー準粒子の分散・バンド幾何・軌道成分の正確な記述が必要だが、モアレ材料の位相的バンドでは少数の局在軌道による実空間記述が困難である。著者らは対象バンドへの射影子を単位胞に制限した1粒子縮約密度行列を導入し、その固有状態「セル自然軌道(CNO)」が局所的かつ対称な基底を与えることを示した。固有値は単位胞境界をまたぐエンタングルメントと多軌道性を定量化し、ワニエ化の最適試行状態となる。ねじれ二層WSe2で実証した。

Solver-Agnostic Implementation of Atom-Informed Thermal Conductivity Fields in Continuum Heat-Flow Simulations
原子スケールで分解した熱伝導率をガレルキン有限要素法の剛性行列に写像するSCACSツールキットについて、得られる熱伝導率場がソルバー非依存であり既存の連続体シミュレーション基盤へ移植可能であることを示した。実証として複雑なシリコン構造から導出した伝導率場をAbaqusのメッシュ上に写像し、従来の一様伝導率を仮定した解と比較した。その結果、原子情報を反映した伝導率場は既存の有限要素ワークフローに組み込め、予測の現実性と解の精度を向上させることが確認された。

MXene with Janus Structure at Transition metal site -A route to Emergent Properties
ヤヌス型金属サイトを持つ複金属MXene、TiM"CO2(M"=Mo, W)を第一原理計算で調べた。反転対称性の破れとM"サイトの強いスピン軌道結合により、顕著なラシュバ分裂、非自明なZ2トポロジー、ベリー曲率双極子由来の非線形異常ホール効果、歪みによるその制御が生じる。同族元素でありながらTiMoCO2はZ2トポロジカル絶縁体、TiWCO2は自明な半金属と対照的で、後者は1.35 eV・Åの大きなラシュバ係数を示す。前者は歪みで半導体-半金属転移を起こす。

Orbital-selective oxygen holes in cuprate ladders beyond the Zhang-Rice paradigm
スピンラダー銅酸化物Sr14Cu24O41の電子構造は、Zhang-Rice一重項(ZRS)の普遍性とCu-O混成軌道のみに基づく模型に疑問を投げかける。O K端の偏光依存共鳴軟X線散乱と非弾性中性子散乱を組み合わせ、Cu2O3ラダー中のドープホールが通常のZRSではなく、ラング酸素サイトの面内非結合O 2pz(pπ)軌道に主に局在することを示した。この酸素副格子の電荷秩序は異常な対角ストレッチングフォノンを生み、非整合磁気揺らぎの欠如とマグノン分裂を説明する。

Balanced electron and phonon heat transport in metallic $\varepsilon$-TaN
高熱伝導材料は通常、電子が熱を運ぶ金属かフォノンが支配する絶縁体のどちらかであり、両者が共に大きい物質は稀である。本研究は金属ε-TaNでその両立を理論予測と実験で実現した。計算では室温全熱伝導率が単結晶で273 W/mK、粒径0.5μmの多結晶で145 W/mKとなり、金属としては異例の79%が格子寄与である。多結晶の過渡熱反射測定で約130 W/mKを得て一致した。大きなフェルミ速度と小さな状態密度、高音速と広いフォノンギャップがその起源である。

Nanoscale imaging of ferromagnetic vortex dynamics with scanning NV magnetometry
磁気ボルテックスによるナノスケールのスピン波の生成と操作は、マグノニクスや量子技術への応用上重要である。本研究は走査型NV磁気測定により、メソスコピックなパーマロイ構造中のボルテックスが生成する静的磁場とマイクロ波磁場の双方を約50 nmの空間分解能で撮像し、マイクロマグネティックシミュレーションとよく一致する結果と乱れの影響を明らかにした。さらにボルテックス核近傍で40倍のマイクロ波磁場増強と、乱れに依存する空間的なエバネッセント減衰を可視化した。

Observation geometry for uncertainty-aware Hamiltonian inference and experimental design in quantum magnets
分光・散乱測定から微視的相互作用を決定する際、どの相互作用が信頼して抽出できるか、また残る曖昧さを解消する追加測定をどう設計すべきかは不明瞭であった。本研究はハミルトニアン条件付きニューラル代理モデル、ベイズ推論、観測幾何を組み合わせ、不確かさを考慮したハミルトニアン推定と適応的実験計画の枠組みを提示する。量子磁性体NiPS3の粉末・単結晶非弾性中性子散乱データを用い、解釈可能な推定と測定モダリティごとの不確かさ評価を実証した。

Carrier-tunable RKKY magnetism in a crystalline magnet
RKKY相互作用が支配する遍歴磁性体では交換結合がモーメント間距離とフェルミ波数の双方に依存するが、バルク合成では組成変化が両者を同時に変えてしまう。本研究は分子線エピタキシーにより同一のNbSe2母体中にCr1/4NbSe2またはCr1/3NbSe2を作り分け、成長後アニールでCr超構造を保ったままキャリア密度のみを変調した。ホール応答は系統的に変化する一方、磁気応答は構造に鈍感に振る舞い、キャリア密度とモーメント配置の効果を実験的に分離した。


Enhanced Screening in Epitaxial Graphene via Nearly Free-Electron Metal Intercalation
SiC上グラフェンはスケーラブルな成長が可能だが、界面での誘電遮蔽が乏しく電子性能が劣化する。本研究はグラフェン/SiC界面にインジウム二層をインターカレーションして遮蔽を系統的に強化した。角度分解光電子分光で観測されるプラズマロン信号を相互作用強度の指標とし、二層の協働による強い遮蔽を定量的に示した。層分解密度汎関数計算によれば、第1層が基板との相互作用を吸収する緩衝層となり、第2層がほぼ自由電子系を形成して上部グラフェンを効率的に遮蔽する。

From Zero to Mega-Gauss Fields: Comprehensive Magnetophotonic Spectroscopy of Graphene Dirac Cones
一巻きコイルと電磁濃縮法を用い、4H-SiC上のn型エピタキシャルグラフェンの赤外磁気光学応答を最大560 Tの超強磁場下で調べた。吸収スペクトルは異常に幅広く、通常のサイクロトロン共鳴から大きく外れる。ARPESはギャップ約0.2 eVの「キャメルバック」型に歪んだディラック分散を示し、ランダウ準位図から160-200 T付近でN=0±準位が交差し、電子支配の集団モードから電子正孔協同励起へ遷移すると分かった。400 T付近の巨大共鳴はアルフベン波模型で再現される。

Spin Splitter without Spin-Split Bands: A Reconfigurable Altermagnetic Texture
交代磁性体のスピンスプリッター効果は電場を横方向の純スピン流に変換するが、従来は結晶に固定されたスピン分裂バンドに依存し偏極軸が格子に固定されていた。本研究はフラストレート六方格子磁性体の非共面カウンタースパイラル基底状態が、波数Qに固定されたヘリシティ鏡映gを通じて同じ機能を担うことを示す。鏡映がスピン流偏極を選択し、反並進が偶パリティのスピン分裂を禁じるため、バンド分裂とスピン流応答は別の対称性要素に由来し、スピン分裂なきスピンスプリッターが実現する。

Jamming transition in an active exclusion process
アクティブマターでは活性が相転移を誘起・抑制したり臨界挙動を変化させることが知られる。本研究は受動系の代表的非平衡相転移であるジャミング転移への活性の影響を調べた。硬芯排除相互作用を持ち、一定のスイッチング率で自己推進方向が反転する1次元活性粒子系を考え、モンテカルロ計算と平均場理論で移動度とホールクラスター分布の密度・スイッチング率依存性を求めた。主要な結果は、活性がジャム形成を妨げ、臨界密度がスイッチング率の低下とともに減少し、十分小さいと流動相のみとなることである。

Competing collinear and non-collinear spin textures imaged by spatially-resolved REXS in Eu(Al0.4Ga0.6)4
共鳴弾性X線散乱によりEu(Al0.4Ga0.6)4のゼロ磁場スピンテクスチャの不均一性を調べた。空間分解REXSから、TN1=17 KとTN2=14 Kの二つの磁気転移がほぼ縮退しつつ異なる直交q ベクトル対に由来することを示した。両相は空間的に分離し、一部の領域は直交するスピン密度波ドメインの共存、別の領域は直交ヘリカルドメインの共存からなる。ヘリカル状態は反転ドメインを形成する。0.8-1 mmの範囲でテクスチャが大きく変化し、空間分解プローブの重要性を示す。

Assessing fidelity-limiting factors and achieving single-qubit gate fidelity beyond 99.999% in driven silicon spin qubits
半導体単一スピン量子ビットでは高忠実度ゲートが実証されているが、駆動下コヒーレンスのばらつきにより性能の一貫性確保が課題である。本研究は駆動スピンのコヒーレンス時間を大幅に延長し、非共鳴駆動の影響を抑制することで99.999%を超える1量子ビットゲート忠実度を達成した。近接するリザーバーの除去がスピンロックコヒーレンス時間T1ρを著しく向上させること、矩形パルスでは隣接ビットの非共鳴励起がベンチマークに偽信号を生むことを示し、π/2ゲートで99.99920%を得た。

Floquet Green's functions for lattice electrons driven by Gaussian quantum light
リザーバーで安定化された単一モードのガウス型量子光に駆動される非相互作用単一バンド格子電子に対し、フロケ・グリーン関数を定式化した。光源は外部から与えられ多電子分極では更新されないが、電子プローブはパイエルス結合を通じて光源の時間発展を条件付ける。グリーン関数の二つの時刻は同一の光源履歴を共有し、4端点カーネルと連続な浴カーネルの畳み込みから小なり・大なり成分が得られる。1次元模型の数値計算で、圧搾真空・圧搾コヒーレント光による古典駆動を超える補正を示した。

-2026/8/11--
Revisiting the Coupling of Thermodynamics and Electromagnetics
運動する分極・磁化物質における連続体熱力学と電磁気学の結合を、二つの経路で再検討した。第一はDreyerらの公理的バルク理論で、エントロピー原理により普遍的なバランス則を閉じる手法。内部エネルギー収支の源は非対流電流で構成すべきこと、分極電流とローレンツ磁化が単一の恒等式を通じて現れ、それがエントロピー変数と束縛電流の符号を決めることを示した。第二はMazurの統計力学的アンサンブル平均による導出で、保存則を新たに導いた。両者は分極・磁化の再定義後に構造的に一致し、唯一の差は微視的場のゆらぎに由来する運動量寄与であると結論した。

Fuzzy Spectroscopy of Bound States in Massive Quantum Field Theories
閉じ込め場の理論の束縛状態であるメソンやグルーボールの連続極限での非摂動的分光は、1空間次元を超えると困難である。本研究は非可換「ファジー」幾何に基づく新しい正則化を用い、Ising場の理論の分光を実行した。細いファジートーラス上で磁場摂動した(1+1)次元Ising理論の普遍的なE8メソン質量を再現し、アスペクト比を変えることで2番目に軽いE8メソンが1次元から2次元へクロスオーバーする様子を追跡した。2次元トーラスと球面では閾値下のスカラー準位を見出し、グルーボール質量の従来推定と整合する応答をクエンチ動力学でも確認した。

Optimally embedded tight binding for reproducing geometry dependent observables
強束縛模型では位置演算子が単位胞内の軌道位置(embedding)に還元されるため、バンド構造は再現できても位置演算子に依存する幾何学的応答は正しく記述できない。本研究はembeddingを幾何学的チューニングパラメータとして扱い、第一原理計算や実験の参照応答に対して最適化する「最適embedding強束縛法」を提案する。GaAsとCdSでバンド構造の精度を落とさずに非線形光学応答を定量的に再現した。強束縛可観測量を幾何非依存部と依存部に分解して位置微分を効率的に求め、量子幾何テンソル等の明示的微分も与えた。

Probing intermittent polariton vortex dynamics with two-point correlations
時間分解能80 psの超伝導単一光子検出器を用いて、トラップに閉じ込めた励起子ポラリトンのボース凝縮体の時空間ダイナミクスを調べた。1次および2次の相関関数はいずれもトラップ内の凝縮体ダイナミクスに支配された顕著な時間振動を示した。さらにAndronov-Hopf分岐近傍で、定常状態とリミットサイクル状態の間を確率的に遷移する間欠的レジームを同定し、これが相関関数の非対称な歪みとして現れることを見出した。決定論的挙動と確率的挙動の豊かな相互作用は、自己斥力とリザバー媒介引力の相殺として理論的に説明される。

Quantum tribology: acceleration-induced Stokes friction and Magnus force in correlated Bose fluids
ランダウ基準は臨界速度以下の一様運動では散逸が禁止されると述べるが、加速度が量子摩擦をどう変えるかは未解決だった。本研究は弱相互作用ボース凝縮体中で並進と回転を複合した探針粒子を扱い、非慣性運動の量子トライボロジーの理論的枠組みを構築した。非線形Gross-Pitaevskii方程式により、向心加速度が素励起のエネルギー・運動量拘束を根本的に変えることを示し、亜音速領域での有限の抗力と、超音速領域での量子スティックスリップ挙動を予言した。さらに二次の密度摂動に由来する非散逸的な量子Magnus的横力も発見した。

Momentum-Selective Electron and Spin Dynamics under Ultrafast Photoexcitation
時間分解分光の進展により相関量子物質の運動量選択的な非平衡ダイナミクスが直接観測可能になったが、強い局所電子相関と非局所集団ゆらぎの相互作用を一貫して扱う実時間理論が不足していた。本研究は新しい実時間多体理論枠組みを用い、光励起された相関電子系の運動量選択的超高速ダイナミクスを解明した。電子加熱におけるノーダル・アンチノーダル異方性を予言し、時間分解光電子分光やラマンで議論されてきた運動量依存応答を微視的に説明した。反強磁性ゆらぎが電子温度をはるかに超える非熱的クエンチ的励起を受け、マグノンカスケードで緩和することも示した。

Bose-Einstein condensates with Raman-induced spin-orbit coupling : An overview
スピン軌道結合したボース・アインシュタイン凝縮体は最初の実現から10年以上にわたり理論・実験の集中的な研究対象となってきた。スピン軌道結合は凝縮体の平衡特性を大きく変え、超固体ストライプ相や相分離した平面波状態といった新奇な配置を生み出す。動力学の面でも、スピン自由度との結合により集団励起モードの振動数と性質の両方が大きく変化する。本レビューはこの分野における最も重要な進展を概観し、今後の研究の方向性について展望を与える。

Fluctuation-based evidence for number--phase dynamics in a frustrated orbital superfluid
フラストレート量子物質は対称性に起因する低エネルギー構造に根ざした絡み合った秩序を持つが、静的秩序変数だけではゆらぎの組織化は分からない。本研究は3つのバレー間のバイアスを調整可能なp軌道三角格子超流動で、モード分解したショットごとの占有数ゆらぎを測定した。バイアス調整により、2つのマイノリティバレーの反相関した増大ゆらぎから、選択された2バレーのストライプ相での相対占有数ゆらぎの強い抑制へと変化する様子を観測した。ペアトンネリング誘起の数-位相ダイナミクスが支配する量子-熱的レジームを明らかにした。

Magnetoelastic coupling in stripe-domain states of yttrium iron garnet
GGG基板上に成長した膜厚3μmのYIG薄膜のストライプ磁区状態における磁気弾性結合を調べた。広帯域強磁性共鳴により、低周波のストライプ磁区マグノン分枝が3.5 MHz間隔の磁場非依存なフォノン櫛によって変調されることを見出し、これはGGG基板の閉じ込め厚さすべりモードの予測値と一致した。解析的フィッティングから結合率0.33〜0.54 MHz、協同度10^-1程度が得られ、系は弱結合領域にある。有限要素シミュレーションによるモード重なり計算から、局所結合は大きいが位相と磁区符号の打ち消しにより99%以上が相殺されることが分かった。

Solving the Gibbs Paradox by Local Free Space and Collision Potential
本論文は、量子力学の同種粒子の概念を用いずにギブスのパラドックスを解決できると主張する。気体の異なる領域の分子は区別可能であるためN!の因子を導入する必要はない。各分子について自由運動空間の体積は各瞬間において局所的である。さらに衝突が気体分子間の主要な相互作用であり平衡到達の基本的駆動力であって、衝突中のポテンシャルエネルギーは無視できない。局所自由空間仮説と衝突ポテンシャルに基づき、正準集団の方法で混合気体のエントロピー増大式を再導出し、分子質量・有効半径・衝突特性時間といった気体種に依存するパラメータを含む結果を得た。

Excitron-Induced Pair Fluctuations Reveal Superconductivity in the Electron Gas
希薄電子系で超伝導がどのように発現するかは物性物理の中心的課題である。本研究は低密度3次元電子ガスの電子自己エネルギーΣ(k,iω_n)を第一原理的に計算し、r_s〜8、T〜10^-4 E_Fで鋭い発散を見出し、2次相転移の兆候を同定した。この臨界的振る舞いは、電子と縦方向の電子正孔対から成る準1次元複合粒子「エキシトロン」の仮想励起が媒介する1次元的超伝導ゆらぎに由来する。超伝導機構自体はプラズモン媒介だが、エキシトロン経路がそのゆらぎ動力学を映し出す。転移近傍では擬ギャップと温度に線形な逆寿命という高温超伝導体類似の現象が現れる。


Crystalline Group-IV Josephson Junction
従来の超伝導量子エレクトロニクスはAl/AlOxジョセフソン接合に依存するが、非晶質のAlOx弱結合部が二準位系を宿しコヒーレンスを制限すると考えられている。結晶性接合は原子レベルで秩序だった界面を持つ一方、複雑な作製工程とエピタキシャル成長固有の非対称性に制約されてきた。本研究はガリウムドープゲルマニウムの超伝導に基づく完全エピタキシャル手法により、分子線エピタキシーで全て in situ 成長したジョセフソン接合を実現した。原子レベルで急峻な界面と結晶性弱結合部を持ち、超短接合領域で強いジョセフソン結合を示す。磁場下でスイッチング電流が異常増大する現象も観測した。

Spin-Orbital Hall Nano-Oscillators using PtCr/NiFe
軌道ホール効果は従来のスピンホール物理を超えた角運動量流生成の有望な手段である。本研究はCrが生成する軌道ホール流をPtがスピン流へ変換する均質な重金属・軽金属合金を利用し、スピン軌道ホールナノ発振器を実証した。PtCr/NiFe構造では有効トルク効率がPt/NiFeの約0.14から約0.40へ増加し、Ptを大幅に希釈したにもかかわらず向上した。閾値電流密度は約1.07×10^12から約4.4×10^11 A/m^2へ低減し、コヒーレントな自励発振が可能になった。第一原理計算はCr合金化がスピンホール伝導度を抑制し軌道ホール伝導度を増強することを示す。

