これが2022年のお気に入り凝縮系物性論文22本や!

【イントロ】
2022年も終わりですね。
終わり終わり、独身の終わり!

そんな記念すべき年も沢山の論文が報告されました。
数えてみると約2500本の論文をブログで紹介したみたいです。
すごいですね。
1月200本、1日10本ペースで論文チェックしていたんですね。
暇か?
そこで本記事では、この2500本の中から特に興味をもった研究22テーマを紹介します。
2022年記念で22本です。

【方法】
がんばって選びました

【まとめ】
いやー、ことしも沢山面白い論文が出てきましたね。
世界でもコロナの流行が続いていますが研究の進展は止まりませんね。
マンガン酸化物を筆頭に、来年こそは室温超伝導期待できますね。
どんな新しい研究が出てくるか楽しみに、2023年を迎えたいと思います。

【結果】
1、Bi2212の電子-ホールドープ実現と銅酸化物超伝導における新たな発見
 2022年最大の発見です(個人の感想です)。
 銅酸化物は母物質である反強磁性絶縁体にキャリアをドープすることで超伝導が発現することが知られています。この時、電子とホールのキャリアに対して、反強磁性絶縁体相を跨いだ相図が対称的になるのかというのが長らく議論になっていました。というのも、ホールドープ、電子ドープできる銅酸化物がそれぞれ異なるため、相図の違いがキャリア種類によるのか母物質の結晶構造に依存するのかはっきりしていなかったためです。
 そんな中、中国H.Dingらのグループが代表的な銅酸化物超伝導体であるBi2212に対して水素化カルシウムを利用したアニールを行うことで、反強磁性絶縁体相を跨いだ、ホールドープ、電子ドープが実現できることを明らかにしたのです!
 すごい!これもうNatureやろ!っておもったらChinese Physics Lettersに出版されたようです。捏造室温超伝導論文よりもこっちをNatureに掲載せんかい!
 まあ、結晶作って相図作っただけなので専門誌もしゃーなし。輸送特性や擬ギャップの研究、ARPESやSTMは今後に期待ですね。
 銅酸化物には他にも「塩素系銅酸化物におけるCDWの発見」「常伝導輸送現象はボルツマン理論で説明できるか議論」()「ネマティックPDWの観測」「銅酸化物におけるBEC-BCSクロスオーバーの不在」「擬ギャップ相はネマティック相ではない」といったテンションの上がる研究が沢山です。飽きないですね。


2、C-S-H系高圧室温超伝導Nature論文の撤回とさらなる捏造の可能性
 今年一番の問題作。人類初の室温超伝導(ただし高圧下)として期待されたC-S-H系高圧室温超伝導体でしたが、Hirschとvon der Marelらの詳細な調査により怪しい磁化率の操作が行われていることが明らかになり、Nature編集部権限で撤回となりました。著者たちは納得していないようですがその後の新たな反論がないところをみるとマジで捏造だった可能性もあります。
 このあたりは面白いのでブログの記事にもまとめましたが、その後さらなる疑惑が発見されました。つまり、「磁化率だけじゃなくて電気抵抗も捏造じゃね?」()という疑惑です。もう全てが怪しい。こうなると著者たちがScienceに報告した高圧下水素の金属化に関する論文も怪しさ満点です。すべてがF(Fake)になる。。。


3、マイクロソフトによるマヨラナ励起発見の報告
 量子コンピュータの研究花盛りな世の中ですが、その中でも注目を集めている手法の一つがマヨラナ励起を利用したトポロジカル量子コンピュータです。この実現にはそもそも確実なマヨラナ励起を発見する必要があります。
 2018年、Microsoft社がデルフト工科大のLeo KouwenhovenらとNatureに報告した論文は不適切なデータ処理により撤回に至りました。しかしそこは世界のMicrosoft。Chetan Nayak率いる研究チームはさらなるデバイス技術の向上と理論的検討をもって、再びマヨラナ励起を発見したことを報告しました。コレも面白いのでブログにまとめてます
 今回は本物まちがいない!
 とはいえ絶対はないのが科学研究。以前から研究に疑問を呈しているFrolovは今回も懐疑的ですが、マヨラナ励起の研究は今後も要注目です。


