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旧帝JKはどれくらい論文を書いているんだろう

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【イントロ】  大学の教員には助教、講師、准教授、教授と様々な職位がありますが、博士号を取得した若手研究者がまず目指すのは、任期なしの助教(JK)だとおもいます。しかし、助教になると研究だけではなく学生の指導、教育義務も生じるため、むしろポスドク時代のほうが研究に専念できたという声も一部で聞こえます[1]。  教育と研究の両輪を回しながら、大学の助教がどれくらいの論文を書いているのか興味を持ち、調べてみることにしました。また、論文の数だけでなくどの程度の影響力のある雑誌に出しているのかも調べるため論文掲載誌のImpact Factor(IF)も同時に調べることにしました。 【方法】  調査対象は旧帝7大学の理学系研究科HPに掲載されている物性物理系研究室所属のJK150人としました。東大のみ工学部物理工学科も調査対象としました。また、調査期間は2015年1月から2017年4月までの約2.5年間を対象としました。  各研究室の所属教員から任期なし助教を一人ひとり確認し、ラボHP、Arxivなどを参考に出版論文を調査しました。論文のIFは2017年4月時点の数値になっています。論文の内、明らかにプロシーディングとわかるものは除きました。ただし、ArxivにアップされているプレプリントはIF=0として論文としてカウントしました。(プロシとプレプリに対する非対称性は問題があると感じていますが、全体の傾向にあたえる影響は小さいと考えそのままとしました。)  論文には本人が筆頭著者として書いた主著論文と共同研究者として名を連ねる共著論文がありますが、著者順の影響度を測るため、「JK指数」という指標を導入しました。これは、     JK指数=1st論文数x3pt+2nd論文数x2pt+3rd以降論文数x1pt として、論文の数に重みを付けて計算した指標になります。集計はExcelを使用して行いました。  可能な限り出版論文の漏れがないように確認しましたが、見つけられなかった論文も確実にあるので、今回の調査結果は「論文数の下限」だと考えています。 【結果】  以下に示す表1が集計結果になります。JK指数が大きい順に並べています。 表1 JK指数、出版数、合計IF、平均IF

Physical Review Lettersっぽいタイトルとは?

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【イントロ】  「Publish or Perish」(出版するか死ぬか)とは研究者の生き様を表した言葉として、業界に広く流布していることわざです[1]。そこまで極端なことを言わずとも、「論文を出すまでが研究よ」というのは研究者であれば肝に銘じている言葉ではないでしょうか?論文を出すのが一つの使命となっている研究者ですが、「どうせなら少しでも良い有名な雑誌に出したい!」という考えは、自分の仕事のアピールと生き残りの両面から当然湧いてくる気持ちです。商業誌としてはNatureやScienceといった超一流雑誌がありますが、専門家にこそ自分の仕事をアピールしたい人にとって、各分野最高峰の専門誌に出すことが研究の一つのマイルストーンになります。そのため、そうした最高峰の専門誌に掲載される論文がどのような内容か興味深い問題です。  本記事では「名は体を表す」という諺にのっとり、筆者がちょっと興味をもっている物理分野最高峰の専門誌であるPhysical Review Letters(PRL)[2]が、どのような単語を含むタイトルの論文を掲載しているのかを調べました。 【方法】  2016/1~2017/4までにPRLに掲載された論文1957本のタイトルに含まれる単語を出現数順にランキングすることで、どのような内容の論文が掲載されているか調査しました。具体的にはPythonを使用したWebスクレイピング[3]により集計区間の論文タイトルを取得し、Excelのピポットテーブル機能を使用して集計を行いました。集計後、冠詞と前置詞、接続詞は順位から除き、ランキングを作成しました。ちなみに、最頻出前置詞は「of」でした。  また比較のため、2006/1~2007/12の掲載論文2492本についても集計し、掲載内容の移り変わりを調査しました。  余談ですが、PRLはタイトルの頭文字が大文字ですが、ほかのPRA,B,C,D,Eはそうでもないことに調査中気づきました(まなび)。 【結果】  図1に2016-2017のPRLタイトル頻出単語を示します。 図1 PRL論文タイトル頻出タイトル(2016/1~2017/4)  「Quantum」(量子)が一位となりました。物理分野における量子力学の重要性を示す結果といえるのではないでしょうか。2位以下には「Sp

大学別の学振採用者数って気になりますよね

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【イントロ】  春の科学研究費(科研費)[1]、秋の学術振興会特別研究員(学振)[2]の発表は多くの人の関心を集める一大イベントです。気になるその採用状況ですが、全体の採択率などの情報は日本学術振興会HPで公開されています。一方で、各大学別の採用者数といった情報は、どうなっているのか興味があるもののまとまった形では報告されていません。  そこで本記事では、大学別の学振採用者数を公開情報を使って明らかにすることを目的としました。つまり、興味本位です。 【方法】  日本学術振興会の学振採用者一覧ページ[2]に掲載されている平成25年度から平成29度までのDC1、DC2採用者の出身大学をExcelを使って集計しました。特に、著者が数物系分野出身ということもあり、集計は「数物系科学」分野のみに絞りました。また、採用者の「受入研究者」も同時に集計することで、最も学振採用者の多い研究室も調べました。  具体的な手法は、ダウンロードしたpdfファイルを1つずつ開いて、該当部分をコピーしExcelファイルに貼り付け、ピポットテーブル機能を使用し集計を行いました。作業時間はおよそ4時間です。「一体自分は休日に何をしているんだ。。。」という思いとの戦いでした。pdfファイルは項目内に改行がある仕様で、Excelに貼り付けるのに苦労しました(もうちょっとなんとかなって欲しい。。。)。後半、「pdfをWordで開く」と少しコピペがしやすくなることに気づきましたが、もっと早く気づきたかったです。 【結果】  大学別の学振採用者数の集計結果が図1です。 図1 大学別の学振採用者数 圧倒的東大。。。2位の京大に2倍以上の差をつけて、東大が採用者数で圧倒的1位です。この期間の数物系分野学振採用者1388人内30%が東大所属ということになります。 また、旧帝7大学の採用者が1008人で、全体の73%を占めています。すごい。  一方で、5年間で1人しか採用されていない大学もありますが、その学生の傑出度が伺い知れます。すごい。   次に、図2が受入研究者別の採用者数です。 図2 受入研究者別の学振採用者数  上田先生(東大)、十倉先生(東大)、中家先生(京大)といった錚々たる先生たちが上位に顔を揃えています。やはりすごい先生の元にはすごい学生さんがたくさ

はじめまして

はじめまして。