Elementary magnons and interacting multi-magnon quasiparticles in the effective spin-1/2 kagome-staircase magnet Co3V2O8
異方的磁性体の励起スペクトルは微視的ハミルトニアンと相互作用由来の準粒子を直接結びつける。本研究は高分解能の時間領域テラヘルツ分光により、3次元カゴメ階段化合物Co3V2O8の磁気励起を温度と磁場の関数として測定した。低エネルギー領域では偏光分解スペクトルが磁気双極子活性な1マグノンモードを同定し、強磁性相とスピン密度波相にわたる変化を追跡した。中性子散乱の分散と併せて強い異方的交換を持つ有効スピン1/2ハミルトニアンを決定した。高エネルギー側では1マグノンの2〜4倍の磁場勾配を持つ鋭い分枝を観測し、相互作用する多マグノン準粒子と同定した。

Thermodynamic evidence for interaction-driven first-order topological quantum phase transitions
非相互作用系のトポロジカル量子相転移は連続的なギャップの閉じと再開を伴うが、強相関系では競合する秩序状態が1次転移を駆動すると予測されながら実験的に未解決だった。本研究はnanoSQUID-on-tip磁力計を用い、スピン軌道近接効果を受けた菱面体黒鉛の量子異常ホール状態の局所軌道磁化を直接イメージングした。記録的なチャーン数を持つQAH相の実空間可視化、局所熱力学ギャップの再構成、競合秩序状態を横切る磁化の追跡を行った。層間反強磁性・QAH・層分極絶縁体間の遷移が1次であり、相境界近傍で磁区の共存を示すことを明らかにした。これらの観測結果を総合すると、一次トポロジカル量子相転移に関する初の直接的な熱力学的証拠が得られ、相の競合と共存を通して相互作用によって引き起こされるトポロジカル量子相転移を理解するための微視的な枠組みが確立される。

Microscopic Origin of Spin Splitting in Altermagnetic CrSb Thin Films
交代磁性体は運動量依存スピン分裂によりスピントロニクス応用の有望材料として注目され、中でも金属CrSbは巨大なスピン分裂と高いネール温度を持つ。しかしバルクと薄膜で異なるスピン分裂挙動の微視的起源は未解明だった。本研究は第一原理計算で異なる表面方位のCrSbスラブの電子構造を系統的に調べた。全スラブがアルターマグネティズムと両立するスピン群対称性を保つにもかかわらず、(2-1-10)面は顕著なスピン分裂を保持する一方、(0001)面と(10-10)面はほぼスピン縮退する。薄膜では長距離の面内Cr-Sbホッピングが分裂に必要と示した。

Time-Reversal-Invariant Altermagnetic Acoustic Crystals
交代磁性体はスピン分裂バンドと正味ゼロ磁化を併せ持つ新しい磁性材料群だが、この概念を古典波動系へ拡張することは、従来の実現法が時間反転対称性の破れを必要とするため困難だった。本研究は2つの擬スピン自由度を導入し、実際の時間反転対称性を保ちながら物理的な時間反転操作を忠実に再現する擬時間反転演算子を構築することでこの制約を克服した。この枠組みに基づき、時間反転不変な交代磁性音響結晶を理論提案し実験的に初めて実現した。音響測定は擬スピン依存のバンド分裂を直接示し、副格子-擬スピンロッキングも確認された。

Electronic bistability, discontinuous switching and stochasticity in a two-dimensional semiconductor
同一バイアス下で2つの安定電子状態を持つ双安定性はスイッチングやメモリの基盤だが、通常トランジスタには存在せず材料的な工夫を要する。本研究は化学的に均質な単結晶中で内因的な電子双安定性を持つトランジスタを実証した。デュアルゲート黒リンでは巨大シュタルク効果で垂直電場によりバンドギャップが狭まり、ゲートがキャリア密度だけでなくバンドプロファイルも変形させてチャネル内に帯間トンネル接合を形成する。拡散・2つのトンネル経路・ツェナー降伏が競合し、負性微分伝導度、不連続スイッチング、履歴依存ヒステリシスを生む。スイッチングは確率的で乱数源にもなる。


Nonequilibrium dynamics of doped Chern ferromagnets: a case study for false vacuum decay
準安定な偽真空崩壊は物理の至る所に現れるが、その動力学は未だ十分理解されていない。モアレ量子物質の散逸的状態生成は、ハミルトニアンの基底状態でない状態を生成できるため、この物理の探究に格好の舞台を提供する。本研究は正孔のスピン・バレー自由度の定常的光配向実験に触発され、逆向き磁場下での遍歴強磁性体・チャーン強磁性体の動力学を調べた。円偏光ラゲール・ガウスビームによる光ポンピングで準安定状態中に真の真空バブルを決定論的に生成し、ポンプ強度で決まる初期サイズに応じてバブルが収縮または膨張することを観測した。


Multitask Scanning Probe Microscopy
走査プローブ顕微鏡は材料の構造・電気・電気機械・磁気・力学特性へナノスケールで接近できるが、ウェハスケール評価やコンビナトリアル探索では広域に効率的に測定を配分する必要がある。取得時間や探針・試料損傷リスクがモード毎に異なるため、全点で全モードを測るのは非現実的である。本研究はマルチタスクガウス過程が空間的・モード間相関を学習し、次の測定位置と実験プロトコルを自律的に選択するライブ閉ループ手法を実証した。自動大型試料AFM上でAlScN組成傾斜ウェハに対しタッピングモードとDART測定を用いて実演した。

Polarization engineered all 2D Graphene/Ferroelectric hybrid for persistence-free photoresponse
グラフェン系ファンデルワールス光検出器は通常トラップ媒介の光ゲーティング機構で動作し高感度だが繰り返し光信号の高速検出に劣る。本研究は原子層すべり強誘電体を組み込むことで高速性と高感度を両立した。二層グラフェンと3R積層二層MoS2から成る、エッジコンタクトのデュアルゲートFET型光検出器を報告する。3R-MoS2の面直自発分極の光誘起変調と、変位電場下での二層グラフェンへの選択的キャリア閉じ込めにより、残光のない可変光応答が得られる。応答時間は数十ミリ秒(測定器律速)で温度非依存、内部量子効率10%、単発測定での最小検出光子数31を達成した。

Parity-Resolved Quantum Capacitance and Quantum Inductance in Topological, Trivial, and Normal Nanowire Interferometers
量子容量測定は磁束を通したナノワイヤループ中の量子ドットエネルギーの曲率を高速なパリティ感応信号に変換し、マヨラナ素子の読み出し手段として有望である。しかしトポロジカルに自明なアンドレーエフ束縛状態も類似応答を示すため容量だけでは判定できない。本研究は量子ドットを4種のナノワイヤ両端に結合させ、パリティ分解した量子容量と逆量子インダクタンスを厳密対角化で計算した。h/e周期性や偶奇パリティ間のh/2e磁束シフトはトポロジカル超伝導の十分な指標ではなく、自明なアンドレーエフ状態や常伝導ワイヤでも生じうると示した。

Magnetotransport evolution and nonlinear Hall effect in altermagnetic MnTe
六方晶MnTeは代表的な半導体交代磁性体であり、その物性は内因的な乱れに強く影響されるが、多様な輸送領域が磁気輸送挙動をどう形作るか、相対論的スピン軌道相互作用の役割と併せて未解明である。本研究はMnTeバルク単結晶の異方性磁気抵抗、面内ホール効果、非線形輸送を系統的に調べた。ネール温度304 K以下の高温金属領域では高次高調波が現れ、磁気秩序・結晶対称性・SOCの相互作用を示す。低温では高次対称性が消失しホッピング伝導への輸送クロスオーバーと一致した。さらに2次非線形ホール信号を検出し、巨視的な反転対称性の破れを実証した。

A spin-bond theory unifying non-relativistic spin splitting and emergent spin-orbit textures
正味磁化がゼロの磁気秩序は非相対論的スピン分裂バンドを生み、偶パリティの交代磁性と奇パリティのp波磁性体に大別される。本研究はこれら一見異なる現象を単一の代数的枠組みへ統一する「スピンボンド理論」を導入する。非相対論的スピンテクスチャは電子ボンドのユニタリなスピン位相とエルミートなスピン振幅という2成分に支配されることを示した。ユニタリ部門はp波および創発的スピン軌道的テクスチャを、エルミート部門は偶パリティのスピン場を生成する。両部門が非可換となる混合領域では非共面スピンテクスチャが現れ、ARPESで検出可能な指紋となる。


Uniaxial stress effects on magnetic and electric properties of the ground state in a centrosymmetric magnetic skyrmion host Gd2PdSi3
反転対称性を持つ磁気スキルミオン化合物Gd2PdSi3について、一軸応力が磁気秩序と電気抵抗率に与える影響を調べた。この物質は磁性Gd3+イオンの三角格子層から成る六方晶構造を持ち、第一磁場誘起相で巨大トポロジカルホール効果を伴うトリプルQスキルミオン格子相を示すことが知られる。一方、基底状態については未解明で、波数q〜0.14の非整合磁気変調が報告されているものの単一Q構造か多重Q構造か不明だった。c軸に垂直な圧縮一軸応力下で磁化・抵抗率・中性子回折を測定し、単一Q秩序から期待される異方性が現れないことから多重Q秩序と結論した。

Revealing Hidden Unconventional Pairing through Nonreciprocal Transport
クーパー対の対称性の同定は非従来型超伝導の微視的機構理解に不可欠だが、支配的なs波成分が非従来型対称性の分光的兆候を覆い隠す場合には特に困難である。本研究は多端子素子でソースと検出端子を入れ替えた際の非相反コンダクタンスにより対称性を分解して同定する枠組みを構築した。非相反輸送は超伝導秩序変数の対称性を破る成分から生じ、ギャップの運動量空間構造を反映した特徴的な角度依存性を示す。時間反転を破る一重項対は非相反電荷輸送を、三重項対は非相反スピン応答を誘起する。鉄系および非中心対称超伝導体の模型で実証した。


Probing crystal-field modulations with magnetic adatoms on the incipient charge-density-wave superconductor 2H-NbS2
層状物質における複数量子相の競合は、基底状態が相転移近傍にあり局所的乱れに敏感な「発現しかけ」の量子挙動をもたらす。遷移金属ダイカルコゲナイド2H-NbS2は発現しかけの電荷密度波と十分発達した超伝導を併せ持ち、局所的な格子不安定性が重要な役割を果たす。本研究は個々の磁性原子を局所センサーとして用い、隠れた結晶場変調を明らかにした。STM探針で吸着原子を表面上で操作しながらYu-Shiba-Rusinov励起スペクトルの変化を測定し、点欠陥周りの局所環境をマッピングした。超伝導状態は空間的に一様である一方、YSR励起エネルギーは原子位置に強く依存した。

Disorder-robust trivial Majorana-like states from smooth confinement in chiral superconducting nanowires
マヨラナナノワイヤのゼロエネルギー近傍状態は、滑らかな空間的不均一性や乱れといったトポロジカルに自明な機構からも生じるため、ゼロエネルギーへの固着だけではバルクトポロジーの証拠にならない。本研究は対称性を保つ乱れに対する頑健性を支配する実空間機構を同定した。カイラル対称なBdGハミルトニアンについて低エネルギー状態を反対カイラリティの2成分に分解し、乱れによる分裂がそれらの空間的重なりで上から抑えられることを示した。滑らかな閉じ込めは指数的に小さい重なりを持つ部分分離した成分を生み、強い乱れ下でもゼロ近傍に留まる自明な状態を作る。

Anomalous temperature dependence of polaron mobility in a nonlinear double-well potential: unbiased X-propagator approach
任意の非線形電子格子相互作用に対して有限温度の光学伝導度σ(ω)と直流移動度μを計算する、バイアスのないXプロパゲータ法を開発した。強い非調和性を持つ極性物質の最小模型である二重井戸格子ポテンシャルに結合したポーラロンへ適用した。中程度の結合では、片方の井戸への閉じ込め、障壁との熱的競合、障壁に鈍感な高温ダイナミクスに対応する3つの温度領域が現れ、従来の線形結合模型にはない凹型の温度依存性を生む。強結合では移動度が非単調になる。SrTiO3に相当するパラメータでは異常な凹型移動度とMott-Ioffe-Regel限界の破れを定性的に再現した。

AES-Debye: an Accurate, Efficient, and Scalable Engine for Debye Scattering Calculations
全散乱モデルはナノスケール材料の構造と乱れの評価に不可欠である。デバイ散乱方程式は弾性全散乱への厳密な道筋を与えるが、全散乱ベクトルで対毎の寄与を積算するため計算負荷が高く、ビン化した対距離分布やFFTによる高速化は離散化・エイリアシング誤差を招き拡散散乱の精度を損なう。本研究は補正したビン中心と数値的に頑健な積算により誤差を抑え、精度を保つ枠組みAES-Debyeを提案する。データ局所性を意識した並列設計でCPU/GPU上で効率実行でき、9000万原子系の高分解能全散乱プロファイルを分散メモリCPU環境で数分で計算した。

Cell Natural Orbitals in Interacting Topological Bands
トポロジカルバンドは指数関数的に局在した対称なワニエ関数の構成が妨げられるため、局所軌道で射影相互作用を表す標準的な枠組みが破綻する。本研究はバンド射影された密度形状因子の特異値分解を導入し、幾何に基づくヒルベルト空間の切り詰めと、波動関数が決める相互作用の内在的階層構造を明らかにした。この分解は単位胞縮約1粒子密度行列の固有状態である「セル自然軌道(CNO)」で最も自然に記述される。カイラル極限の魔法角ねじれ二層グラフェンに適用すると、支配的CNOはAAサイト中心で重い電子模型のfフェルミオンに類似することが分かった。

-2026/8/10--
Sublattice-resolved coherent phonon dynamics in charge density waves
フォノンの実空間振動を副格子分解して同定する動的プロトコルを提案し、電荷密度波物質EuTe4に適用した。Te副格子が担う主要な電荷秩序に加え、これまで未報告だったEu副格子成分の存在を見出している。時間分解共鳴X線散乱の元素選択性を活用することで、副格子ごとに異なる性格を持つ3つのコヒーレントフォノンモードを分離し、EuとTeそれぞれが支配する格子ダイナミクスを解きほぐした。結果はフォノン固有ベクトルの理論計算とよく一致する。従来の周波数領域非弾性散乱のエネルギー分解能の限界を超える手法であり、多元素物質における相の狙った制御に道を開く。


Effectiveness of Some 0 dB Cryogenic Microwave Attenuators as Thermal Heatsinks
極低温の高周波・マイクロ波測定系で使われる同軸ケーブルは、内部導体が試料と良好な熱接触を持つため、内部導体経由で流入するフォノン熱を把握することが重要となる。内部導体の熱化には極低温アッテネータが広く用いられているが、その定量的な性能情報はこれまで存在しなかった。本研究では市販の0 dBアッテネータ3種について、熱負荷下での内部ピンの温度を実測し、ヒートシンクとしての有効性を評価した。この知見は、希釈冷凍機や核断熱消磁ステージに搭載する試料の熱環境を設計・制御するうえで有用である。

Anderson Orthogonality as Measurement Backaction in Coupled Quantum Dots
測定は量子系を外部自由度と結合させて擾乱するが、検出器バックアクションは測定機構そのものに依存する。本研究では、量子ドット電荷センサが別の量子ドットとリザーバ間のトンネリングに与える影響を通じ、平衡近傍のバックアクションを調べた。この測定はアンダーソン直交性破綻を実現しており、局所散乱ポテンシャルの急激な変化に応じて検出器リード中の電子が再編成され、共鳴トンネリングを抑制する一方、検出器とエネルギーを交換する非弾性過程を可能にする。検出器のエネルギー準位を変えることでバックアクションを無視できる領域から支配的な領域まで制御できることを示した。

Emergence of Bogoliubov Fermi Surfaces in hybrid Al/InAs heterostructures
超伝導体・半導体ハイブリッド構造における近接効果を受けた二次元電子ガスのマイクロ波電気力学を調べた。面内磁場に対してインダクタ配線の向きを変えた集中定数共振器を用い、動インダクタンスを通じて超流動剛性を直接測定している。磁場の増加に伴い共振周波数は非単調かつ強い異方性を示し、軌道的な対破壊だけでは説明できない。この振る舞いはボゴリューボフ・フェルミ面の出現と整合し、磁場方向に応じて超伝導電流応答が選択的に抑制されると解釈される。剛性テンソルの微視的計算はゼーマン効果と軌道Fulde-Ferrell効果の競合による異方性を再現した。


Nonreciprocity reversal of magnetoacoustic attenuation in NiFe alloy thin films
強磁性体中では表面弾性波が伝搬方向に固定された回転方向を持つ楕円有効磁場を生み、伝搬の相反性を破る。しかしその非相反性の符号を制御する手法は長く未解決だった。本研究はNi-Fe合金薄膜において符号反転を観測した。磁歪ゼロ組成を挟む0.8 at.%の組成変化で磁気弾性係数bの符号が反転し、楕円有効磁場の回転方向とともに非相反性が78.6%から-61.8%へ反転する。角度依存測定とスピン波楕円率モデルがこの描像を裏付け、周波数の3乗則を利用して10 nm膜で-0.05 MPaまでbの符号を分解でき、非相反性がナノスケールの磁気弾性結合プローブとなることを示した。


Observation of metastable chiral domain walls in a topological magnet
二次元フラットバンド系で発見された整数・分数量子異常ホール(QAH)磁性体は、従来の磁性体とは異なるスピン励起を持つと予想されてきた。本研究はねじれMoTe2モアレ超格子のスピン・バレー励起を共鳴超高速ポンププローブ分光で調べ、約3.7 K以下のQAH磁性相において、飽和磁場の数倍の逆向き磁場にも耐える準安定励起を観測した。通常の磁壁やマグノンとは明確に異なる挙動から、擬スピン秩序変数が磁壁に沿って面内巻き付きを持つカイラル磁壁だと提案する。実空間のトポロジカル巻き数と運動量空間の量子幾何の相互作用が準安定性を生み、QAH磁性体の安定性を左右する。