4、深層学習における相転移の発見
 世はまさにAI時代。進歩がすごすぎてキャッチアップが間に合いません。一方で「深層学習は層を深くすると何故うまくいくのか?」というその基礎理論の研究も着実に進んでいます。
 東大上田研は今年報告した論文の中で、ニューラルネットワークの層を深くすることで、予測誤差とモデル複雑性の競合のトレードオフの結果、統計物理でいうところの一次相転移と二次相転移、そしてゼロ次相転移が存在することを理論的に明らかにしました。
 物理帝国の力ってすごい!

 
5、軌道流の観測
 ムーアの法則にしたがった半導体の微細化の限界が見える中、新たな技術に注目が集まっています。その1つが電子のスピンに注目したスピントロニクスです。しかし、電子の持つ性質はスピンだけでしょうか?そう、軌道ですね。
 慶應大安藤研は、スピントロニクスが固体中のスピン軌道相互作用に基づいて生じていることに着目し、Ni/Ti多層構造においてスピン流のカウンターパートである軌道流を実験的に観測することに成功しました。
 大オービトロニクス時代の始まりだ~~~
その他にも、「フェリ磁性体Mn3Si2Te6におけるカイラル軌道流の観測」、「冷却原子におけるネマティック軌道超流動の実現」「電子軌道の可視化」など軌道物理に関するおもしろ論文がたくさんです

6、ニッケル酸化物超伝導の超伝導対称性の追求
 ニッケル酸化物超伝導体の発見は銅酸化物超伝導や鉄系超伝導に続く強相関電子系超伝導のメカニズム解明に光明を与える存在として注目を集めています。
 今年も地道な研究が続き、その超伝導状態の秘密が明らかになりつつあります。不明だった超伝導対称性がs波対称性だったりd波対称性だったり実は希土類次第でp波対称性になるんじゃね?とか、磁場中で回転対称性が破れる超伝導相があったり、サンプルクオリティの改善により常伝導状態の輸送特性が銅酸化物と似ていることが明らかになったりです。
 はやくARPESとSTMで決着つかねぇかなぁ~~~~

7、トポロジカルカゴメ超伝導体の4e/6e超伝導の発見と新たな潮流
 超伝導といえばクーパー対。電子が2つペアになりボース粒子的に振る舞うことで超伝導状態となる。常識ですね。おれは幼稚園で習った。
 たしかにフェルミオンが偶数個くっついたらボース粒子的に振る舞うのでありっちゃあり。これほんまかぁ~~~???って感じですが、理論的考察もたくさん()出て今後も注目の現象です。
 トポロジカルカゴメ超伝導体はコレ以外にも様々発見が続いた1年でした。「NMRによる2種類のCDW状態の発見」や「圧力下ポイントコンタクト分光による超伝導状態変化の発見」は興味深いです。また「CDW転移を持たない新規トポロジカルカゴメ超伝導体RTi3Bi5の発見」は鉄系超伝導体におけるFeSeのようにこれら物質系の電子状態を明らかにする上で重要なものとなりそうです。しかしネマティック相やARPESの研究の進展が早すぎる()。
 また、関連物質としてカゴメ格子物質FeGeにおいてもCDW転移が観測され、カゴメ物質におけるCDW秩序に注目が集まっています。(
 一方で新たな論争も誕生しました。「CDW転移温度で時間反転対称性が破れるのか?」という問題です。主流派は「時間反転対称性は破れている」()という主張のようですが、米スタンフォード大のAharon Kapitulnikらはカー効果測定から「時間反転対称性は破れていない」()という主張の論文を報告しており、今後も議論が注目されます。

