J( 'ー`)し「あんたいい加減いくつになったらアカデミックポストにつけるの!?」


【イントロ】
 年相応の人生経験ってありますよね?
「X歳までに大学を出て、Y歳までに職を得て、Z歳までに恋をして、そして結婚する・・・」
 人生は一過性なので、経験するべき時期に相応の経験をしていなければ取り返しのつかないことの連続です。それなのに予定調和な人生が送れないと周りからの視線が厳しくなる一方です。つらい。
 もちろん人生は自分のものなので、思うがままに生きればよいのですが、隣の芝生は青く見えるもの。自分が得ていない経験を得ている人をみると羨ましく思ったり、自分の生きてきた時間を振り返って後悔することも少なくありません。
 後悔先に立たず、いい言葉ですね。うぅ・・・
 後悔するくらいなら、とりあえずチャレンジしてみる。そういう心意気を大切にしていきたいなぁと思う日々です。
 さて、「年相応の人生経験」に因んで、本記事では「何歳までにアカデミックポストを得られれば業界に残れるか?」という命題を調査してみることにしました。

【方法】
 本調査では、東京大学工学部物理工学科(UT仏光)、同理学部物理学科(UT理物)、そして大阪大学基礎工学部(OU基礎工)を調査対象としました。各大学HPから、所属する教員の名前を確認し経歴を調査しました(個人ホームページ、Researchmap科学研究費助成事業データベース等参照)。
そこから各教員が「助教(助手)、講師、准教授(助教授)、教授」の職位に初めて就任した(パーマネントポストを得た)年齢を調査しました(特任、有期雇用明記を除く)。理物、基礎工については、仏光の分野に近い固体物性及び量子情報、光科学分野の教員を調査対象としました。趣味です。
「助教→講師→准教授→教授」という経歴の方は、各職位についた年齢をカウントしています。「アカデミックに生き残っている」人の就任年齢が知りたいのでこの方針でカウントを行いました。
ただし、生年月日が記載されていない方が多数でしたので、下記のような推測を行いました。
・学部卒の時点を22歳として計算する。
・学部卒年がわからない場合は博士取得年から5年前を学部卒年とする。
・どちらもわからない場合は集計から除く。
以上のような推測に基づくため、今回の調査は浪人・留年の影響を考慮できていません。そのため結果が多少増減する可能性はありますが、影響は小さいと信じています。
いうほど、みんな浪人・留年してる・・・してないよね?

【結果】
 図1に、各大学の教員がパーマネントポストを得た年齢をまとめた箱ひげ図を示します。
図1、各大学の各教員が各職位に初めて就任した年齢
図をみると、大学、学部学科に関係なくほとんど同じ年齢分布を示している事がわかります。そこで、各大学の就任年齢の平均値、最高、最低値を調べた表を以下に示します。
表1,各大学教員の就任年齢平均、最高、最低値
すごい・・・どこの大学もだいたい同じだ・・・。
調査結果からは、
「助教:28歳、講師:32歳、准教授:35歳、教授:42歳」
くらいでみなさん各職位に就任されていることがわかります。
もちろんそれ以前に企業や国研の主任研究員等をされていた方たちも多いため、実際にパーマネントを得た年齢はさらに若いと考えることも出来ます。
 世知辛いですね。
「ポスドク2回くらいやって助教になってから10年くらいで准教授」という言説が都市伝説のようにまことしやかに囁かれますが、実際は「学位取得後10年以内に准教授」がアカデミックで生き残っている方たちの平均的姿だということがよくわかります。
助教28歳なんて、学位取得即助教みたいなもんです。中には学部卒即助手みたいな方もいて、はへ~~~という感じです。
みなさん優秀ですごいですね。
僕なんかには想像のつかない世界です。こわいこわい。。。
 
 一方で、若くしてパーマネントを取得された皆さんは現在何歳位なのでしょうか?
まとめたのが表2になります。
表2、現在の各教員の推定年齢平均値
表からはUT理物とOU基礎工と比較してUT仏光教員が若いことが見て取れます(教授除く)。UT仏光で若くしてパーマネントを取得し活躍された後、外部の大学で更に上のポジションに移っていく、そういう出世街道が存在することが想定されます。
若手の登竜門って感じですね。
 
 この傾向は昔から存在するのでしょうか?データは1977年学部卒の教員の方まで存在するため、2020年までの半分に分けて年代別の着任年齢を調べたのが表3です。
表3、UT仏光学部卒年代別のパーマネント取得時期
表からは97年以前と98年以降で明確な着任年齢の差がないことが見て取れます。昔からポストを取る人は若くしてその地位を得ていることがわかります。
羨ましいですね。
俺も人生やりたい。

【まとめ】
 本記事では、「何歳までにアカデミックポストを得られれば業界に残れるか?」という命題を調査し、「助教:28歳、講師:32歳、准教授:35歳、教授:42歳」くらいまでにポストを得るのが平均的な生き残り年齢であることを明らかにしました。
想像以上に若くてびっくりしてしまいました。もちろんこの結果は物理、特に旧帝大の固体物性界隈の平均値であるため、他の業界、地方大学では異なる結果となる可能性は大いにあります。
素粒子理論とかどうなってるんでしょうね?今後の興味対象です。

とはいえ、この基準年齢を超えてしまったらどうしたらいいのでしょうか・・・?
もちろん、ポストを得るまで探し続ければ、いつかは。。。


いっそ…二人でここから抜け出しちゃおっか…?
~Happy End~

コメント

このブログの人気の投稿

2023年7月の気になった論文(完全版)

【改題】室温超伝導ふたたび!~大丈夫じゃなかった、Natureの論文だもん!~

有機物量子スピン液体の熱伝導論争の流れを振り返る