マジックアングル☆グラフェンちゃん
【イントロ】
魔法使いになりたいですよね。もしくは、プリキュアとかでもいいです。
魔法といえば、固体物理では最近”マジックアングルグラフェン”(MAG)と呼ばれる物質が話題になっています[1][2]。2枚のグラフェンをわずかな角度だけずらして重ねることで、本来良好な伝導性を示すグラフェンの電子状態が劇的に変わり、モット絶縁体になったり超伝導(Tc=1.7K)を示すことが報告されています。その劇的な性質を示す魔法の角度は1.1°。まさに魔法のような振る舞いと言えます。
蜂の巣格子をもつグラフェンを2枚重ねると、モアレパターン[4]を見ることができます。このモアレの図示に関してcometscomeさんがJuliaで実装する方法をGitHubで紹介されています[3]。そこで今回、この図示をPythonで実装することを目的としました。
【方法】
Pythonを用いて2枚のグラフェンを重ねて図を作図しました。具体的にはcometscomeさんのJuliaでの実装を写経し、必要な部分をPython仕様に書き換えただけです。知性~。難しいところは特になくて、JuliaとPythonの互換性高いなぁと思いました。
【結果】
具体的なプログラムは下記のとおりです。
上記のプログラムの実行結果が下記の図です。
やったぜ。
cometscomeさんのJuliaでの実行結果と同じ図が表示できました。たしかに周期的なモアレパターンが確認できます。当たり前といえば当たり前ですが楽しい(^o^)。ちなみに実行時間を計測すると、45.5秒でした。Juliaだとどれくらいの計算時間になるんでしょうか。写経してみて図の表示や行列とベクトルの計算方法がわかったのが収穫です。
ちなみにMAG論文の著者のY. Caoさん、22歳でMITのPhDコース3年目ってすごいですね。しかも、モット絶縁体的振る舞いと超伝導の観測で2本Nature出ているので、さらにすごい。ホームページの”ようこそ!”も面白くて隙がない。MAGは理論的には以前から予測されていたみたいですが、今回激ムズといわれるその実験を実現したのがCaoさんの天才性の現れでしょうか。
【まとめ】
今回、Pythonを用いて2枚のグラフェンを重ねたときの生じるモアレパターンを図示することができました。
今後このMAG分野の発展はどうなるのでしょうか。理論的には遷移金属ダイカルコゲナイド等他の層状物質に対しても同様の計算を実行した論文が出てきてもおかしくない気がします。バンド構造とかフィリングが違うので2匹めのドジョウは難しそうですが、網羅的にまとめた論文を書けば引用数は稼げそうな気がします(こなみ。
また、実験的には超伝導対称性の決定が行なわれるのでしょうか。ゲート電圧によるフィリング制御で得られた相図は銅酸化物超伝導体のそれとよく似ているので、d波超伝導とかの非従来型超伝導の可能性もあるのかな。NMRとかARPESとかSTMあたりで観測されるのかな。そうなると反強磁性ゆらぎとかも観測できればそれも良い雑誌に出せそう。今後の発展に期待ですが、実験できるとこが少ないと盛り上がりに欠けるかも。難しいところです。
ぼくもかっこいい結果を出したいものです。
【参考文献】
1、Y. Cao et al., "Unconventional superconductivity in magic-angle graphene superlattices", doi:10.1038/nature26160
2、Y. Cao et al., "Correlated insulator behaviour at half-filling in magic-angle graphene superlattices", doi:10.1038/nature26154
3、Juliaで学ぶタイトバインディング模型とトポロジカル物質
番外編:ずらした二層グラフェンのプロット
https://github.com/cometscome/TightBinding/blob/master/2Dgraphene.ipynb
4、モアレ(Wiki)
魔法使いになりたいですよね。もしくは、プリキュアとかでもいいです。
魔法といえば、固体物理では最近”マジックアングルグラフェン”(MAG)と呼ばれる物質が話題になっています[1][2]。2枚のグラフェンをわずかな角度だけずらして重ねることで、本来良好な伝導性を示すグラフェンの電子状態が劇的に変わり、モット絶縁体になったり超伝導(Tc=1.7K)を示すことが報告されています。その劇的な性質を示す魔法の角度は1.1°。まさに魔法のような振る舞いと言えます。
蜂の巣格子をもつグラフェンを2枚重ねると、モアレパターン[4]を見ることができます。このモアレの図示に関してcometscomeさんがJuliaで実装する方法をGitHubで紹介されています[3]。そこで今回、この図示をPythonで実装することを目的としました。
【方法】
Pythonを用いて2枚のグラフェンを重ねて図を作図しました。具体的にはcometscomeさんのJuliaでの実装を写経し、必要な部分をPython仕様に書き換えただけです。知性~。難しいところは特になくて、JuliaとPythonの互換性高いなぁと思いました。
【結果】