8、YbB12は単なる近藤絶縁体か?
 YbB12は近藤効果によりギャップが開き絶縁体となるいわゆる近藤絶縁体として知られています。SmB6の親戚ですね。YbB12は絶縁体にも関わらず低温で量子振動が観測されることから謎の中性粒子が存在することが示唆され注目を集めています。
 そんな中、N. Sluchankoらのグループはテラヘルツ分光と赤外分光、磁気輸送測定からYbB12が低温でストライプ状の電荷秩序を示し、金属部分と半導体部分からなる電子相分離を生じていることを明らかにしました。ただの絶縁体ちゃうやんけ!
 Yb化合物では「YbCl3における磁場中二次元BECの観測」「YbIr3Si7の謎の中性粒子のNMR応答」など面白現象の発見が続いていますね。


9、FeSe薄膜の純粋電子ネマティック相の実現と鉄系超伝導体における新たな発見
 鉄系超伝導体は母物質の磁気構造相転移を抑制することで超伝導が発現します。一方で、磁気秩序を持たず構造相転移のみをもつFeSeは純良な結晶が得られることもあり人気の物質となっています。電子系が回転対称性を破るネマティック相転移とも呼ばれるこの構造相転移は非常に僅かな結晶歪を伴い、その起源に注目を集めています。
 東大前田研を中心としたグループは高度な薄膜結晶技術を活かし、「構造相転移を示さないが電子ネマティック秩序は示す」というFeSe/LAOの作成に成功しました。まさにネマティック秩序の起源が電子系にあることを明らかにする衝撃の結果です。イノベーションすぎる~~~

10、量子計測におけるトポロジカル限界の提唱
 量子系の測定は量子力学によって決まる測定限界が存在します。単一パラメータ測定には量子フィッシャー情報量によって決まる量子クラメール・タオ限界とよばれる測定限界が存在することが知られていました。
 Jianming Caiらのグループは、量子クラメール・タオ限界と量子幾何との関連に着目し、量子多体系の多パラメータ測定には、バンド構造のベリー曲率やチャーン数によって決まるトポロジカル測定限界が存在することを示しています。量子ホール効果といった現象と関係のあるベリー曲率が、測定限界にも影響を与えるって、量子多体系は奥深いですね。


11、BaNi122の量子液晶の発見
 最近流行りの強相関電子系の話題といえば?そうですね量子液晶ですね。
今年に入り注目が集まったのがBaNi2As2における量子液晶性です。BaNi122は鉄系超伝導体と類似の物質ですが、磁気構造相転移を示すBaFe2As2と異なり斜方晶転移と電荷密度波転移を示し、さらに低温で超伝導を示すことが知られています。
 ドイツのMatthieu Le TaconらとアメリカのRobert Birgeneauらは独立にBaNi122の電荷密度波転移温度以上に電子系が異方的になる電子ネマティック状態が実現していることを非弾性X線散乱やラマン分光、弾性抵抗の測定から明らかにしました。(
 銅酸化物や鉄系、マジックアングルグラフェン、重い電子系まで幅広く存在する量子液晶。その普遍性がまた明らかになった形です。


12、半導体微細回路へのトポロジカル半金属の活用
 半導体の微細化が止まりません。TSMCはついに3nm級の量産を開始し、2nm級の開発も着実に開発を進めています。日本でもIBMの最先端技術を用いた半導体量産に向けてラピダス社が立ち上がり、ベルギーの研究機関imecの協力も得て半導体開発の復権が進められようとしています。
 半導体微細化の障壁の一つが配線に利用される金属の抵抗です。従来使われるCu配線では配線幅を小さくするほど実質的な抵抗が増加し信号遅延が生じてしまうことが知られています。その解決策として以前Intel社ではCo配線の利用が検討されましたが、その開発に苦戦したことがTSMCに微細化で大きな遅れを取った原因の1つと言われています。
 米IBMや米イエール大のグループは独立に、この課題に対してトポロジカル半金属が活用できるのではないかというソリューションを提案しています。トポロジカル半金属ではその特殊な表面伝導のために後方散乱が抑制され微細化に有利に働くことを実験的に検証しています。(
 トポロジカル物性はスピントロニクスの文脈などで注目を集めていましたが、半導体の微細化というホットな話題にも活用できることがわかり、ますます夢が広がる物質だなと感じます。