Cascading Through the Hierarchy: Regularizer-Induced Feature Detection as Phase Transitions in Deep Linear Neural Networks
深層学習の科学的理論の礎となる解析的に解けるトイモデルを、統計物理の外場になぞらえて正則化強度を可変な外部パラメータとして解析した。先行研究では学習開始転移が解析的に予言され、正則化強度の調整が相転移のカスケードを生むことが数値的・現象論的に示されていた。本研究は厳密な枠組みを構築し、これらの相転移カスケードと学習可能な特徴、および損失地形の幾何との精密な対応を明らかにする。相転移の解析的予言と、学習された特徴に関する扱いやすい秩序変数を与え、有効記述に凝縮される巨視的視点をヘッセ行列スペクトルが特徴づける微視的視点と接続した。

Determination of the properties of a superconducting single crystal FeSe using an EPR spectroscopy
EPR分光器を用い、FeSe単結晶の性質を最大6000 Oeの磁場下、超伝導状態の3.5~8 Kおよび常伝導状態の8~25 Kで調べた。ゼロ磁場および30 Oeまでの弱磁場における非共鳴信号を測定することで、臨界温度Tc、超伝導転移幅、下部臨界磁場Hc1を決定できることを示した。1400 Oeと3400 Oeに現れる共鳴EPR信号は、FeSe結晶中の2価鉄イオン(Fe2+)の常磁性に対応する。6000 Oeまでの非共鳴EPR信号は3.5~8 Kでは磁場の非線形関数となり超伝導混合状態に対応するが、8 K以上25 Kまででは磁場に依存しない。

Extracting the full conductivity tensor in a rectangular sample
多くの二次元物質は異方的な伝導率を示すが、矩形試料に対する既存手法では伝導率テンソルの一部しか抽出できないか、実験的な実行が難しかった。本研究は、主軸角度を含む完全な伝導率テンソル(逆行列を取れば抵抗率テンソル)を抽出できる簡便な実験手順を提案する。等角写像の手法により、試料周縁上に点電流源とドレインを置いた場合のポテンシャルの解析表現を導いた。得られた解はCOMSOLによる数値シミュレーション、および主軸角度がゼロとなる既知の極限とよく一致する。有限サイズの電極も重ね合わせによりモデル化できる。


Universal Magnetoresistance Scaling in Layered Pd-based Multiband Metals Beyond Compensated Semimetal Regime
非磁性層状Pd系金属PdTe2、PdPb2、beta-PdBi2および非中心対称alpha-PdBiの単結晶で磁気抵抗比(MR)を系統的に調べ、多バンド・高キャリア密度系における新しい巨大MRの分類を提示した。第一原理計算が示す複雑なフェルミ面にもかかわらず、MRは移動度に支配される単純なスケーリングに従い、高RRR結晶ではコーラー則が成立して単一の有効散乱時間で記述できる。磁場・RRR依存性は線形と二次の中間的なべきを示し、不完全な補償と移動度分布に起因する。alpha-PdBiは1500%(2 K, 7 T)と最大だが、同一RRR比較では中心対称系より小さい。

Electron Temperature and Electron-Electron Scattering Length in GaAs/AlGaAs Using Mesoscopic Multiparallel Aperture Geometries
二次元系の電子輸送領域を理解するうえで、電子温度と電子間散乱長の定量化は不可欠である。本研究は多平行アパーチャ形状における半古典的サイクロトロン軌道を利用し、低温バリスティック輸送を実験的に調べた。試料は非常に高い移動度を持つGaAs/AlGaAsヘテロ構造上に作製されている。バリスティック輸送に由来する磁気抵抗極大の振幅が温度とともに指数関数的に減衰することを観測し、そこから電子間散乱長を決定した。さらに温度依存性と直流バイアス依存性のピーク振幅を比較することで、ジュール加熱を反映した電子温度とバイアス電流の定量的関係を確立し、超バリスティック伝導の兆候も見出した。

Giant-exchange-driven Vectorial Control of a Minimal Topological Magnet in Eu3In2As4
磁性とバンドトポロジーの相互作用による量子状態制御は、弱い交換結合と複雑な電子構造に阻まれてきた。本研究は新規予言物質Eu3In2As4に巨大な交換結合を見出し、磁化に依存して最大300 meVのバンドシフトが生じることを示した。軟磁性的応答と相まって、磁場の大きさと方位の両方でトポロジカル相を系統的に制御できる。反強磁性トポロジカル絶縁体基底状態から中間的な2/3フェリ磁性相、さらにワイル半金属や節線半金属が予言される完全分極強磁性状態へ至る磁気トポロジカル相図を作成した。ワイル相はワイル点1対のみの最小模型に対応する。

Prominent Intrinsic Orbital Hall Effect in the 135 Kagome Metal Family and Orbital Responses in the Loop-Current Phase
遷移金属カゴメ格子金属における軌道ホール効果(OHE)を理論的に調べ、CsTi3Bi5で大きな正のOHE、CsV3Sb5とCsCr3Sb5で負のOHEを予言した。軌道セクター分解によると、|l^z_d|=2のd軌道チャネルが正、|l^z|=1のd軌道およびp軌道チャネルが負の寄与を与える。実際のフィリング近傍では各セクターの符号傾向が保たれる一方、強いp-d混成が定量的バランスと全体の符号を左右する。さらにCsV3Sb5のループ電流相では有限の局所軌道角運動量が誘起され、対称性低下により軌道伝導度テンソルの対称成分が許されることを示した。

Local magnetic properties of the rare-earth intermetallics $R$Mn$_2$Ge$_2$ ($R$=Ce, Pr, Nd)
室温でスキルミオンバブル格子を持つと報告されている希土類金属間化合物RMn2Ge2(R=Ce, Pr, Nd)の磁性を調べた。3物質いずれも、温度上昇に伴い磁気構造がコニカル型から共線的な反強磁性へ変化する際に局所的な揺らぎが立ち上がることで特徴づけられる。スキルミオンバブル組織が報告されているこの温度領域では、他のスキルミオン物質で観測されるものと類似したダイナミクスが見られた。この転移より上の温度における乱れの度合いはCeからNdへ向かって系統的に増大する。低温では希土類イオンの秩序化が磁性に影響し、系列の各物質で異なる振る舞いが現れる。

Out-of-equilibrium spin-valley dynamics of ferromagnets in topological Chern bands
強いクーロン相互作用、非自明なバンド幾何、光学制御を兼ね備えたねじれMoTe2二層を舞台に、チャーンバンド中の強磁性体の非平衡ダイナミクスにおけるトポロジーと多体相関の役割を調べた。集光した円偏光パルスで外部磁場と逆向きの局所磁区を生成し、その後のスピン・バレー緩和を空間・時間分解の低温実験で直接撮像している。整数および分数チャーン絶縁状態の近傍では、金属強磁性体とは質的に異なる機構が支配することを示した。金属的磁区が収縮により消滅するのに対し、チャーン磁区は熱活性化によって融解し、緩和時間は桁違いに長くなる。

Origin of the superconductor-insulator transition in disordered two-dimensional films
超伝導-絶縁体転移(SIT)はアンダーソン局在と超伝導の競合から生じると理論的に予言されている。二次元膜では抵抗が消失する温度はBKT機構で決まり、弱い乱れではT_BKTはT_c0に近いが、乱れが強まるとT_BKT≪T_c0となる。この移り変わりを通じて有限温度転移がBKT的性格を保つかは未解決だった。本研究は広い乱れ強度範囲でシート抵抗と超流動剛性の両方の発展を調べ、SIT近傍でも有限温度転移がBKT型であり続けることを確立した。一方、臨界値に近づくとT_c0が有限のまま零温度剛性が急速に消失し、零温度転移は量子位相揺らぎが駆動すると結論した。

Morphology Engineering of Mixed Ionic Electronic Conductors through Aqueous Phase Separation
有機電気化学トランジスタ(OECT)の性能はイオン到達性と電子輸送の兼ね合いで決まり、チャネルを厚くすると相互コンダクタンスは上がるがイオン輸送が遅くなる利得-速度トレードオフが生じる。本研究はpH誘起の水系相分離によりPEDOT:PSS:PEI膜の内部形態を設計し、この制約を緩和した。連結した細孔網が電解質浸透と電気化学的に利用可能な体積を増やし、DMSO処理とアニールがPEDOTリッチ相の連続性と秩序を高める。結果として100 um超の厚膜でも0.05 Vの極低ゲート電圧で30 mSの相互コンダクタンスと13 msの応答を達成した。

Observation of far-from-equilibrium scaling in the transient dynamics of 2D quantum magnets
平衡から遠い多体ダイナミクスの過渡領域、特に平均場が破綻する二次元短距離相互作用系の理解は乏しい。本研究はプログラム可能なリュードベリ原子配列でハニカム、正方、カゴメ、三角格子の横磁場イジング模型を実現し、クエンチ後の時間発展を調べた。完全分極状態から出発すると、支配的な集団磁化振動の顕著な軟化と減衰率の極大が現れ、相互作用支配と磁場支配の過渡ダイナミクスの間のクロスオーバーを示す。格子形状が異なっても、配位数で重み付けした相互作用強度で規格化すると振動数と減衰率は共通曲線に収束し、頑健なスケーリング領域の存在を明らかにした。

Crossing over universal scaling laws in two-dimensional driven dissipative condensates
低次元系では揺らぎが増大して連続対称性の自発的破れが妨げられ、相関関数は長距離・長時間で減衰する。平衡二次元ボース凝縮体ではBKT普遍クラスに属する代数的減衰が典型だが、非平衡凝縮体の普遍的振る舞いはより多様で未解明が多い。本研究は半導体微小共振器中の二次元駆動散逸ポラリトン凝縮体の時空間コヒーレンスを調べ、微視的パラメータの調整によりEdwards-WilkinsonクラスとKardar-Parisi-Zhangクラスに帰属される2つのスケーリング則の間のクロスオーバーを観測した。一次相関の普遍スケーリング関数への収束と理論通りの臨界指数を得た。

Overaging with stress in polymer glasses? Faster segmental dynamics despite larger yield stress!
高分子ガラスの物理エージングが降伏応力を高め破壊挙動に影響することはよく知られる。エージング中に中程度の応力を加えると静置エージングより降伏応力が高くなり、これは応力がエージングを加速する「オーバーエージング」と解釈されてきた。本研究はPMMAガラスを応力下でエージングし、プローブ再配向法によりエージング中および後のセグメント運動を直接測定した。その結果、応力下でエージングした試料は降伏応力が高いにもかかわらず、応力解放後のセグメント運動はより速いことが判明した。降伏応力は構造緩和時間の単純な関数ではなく、既存の理論モデルの見直しが必要である。

Entwined lattice of atoms and anionic electrons in layered electride LaCl
エレクトライドは余剰電子が陰イオン性電子格子(AEL)を形成し、格子的な自由度を通じて電子構造を設計する道を与える。YClではAELが自立的な極限にありダイス格子模型で記述されるバンドを生む。本研究は角度分解光電子分光により、YClと同構造でありながらLaClではAELがLa陽イオン骨格と絡み合い、完全に再構成された電子構造が実現する質的に異なる領域を示した。強束縛模型解析と合わせ、この差異はAELとLa原子格子間の直接ホッピングチャネルの活性化に由来し、YClの二部ダイス格子網がLaClでは三部構造へ変わりチャーンバンドトポロジーも変化することを明らかにした。

Exciton Alchemy: Chern Excitons from Trivial Bands
励起子のトポロジーは通常、基となる電子バンドのトポロジーを引き継ぐ。しかし最近の理論は、励起子チャーン数が包絡波動関数のトポロジーからも寄与を受けうるため、構成電子バンドが自明でも相互作用によりトポロジカル励起子が生じうると示した。本研究はこの場合の具体的実現として、伝導帯・価電子帯がともにトポロジカルに自明でありながら反転対称性で診断されるチャーン励起子を持つ二次元励起子模型を構築した。指数関数的に局在したワニエ状態の実空間極限から出発して、創発的な励起子トポロジーの本質的要素を同定し、単純な構成レシピを定式化している。

Type-II Mirror Chern Insulator in Altermagnets
正味の磁化がゼロでも運動量依存のスピン分裂を示す交代磁性体は、時間反転対称性の破れの下で独特なトポロジカル状態を支えうる。本研究は二次元アルターマグネットにおいて、運動量的に分離した端状態を持つ鏡映対称性保護のトポロジカル結晶絶縁体を予言する。正方八角格子模型により、アルターマグネティック秩序が対称性で関係づけられたバレー分極ディラック節を生み、スピン軌道相互作用でギャップが開いて鏡映チャーン数2の絶縁体が得られる。2本の端モードが同一運動量で交差する従来型と異なり運動量的に分離するため、これを第II種鏡映チャーン絶縁体と呼び、PbSe/V2Se2O二層を候補として提案した。

DynaCrys: Crystal Generation with Dynamic Space-Group Diffusion
新規結晶材料の探索は膨大な組成・構造空間に及び、離散的な結晶対称性、元素組成、連続的な幾何を同時にモデル化する必要がある。本研究は、空間群がWyckoff占有と元素に連動して結合した記号的拡散過程で共進化する生成モデルDynaCrysを提案する。空間群の遷移は群-部分群関係に従い、事前学習された対称性コードブックが、合法性を制約した確率的デコーダと対称性制約付き幾何モデルに共通のWyckoff語彙表現を与える。2つの独立した緩和・評価エンジンを用いた大規模評価で、安定・一意・新規な結晶の対称性を意識した発見において最高性能を達成した。

Phase-Noise-Induced Heating in Optical Lattices
光格子における加熱の起源を、格子パラメータに応じた強度雑音と位相雑音それぞれの役割に分解して実験・理論の両面から調べた。強度雑音は主要な制限要因として広く認識されているが、本研究は軽い原子と深い光格子では位相雑音が支配的な加熱源となりうることを示す。実験的に測定可能なレーザー位相雑音のパワースペクトル密度から、位相雑音による加熱を予測する簡潔な理論枠組みを提示した。この予測は三角格子中のリチウム6原子で測定された加熱率を精度よく再現する。手法は他の格子形状や原子種にも容易に一般化できる。

Entanglement Mpemba Effect
エンタングルメントを高速かつ確実に生成することは量子情報処理や計測に不可欠である。散逸を用いた準備は、設計したリザーバが系を目標のもつれ状態へ頑健に導く点で魅力的だが、緩和に時間コストがかかる。本研究は、初期にエンタングルメントが小さい状態が同じ開放系ダイナミクスの下でより大きい状態を追い抜く「エンタングルメント・ムペンバ効果」を定式化した。緩和スペクトルから、エンタングルメントが非単調に発展する場合にも適用できる逆転の一般的条件を導出し、LOCC到達可能性の前順序の逆転が測度に依存しない証拠となることを示す。トラップイオンでの実験プロトコルも提案した。

-2026/8/7--
Observing the emergence of a velocity hierarchy in matter waves
強相関格子中の物質波において、位相速度・群速度・音速が分離する「速度階層」の出現を実験的に示した研究。クエンチ分光と時間分解相関測定により、超流動-モット絶縁体転移を横切る各速度を独立に決定した。転移点近傍ではほぼ縮退するが、モットギャップが開くにつれ準粒子分散が相対論的な質量を持つ形になり速度が分離する。位相コヒーレンス前線はLieb-Robinson速度より速く伝播しつつ局所性とは矛盾せず、絶縁相では相対論的な不変関係を満たすことを見出した。


Superconducting and charge-ordered phases from Dirac quantum spin liquids on the triangular lattice
三角格子のU(1)ディラックスピン液体(およびそのギャップ付きZ2・カイラル派生状態)から超伝導相・電荷秩序相が出現する一般理論を構築した。転移はスピンレスで電荷eのボゾン的チャージオン(ダブロン・ホロン)のヒッグス凝縮が駆動する。ディラックスピノンの射影対称性群がチャージオンの対称性と分散を一意に決めることを示し、低エネルギー有効理論を構成。d+id超伝導、電荷密度波、ボンド密度波、対密度波を含む豊かな相図を得た。

Theory of Measurement-Altered Criticality
1次元量子臨界状態である朝永-Luttinger液体を弱く測定監視した場合の理論を提案した。測定結果のランダム性を扱うためレプリカ・インスタントン計算を開発し、Born平均した観測量を解析。測定が relevant な場合、密度と位相の揺らぎの平均相関関数は対数補正を伴う普遍的べき則で長距離減衰し、これは測定誘起ランダムネスに固有の特徴だと論じる。相関関数モーメントのマルチフラクタル・スペクトルも特徴づけ、行列積状態計算で裏付けた。

Entangling power of neural networks
エンコーダ・デコーダ型ニューラルネットワークの「エンタングル能力」を新たに定義し、潜在空間次元Kとデコーダの複雑性クラスに依存して部分系間にどれだけエンタングルメントを生成できるかを定量化した。K次元潜在空間に作用する次数pの多項式デコーダについてこの量を厳密に計算し、控えめな資源でも指数関数的なエンタングル能力を持つことを示した。エンタングルメント理論のSchmidtランクの概念を機械学習の相関解析へ一般化する枠組みを与える。

Self-dual $S_3$ gauge theory in 2+1d: lattice model and topological phase transitions
Z2ゲージ理論の電磁自己双対性を非可換に一般化した初の構成として、S3量子ダブルD(S3)の格子模型をテンソル積ヒルベルト空間上に構築した。非可換チャージオンCとフラクソンFを交換するZ2エニオン置換対称性が格子並進で実現される。ジグザグ境界では微調整なしに四重臨界イジングCFTで記述されるギャップレス端状態が現れる。3種の摂動によるギャップ相への転移をエニオン凝縮・格子ハミルトニアン・Chern-Simons-Higgs理論の3手法で整合的に解析した。

Topological Charge-Transfer Excitons
電荷移動型励起子の実空間配置が、対称性で関係づけられたサイト外複合軌道の多様体を内在的に生み、トポロジカルな励起子バンドを支えうることを示した。電子と正孔の横方向分離により励起子は構成サイトではなく結合上に局在する。ハニカム格子では3つのボンド中心励起子軌道がカゴメ格子を形成し、Bethe-Salpeter方程式を解くと、電子・正孔バンドが自明でも時間反転対称性の破れによりトポロジカルな励起子フラットバンドが生じる。

Intra-unit-cell resolved intertwining of multi-$Q$ charge and spin textures in an itinerant skyrmion magnet
遍歴スキルミオン磁性体GdRu2Ge2の5つの磁気相(2つのナノスケール・スキルミオン結晶相を含む)を走査トンネル顕微鏡で調べた研究。Gd 4fスピンのマルチQ磁気秩序が、遍歴電子バンドを担うRu 4d軌道にも対応するマルチQ電子テクスチャを伴うことを示した。原子分解能像と数値モデリングから、最近接Gdスピンの相対配向がGd正方格子のボンド中心副格子上のRu 4d状態密度と強く相関することを見出した。


