ネイチャーの論文誌ビジネス、最高だな?
【イントロ】
頑張ってるのに結果がついてこないとつらくないですか?
ぼくはつらいです。
もちろん、結果が出るほど頑張って無いだけなんですが、まあ無敵理論ですよね。
一人でできることには限界があるので、周りの力を仰ぎつつ、周りに力を貸しながら二人三脚な感じで頑張る必要があるわけですが、その代表例がビジネスかなと思います。
伝統的な企業では図1のようなイメージで各人が最善の仕事をすることで、その結果生まれた商品が消費者のもとに届くことで、売上としてアウトプットされるわけですが、何百、何千人も携わって最終的に利益がゼロとかだとなにか根本的にビジネスモデルがおかしいんじゃないかと思いたくなるかもしれません。
わたしはおもいます。
図1、ふつうのビジネス |
とはいえ、なにかもっと簡単に稼げるビジネスは無いかな~・・・販売物の企画・研究・製造・品質保証・購入まで消費者がやってくれるような天才的なビジネスモデルないかな~・・・と思うことありませんか?
あります。
論文誌ビジネスです(図2)。
NatureやScience、エルゼビアに代表される商業論文誌出版社は、研究者に企画(研究計画提案)・研究・製造(論文執筆)・品質保証(査読)・購入(掲載料、購読料)を任せることで、営業利益率40%という尋常じゃない効率的な稼ぎ方をしています。日本の製造業の営業利益率はおおよそ5%、世界的なIT企業Googleですら20%程度なのでいかに、知的なビジネスを科学出版社が展開しているかわかります。賢い。
図2、最高のビジネス |
さらに科学の発展に寄与するという道徳的貢献まである意義のあるビジネスです。
最高ですね。
では実際どれ位の稼ぎがあるのでしょうか?
本記事では、Nature系列の論文誌をとりあげ、年間いくら位稼いでいるのか、推定してみることにしました。
【方法】
Nature系列の論文誌143誌の各HPを一つずつ訪問し、2018年に掲載された論文数をカウントしました。Nature本誌は論文風広告が多いので、ArticleとLetterを足した数を論文数としました。他の論文誌は表示された論文数をそのままカウントしました。掲載料は公開されているオープンアクセス誌はその価格で、未公開の論文誌はオープンアクセス誌の掲載料の平均値($3288)で代替しました。掲載料はUS基準でドル表記なので1ドル110.7円換算としました。更新の停止されているもの、一般向け雑誌は除きました。
かなり無為な作業ですが、どこかに売上データとかまとまってるのかな?
【結果】
図3に年間論文掲載数トップ20を示します。
図3、2018年の論文誌ごとの掲載数 |
Scientific Reportsが堂々の1位!年間掲載数およそ18000!すごい!ちなみに、プレプリント・サーバーCond-matに2018年に投稿された論文数は18000本なのでさらにすごい!Sci.Rep.の掲載料は約20万円なのでこの論文誌だけで36億円の売上です。
総論文数は48789本で、総掲載料はおよそ160億円と推定されます。すごい。
もう一つ考えられる研究者からの収入源は論文誌購読料です。これはよくわからないので、推定してみました。日本の各都道府県に2つずつNature系列を購読する機関があると仮定すると、国内で100機関。OECD36ヶ国も同規模、世界には合計その倍の研究機関があるとして、一サイトあたり年間100万円のライセンス料とすれば、およそ72億円の購読料です。すごい。掲載料と購読料あわせて230億円程度の売上です。
広告収入も同程度あるとすれば年間の売上は400億円くらい、営業利益160億円くらいでしょうか?最高ですね。世界の研究開発費の合計は2010年でおよそ1兆ドルらしいので400億円くらい安い、安い。
【まとめ】
Nature系列の論文誌は論文掲載料だけで年間200億円程度売り上げていることがわかりました。素敵なビジネスです。
論文誌というプラットフォームを用意することで、あとは研究者が販売物を作り上げ、そこでの評判を気にしてより金のかかる論文を投稿するという素敵な正のフィードバックを作り上げた科学出版社は、GAFAに代表されるIT企業のビジネススタイルを先取りしているといっても良いのではないでしょうか。
こういう利益の出る、稼げるビジネスに携わってみたいです。
【付録】
各論文誌の掲載数と売上です。
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