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2025年12月の気になった論文(暫定版)

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 1年早すぎんか??? ※Amazonアフィにアクセスしてやってください🙇‍♀🙇‍♀🙇‍♀🙇‍♀🙇‍♀🙇‍♀ Kindle本 セール&キャンペーン https://amzn.to/4rEwPDG ‐2025/12/9,10‐‐ Rheological Parameter Identification in Granular Materials Using Physics-Informed Neural Networks https://arxiv.org/abs/2512.08396 物理情報を組み込んだニューラルネットワーク(PINNs)は、近年、流体力学分野、特に流れ場の再構成や物性パラメータの同定において有望な手法として注目を集めている。粒状物質の分野においては、粘弾性パラメータを正確に推定することが依然として大きな課題となっている。これは通常、複雑でコストのかかる実験装置を必要とするためである。本研究では、粒状物質の主要な粘弾性パラメータを同定するため、単純な実験手法である「粒状柱の崩壊現象」を用いたPINNベースの新たなアプローチを提案する。 粉体へのNN応用だ Chiral-phonon generation of orbital currents in light transition metals https://arxiv.org/abs/2512.08385 軌道角運動量は、広範な材料系において情報伝達の新たな経路を提供する。しかし、そのコヒーレントな生成と検出技術は依然として未開拓の領域が多い。本研究では、キラル表面音響波(SAW)が音響軌道ホール効果と音響軌道ポンピング機構の両方を介して軽金属/強磁性体二層膜中に有意な軌道電流を誘起することを実証する。 Ultrafast light-induced formation of a metastable hidden state in bismuth vanadate https://arxiv.org/abs/2512.08287 ビスマスバナジン酸塩(BiVO₄)は、太陽燃料応用分野における重要な光触媒であるが、光生成ポロン状態の本質や、その光エネルギー変換過程を支配する格子ダイナミクスに関しては、未だ基礎的な解明課題が残されている。本研究では、フェムト秒光学ポンプ・X線...

論文を捏造しよう!~Googleの画像生成AI「Nano-Banana」を利用したグラフ編集の可能性と人間力向上~

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更新履歴:2025/12/3更新 【はじめに】  実験データの捏造は絶対にやめましょう。 その上で、あえて問います。もし、もっともらしい実験データやグラフが、AIとの対話だけで一瞬にして作れてしまうとしたら? 本記事では、生成AIを用いた画像の作成プロセスを例に挙げながら、かつては「手間がかかりすぎる」とされた捏造の手法がいかに陳腐化し、容易になってしまったかを実証します。これは、現代の科学リテラシーに対する緊急の警鐘です。 それでは、以下内容をお楽しみください。 【イントロ】 論文、捏造したいですよね。 実験結果が思った結果にならなかったとき。 出てきた結果のインパクトが小さいとき。 実験をやり直すには締切に間に合わないとき。 そんなときこそ、実験結果の捏造のチャンスです。 でも、思った通りの実験結果を作るのは意外と大変です。 元データの数値を変えて、グラフをプロットし直して・・・ めんどくさい! なんとかもっと簡単に実験結果を捏造できないでしょうか? できます。 そう、GoogleのNano-Bananaならね Nano-Bananaが描いてくれたトップ画像です 【方法】 いくつかのユースケースにおいて、Googleの最新画像生成AI 「 Nano-Banana 」 を利用して、論文中のグラフの捏造を行いました。 Nano-Bananaは Google GeminiのPro機能 を契約し利用しました。 今なら1ヶ月無料です。 元となるグラフは、パワーポイントで手書きしたグラフをNano-Bananaで、以下プロンプトを使って脚注含めて清書したものになります。 「添付の画像は~のグラフです。この図をPhys.Rev.Bに掲載されるような論文のグラフの画像にしてください」 グラフの着想元になった論文は以下記事中に記載しています。 【結果】 ユースケース1:超伝導転移温度を高くしたい! 新物質の電気抵抗を測定したら、超伝導転移を示したけど、転移温度が低くてインパクトが低いな~ 30Kくらいの転移温度じゃ話題にならないよなぁ~ せめて窒素の液化温度、77K以上くらいにならないかな~ そうだ!捏造しよう! そんなときも簡単。Nano-Bananaに以下のようにお願いしましょう 「論文の図を修正したいです。図は超伝導体の電気抵抗の温度依存性で、30K付近から抵...

LLMを研究アシスタントに使えるか?~銅酸化物超伝導の研究を例に~

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 【イントロ】 ある研究分野の歴史が長いほど、何がわかっていて何がだめな取り組みだったのか、 もはやすべてを理解しているのは長年研究に従事してきたその分野の専門家だけとなり、 新規参入者がすべてを把握するのは難しくなります。 新規参入者がいない分野は、いずれ滅んでしまう悲しい現実。 学生や若手研究者が新しい研究分野に取り組もうとしたとき、そんな研究への障害をAIにより取り除き、新しい風を研究分野に取り込むことは可能でしょうか? AIに取り組みたい研究分野の概観や未解決問題を問いかければ、専門家も納得する精度の回答を返してくれるのであれば、若い研究者が新しい分野へ挑戦することが容易になり、新発見につながる可能性が高くなると期待されます。 では、現在の最先端のLLMベースのAIシステムは、長い歴史をもつ研究分野の専門家が納得するような回答を返してくれるのでしょうか? この問を、40年近い研究の歴史を持ちつつ多くの未解決問題を抱える、銅酸化物高温超伝導体の研究をテーマに取り組んだ研究がArxivに報告されました。 本記事では、コーネル大学とGoogleを中心とする研究チームによるこの研究論文、 Haoyu Guo et al. ,  Expert Evaluation of LLM World Models: A High- Superconductivity Case Study ,  arXiv:2511.03782 [cond-mat.supr-con] ( Accepted at the ICML 2025 workshop on Assessing World Models and the Explorations in AI Today workshop at ICML'25) を読んでみました。 【方法】 銅酸化物超伝導体は、常圧で最高の超伝導体転移温度を持つ物質群であり、リニアモーターカーや核融合発電への応用だけでなく、基礎的な超伝導発現メカニズムだけでなく常伝導状態の異常物性、そして室温常圧超伝導体への実現につながる可能性から、多くの研究者の注目を集め続けています。 一方で、1986年の発見以来、40年近い時間の中で膨大な研究が行われ、その中の研究をすべて把握することは、学生や若手研究者にとって困難となっている状態です。...