Emergent Surface Altermagnetism
共線反強磁性体やアルターマグネットの表面にアルターマグネット的スピン分極が現れる「表面アルターマグネティズム(SAM)」の概念を提唱した。バルクのスピン群を表面スピン群へ系統的に結びつける対称性の枠組みを構築し、PT対称反強磁性体で35通り、バルクAMで61通りの対称性破れ表面を同定。さらに203の共線スピン空間群がtT対称反強磁性体表面でSAMを許すことを示し、NaMnP・LiMnAs・CrSbで第一原理計算により検証した。


Strongly Enhanced Charge-Density Waves and Correlated Insulating State in Atomically Thin 1$T$-TaS$_2$
1T-TaS2の電荷密度波(CDW)転移の膜厚依存性を、温度可変ラマン分光と電気輸送測定で調べた。不整合・準整合・整合CDW相はいずれも単層極限まで存続し、薄くするほど転移温度が上昇、シート抵抗が桁違いに増大しキャリア局在長が急減する。一次転移であるCCDW-NCCDW転移のヒステリシスは単層でのみ消失する。計算から、面直方向の遮蔽(特に非局所成分)減少によるクーロン相互作用の増強がCDW増強の起源と示唆された。

Helical-to-Fan Transitions under Magnetic Fields in the Noncentrosymmetric Tetragonal Magnet EuRhGe$_3$
空間反転対称性を欠く体心正方晶磁性体EuRhGe3の磁気構造を共鳴X線回折で調べた。TN=12 K以下でq=(0,0,0.809)の非整合ヘリカル秩序を示し、隣接層間で145.8度回転する。a軸方向に磁場を加えると2次高調波2qピークが発達してソリトン格子状態へ歪み、3.8 Tでq=0.8の整合構造へロックインする。5 T以上ではヘリシティが失われスピンフロップしたxyzファン(楕円コニカル)状態、さらに高磁場で平面xyファン相へ移る。

Correlated topological-polarization surface states in the narrow-gap insulator FeSb2
狭ギャップ絶縁体FeSb2のエピタキシャル薄膜が、トポロジカル分極に由来する金属的な極性表面状態を持ち、それがバルクの強相関に支配されることを示した。非相反表面伝導はバルクFe 3d軌道占有の相関駆動再構成の開始温度以下でのみ現れ、相関系におけるバルク-エッジ対応の直接的証拠となる。さらに静電ゲーティングにより表面を量子相転移させ、強磁性あるいは交代磁性的状態へ制御できることを示した。


ASE2SPRKKR: a unified Python framework integrating the Spin-Polarized Relativistic Korringa-Kohn-Rostoker method into the Atomic Simulation Environment
全電子第一原理多重散乱コードSPR-KKRをAtomic Simulation Environment(ASE)に統合するPythonインターフェースASE2SPRKKRを開発した。ASEのAtomsオブジェクトを拡張してCPA計算用の部分占有を扱えるようにし、入力の自動生成と検証、出力解析、MPI対応で高スループット計算に対応する。Au(111)のRashba分裂表面状態、1ステップ光電子放出、交換相互作用パラメータ抽出、XMCDを含むX線吸収分光の応用例を示した。

Thermodynamic statistics of given names in USA and France
米国とフランスの公式統計を用い、100年以上にわたる人名(ファーストネーム)の出現頻度分布を解析した。富の不平等分析で使われるローレンツ曲線とパレート曲線で特徴づけると、ジニ係数は0.85〜0.95の狭い範囲で長期にわたり安定している。富の不平等と同様、名前の分布は物理系で知られるRayleigh-Jeans熱化・凝縮現象でよく記述され、エネルギーと確率規格化の保存に対応する2つの保存量から生じる。名前間の時間相関は20世紀半ばまで安定し以後大きく変化した。

An Effective String Theory Toolbox for Quantum Hall Interfaces I: Worldsheet Kinematics and Constraint Structure
外部閉じ込めポテンシャルで固定された通常の端とは異なり、自由に動く量子ホール界面では法線方向の変位が両側の非圧縮相の面積を変えるため、界面形状と電荷ダイナミクスを独立には扱えない。本論文は空間再パラメータ化不変な世界面記述でこの問題を定式化し、両側Chern-Simons応答から法線方向電荷輸送と界面運動の関係を導く。基準曲線に対する相対面積の構成により、電荷を持つ境界セクターと界面形状を結ぶ等時刻拘束条件を得た。

An Effective String Theory Toolbox for Quantum Hall Interfaces II: Majorana Fermions on Fluctuating Moore-Read Worldsheets
Moore-Read界面はカイラルMajoranaモードを担うが、その界面自体の形状が揺らぐ場合の中性モードの輸送則は固定端の理論では決まらない。本論文は自由に動く界面の非相対論的世界面上に、空間再パラメータ化不変なMajorana理論を構築する。線素の変化が普遍的な半密度輸送則を定め、曲率や速度に依存する追加結合は微視的な界面物理に支配される。Majoranaの応力テンソルが中性セクターと幾何ダイナミクスを媒介することを示した。

An Effective String Theory Toolbox for Quantum Hall Interfaces III: Open Worldsheets, Endpoint Conditions, and Branes
自由に動く量子ホール界面は物理的な端やトポロジカル境界で終端しうるが、固定端の理論ではどのような終端データが整合的かを決められない。本論文は埋め込み、物質電荷、アノマリー流、トポロジカル境界条件をまとめて扱う開いた世界面の接合枠組みを定式化する。終端点は幾何的な台と変分境界データ、凝縮可能なトポロジカルセクター、世界面フラックスを吸収する流出チャネルで指定される。孤立したカイラルMajoranaが有限次元自由度で終端できない理由を示し、量子ホール・ブレーンを定義した。

Neural Flux Attachment: From Bose Condensates to Chiral Topological Matter
フェルミオン型トランスフォーマーに、粒子対ごとに統計的渦を1つ付けるChern-Simons位相を組み合わせたニューラル波動関数ChernFormerを提案した。両因子とも交換で符号を変えるため積は厳密にボゾン的で、あらゆるボゾン学習問題を同じ精度のフェルミオン問題に写せる。十分な表現力があれば平面上の任意の規格化可能ボゾン波動関数を近似できる。Kalmeyer-Laughlin基底状態と最初の2つのカイラル端状態で高い重なりを達成し、局所渦と端の集団渦を再現した。

Quantum transport in a non-Hermitian 1D synthetic lattice: from quantum Zeno reflection to near-perfect absorption
散逸領域に入射する波束の吸収を、人工量子系で実験的に調べた研究。87Rb BECの基底状態超微細構造の各準位をサイトとし、散逸領域と非散逸領域が急峻に接する1次元非エルミート合成格子を実現した。散逸率を変えることで、弾道的伝播からほぼ完全な吸収、さらに量子ゼノ反射への移り変わりを観測。数値計算から、トンネリングと散逸が適切に釣り合うとき最適吸収が起こることを同定し、半無限モデルとの定性的一致を確認した。

Beyond Electrons: Radiative Thermal Computing and Neural Networks at the Near-Field Limit
熱交換によって畳み込み演算や再帰演算を模倣する、プログラム可能な近接場輻射熱ネットワークを提案・解析した。VO2やGSTなどの相変化材料からなる輻射熱ダイオードとトランジスタを組み合わせ、熱畳み込みニューラルネット(T-CNN)と熱再帰ニューラルネット(T-RNN)を構成する。温度依存の放射率変調で重み付き和と非線形活性化を実現し、ヒステリシスが記憶を与える。電荷キャリアや電気回路を使わず、近接場光子トンネリングのみで動作する非電子的計算パラダイムを示した。

Unconventional Scaling of Electric Hall Effect in Magnetic Weyl Semimetals
2次元磁性系に固有の現象である電気ホール効果(面直電場Ezがホール電流を生む)が、二重縮退ノード点を持つ2次元磁性ワイル半金属で複数の非従来型スケーリング則を示すことを明らかにした。絶対零度ではフェルミエネルギーに対しEF^-1のトポロジカルなスケーリングを示し、その係数は局所パラメータによらずノード点の全トポロジカル電荷のみで決まる。有限温度では σxy ∝ Ez ln(1/|Ez|) という対数補正付きスケーリングへ移行し、発散的な電場感受率を保つ。

-2026/8/6--
Magnetic-Field-Driven Dimensional Reduction in a Quantum Antiferromagnet
低次元性は通常、空間的に強い異方的相互作用から生じるが、本研究は磁場による次元削減という別の機構を示す。強磁性鎖と反強磁性鎖が交互に結合した2次元スピン1/2系では、磁場下で強磁性鎖が分極・硬化し、鎖間の横方向反強磁性揺らぎの伝播を抑制することで、低エネルギー領域に実効的な1次元性が現れる。botallackite(Cu2(OH)3Br)のモデルに対する量子モンテカルロ計算により、臨界磁場を超えると低エネルギースペクトルが磁場依存の非整合2スピノン揺らぎを持つ1次元反強磁性Heisenberg鎖のものに帰着することを示し、非弾性中性子散乱での明確な検証指針を与えた。

Entanglement entropy of fermions in a strange metal
準粒子を持たないギャップレスなフェルミオン系(ストレンジメタル)のエンタングルメントエントロピーはほとんど解明されていない。本研究は湯川型SYK模型に類する可解な大N・1次元格子模型を用い、2つのフェルミ点が空間ランダムな湯川相互作用でスカラーボソンと結合する系で、部分領域における2次のRényiエントロピーを厳密に計算した。結果は、領域内のフェルミオン・ボソン間エンタングルメントと領域間エンタングルメントの双方が本質的な役割を担うことを明らかにする。熱エントロピーからエンタングルメントエントロピーへのクロスオーバーは単一のスケーリング仮説で記述され、異なる領域サイズ・温度のデータが普遍曲線に収束する。この普遍曲線はCFTの標準形で良く記述されるが、実効中心電荷は非相互作用値より大幅に大きい。

Experimental Kuramoto Platform
位相縮約は高次元の振動子ダイナミクスと蔵本モデルなどの低次元位相モデルを結びつけるが、多くの実験系は弱結合の仮定を満たさず、理論と実験の接続は課題であった。本研究は、位相ダイナミクスが一定の仮定の下で蔵本モデルと等価となる電子的直交位相発振器に基づく実験プラットフォームを提示する。非拡散型の結合回路により、弱結合と強結合の双方でこの等価性が成立し、スケーラビリティと発振の規則性を保ちながら任意の重み付き・有向ネットワーク構造に対応できる。各種結合方式において、大域同期およびクラスター同期の相転移を蔵本モデルの予測どおり再現することを実証し、複雑ネットワークにおける同期の解析的・数値的結果を系統的に実験検証できる低コストな基盤を提供する。

First-principles predictions of carrier mobility with record accuracy using GW perturbation theory
キャリア移動度の高精度予測は次世代電子材料の探索に不可欠だが、既存の第一原理手法は電子-フォノン相互作用を密度汎関数理論レベルで近似的に扱う点で限界があった。本研究は、第一原理ボルツマン輸送方程式を解く際に、電子バンド構造と電子-フォノン結合の双方に多体GW補正を取り入れることで、Si、GaAs、GaP、ダイヤモンド、SiCといったベンチマーク半導体全体で電子移動度の平均絶対相対誤差が11%にとどまることを示した。電子-フォノン相互作用へのGW補正を無視する一般的な手法では移動度誤差が50%を超え得る。多体GW自己エネルギー効果がキャリア輸送計算で重要であること、また多体電子-フォノン相互作用が結晶固体の電荷輸送をどう支配するかを明らかにした。

Magnetic Field Reorganization of Electronic States in Moiré Bilayer Graphene
磁場は量子振動やスピン・バレー分極の制御を通じて2次元系の量子相を診断するのに使われるが、電子構造自体を再編成することもある。本研究は二層グラフェン/hBNモアレ系で、半古典的軌道ネットワークがリフシッツ転移、磁気ブレークダウン、共存する電子・ホールポケット間の散乱を伴って磁場とともに豊かに発展することを示した。1〜2 Tで量子振動周波数とホール密度が広いキャリア密度域で顕著に変化する。この発展は谷対比的で、ブレークダウン接合近傍のベリー曲率ホットスポットがK谷でブレークダウンを促進しK'谷で抑制し、高磁場では谷対称性を破るホフスタッターギャップとして現れる。高温・低磁場では電子・ホールポケット間散乱が両フェルミ面積の和に対応する抵抗振動を生む。

Electron correlation in semiconductors and insulators via symbolic regression
材料の準粒子エネルギー予測には高コストな電子自己エネルギーの数値評価が必要で、小さな単位胞を持つ秩序系に計算が制限されてきた。本研究は記号回帰を用い、GW自己エネルギーが物理的に動機付けられたKohn-Sham記述子のコンパクトな解析関数で精度良く近似できることを示す。これらの表式は秩序相での1回のGW計算から学習でき、量子・熱揺らぎ、弾性変形、アモルファス的無秩序による対称性の破れの下でも精度を保つ。これにより数千原子規模の複雑な材料に対して、半局所密度汎関数理論と同程度の計算コストでGW計算が日常的に可能となる。共有結合性半導体、イオン性絶縁体、2次元材料で精度を実証し、記号回帰が予測的・解釈可能・転移可能な多体電子構造モデルへの有効な道筋であることを確立した。

Quantized topological invariant of symmetry-projected Gibbs states
本研究は、収縮可能な1形式対称性の対称セクターに射影したギブス状態を調べる。3次元クラスター模型の補間において、この射影は対称性保護トポロジカル相と射影常磁性相を安定化させ、いずれも熱的無秩序と明確に区別される。フラックスをひねった膜不変量はこれら3つの相をそれぞれ-1、+1、0の値で識別する。これらの値は端点、自己双対、ゼロ温度、無限温度の各ライン上では厳密であり、それ以外の領域での量子化には空間シート、巻き付き線、界面の各張力が正であることが要求される。量子モンテカルロ計算により、張力の診断と有限サイズでの直接評価を通じてこの量子化が支持されることを示した。

Nano-scale visualization of magnetic vortices in metal nanoparticles
個々のナノ粒子中の磁気渦は次世代磁性デバイスや生医学応用の特性を支配する基本的なスピン構造だが、面内の循環磁化からナノメートルスケールの面外コアまで全構造を直接撮像することは困難であった。本研究は、時間反転法と傾斜スキャン平均化した微分位相コントラストSTEMを磁場フリー環境で統合し、個々のコバルトナノ粒子中の磁気渦構造の直接的・定量的な可視化を実現した。この手法は原子スケール分析と併せた磁気イメージングを可能にし、粒子形状と内部反磁場との相関を明らかにする。さらにその場磁場印加下での渦の動的発展を追跡し、面外コア極性を一義的に決定した。原子構造と磁性の相関解明およびナノ磁性材料の合理的設計を支える強力な基盤となる。


Analytical Floquet Quantum Statistics from Nonequilibrium Green's Functions
本研究は非平衡グリーン関数(NEGF)形式を用い、熱浴に結合した周期駆動量子系の定常状態量子統計に対する解析的表式を導出した。フロケ理論をNEGFに埋め込むことで、フロケ表示における遅延・先進・レッサーグリーン関数の閉じた表式を得て、定常占有数が駆動周波数の整数倍だけシフトしたフェルミ関数の重み付き和で表されるフロケ・フェルミ分布を導く。重みはミクロモーション演算子のフーリエ成分のみで決まり、フロケ側帯占有の透明な解釈を与える。解析は先行研究の対角可換ハミルトニアンを超えて拡張され、理想的な特徴なし熱浴近似を超える広いクラスの弱結合スペクトル関数でもロバストなフロケ分布が有効であることを示す。さらに直流電流に対するフロケ版ランダウアー公式を確立した。

Methods for traceable scanning magnetometry using single nitrogen vacancy centers in diamond: determining orientation, distance and localization
単結晶ダイヤモンドのナノ構造中の走査可能な単一NV中心は、漏れ磁場のナノスケール定量イメージングを可能にするが、NV中心と試料の距離やNV高対称軸の向きといった重要パラメータは正確には分からず、データ解析で自由フィッティングパラメータとして扱われることが多い。本研究では、微細加工した垂直磁化ストライプとディスクに対する走査NVイメージングを行い、外部ベクトル磁石制御を用いずにNV-試料間距離d_NVと方位角を直接決定した。d_NV = 31.5 nmを得て、方位角は3度の精度で推定した。さらに市販シリコンニードルでダイヤモンドナノ構造先端の形状を撮像して表面汚染を検出し、ニードル位置に対するNV蛍光の変化からNVの横方向位置も推定できることを示した。

Emergent Replica Clock Unifies Many-Body Localization and Thermalization
多体局在(MBL)と固有状態熱化(ETH)は従来、単一の秩序変数ではなく複数の個別診断で区別されてきた。本研究は、孤立ユニタリ・ダイナミクスのレプリカ化と折り畳みが前方-後方履歴対の複雑な統計力学を生み、閉じた巡回的赤外セクターで創発的な時計変数r_x∈Z_tが現れることを示す。その相関関数はMBLでの指数減衰、臨界点でのスケールフリー減衰、熱相での長距離ロッキングという3つの明確な漸近挙動を示す。制御されたl-bit縮約により時計作用は準局所的となり、その逆相関長はξ_pair^-1 = κ_el = ln|ρ_0/ρ_q|を満たし、履歴コヒーレンス、欠陥線張力、転送行列スペクトルを統一する。レプリカ次数は第2の離散座標を与え、同じ空間相関長を持つ局在ダイナミクスを識別できる。

In search of novel ductile superconductors
実験的に合成された超伝導材料データベース(PRX Energy 4, 033012 (2025))から選んだフォノン媒介超伝導体について、機械的性質の第一原理ハイスループット・スクリーニングを実施した。弾性定数と一般化積層欠陥エネルギーの第一原理計算を組み合わせ、超伝導候補の延性を評価するワークフローを開発した。有望な超伝導転移温度を持つ250物質を出発点に弾性テンソルを計算し、体積弾性率・剛性率、Pugh比、Pettifor比を求めた。さらに選んだ材料とすべり方向について積層欠陥エネルギーと表面エネルギーを計算し、Rice比と延性指標を評価した。その結果、HfPd2Al、TiRuSb、ZrNi2Ga(等方的T_cはそれぞれ6.80 K、12.88 K、8.23 K)が高T_cと延性を両立することを見出した。