具体的なプログラムは下記のとおりです。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 | #Jupyterで図を表示するためのおまじない % matplotlib inline import numpy as np from matplotlib import pyplot as plt import time t1 = time.time() #時間計測開始 def plotGraphene(θ,n,m,color): #角度θだけずらした蜂の巣格子をx,y方向にn,m回繰り返す M = np.array([[np.cos(θ), - np.sin(θ)],[np.sin(θ), np.cos(θ)]]) #回転行列 a1 = [np.sqrt( 3 ) / 2 , - 1 / 2 ] #グラフェンの基本並進ベクトル a2 = [np.sqrt( 3 ) / 2 , 1 / 2 ] a1d = np.dot(M,a1) a2d = np.dot(M,a2) drAd = 2 * a1d / 3 + 2 * a2d / 3 drBd = a1d / 3 + a2d / 3 rd = n * a1d + m * a2d rAd = rd + drAd rBd = rd + drBd plt.plot([rAd[ 0 ],rBd[ 0 ]],[rAd[ 1 ],rBd[ 1 ]], c = "blue" , ls = "-" ) plt.plot([rAd[ 0 ] - a1d[ 0 ],rBd[ 0 ]],[rAd[ 1 ] - a1d[ 1 ],rBd[ 1 ]], c = color, ls = "-" ) plt.plot([rAd[ 0 ] - a2d[ 0 ],rBd[ 0 ]],[rAd[ 1 ] - a2d[ 1 ],rBd[ 1 ]], c = color, ls = "-" ) N = 4 M = 5 N2 = N * N M2 = M * M NM = N * M θ = np.arccos((N2 + 4 * NM + M2) / ( 2 * (N2 + NM + M2))) #左を満たす角度θは2枚重ねたとき周期を持つ。 Nx = 40 Ny = 40 for n in range ( 1 ,Nx + 1 ): for m in range ( 1 ,Ny + 1 ): plotGraphene( 0 ,n,m, "red" ) plotGraphene(θ,n,m, "blue" ) t2 = time.time() #時間計測終了 elapsed_time = t2 - t1 #計算実行時間 print (elapsed_time) |
図、ずらして重ねた2枚のグラフェン |
cometscomeさんのJuliaでの実行結果と同じ図が表示できました。たしかに周期的なモアレパターンが確認できます。当たり前といえば当たり前ですが楽しい(^o^)。ちなみに実行時間を計測すると、45.5秒でした。Juliaだとどれくらいの計算時間になるんでしょうか。写経してみて図の表示や行列とベクトルの計算方法がわかったのが収穫です。
ちなみにMAG論文の著者のY. Caoさん、22歳でMITのPhDコース3年目ってすごいですね。しかも、モット絶縁体的振る舞いと超伝導の観測で2本Nature出ているので、さらにすごい。ホームページの”ようこそ!”も面白くて隙がない。MAGは理論的には以前から予測されていたみたいですが、今回激ムズといわれるその実験を実現したのがCaoさんの天才性の現れでしょうか。
【まとめ】
今回、Pythonを用いて2枚のグラフェンを重ねたときの生じるモアレパターンを図示することができました。
今後このMAG分野の発展はどうなるのでしょうか。理論的には遷移金属ダイカルコゲナイド等他の層状物質に対しても同様の計算を実行した論文が出てきてもおかしくない気がします。バンド構造とかフィリングが違うので2匹めのドジョウは難しそうですが、網羅的にまとめた論文を書けば引用数は稼げそうな気がします(こなみ。
また、実験的には超伝導対称性の決定が行なわれるのでしょうか。ゲート電圧によるフィリング制御で得られた相図は銅酸化物超伝導体のそれとよく似ているので、d波超伝導とかの非従来型超伝導の可能性もあるのかな。NMRとかARPESとかSTMあたりで観測されるのかな。そうなると反強磁性ゆらぎとかも観測できればそれも良い雑誌に出せそう。今後の発展に期待ですが、実験できるとこが少ないと盛り上がりに欠けるかも。難しいところです。
ぼくもかっこいい結果を出したいものです。
【参考文献】
1、Y. Cao et al., "Unconventional superconductivity in magic-angle graphene superlattices", doi:10.1038/nature26160
2、Y. Cao et al., "Correlated insulator behaviour at half-filling in magic-angle graphene superlattices", doi:10.1038/nature26154
3、Juliaで学ぶタイトバインディング模型とトポロジカル物質
番外編:ずらした二層グラフェンのプロット
https://github.com/cometscome/TightBinding/blob/master/2Dgraphene.ipynb
4、モアレ(Wiki)
部品さんはまだ魔法使いではないと…φ(..)
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