Complex field-induced magnetic phases and anisotropic magnetotransport in off-stoichiometric CeCuBi2
強い異方性を持つ非化学量論組成CeCuBi2単結晶について、構造、角度依存磁性、磁気輸送特性を詳細に調べた。CeCuBi2は異方的な近藤反強磁性体であり、複雑な磁場誘起磁気挙動と特異な磁気輸送を示す。磁化率と比熱測定からT_N = 14 K以下で強い異方性と弱い重い電子的振る舞いを伴う反強磁性秩序が確認され、電気輸送では強い異方的抵抗率と47 K付近の幅広いこぶが近藤由来の重い電子挙動を示唆する。磁化測定は複数の磁場誘起メタ磁性相を、AC磁化率は中間磁場相での遅いスピンダイナミクスとスピングラス的挙動を示す。室温9 Tで約22%の磁気抵抗、約10.9%のバタフライ型異方性磁気抵抗も観測され、相関・異方的量子現象の探索基盤となり得る。

Accessing Chern Numbers From Bloch Eigenstates Singularities
2次元絶縁体のブロッホバンドのチャーン数を抽出する2つの手法を提案し、フォトニック格子実験に適用した。いずれの手法もブロッホ固有ベクトルの複素成分、あるいはその比を知る必要がある。ベリー曲率を近似的に再構成してブリルアンゾーン上で積分する従来のトモグラフィー手法とは異なり、提案手法は固有状態構造における位相の渦度を観測することに帰着する。これらの測定は実験ノイズに対して頑健であり、厳密に量子化された値を与える。2つのうち一方の手法は固有モードの非規格化性を利用しており、古典波動系への適用に特に適している。

Direct Evidence for Robust Bulk Band Gap Across the Charge Density Wave Transition in TiSe2
TiSe2の電荷密度波(CDW)転移の機構は数十年にわたり議論され、励起子絶縁体から格子不安定性まで諸説がある。中心的な問いはバルクバンドギャップの開口ないし増大が転移に伴うか否かである。本研究は高分解能角度分解光電子分光により、T_CDW = 200 KのCDW転移を横切るバルクバンド端の温度発展を直接追跡した。ギャップ開口型転移という予想に反し、基本バンドギャップの大きさは高温常相から160 Kまで一定であった。CDWは明瞭なバンド折り返しとスペクトル重みの再分配を引き起こすが、バンド極値自体は変化しない。これはTiSe2が温度駆動の電子ギャップ開口を起こさず、既存のバンド絶縁体の電子構造を折り返すが開かない格子対称性の破れによる転移であることを支持する。

Effective single particle picture for anharmonic lattice dynamics: a Rosetta stone for electronic and ionic response
非調和性を自己無撞着に取り込んだ平均場的枠組みでイオン格子のダイナミクスを定式化した。3次元N原子系の多体ダイナミクスは、平均原子位置の発展を記述するフォノン凝縮体と、原子の弾性定数の発展を記述するフォノンスピノルという2種類の6N次元ベクトルに写像される。フォノンスピノルはスピンのように振る舞う量子数(フォノン擬スピン)で分類される。多体リウビル方程式は密度汎関数理論の時間依存シュレーディンガー方程式と等価な2つの波動方程式に置き換わり、この対応を利用して非調和格子の応答を時間依存密度汎関数理論と一対一に対応する形で定式化する。非調和性がHartree-交換相関カーネルのフォノン類似物を通じて外場を遮蔽することを示し、格子の光学・熱伝導率の表式も与える。

The crossmetric tensor and the geometrical meaning of the imaginary numbers
2つのデカルト四元数の積は、Hamiltonの虚数i, j, kと1からなる4×4行列に基づく二次形式として書ける。本研究はこの行列を非デカルト基底へ一般化し、行列が計量テンソルとクロステンソルから構成されることを示して、これをクロス計量テンソルと呼んだ。その成分s, a, b, cは基本結晶学的四元数であり、6つの結晶族についてクロス計量テンソルを決定した。また任意の単位結晶学的四元数が、四元数のベクトル成分に沿って交わり、なす角が回転の半角となる無限個の有向平面対で幾何学的に表現できることを示した。四元数の合成は直感的なsource-target則に従う。基本四元数a, b, cは虚数の平方に関するHamilton則を、補四元数a', b', c'は二重積・三重積の則を満たす。

-2026/8/5--
Large scale neural quantum states reveal the interplay between superconductivity and quantum criticality in the Hofstadter-Hubbard model
母体絶縁体がドーピング後の超伝導をどう規定するかを、π/2磁束をもつ三角格子Hofstadter-Hubbard模型で調べた。半充填では弱結合の整数量子ホール絶縁体と中間結合のカイラルスピン液体が位相転移で隔てられる。最大432サイトのトーラス上でニューラル量子状態を用い、2e電荷ギャップが消失する連続転移であることを示した。ドープするとd+id対称性のトポロジカル超伝導が両側に現れ、対形成の秩序変数は転移をまたいでほぼ不変な一方、超流動剛性は臨界点近傍で強く増大する。超伝導のエネルギースケールは母体の種類ではなく転移への近さで決まる。

Lifshitz transitions and isospin polarization in twist-decoupled monolayer-bilayer graphene
ベルナル積層二層グラフェン(BLG)の価電子帯鞍点に伴う低エネルギーLifshitz転移は相関電子相を生むが、極低電荷乱れと垂直電場制御の両立が必要となる。本研究ではツイストにより電子的に切り離した単層グラフェン(MLG)で近接BLGにバイアスを与え、外部変位場D=0で3重縮退した量子ホール状態と、ドーピング・磁場・電場による複数の転移を観測した。価電子帯端近傍では異常振動数と大きな準粒子質量をもつ量子振動が現れ自発的対称性の破れを示す。原子スケールで近接するMLG存在下でもBLGの電子相関が保たれることを示した。


Alloy engineering of excitonic properties in TMD monolayers
単層MoS2xSe2(1-x)合金を全組成域にわたり光学分光で調べた。光学ギャップは約0.35 eVにわたり連続的に調整でき、同時にB-A励起子分裂が系統的に減少することを密度汎関数理論計算と整合して示した。温度依存測定からは、Seリッチ側からSリッチ側へ平均フォノンエネルギーが単純な換算質量スケーリングに従って増大することが分かった。偏光分解分光では円偏光度が78 KでMoSe2のほぼ0からMoS2の約15%まで単調増加し、明・暗励起子混成と谷脱分極の変化に起因すると解釈される。合金化が励起子物性制御の有効な手法であることを示した。

Vector-field control and emergent basal-plane anisotropy of magnetic textures in noncentrosymmetric (Fe$_{0.63}$Ni$_{0.3}$Pd$_{0.07}$)$_3$P
S4対称性をもつ室温磁性体(Fe0.63Ni0.3Pd0.07)3Pについて、ベクトル磁場下で共鳴小角X線散乱とプティコグラフィを行った。面内磁場によりカイラルストライプから非カイラルの扇状配置への転移を介して磁気ストライプ磁区の向きを連続回転させる決定論的制御を実証し、50 K以下では訓練した方位が準安定に固定されることを見出した。波数の大きさは室温では面内でほぼ等方的だが、冷却に伴い異方的相互作用が顕在化し、20-50 Kでは磁気結晶異方性・異方的交換・DM相互作用の複合による非自明な異方軸が温度とともに回転する。


Emergence and Detection of Surface altermagnetism in KV$_2$Se$_2$O
KV2Se2Oを対象に、創発的な表面交代磁性という新概念を固有のシグネチャを通じて実証した。バルクが反強磁性秩序をもつ場合でも(001)表面はd波アルターマグネットとなることを示し、中性子回折による反強磁性バルクと光電子分光によるd波スピン分裂という一見矛盾する実験結果を統一的に説明した。検証のための鍵となる実験的指標として、表面に局在しd波アルター磁気対称性に従う大きな非線形Edelstein応答を予言した。室温金属磁性体KV2Se2Oに限らず他のLieb格子系にも適用でき、反強磁性体表面のアルターマグネティズム検出手法を拡張する。

Strain Tuning of Orbital-Driven Giant Magnetoresistance in van der Waals ferrimagnet Mn$_3$Si$_2$Te$_6$
磁気輸送のひずみ工学は量子磁性体の創発現象を解明し、機械的にプログラム可能なスピントロニクスへの道を開く。高い結晶性と機械的柔軟性をもつファンデルワールス磁性体は特に大きく精密なひずみ印加が可能である。本研究では起源が議論中の非従来型巨大磁気抵抗を示すMn3Si2Te6において、バルク結晶の電気抵抗をその場で大ひずみ変調し、ひずみ可変なカイラル軌道電流ドメインで一貫して説明できることを示した。単一カイラルドメインの剥離フレーク素子では軌道磁気モーメントが関与する電子構造のひずみ制御を直接観測し、統一的な微視的機構を確立した。


Toward two dimensional MoS2 electrets
硫黄空孔の制御的導入により単層MoS2をエレクトレット化し、原子1層内に準永久的な静電荷を蓄える能力を付与した。スタンプ支援の電極フリー電気化学ナノリソグラフィでサブミクロン精度の空孔を作製し、欠陥密度を10^10から10^13 cm^-2までプログラム可能とした。空孔ドメインは深い電子トラップとして働き、最大1 μC/cm2の表面電荷密度と大気中で数百日の電荷保持を示す。同じ空孔分布は励起子消光領域も規定し、非輻射再結合の増強により見かけの励起子寿命を15 nsから180 psへ短縮する。世界初の二次元エレクトレットを実現した。

Surface-Selective Probe of Spin-Triplet Superconductivity in Rhombohedral Graphene
菱面体グラフェンの超伝導はスピン三重項対形成を示唆する証拠が増えているが、スピン構造の相補的プローブが求められている。本研究では菱面体5層グラフェンに片面のみWS2を近接させ、表面選択的なスピン軌道プローブとした。誘起されたIsingスピン軌道結合はWS2界面近傍の担体で最強となり、変位場で重なりを制御できる。互いに逆符号の変位場でのみ生き残る2つの頑健な超伝導ポケットSC1・SC2と、より弱いSC3を観測した。高状態密度の担体がWS2界面側に分極すると超伝導が抑制されることから、正孔的・電子的担体双方が関与する三重項超伝導を支持する。



Thermodynamic phase transition, pairing symmetry and Fermi surface topology in Ruddlesden-Popper nickelate films
Ruddlesden-Popper型ニッケル酸化物の高温超伝導機構解明のため、新型ヘテロ構造La2PrNi2O7/NdAlO3の電子構造を角度分解光電子分光で調べた。擬ギャップを伴わない超伝導状態が観測され、超伝導秩序変数の直接測定と電子比熱の微視的抽出が可能となった。超伝導ギャップはTcで開き顕著なコヒーレンスピークを示し、Tcでの電子比熱の飛びが熱力学的相転移を実証する。秩序変数はノードレスであることが明白に確立され、フェルミ面はα、β、γポケットからなる多軌道性を示す。ひずみ依存測定では全試料でγポケットが確認された。


Emergence of Chiral Helimagnetic Order in Chromium-intercalated Tantalum Disulfide CrTa$_3$S$_6$ Powders with Controlled Intercalation
カイラルなCr挿入遷移金属ダイカルコゲナイドCrxTa3S6において、磁気特性がインターカレーション量に極めて敏感に変化することを報告した。磁化曲線と小角中性子散乱の測定から、粉末試料はCr挿入量xが0.996未満ではカイラルヘリ磁性を示す一方、1.000を超えると強磁性を示すことが明らかになった。ヘリ磁性周期の出現とその温度依存的な発展について、粉末および微細加工結晶の試料寸法の観点から議論した。わずかな組成制御によりカイラル磁気秩序の有無を切り替えられることを示した。

-2026/8/4--
Conservation laws determine what physical learning remembers
抵抗ネットワークを局所測定で訓練する物理学習則(平衡伝播EP、結合学習CL、随伴結合学習AL)を保存則の観点から比較した。EPとCLはコンダクタンス質量を保存し単一出力では軌道等価だが、ALは自身の損失の2倍の速度で質量を散逸する。線形回路では保存量は機能的帰結を持たない一方、ダイオードなど非線形素子があると学習される入出力関数が初期化スケールに最大40%依存し、保存則を持つ規則はこの記憶を永続的に保持する。保存構造が初期化記憶・学習速度・汎化性能を決める設計パラメータであると論じている。

Centimeter-scale fully suspended metal and metal oxide thin films by one-step transfer-free liquid metal capillary forming
液体金属の毛管成形を用い、転写も基板も不要な一段階プロセスでセンチメートルスケールの完全懸架型金属・金属酸化物超薄膜を作製した。シャボン膜の形成と同様に、瞬時に生じる数nm厚の自然表面酸化膜が液体金属をマイクロメートル厚の金属膜としてラミネートする。界面活性剤様の酸化物二重層は、濡れ広がりの解消に伴う液体金属の排出後も生き残り、横方向寸法対厚さ比が10^7に達する懸架二次元膜を形成する。極小曲面の薄壁構造の高速試作と超高感度な音響波検出も実証した。

An asymptotically solvable model of many-body critical phases: mobility edges, scars, and inverted scars
決定論的ポテンシャル構造に由来する共鳴が相互作用系にもたらす帰結を調べるため、鏡像的な多体共鳴の階層構造を誘起する一次元最近接相互作用スピン鎖の漸近的可解模型を構築した。熱力学極限で弱固有状態熱化仮説(ETH)の成立・破れで特徴づけられる2相を導き、反対の相のように振る舞う稀な固有状態を多体スカーおよび逆スカーとして解釈した。両相は不可能と考えられてきた有限温度相転移(熱力学的多体移動度端)で分離されうる。準周期MBLに雪崩不安定性がないという通説にも異議を唱える。

Rhombohedral Graphene: A Tale of Many Crystals
菱面体積層グラフェンは、キラル超伝導から電子結晶まで多彩な相関量子相を示す。本研究では非相互作用バンド分散から導かれる簡便な指標を導入し、キャリア密度と変位電場の関数として強相関領域を同定した。ニューラルネットワーク変分モンテカルロ法とHartree-Fock理論を組み合わせて相互作用基底状態を解き、古典的対応物を持たない多様な電子結晶を明らかにした。密度の増加順に、Wigner結晶、自己ドープWigner結晶、そして電子液体中のホール格子である「反結晶」が現れる。実験的兆候や超伝導との関連も議論している。

なんやねん反結晶て


Shape of Wigner Crystals and Hole Self-Doping in a Mexican-Hat Dispersion
メキシカンハット型分散のリング状フェルミ面から強いクーロン相互作用によって生じるWigner結晶(WC)を研究した。WCのエネルギーを最小化する軌道形状を設計すると、低い基底状態エネルギーにはk=0近傍で電子が空乏化した軌道形状が必要と判明した。相関を取り込むためJastrow因子と電子・ドープ空孔間の相関因子を導入し、変分モンテカルロ計算で有効バンドパラメータを較正して実験で観測された2つの転移を再現した。最適化された軌道形状でも、電子・空孔相関を含めるとk=0近傍でホール自己ドープを伴うWCがエネルギー的に有利になりうる。

Neural Quantum States for Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy
N個の結合スピン系のNMRスペクトルを第一原理計算するには2^N次元の量子状態を時間発展させる必要があり大規模系では困難である。本研究ではニューラルネットワークで表現した変分量子状態(NQS)を代替表現としてベンチマークした。時間依存変分原理(TDVP)と射影時間依存変分モンテカルロ(p-tVMC)の2手法で2〜5スピンの実験的パラメータを持つ4分子の1Hスペクトルを計算し、TDVPは平均二乗誤差10^-3未満で全ての線位置と強度を再現した。化学シフトの相互作用表示で伝播させることで積分ステップ数を大幅削減し、14スピンのスクロースも精度良く計算できた。

Chiral Magnon Mixing by Symmetry-Breaking in Collinear Ferrimagnets
フェリ磁性体は非補償の磁気副格子を持つため、内部分子場でエネルギーが分裂した右回り・左回りマグノンを本来的に持つはずである。本研究ではRMn6Sn6(R = Tb, Er)フェリ磁性体が、基底面内の有限波数kで交差する右手系・左手系マグノンバンドを持ち、互いに逆の動的キラリティを持つモードを形成することを示した。フェリ磁性秩序の対称性(希土類の磁気異方性や印加磁場で操作可能)に応じて、バンド交差はノーダルラインのまま残るか、あるいはギャップが開く。ギャップの開いたモードはキラリティがk依存性を持つ混成キラル励起を含む。

Resonant Raman spectroscopies beyond density-functional theory
共鳴ラマン強度は電子-フォノン行列要素と電子遷移に依存し、交換相関近似に極めて敏感である。本研究では、力・固有値・波数関数を提供できる任意の電子構造手法に対して共鳴ラマンテンソルを計算できる一般的な有限差分の枠組みを導入した。グラフェンと単層MoS2にハイブリッド汎関数やmeta-GGAを適用し、これらが誘電遮蔽の過剰評価の抑制を反映して電子-フォノン結合を系統的に増強することを示した。ラマンテンソルの分解から、正確な強度には電子固有値と電子-フォノン行列要素を同一の理論レベルで整合的に扱う必要があり、ハイブリッド汎関数が実験と最も良く一致すると分かった。

Ferroelectric superconductivity in noncentrosymmetric metals
超伝導と強誘電性は両立しないという長年の予想に反し、両者を示す物質が実験的に見出されている。本研究では、イオン分極場と遍歴電子を微視的レベルで結合させる形式を用いて強誘電金属中の超伝導を調べた。強誘電秩序は一様あるいは空間変調した自発分極として現れ、その揺らぎが電子間相互作用を媒介する。分極揺らぎは従来のBCS理論における非極性フォノンと類似して引力的相互作用を生み、特定の格子配置ではクーパー対形成につながりうる。簡略化したBCS模型を用いて、超伝導が強誘電性と共存し、さらにそこから発現しうる条件を導出した。

An essay on $d_0$ in neutron-based strain measurement techniques: equilibrium-based methods for non-destructive $d_0$ estimation
回折によるひずみ測定では無応力基準格子面間隔d0の決定が中心的かつ過小評価された難題である。d0は物質定数として扱われがちだが、組成・相・集合組織・サブバルクスケールの残留応力により位置や測定方向に依存して変化する。本論文はd0問題を概観し、力の釣合いに基づく確立された手法から、境界条件の適用、さらに固有ひずみ解析による試料内の点ごとの釣合いに基づく手法まで、力学的平衡に基づく非破壊代替法の階層を構築した。積層造形Inconel立方体、古代ローマの青銅製医療用具、ペルシア起源とされる青銅短剣など実試料で例示している。

Universal scaling of the Anomalous Hall voltage of magnetic layer with the adjacent conducting layer
磁性ヘテロ構造の異常ホール電圧は磁化状態の指標として重要である。本研究は輸送実験・解析的導出・有限要素解析を組み合わせ、異常ホール電圧が非磁性導電層(通常金属など)の膜厚と抵抗率に対して普遍的かつ劇的にスケールすることを観測し、その機構を解明した。原因は磁性層と非磁性層の直列抵抗効果であり、フェルミ面の変化や非磁性層から磁性層への角運動量注入とは無関係である。また直列抵抗効果による異常ホール電圧等の過小評価は高調波ホール電圧解析の精度に影響しないことも示し、スピントロニクス現象の理解に重要な知見を与える。

Planar Interfaces for Transmission of Chiral Spin Textures
横方向の磁気界面は、材料パラメータや磁気秩序が急変する領域を横切って駆動されたときにスキルミオンが頑健であり続けるかを直接検証できる。本研究はマイクロマグネティックシミュレーションと解析的な換算座標基準を用い、強磁性体同士、反強磁性体同士、および強磁性-反強磁性の平面界面を横切るスキルミオン透過を調べた。結果は受け入れ側領域に形成される形態(コンパクトな透過、変形スキルミオン、ストライプ磁区、非晶質組織、背景への緩和)に応じて相図に整理した。同種秩序間の透過は換算DMIの解析的範囲で記述でき、混合秩序界面は方向によって異なる振る舞いを示す。

The AFLOW Library of Crystallographic Prototypes: Part 5
AFLOW結晶学プロトタイプライブラリが344件の新規エントリを追加して更新され、収録プロトタイプ数は2,127件に達した。ウェブサイトにはICSD番号とCCDC番号が追加され、ユーザーインターフェースも改善された。さらに材料科学の文脈における結晶学の基礎を扱う新しいチュートリアルも追加された。加えて、研究用ソフトウェア全般におけるAFLOWプロトタイプラベルおよび材料データの現在知られている応用例についても網羅的に解説している。

Breakdown of Universal Whirling Order in a Heisenberg Tsai-Type Approximant
非共面的な渦巻き型磁気秩序は非HeisenbergなTsai型準結晶近似結晶における普遍的磁気状態として提案されてきた。本研究ではHeisenberg系および非Heisenberg系のAu-Al-R(R = Gd, Tb)1/1近似結晶に対するX線共鳴磁気散乱測定を行い、Heisenberg極限でこの普遍性が明確に破綻することを明らかにした。非HeisenbergのAu-Al-Tbは既知の渦巻き構造でよく記述される一方、Heisenberg的なAu-Al-Gdは普遍的渦巻き秩序模型と相容れない方位角依存性を示す。ほぼ同一の結晶構造にもかかわらず、同じ伝搬ベクトルを持つ異なる反強磁性基底状態が安定化し、スピン異方性の必要性を示している。

Correlated Insulator Moiré Bolometer
マジック角ツイスト二層グラフェンをモアレバンドのハーフフィリングに調整すると、光照射で絶縁体が金属に変わるという例外的な現象が生じる。平坦バンド幅に匹敵するエネルギーを持つ長波長光子の弱いビームが、熱容量の小さい電子系を選択的に加熱して相関ギャップを抑制する。これは持続的な光キャリアではなく、多体相関ギャップが弱い電子加熱に極めて敏感であることに起因する巨大な抵抗変化を生む。得られる光子駆動の絶縁体-金属転移は、吸収電力1 nWあたりミリボルトを超える電圧応答度を持つ広帯域・低雑音の光応答を示し、数テスラの磁場にも頑健である。


Machine Learning Compatible CALPHAD-type Optimization from Phase Equilibria by Auto-differentiation
相境界と相転移を正確に決定するには、実験的に観測された相平衡に基づき熱力学模型を最適化する必要があるが、既存手法は損失関数の微分可能な計算を要する機械学習ワークフローと非互換なことが多い。本研究では熱力学ポテンシャルに基づく相平衡損失関数を導出し、PyTorchの自動微分による勾配ベース最適化を可能にした。CALPHAD枠組みの熱力学模型を用い、100超のパラメータを持つ三元系を含む様々な系で効率的な最適化を実証した。損失関数は模型の詳細に依存しないため、機械学習熱力学模型一般にも適用でき、目標相平衡からの原子間ポテンシャルのトップダウン最適化も示した。

Spin- and Angle-resolved Photoelectron Spectroscopy Study of the Quantum Spin Hall Insulator Bismuthene and its Precursor Phase
グラフェン/SiC界面に閉じ込められたビスマス層は、トポロジカルに自明な前駆相と量子スピンホール絶縁体ビスマセンとの間で可逆的に切り替えられることが最近示された。本研究では両構造に対する詳細なスピン・角度分解光電子分光を行い、低エネルギー電子状態のスピン構造を解明した。ビスマスの強い固有スピン軌道相互作用と界面の非対称な閉じ込めポテンシャルにより、両構造の価電子帯はRashba分裂している。逆格子空間の複数点における価電子帯のスピン偏極を調べることで、両相について期待されるスピン運動量ロッキングとKramers二重項を実証した。


How NOT to build control-target gates in semiconductor quantum dots and beyond
普遍量子計算には単一量子ビット制御に加えて少なくとも1つのエンタングリング二量子ビットゲートが必要で、CNOTやCROTがその代表例である。本研究は対称性に基づく簡潔な導出により、現行の半導体量子ドット素子構造ではHeisenberg交換相互作用やクーロン斥力などスピン交換に対して不変な相互作用を介したCNOTおよび他の非対称な制御-標的ゲートの効率的実装が妨げられることを示した。この一般原理に導かれ、スピン交換対称性を破ることでCNOTの効率的実装を可能にする不均質二重量子ドット素子の設計指針を提案し、同位体純化シリコンで単一パルス100 nsのフォールトトレラントCNOTを予測した。

Spin Quantum Hall Effect: the Critical Exponents
スピン量子ホール効果(SQHE)は、厳密な臨界指数が知られている数少ないAnderson局在転移の例であり、乱れたトポロジカル系の理論や共形場理論の重要な検証の場となっている。対応するネットワーク模型はChalker-Coddington模型のランダムU(1)位相をランダムSU(2)行列に置き換えて得られ、Altland-Zirnbauer分類の対称性クラスCに属し、時間反転対称性が破れた二次元乱れ超伝導体における準粒子輸送を記述すると考えられている。本研究では最近開発されたランダムネットワークに対するS行列アプローチを用い、局在長指数νと境界臨界指数μを高精度で数値計算した。

Non-relativistic spin splitting in a triangular metal-excess magnet Fe$_{1+δ}$Sb
非相対論的スピン分裂(NRSS)反強磁性体は補償磁性と運動量依存スピン分裂を併せ持つ重要な物質群である。本研究はNiAs型Fe1+δSb系列(δ = 0.17-0.30)を中性子回折、二体分布関数、磁化測定、密度汎関数理論で調べた。中性子回折から伝搬ベクトルk=(1/3,1/3,0)を持つ120度共面補償磁気秩序が確認され、格子間Feの増加が秩序磁気モーメントを抑制し局所対称性を低下させることが分かった。DFTは面直スピン偏極が支配的な奇パリティのf波的対称性を持つ運動量依存スピン分裂を予測し、非共線型NRSS反強磁性体の新プラットフォームであることを示した。

Evidence for superconductivity at 190 K in a pressure-overdoped cuprate
銅酸化物超伝導体の臨界温度Tcは圧力で制御でき、圧縮によりホールドーピングを化学ドーピングから切り離して常圧では到達できない過剰ドープ領域を実現できる。本研究では複数の手法を用い、Bi-2223(Pb0.4Bi1.6Sr2Ca2Cu3O10+δ)における60 GPaまでのマイスナー効果の発現をさまざまな圧縮環境で調べた。準静水圧条件下の試料は25 GPa以下でTcの特徴的な非単調圧力依存性を示し、既報と一致した。さらに圧力を上げるとTcは連続的に上昇し、60 GPaで190 Kに達した。これは高ホールドープ領域における第二の超伝導領域の提案で理解しうる。

衝撃的論文(゚∀゚)キタコレ!!


Predictive Formulas for Scattering Mean Free Path for General Disordered Dielectric Media Beyond the Long-Wavelength Regime
d=1,2,3次元の統計的に一様な二相誘電体媒質に対する散乱平均自由行程ℓsの予測式を導出した。同一の円形・球形散乱体に限定されるMie理論に基づく推定と異なり、本式は任意形状・多分散の粒子系媒質および非粒子系媒質にも適用でき、微細構造はスペクトル密度を通じて反映される。有効動的誘電率に対する厳密なstrong-contrast展開に基づいている。非ハイパーユニフォームおよびハイパーユニフォームの5模型に適用し、FDTDシミュレーションで検証した。ハイパーユニフォーム媒質ではℓs〜k1^-(d+1+α)を予測し、ステルス型は有限波数区間で透明となる。

Magnetic circular dichroism of THz modes and selection rules of Raman-active optical phonons in the polar altermagnet candidate \ce{Mn2Mo3O8}
共線型交代磁性体候補Mn2Mo3O8の磁気励起と格子振動励起を、温度依存ラマン散乱と磁気光学THz時間領域透過分光で調べた。第一原理計算との比較により、従来のラマン研究では捉えられていなかったA1型・E2型の最低次モードを含む全光学フォノンを同定した。常磁性相と磁気秩序相の選択則を比較し、擬角運動量保存の観点からラマン選択則を解析した。Mn2+特有の弱いスピン軌道結合のため、期待されたE2フォノンの円偏光モードへの分裂は観測されなかった。一方、磁気秩序相で出現する広帯域THz励起に強い磁気円二色性を観測し、二マグノン励起起源の可能性を示した。

Time-dependent Berry curvature and quantum metric of Floquet-Bloch states
Berry曲率と量子計量で特徴づけられるブロッホバンドの量子幾何を、周期駆動(Floquet)系へ拡張し、Floquet-Bloch基底で直接定義される時間依存Berry曲率と量子計量を導入した。これら幾何量のフーリエ成分と光学伝導度を関係づける光学総和則を導き、理想的なFloquetバンド占有下では高調波周波数での一次DCホール応答と縦応答が厳密に消えることを示した。さらに時間と運動量の微分を含む混合Berry曲率を導入し、断熱発展を要さず駆動周期ごとに自然に生じる非断熱量子化電荷ポンプ機構を見出した。包括的な対称性解析と数値計算により解析予測を確認している。

Anisotropic transport of Josephson vortices in atomic-layer superconductors on vicinal surfaces
原子ステップは表面二次元超伝導体に強い影響を与え、磁場下でステップに形成されるジョセフソン渦が低温輸送現象を支配しうるが実験的検証は乏しかった。本研究では微傾斜面上の原子層超伝導体Si(111)-(√7×√3)-Inの渦輸送特性を報告し、走査トンネル顕微鏡でジョセフソン渦を直接観測した。面直磁場下で降温に伴う急激な抵抗低下が原子ステップ方向に対して顕著な異方性を示し、中間磁場でシート抵抗の異方性は10^3のオーダーに達する。高温低磁場域では異方的な活性化エネルギーを伴う熱励起クリープ運動を示し、最低温では量子トンネルが渦運動を支配する。

Bulk Ising superconductivity in an intercalated TaSe2 bilayer structure
バルク系におけるIsing型スピン軌道結合は、簡便にスピン軌道環境を構築し特異な量子現象を可能にするとして注目されている。本研究では非中心対称構造を持つインターカレート2Hb-TaSe2二層を合成し、多面的解析からバルクIsing超伝導の出現を示す複数の証拠を提示した。抵抗測定は異方的な超伝導挙動を示し、面内上部臨界磁場はPauli限界を大きく超える。バンド計算はバンド分裂と面直スピン偏極を示す。さらに膜厚依存の上部臨界磁場/Pauli限界比と超伝導ダイオード効果の測定も、Ising超伝導性を支持しつつ膜厚とともに変化するバルクIsing超伝導の特徴を明らかにした。

EBSD and Subtle Crystallographic Differences - A Study of Resolving Interlayer Spacings in Nb-Ni and Nb-Co mu-phases
規則型金属間化合物では、格子サイト占有率や層間距離のわずかな違いが臨界分解せん断応力を大きく変える。従来これらはHR-TEMやXRDで調べられてきたが、局所的詳細と統計的有意性のどちらかしか得られなかった。電子後方散乱回折(EBSD)は広い試料領域にわたる高空間分解能を提供し、両者を両立できる可能性がある。本研究ではEBSDがμ相金属間化合物の層間距離という微妙な結晶学的特徴を分解できることを示した。XRDによる格子定数情報に基づくテンプレートライブラリの大規模動力学シミュレーションとパターンマッチングを組み合わせ、Nb-CoおよびNb-Ni μ相の層間距離変化をXRD・HR-TEMと良好に一致して予測した。

$d$-spacing distributions as a probe of nematoelastic response in iron-based superconductors
鉄系超伝導体の電子ネマティシティは斜方晶ひずみと双線形に結合するため、ネマティック相関が格子応答に現れる。本研究は中性子ラーモア回折を用い、電子ドープBa(Fe1-xCox)2As2、ホールドープBa0.83K0.17Fe2As2、FeSe、Fe1.07Teにおける相対d間隔分布の温度依存性を測定した。一軸応力を意図的に加えないBa(Fe1-xCox)2As2では、正方晶相で冷却に伴い面内分布幅が増大し、Curie-Weiss的な形で現象論的に記述できる。得られたスケールT*はCoドープとともに減少し、弾性抵抗から推定されるネマティック相図と同様に発展する。ネマトエラスティック結合の平均場模型で説明される。


Why Ammoniated Lithium Borohydrides Liquefy and Resolidify?
アンモニア吸収によりLiBH4·xNH3は「固体-液体-固体」の再帰的転移を示す。x=1は明確な固体アンモニア化物、x≈2付近では液体的、x=3では再び剛直な非液体状態に戻るが、その微視的起源は長年の謎だった。構造予測と第一原理分子動力学から、NH3がLi配位圏のBH4-を段階的に置換することが判明した。液体的状態は最高のNH3量ではなくx≈2付近で現れ、そこではLi-NとLi-B配位様式が強く混合し配位の記憶が最も弱く配位ランドスケープが最も広い。さらなるアンモニア化はLi-N優位の配位を生み剛直状態を回復する。圧力-組成等温線やNMR、ラマン測定がこの描像を支持する。

Electron-like high-temperature superconductivity induced by compressive strain in La2PrNi2O7 thin films
二層ニッケル酸化物における圧縮ひずみ下の高温超伝導は高静水圧の効果を模倣すると解釈されてきた。本研究は圧縮(-2.14%)から引張(+0.91%)まで連続的なひずみ範囲を調べ、オゾン支援原子層エピタキシーによりNdAlO3基板上のas-grown La2PrNi2O7膜で高温超伝導を実現した。最大圧縮下でTc onset 60 K、33 Kでゼロ抵抗、20 Kで反磁性応答を示し、準二次元的超伝導を確認した。加圧結晶と異なり、超伝導窓は面直パラメータcで大きく異なる一方、面内パラメータは一致する。またホール測定から最適超伝導膜は本質的に電子的で、加圧バルク結晶のホール的性質と対照的である。


Quantum geometry and RKKY in flat bands
平坦伝導バンドは群速度を消失させ、分散に依拠する従来のRKKY相互作用の描像に疑問を投げかける。本研究は、平坦バンド極限のRKKY相互作用が群速度の消失によって消えるのではなく、ブロッホ状態の量子幾何によって媒介されることを示した。微視的なRKKY導出から出発し、ブリルアンゾーン平均した量子計量が静的帯磁率の長波長構造を支配し、磁気相関長とスピン剛性を決定することを実証した。Wannier関数の有限の空間的広がりが実効的な長距離結合チャネルを与える。さらに有限・低次元系では量子計量が秩序温度を支配し、Mermin-Wagner定理の制約を実効的に回避できる原理を確立した。

Layer-Hybridized Wigner Crystals in MoSe2/WS2 Moiré Superlattice
タイプII型バンド整列を持つ遷移金属ダイカルコゲナイドのモアレヘテロ二層は、分数充填で電荷秩序が生じる層偏極一般化Wigner結晶の舞台となる。有限の層間バンドオフセットがあると面直電場で層分解モアレバンドを共鳴させ、層間混成を制御できる。混成Mott絶縁体は既報だが、分数電荷秩序状態が混成下で生き残るかは未解明だった。本研究はH積層MoSe2/WS2をタイプI-タイプII転移を通じて駆動し、層混成Mott絶縁体と一般化Wigner結晶を実現した。1電子未満の充填ではトンネリングが電子を非局在化させるが、1電子超ではクーロン斥力が勝り層分離占有が電荷秩序を強める。

LieStoNet: Learning Lie Symmetries from Spatiotemporal Data for Stochastic Dynamical Systems
対称性は機械学習と物理学の中核だが、確率力学系では関連する連続対称性が既知であることは稀で、SDEの対称性発見はほぼ未開拓だった。本研究はLieStoNetを導入し、対称群やテンプレート、正準座標を事前指定せずに時空間軌道から直接SDEのLie点対称性を発見するエンドツーエンドの枠組みを提案する。GaetaとQuinteroのSDE Lie対称性理論に基づき、増分からドリフトと拡散のニューラル代理模型を学習し、SDE決定方程式を課しつつLie括弧の閉性やLie代数公理、独立基底を正則化して射影可能な生成子を学習する。解析的対称性が既知の複数のSDEで正しい対称性代数を回復した。

Universal Scaling of the Magnetocaloric Effect in 2D Ising Monolayers and Bilayer
正方・ハニカム・三角格子の単層および二層構成における二次元強磁性Ising模型の磁気熱量効果(MCE)をモンテカルロ法で調べた。Binderキュムラント解析から臨界温度Tcを決定し、Tcは配位数とともに増加する一方、磁気エントロピー変化-ΔSMは配位数とともに減少しハニカム格子で最大となることを見出した。ピーク値で規格化し適切に温度スケールすると、-ΔSMと磁場指数nはいずれも異なる磁場および6種の格子構造すべてに対して普遍的なマスターカーブに収束する。断熱温度変化は配位数とともに増加し、相対冷却能力と冷却容量はほぼ不変であるなど、磁気冷媒設計の指針を与える。

Dual-Mode Exciton Coupling in Epitaxially Registered Organic-Inorganic 2D Heterocrystals
分子と半導体からなる二次元ヘテロ結晶は界面励起子研究の理想的な舞台だが、原子的に急峻な界面でのエネルギー・電荷の流れは不明確だった。本研究はPTCDA-MoS2を典型例として調べ、構成結晶間に二様式の励起子結合があることを明らかにした。物理気相集積で単層分解能のPTCDA分子結晶を単層MoS2上に成長させ、電子回折で積層角を含む結晶学的詳細を決定した。ヘテロ構造形成でPTCDAの発光は有機から無機へのホール移動により完全に消光する一方、MoS2の発光は顕著に増大した。基底状態電荷移動と共鳴エネルギー移動という2機構が協働することを統一的に示した。

Gap distributions between successive personal bests in cricket: Data and Models
連続する自己ベスト記録は選手のキャリアにおける進歩の自然な尺度である。古典的記録理論は独立同分布列に対して普遍的なギャップ分布P(g)〜1/gを予測するが、実際の競技キャリアは学習・加齢・能力変化・外的影響に左右される。本研究はクリケットにおいて、自己ベスト更新間のイニング数として定義した記録間ギャップの統計を調べた。ESPN Cricinfoから得た主要選手のキャリア記録から、経験分布は指数0.799〜0.843の切断べき乗則でよく記述されると分かった。イニングの時間順序を破壊すると指数は約0.939〜0.979へ有意に増大し、キャリアの時間的構成が記録発生に重要であることを示す。

Microscopic magnetic phase evolution in the Weyl semimetal Mn$_3$Sn revealed by $μ^+$SR
反強磁性Weyl半金属Mn3Sn(組成Mn2.99Sn)についてミュオンスピン緩和(μ+SR)とバルク磁化の包括的研究を行った。整合的な逆三角反強磁性相、不整合ヘリカル反強磁性相、低温スピングラス様状態の転移温度をそれぞれTN=418 K、Tt≈275 K、Tf=21 Kと決定した。Tf以下では静的スピングラス状態の証拠は見られず、代わりに強磁性成分の増大とスピン揺らぎの局所的減速が現れ、両者が分離しうることを示唆する。不整合ヘリカル相ではゼロ磁場スペクトルが非対称な内部磁場分布を示し、磁気構造が非調和性で大きく変形していることが分かった。

Resonantly-enhanced Raman response in graphene-capped bismuthene on SiC
原子単層に基づく二次元量子スピンホール絶縁体は無散逸電子デバイスへの有望な道筋だが、環境安定性が実用を制限する。グラフェンによる被覆は酸化・劣化防止に有効だが、被覆の成否確認は超高真空手法に依存し工程を大きく遅らせていた。本研究はSiC上のBiハニカム単層であるグラフェン被覆ビスマセンについて、大気中で迅速・非破壊・空間分解可能なラマン評価法を提示する。約122 cm-1の顕著なピークを密度汎関数摂動論との比較からビスマセンのE2gフォノンと同定した。励起エネルギーを励起子遷移に近づけるとラマン応答が強く増強され、高次フォノンや界面モードが現れる。

Extracting higher-order nonlinearities in nanomechanical resonators using the backbone relation
ナノ機械共振器は高感度・高精度で非線形ダイナミクスを研究できる有力なプラットフォームである。本研究は高Qナノ機械ストリング共振器の非線形応答をDuffing領域およびそれを超える範囲で調べ、保存系非線形性を高精度に抽出する頑健な枠組みを提案した。手法はリングダウン測定から得られるバックボーン曲線に基づき、小さな周波数揺らぎに本質的に強く、対称性を破る非線形性と破らない非線形性の双方を明示的に扱える。ナノストリング共振器に対しリングダウン測定と周波数応答測定を相補的に実施し、確立された周波数応答法とバックボーン法を比較して精度と優位性を確認した。

Exciton-induced magnons carrying orbital angular momentum in CrI3
マグノンは磁性体中でスピン角運動量を保持・輸送する集団スピン励起であり、原子核まわりの電子運動と同様に軌道角運動量も担いうると提案されてきた。本研究は強磁性絶縁体CrI3において原子的励起子から放出されるマグノン波束の実空間トポロジーを調べ、そのような波束に軌道角運動量が存在することを実証した。マグノンの軌道角運動量はスピン角運動量とほぼ等しく、後者を打ち消すことが明らかになった。これは未解明の内部角運動量バランスの存在を示し、格子との角運動量交換なしに磁化を消失させうることを実証している。

Resolving High-Energy States of Interlayer Excitons in MoSe$_2$/WSe$_2$ Heterostructures
ファンデルワールスヘテロ構造における層間励起子(IX)の高エネルギー状態は、多体相互作用や非線形光学現象の理解に重要でありながらほとんど未解明だった。本研究では光ルミネッセンス励起(PLE)分光を用い、MoSe2/WSe2ヘテロ構造における励起IX状態のRydberg的系列を分解した。層内励起子エネルギー以下に複数のPLE共鳴を観測し、これらをIXの2s、3s、4s的状態に帰属した。これらの共鳴はツイスト角の異なるヘテロ構造で一貫して観測され、高エネルギー状態のスペクトルがツイスト角の影響をほとんど受けないことを示す。遮蔽クーロン相互作用を含むWannier励起子計算が実験傾向を再現した。

Enhanced and robust superconductivity in La0.8Sr0.2NiO2 membranes compressed up to 210 GPa
無限層ニッケル酸化物薄膜の超伝導は非従来型酸化物超伝導体の新たなフロンティアを開いたが、基板の存在が超高圧下の研究を妨げていた。最近この問題は自立Nd0.85Sr0.15NiO2メンブレンの研究で回避され、91 GPaまで飽和の兆候なくTcが上昇し続けることが示された。本研究では自立La0.8Sr0.2NiO2メンブレンの超伝導が210 GPaまでの超高圧下で持続することを報告する。超伝導転移開始温度は連続的なドーム状の変化を示し、常圧の16 Kから146 GPaで74.5 Kのピークに達し、その後210 GPaで57.4 Kまで緩やかに低下する。この頑健性は高Tc酸化物で前例がない。


Charge Tunable Optical Nonlinearity of Moiré Exciton-Polaritons
遷移金属ダイカルコゲナイドは励起子と電子に基づく強い光-物質相互作用研究の多目的な舞台であり、モアレ構造のツイスト工学はナノスケールの励起子ランドスケープを介してポラリトン非線形性の制御を可能にする。本研究では電荷ドーピングによる位相空間制限を通じて、モアレ励起子ポラリトンの光学飽和に基づく非線形性をその場で制御することを実証した。分光的に調整可能な開放型共振器に埋め込んだゲート制御MoTe2-MoSe2ヘテロ二層で強い励起子-光子結合を確立し、小さなゲート電圧で必要ポラリトン密度を一桁下げられることを示した。Pauliブロッキングの枠組みで微視的に説明される。

Front Selection Is Not Determined by Renormalization-Group Stability
Fisher-Kolmogorov-Petrovsky-Piskunov(FKPP)方程式は、フロント伝播と漸近状態選択の典型例を提供する。本研究では統一的なくりこみ群(RG)の枠組みを用い、その進行波解が連続的なRG固定点の族をなし、v≧2の全てのフロントがRG安定であることを示した。しかしながら、漸近的に選択されるフロントはRG安定性によっては決まらない。したがってFKPP方程式は、RG固定点の安定性と漸近状態選択とが別個の概念であることを示す明示的な例を与えている。

Quantum resetting with memory
各リセット事象で系を全履歴から一様に選ばれた時刻に訪れた状態へ戻す、一様記憶を持つ量子確率的リセット法を導入した。得られる力学は非ユニタリ・非マルコフ的で、古典的な優先的再配置模型の直接的な量子一般化である。エネルギー固有基底で任意の時間非依存ハミルトニアンに対する密度行列要素の厳密な時間発展を導き、ハミルトニアンはBohr振動数を通じてのみ寄与することを示した。離散スペクトルを持つ系では対角要素は不変で非対角要素は連続的に変化する指数で代数的に減衰し、連続スペクトル系では定常性が失われlog(rt)/rの超低速スケールで広がる。

Long and short time linear response of metals: a geometric approach
束縛電子の双極子揺らぎを捉える時間依存量子幾何テンソルは、絶縁体・超伝導体・平坦バンドの電子物性の理解に不可欠だが、バンド内過程が支配する金属の低エネルギー記述では副次的とみなされがちである。本研究はこの見方を再検討し、フェルミ面近傍の波動関数の量子幾何が重要な役割を果たす状況を明らかにした。金属に対する時間依存量子幾何テンソルを計算してその発散を説明し、DiracおよびWeyl半金属の特異な幾何テンソルと対比した。Drude重みと全スペクトル重みの比D/S1を束縛電荷対遍歴電荷の格子スケールのプローブとして同定し、カゴメ金属で定量化した。

Equilibrium gigahertz acoustics reveals long-range confinement in liquids
ナノメートル間隙に閉じ込められた液体の力学的性質がバルクとどう異なるかの理解は、生物物理・潤滑・触媒・電気化学・表面科学の中心課題である。しかし従来手法の多くは破壊的・侵襲的な接触型で低周波域の流動測定に留まっていた。本研究では超高速レーザー超音波に基づく非侵襲・全光学的手法により、平衡状態の閉じ込め液体をギガヘルツ帯で測定する。サブナノメートル実効サンプリングで厚さを段階変化させ、時間領域Brillouin散乱信号の位相と振幅を計測して厚さ依存の音速と減衰を抽出した。グリセロール、液晶8CB、イオン液体で予想外に長距離の閉じ込め効果を明らかにした。

Synthesis and structural validation of close-to-stoichiometric NiTe$_2$ single crystals
化学気相輸送法による化学量論的NiTe2単結晶の合成と、その精密な構造評価を報告する。粉末X線回折と単結晶X線回折を組み合わせた解析により、格子定数と構造の詳細を決定した。高分解能単結晶X線回折からは格子間ニッケルの存在を示す証拠は見出されず、ほぼ化学量論的な組成であることが確認された。本研究は化学量論的NiTe2の結晶構造に対する信頼できるベンチマークを確立し、今後その物性を研究するうえでの参照基準を提供するものである。

Optical switching of magnetic order in few-layer CrSBr
光による磁性の操作は情報記憶素子の基礎理解と技術発展の双方に重要である。層状反強磁性体CrSBrは二次元ファンデルワールス磁性体の一種で、磁気励起子を介した磁性の光学的制御という独自の道を提供し、スピン配列の光学的読み出しと強い吸収チャネルを可能にする。本研究では励起子吸収と発光を用い、二層および三層CrSBrにおける磁気秩序の光スイッチングを実証した。臨界近傍の外部磁場下で数マイクロワットという低出力の連続波レーザーにより、広がった横方向磁区における局所的および遠隔的な磁気配置の切り替えを実現し、ゼロ磁場配置の決定論的準備にも応用した。

Cryogenic focused-ion-beam microstructuring enabling quantitative $c$-axis transport measurements in Tl$_2$Ba$_2$CuO$_{6+δ}$
相関量子物質の絶対輸送測定は乱れ・不均一性・幾何形状の不確かさ・結晶の小ささに制約される。集束イオンビーム(FIB)は精密な形状の輸送素子作製を可能にするが、銅酸化物ではイオンビーム損傷が障害だった。本研究では清浄な過剰ドープ銅酸化物Tl2201を対象に、従来のFIB加工が熱的な酸素損失を引き起こす一方、極低温FIB加工がこの劣化を大幅に抑制し結晶構造を原子スケールまで保持することを示した。作製素子は面内抵抗率とホールキャリア密度を再スケールなしに定量再現し、c軸抵抗率は従来報告の約3倍となり、輸送と量子振動の長年の不一致を解消した。

Second-harmonic generation in twisted double bilayer graphene: Double-resonant enhancement from moiré flat bands
AB-AB積層およびAB-BA積層のツイスト二重二層グラフェン(TDBG)における第二高調波発生(SHG)を、有効連続体ハミルトニアンに基づく摂動論で理論的に調べた。ツイスト角、垂直バイアス電圧、フェルミエネルギー、積層構成の関数としてSHG応答を系統的に解析した。小さなツイスト角ではモアレ平坦バンドの出現と結合状態密度の増加によりSHG信号が強く増強される。さらに帯域幅の減少により、ωと2ωの両方の光学遷移がモアレブリルアンゾーンの広い領域で同時に満たされる二重共鳴過程が顕著となり、SHG応答が大幅に増幅される。両積層構成は高バイアスでπの位相差を示す。

Floquet spin-group framework and its application to light-tailored spin splitting in collinear magnets
交代磁性は運動量依存スピン分裂と正味磁化ゼロを併せ持ちスピントロニクスの新機会を開く。直線・円偏光や多色光による周期駆動でスピン分裂を制御でき、平衡には存在しない分裂パターンも生成できることが示されてきたが、光の動的対称性とスピン分裂バンドの対称性を結ぶ統一原理が欠けていた。本研究は結晶のスピン群と光の動的群を組み合わせ、スピン軌道結合が無視できる周期駆動共線磁性体に対する統一的なFloquetスピン群の枠組みを確立した。これによりスピン分裂の許されるパリティ・運動量依存性・ノード構造が体系的に決まり、三次元系でh波やk波の高次分裂も見出した。


Magnetically tunable symmetry-enforced nodal lines producing huge anomalous Hall conductivity in altermagnetic $α$-MnTe
交代磁性体α-MnTeはスピン・軌道偏極に由来する弱強磁性とともに室温まで巨大な異常ホール伝導度(AHC)を示す。本研究は、鏡映対称性とグライド対称性で保護されたkz=0およびkz=π/cに位置する2組の対称性起因ノーダルラインをMn由来の価電子帯に同定し、大きなAHCの起源を解明した。ノーダルラインはエネルギー依存性を持ち、Néelベクトルの存在により近似的なC6対称性が厳密なC2対称性に低下する。最高価電子帯はメキシカンハット型、次の帯は反転メキシカンハット型分散を示す。わずかなスピンキャンティングもノーダルラインとAHCを大きく変え、磁気的に可変であることを示した。

Screening phonon-mediated superconductors from static orbital Hamiltonians
第一原理による超伝導体探索は電子-フォノン結合(EPC)計算の高コストに強く制約される。本研究では、明示的なフォノン摂動計算を行わずに静的な軌道基底ハミルトニアンから直接強EPC物質を同定する、低コストかつ物理的に見通しの良い枠組みを構築した。代表的超伝導体に対する密度汎関数摂動論(DFPT)による検証から、大幅に低い計算コストで半定量的にEPCのスケールを捉えられることを示した。MattKeyBondデータベースの36,000超の化合物に適用し、DFPT検証後にTc > 10 Kの動的に安定な超伝導候補34種を同定し、高Tcに至る2つの異なる経路を明らかにした。

Composite quantum geometry of superconductors
超伝導と常伝導状態の量子幾何の相互作用は超流動重みを中心に研究されてきた。本研究ではBogoliubov-de Gennes(BdG)ハミルトニアンが定める超伝導状態自体の量子幾何に着目した。超伝導フィットネス、対形成の軌道一様性、常伝導状態のスピン反転項の不在という3つの一般条件の下で、BdG量子幾何が常伝導状態の量子幾何と対形成量子幾何の和に厳密に分離し、単純な複合構造を示すことを明らかにした。この分離は非ユニタリなスピン三重項を含む全てのスピン一重項・三重項対形成で成立し、解析的表式も与えた。トポロジカルに自明な系や平坦バンド超伝導体にも有限の量子計量が生じうる。

Real-time dynamics of the two-step charge-density-wave transition in bulk 1T-TaS$_2$
バルク1T-TaS2の電荷密度波(CDW)はStar-of-David(SoD)クラスターが√13×√13超格子を敷き詰めて構成され、抵抗率が桁で変化する2段階の過程で融解する。この2段階がSoD振幅の崩壊によるのかSoD格子の再配列によるのかは、第一原理分子動力学の及ばない時空間スケールのため未解決だった。本研究では第一原理データで訓練した機械学習力場を用い、1404原子の超格子を5 nsにわたり追跡した。200 K以上ではSoDクラスターが一時的に溶解し中心をずらして再形成する変形-形成過程で協調的に並進し、350 K付近で初めてSoD歪み自体が崩壊することが分かった。

Revealing Intrinsic Anisotropy of Collective Magnetic Excitations in Twinned Crystals of a Kitaev-Heisenberg Quantum Magnet
競合相互作用を持つ量子磁性体では、本質的なスピンダイナミクスを外因的な乱れの効果から切り分けることが不可欠である。本研究は磁気赤外分光と磁区分解マイクロラマン分光を高磁場下で組み合わせる多モード光学手法を導入し、Kitaev-Heisenberg量子磁性体Na3Co2SbO6の双晶結晶における本質的な磁気励起スペクトルを再構成した。遠赤外分光は磁場可変な複数の磁気励起を示すが、双晶磁区に由来する複製構造で本質的応答が覆い隠される。両分光の相関から単一磁区のマグノン応答を抽出し、面内g因子の異方性をはるかに超える顕著な二回対称のマグノン異方性を見出した。

Magnetic Skyrmion Interacting with Optical Skyrmion
磁気スキルミオン(MSk)と光スキルミオン(OSk)はそれぞれ物質と光におけるトポロジーを体現する。本研究では単一MSkとOSkビームの相互作用を調べ、回転、スキッピング、トロコイド運動という3つの異なる非線形動的モードを同定した。光による駆動力を勾配力、軌道角運動量、スピン角運動量の寄与に分解し、それぞれが動径方向の閉じ込め、方位方向のドリフト、歳差変調という役割を担うことを明らかにした。スキッピング運動はOSkビームの方位非対称性に由来し、MSkとOSk間の磁化-偏光結合に起源を持つ空間選択性を示す。三次元では微分Gouy位相が支配的な伝播依存位相が現れる。

-2026/8/3--
Enhancement of exciton radius near a band-gap closing through quantum geometry
励起子工学は従来、有効質量や誘電遮蔽といった半古典的な物質パラメータの制御に注力し、電子・正孔ブロッホ状態の量子幾何を無視してきた。しかしトポロジカルなバンドギャップ閉合の近傍では量子計量が強く増大し、この近似が破綻する。異なる運動量のブロッホ状態の類似度が下がることで射影されたクーロン行列要素が減少し、励起子束縛が弱まる。スピン軌道結合Lieb格子模型でこの機構を示し、運動量空間で励起子波動関数が狭まる結果、実空間の励起子半径が増大して弱磁場反磁性応答の増強として観測可能になることを明らかにした。

Meissner Effect and Josephson Radiation in Driven Dissipative Superconductors
平衡臨界温度をはるかに超える温度で観測される光誘起超伝導的signature(磁場排除を含む)の機構として、秩序変数の駆動散逸的凝縮を提案する。光ポンプがパラメトリック共鳴等を介して実効的なゲインを生み、対場の減衰を打ち消して非平衡凝縮体を安定化する。その位相は駆動周波数より低く一般に非整合な固有周波数で回転する。有限周波数ダイナミクスにもかかわらず3次元では静的マイスナー効果とAnderson-Higgs機構によるギャップ付きプラズモン、2次元ではPearl遮蔽と平方根プラズモン分散を示す。平衡超伝導体との接合が零電圧でAC Josephson電流と固有周波数の放射を生む検証法も提案した。

Symmetry Rules for Cavity Materials Engineering with Linearly Polarized Vacuum Fields
空洞内の真空揺らぎと結合させて物性を操作するキャビティ物質工学は急速に発展しているが、多くの研究は特定物質・特定空洞配置に留まっていた。本研究は群論的解析により、直線偏光した空洞光子モードに対する一般的な対称性則を確立する。光子を消去した実効QEDハミルトニアンの対称性を解析し、全ての結晶点群について空洞モードが誘起する対称性の破れのパターンを完全に分類した。QED密度汎関数理論計算により、立方晶BaTiO3で空洞モード配置ごとにバンド縮退の解け方が異なること、単層MoS2の赤外・ラマンスペクトルが対称性の破れで変化することを説明し、指針を与えた。

Deriving the second law of thermodynamics and exploring its boundaries
熱力学第二法則は、古典系と量子系、広範な時間スケール・相互作用・非平衡度に適用できる一般的証明を欠いている。本論文は、孤立系のマクロ状態確率fが可能な微視状態数Ωに対し単調増加する場合(∂f/∂Ω>0)、位相空間におけるfの連続の式から第二法則が自然に導かれることを示す。ボルツマンの等重率の原理はその特殊例にあたる。完全カオス系では容易に導出でき、力学的詳細に依存しないためエントロピー増大の統計的性質が際立つ。対照的に局所的に非カオス的な系では∂f/∂Ω≤0となりうるため従来の熱力学の枠組みが適用できず、エネルギー的代償なしにエントロピーが自発的に減少しうると論じる。

Open-Shell Molecules as Sensitive Probes of Spin-Orbit-Controlled Surface Electronic Structure
開殻分子は部分占有のフロンティア軌道が吸着子-基板混成の微妙な変化を増幅するため、相関酸化物表面の高感度プローブとなる。本研究は赤外反射吸収分光と、非共線磁性およびスピン軌道相互作用を含むハイブリッド密度汎関数理論を組み合わせ、UO2(111)上に吸着したNOの振動スペクトルの再現にスピン軌道結合の考慮が不可欠であることを示した。スピン軌道結合はNOフロンティア軌道とウラン5f状態の人為的な過剰混成を抑制してN-O伸縮振動の位置を決め、単分子層被覆での非対称な広がりは分散力に由来する分子間相互作用で説明される。NO/UO2(111)は電子構造理論の厳しいベンチマークとなる。

Giant Exfoliation Induced Magnetic Coercivity in Fe$_3$GaTe$_2$
強い異方性と高保磁力をもつ永久磁石は情報・エネルギー技術の基盤だが、希土類フリーの代替材料は限られる。本研究はファンデルワールス強磁性体Fe3GaTe2において、機械的剥離による膜厚制御が硬磁性を誘起することを示した。バルク結晶はキュリー温度350 K超だが室温保磁力はほぼ無視できる。100 nm以下に薄くすると保磁場が劇的に増大し、面内磁場では室温で約1 Tと従来の硬磁性材料に匹敵する。マイクロマグネティック解析は、磁化反転がバルクの磁区媒介過程から薄片の準コヒーレント回転へ交差することを示す。実効異方性増大と磁区形成抑制が起源で、化学修飾なしに磁気硬度を制御できる。

Molecular beam epitaxy synthesis of ternary nitride PrTaN$_2$ and its crystal structure determination
分子線エピタキシーにより薄膜として合成した新規三元窒化物PrTaN2の発見を報告する。高融点元素の電子ビーム蒸着と高周波窒素ラジカル源の組み合わせが強い窒化環境を実現し、バルク合成では得にくい相へのアクセスを可能にした。X線回折と高角散乱環状暗視野STEMによる構造解析から、本化合物は斜方晶で、YAlO3基板上に明確な配向をもち、ほぼ無歪みで成長することが分かった。限られた薄膜回折データから構造を決定するため、構造因子に基づくフィッティング手法を開発し、消滅則とWyckoff位置の拘束を組み合わせてパラメータ数を削減、空間群P222と原子座標を同定した。新規複合窒化物探索への道筋を示す。

Symmetry selection rule for the band-edge shift current in two dimensions
シフト電流は反転中心をもたない結晶の本質的バルク光起電力応答である。グラフェン多層では、ゲートや変位電場で符号反転する大きなバンド端シフト電流が報告されているが、量子計量やベリー曲率では説明できない。本研究はこれが対称性原理に従うことを示す。反転対称性の破れた2次元ギャップ付きディラック系の吸収端では創発的な低エネルギー回転対称性が応答を禁止し、トリゴナル歪みがこの対称性を格子の3回回転へ落とすことで電流を線形に立ち上げる。多バンド系では符号付きの離調重み付き3点Bargmann不変量が電流を支配する。二層・三層グラフェンではゲート電圧のみで符号反転が駆動される。

One-Step Epitaxial Access to Rhombohedral Graphene Flat-Band States on Step-Bunched SiC
菱面体積層グラフェン多層はモアレ不要の相関・トポロジカル平坦バンド物理の舞台だが、膜厚可変な多層への転写不要のエピタキシャル手法は限られていた。本研究は4°オフ軸4H-SiC上での一段階グラファイト化を報告し、高温フラッシュアニールが自己組織化したステップバンチングと多層グラフェン形成を同時に駆動する。原子分解能の断面STEMが局所的なABC積層を同定し、菱面体積層とBernal積層を識別した。アニール温度という単一パラメータで二層から20層超まで膜厚を制御でき、ARPESは厚膜でフェルミ準位近傍の平坦バンド重みの発達を追跡した。17層膜のSTM/STSは13.4 meVの再構成と√3×√3のKekulé様変調を示した。


A low-temperature ultra-high-vacuum scanning probe microscope with in situ electronic transport capabilities: from macro to nano in 10 minutes
走査プローブ顕微鏡(SPM)と電気輸送測定という相補的な二手法を単一プラットフォームに統合した低温超高真空システムを開発した。同一試料の原子スケール表面像とマクロなデバイス応答へ同時にアクセスでき、2次元デバイスで局所的な構造・分光的特徴と全体の輸送挙動を直接対応づけられる。準備チャンバーと液体ヘリウムクライオスタットを備える測定チャンバーからなり、到達真空度は1×10^-11 Torr。試料への直接光学アクセスにより10分以内で5 µm精度の探針位置決めが可能。2.9〜400 Kで同一領域を追跡し機械的安定性は1 pm以下、超伝導探針で30 µVのエネルギー分解能を達成した。


Successive Electronic Topological Transitions in the Antiferromagnet UPd$_2$Al$_3$
重い電子系化合物UPd2Al3において、反強磁性状態内でメタ磁性転移HM=18 Tに至るまでの熱電信号の磁場依存性に、低温で連続的な異常が現れることを報告する。繰り込み摂動論とf軌道の局在成分・遍歴成分への分割に基づく解析から、これらの異常はゼーマン効果が駆動するフェルミ面の複雑なトポロジー変化に帰属される。さらにHMにおいて熱電能とホール係数の双方が突然符号反転すること、HM以上で熱電能に大きな量子振動が現れることは、電子バンドのアンフォールディングによるメタ磁性転移でのフェルミ面の強い再構成を示している。

Origins of microwave losses in superconducting circuits made with silicon-on-insulator substrates
SOI(silicon-on-insulator)技術は先端トランジスタから光回路、ナノ機械システムにまで広く使われる。低損失の超伝導量子回路をSOI基板に集積できれば成熟したシリコン技術と超伝導回路の高感度を融合できる。従来はマイクロ波損失が低い高抵抗率シリコンを使うのが自然な発想だった。本研究は超伝導マイクロ波共振器を用い、直感に反して極低温では標準抵抗率SOI基板の方が高抵抗率SOI基板より高性能であることを示す。後者ではバルクSiと酸化膜の界面に生じる寄生的なシート伝導が支配的損失機構となる。意図的にトラップを導入した基板でこれを抑制でき、最終的な損失は酸化膜の誘電損失で制限される。

Photoemission insights into lanthanide-based crystals
強く局在した4f電子と遍歴的なspd価電子状態の相互作用は多彩な相関現象を生み、ランタノイド材料を研究の中心に据えてきた。特に表面では配位数の減少、結晶場の変化、反転対称性の破れと強いスピン軌道結合、表面状態・共鳴の出現が4f由来の電子・磁気物性を大きく作り替える。本レビューは、光電子分光の進展と結晶育成技術の向上がランタノイド結晶のバルク・表面現象の詳細な理解を可能にした経緯をまとめる。1970〜90年代の展開を概観した後、k分解されたf-spd混成、近藤格子におけるf由来フェルミ面の温度発展、層依存の4f磁気異方性、非磁性バルクをもつ系での強磁性秩序表面の出現などを論じる。

Scalar curvature density as a new invariant in thermodynamic geometry: metric dependence and critical exponents
体積固定と粒子数固定の条件下で構成した二つのRuppeiner計量を、スカラー曲率Rと新たな幾何学的不変量であるスカラー曲率密度R=√|g|Rにより比較する。van der Waals、Lennard-Jones、そしてIsing普遍クラスの非平均場臨界挙動を再現する多パラメータ状態方程式によるアルゴンの3モデルを扱った。R〜t^(-dν)が相関長指数で支配されるのに対し、曲率密度は秩序変数指数βのみでt^(-(1+β))とスケールし、これはハイパースケーリングとRushbrooke関係から普遍クラスに依らず解析的に従う。N計量がV計量より共存曲線をよく再現し、4本のWidom線と2つの新しい曲線(CEC・CDEC)を定義した。

Beyond Stoner-Wohlfarth: Machine-Learning Models and Symbolic Regression of Hard-Magnet Properties
磁性粒子の内因的なマイクロマグネティックパラメータから、保磁場・残留磁化・最大エネルギー積といったヒステリシス曲線の外因的物性を予測することは永久磁石モデリングの中心課題である。既存の解析モデルは不均一磁化過程を無視しがちで、直接的なマイクロマグネティックシミュレーションは計算コストが高い。本研究は理想化された立方体粒子の12012件のシミュレーションで機械学習モデルを訓練し、同一の検証データで解析モデルを大きく上回る精度を得た。記号回帰は材料依存の実効反磁場係数をもつKronmüller型の保磁場式を再発見し、残留磁化と最大エネルギー積の新しい閉形式も見出した。モデルはmammos-aiパッケージで公開されている。

Emergence of Propagating Exciton-Polaritons in Hybrid Waveguide-van der Waals Heterostructures
少数層物質のフォトニック回路への集積は新しいオンチップ応用に向けた有望な概念である。本研究は遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)を溶融石英チップに埋め込んだフェムト秒レーザー描画表面導波路と組み合わせた。導波路への結合とTMD層への上方からの集光を同時に行える新しい低温光分光系により、複数の測定配置でマイクロ発光を励起・収集できる。封止された単層TMDでは、導波路を伝搬する発光信号でA励起子のスペクトル変化が観測され、hBN封止膜厚に応じて赤方偏移あるいはA励起子の二成分への分裂として現れる。これを導波路モードと励起子の強結合による伝搬型励起子ポラリトンの形成に帰属し、転送行列法の計算で裏付けた。

Savi-Bhransha: Graph-Theoretic Dislocation-Loop Characterization in Crystals
転位ループは結晶材料の物性を支配するが、ループが断片化したり緻密な欠陥デブリに埋もれたりすると原子シミュレーションからの特徴抽出が難しい。本研究は、大域的な界面メッシュを構築せず局所的な欠陥変位モチーフから格子間型・空孔型ループを直接再構成するグラフ理論的手法Savi-Bhranshaを提案する。BCC・FCC・HCPについてバーガースベクトル族、晶癖面、ループサイズ、セグメントごとの刃状/らせん性、境界・バルク欠陥数を同定できる。DXAとの比較で全転位長は強く相関する一方、複雑な環境ではより安定なループ単位の対象を返す。実行時間は6.34〜8.86倍高速、ピークメモリは最大7.77倍削減された。

Layer- and Field-Dependent Magnetic Order in 2D CrSBr Revealed by Pulsed Nanocalorimetry
2次元極限での磁気秩序の発展の理解はファンデルワールス磁性体における中心課題だが、剥離片のフェムトグラム級の質量が熱力学測定を阻んできた。本研究はマイクロ秒パルス加熱ナノカロリメトリーにより、単層極限までのCrSBr薄片の比熱と磁気エントロピーを測定した。層間転移温度の低下と、単層極限に近づく際のエントロピー由来の実効磁気モーメントが明らかになり、バルク的な層間反強磁性から層内強磁性相関が支配する領域への交差を捉えた。奇数層で非補償層に伴う高温寄与が現れる層のパリティ効果も顕著である。易磁化軸方向の面内磁場で反強磁性秩序は次第に抑制され、膜厚依存の臨界磁場を抽出できた。


A versatile generalized digital twin for Electron Microscopy
運動量分解された高エネルギー分解能分光など新規応用のためには、透過電子顕微鏡で特殊な結像・分光状態を開発する必要がある。しかし多数のレンズの調整・設定が必要な上、各種の結像面・回折面の位置がしばしば十分に文書化されておらず曖昧なため、この作業は難しい。本研究は電子顕微鏡内の電子線軌道をシミュレートする汎用のデジタルツインを開発した。コードパッケージには顕微鏡カラムをモデル化する簡便なツールが含まれ、正確なレンズ位置の追い込みとレンズモデルの較正手順を複数提示する。これにより新しいコンデンサ/プロジェクタモードのレンズ値を予測でき、機械学習・自動顕微鏡との統合にも有用である。

Delayed Formation of Landau Polaritons in Phase-Resolved THz Spectroscopy
強い光-物質結合は、空洞電磁場と物質励起の間のコヒーレントで周期的なエネルギー交換を通じてポラリトンを生む。この相互作用は通常スペクトルのモード分裂から推定され、そのダイナミクスはほとんど未解明であった。本研究は位相分解テラヘルツ時間領域分光により、GaAs/AlGaAs二次元電子ガスのサイクロトロン共鳴とFabry-Perot空洞モードの結合で形成されるランダウポラリトンのラビ振動を観測した。交差偏光分光と磁場微分によりサイクロトロン共鳴振動のうなりを時間分解した結果、ラビ振動は励起直後ではなく空洞の1往復時間に相当する遅延の後に始まる。強結合領域は空洞モード場の形成後に初めて成立することを示す。

Spindrift: Learning quantum degeneracy from thermal purity in restricted path integral Monte Carlo
制限付き経路積分モンテカルロ(RPIMC)は試行密度行列の節ポケット内に経路を閉じ込めることで符号問題を回避し多項式スケーリングを回復するが、節面を外部から与える必要があり、厳密でなければ固定節誤差を生む。本研究は正則化Bloch残差から多体フェルミオン密度行列を学習する変分密度行列法Spindriftを導入する。高温での量子力学の「純粋性」に着想を得て、自由粒子参照からの補正を温度(虚時間)カリキュラムに沿って学習する。置換同変な連続正規化フローで準粒子バックフロー軌道を生成し対称なJastrow因子で変調することで、厳密な反対称性と空間対称性を保証。2次元調和トラップ中の3フェルミオン系で安定な学習を実証した。

Superselectivity as a Receptor-Fluctuation Response
超選択的な多価結合は標的化やセンシングで鋭い受容体密度識別を可能にするが、その対数応答が微視的に何を測っているのかは不明瞭だった。本研究は選択性を受容体状態の再重み付けと直接的な占有応答へ分解する厳密な応答分解を導く。希薄な焼き付きポアソン極限では直接項が消え、選択性は結合粒子の下にある受容体の平均超過量に厳密に一致し、十分大きな受容体-粒子共登録画像から単一密度で測定できる。ポアソン統計を超える場合、超過量はファノ因子で規格化されて線形な計数応答を与え、分布形状の変化には計数分解された完全な応答が必要となる。格子・非格子シミュレーションが関係式を検証した。

Nonlinear Meissner States, Vortex Sheets, and Laminar Structures in Extreme Type-II Superconductors
最近導かれた極端第II種超伝導体の非線形速度理論が、厳密に解ける1次元セクターをもつことを示す。その解には普遍的な裾をもつ非線形マイスナー状態、渦シート、周期的なラミナー構造が含まれる。熱力学的臨界磁場は常伝導-超伝導境界に等価な限界的マイスナー分布から現れ、半ソリトンとみなせる。渦シートは速度場の不連続、連続かつ局在した磁場、中心で消失する超伝導密度で特徴づけられるソリトンであり、稠密なAbrikosov渦列の粗視化極限と解釈できる。周期解は粗視化された矩形渦格子と解釈しうるラミナー状態を記述する。

Temperature-driven transition between momentum-resolved and disordered averaged Coulomb drag in 1D systems
1次元系における電子間相互作用の理解、特にクーロン結合した朝永-Luttinger液体は低次元物理の中心課題である。1次元系パラメータの信頼できる抽出の難しさと乱れの存在が、1次元クーロンドラッグ実験の解釈を妨げてきた。本研究は1次元クーロンドラッグ測定から相対的なLuttinger液体相互作用パラメータを自己無撞着に決定し、理論予測と定量的に一致させた。垂直結合したGaAs-AlGaAs量子細線を用い磁気的サブバンド消失により1次元パラメータを完全に特徴づけた。ドラッグは磁場とともに系統的に発展し、運動量分解型と乱れ平均型を分ける2つの温度領域を同定した。

A Simple Necessary and Sufficient Condition for Yang--Baxter Integrability
量子可積分性は相互作用する量子スピン鎖の厳密理論の礎である。しかし標準的な定式化ではハミルトニアン自体ではなくYang-Baxter方程式を満たすR行列から出発するため、Yang-Baxter可解性をハミルトニアンのレベルで直接特徴づける方法や、局所保存量の存在との関係は不明瞭だった。本研究は広い標準的設定において、Reshetikhin条件がYang-Baxter可積分性の必要条件であるだけでなく十分条件でもあることを証明する。同条件は全エネルギー流の保存と等価であるため実験的にも検証可能である。これは等方的スピン鎖に対するLiouville-Arnoldの定理の量子版を確立し、可積分スピン鎖の探索を大幅に簡略化する。

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