13、マンガン酸化物における高温超伝導の可能性
 新しい高温超伝導、来ました。
高温超伝導といえば銅酸化物超伝導や鉄系超伝導、最近話題にニッケル系超伝導が注目されています。それらは「母物質の反強磁性秩序を抑制したらスピンゆらぎで超伝導がでるんじゃね?」という指導原理により説明することができます。
 すると、同じように反強磁性秩序をもつマンガン酸化物でも超伝導が出てよいのではないかと考えられます。しかし巨大磁気抵抗や軌道秩序など興味深い物性を示すもののこれまで超伝導が観測された事はありません。
 東北大の丸山研は、薄膜化した(La, Sr)MnO3に対してイリジウムを置換することで100Kを超える高温で超伝導のような電気抵抗の急減が生じることを報告しました。巨大な負の磁気抵抗という可能性もありますが、その転移温度の磁場依存性が従来の転移と異なることから超伝導の可能性があると主張されています。
 いやーやばいっすね、テンションバク上がり。NatureかScience間違いなし。来年はもうマンガン酸化物の年ですよ。え?イリジウムのスピン軌道相互作用で特殊な電子状態になった単なる負の磁気抵抗をみてるだけ???ほなサイレポか。。。 

14、冷却原子における分数量子ホール効果を含む新たな発見
 冷却原子系は原子間の相互作用を精密にコントロールすることが可能であり、量子多体現象をシミュレートすることが可能です。
 面白いですよね。そんな冷却原子のプロのお話が聞けるポッドキャストはこちら。


15、マーミン・ワグナーの定理が実現するサンプルサイズは宇宙を超える
 マーミン・ワグナーの定理は、「次元が d ≤ 2 の十分に短距離の相互作用を持つ系では、有限温度で連続対称性が自発的に破られることはない」という有名な主張です。単純には二次元系では磁気秩序は生じないというお話です。しかし実際の物質は定理が主張するような理想的な状態にはなっていません。そのような状況では磁気転移はどうなるのでしょうか?
 Kostya S. Novoselovらのグループは、「実験室で一般的に見られる有限サイズの2次元vdW磁石において(例えば、ミリメートル以内)、短距離相互作用が十分に大きく、実用的な実装において磁気異方性なしに有限温度での磁気秩序の安定化を可能にする」ことを明らかにしました。さらにサンプルサイズが大きくなるにつれてマーミン・ワグナーの定理の主張するように磁気転移温度が低下していくことを明らかにしましたが、定理の通り秩序が消失するには宇宙サイズのサンプルサイズが必要なことも明らかにしました。
 マーミン・ワグナーの定理を示したい?ほな、宇宙サイズの二次元磁性体を用意して地球がヤバい。

16、グラファイトにおける量子化熱電ホール効果の観測
 近年、ZrTe5やTaPといった3次元ディラック/ワイル節点半金属において、高磁場中の熱電効果がキャリア密度と磁場に依存しない一定値に収束する量子化熱電ホール効果に注目が集まっています。しかしこの現象は節点半金属だけでなく節””線””半金属でも生じる可能性が指摘されています。
 グラファイトすごいですね。鉛筆の材料であり、一方で室温超伝導を示すトンデモ物質()として扱われたりもしますが、しっかり興味深い物性を示します。鉛筆なめながら量子化を感じましょう。


17、単一原子レベル超伝導ダイオード効果の発見
 ダイオード効果とは電流が一方向にのみ流れる整流効果のことで半導体デバイスの基本機能の1つです。近年、このダイオード効果が超伝導流に対しても生じることが明らかになり、非相反電流というより広い文脈の中で、実験的・理論的な研究が加速しています。
 そんな中、Katharina J. Frankeらのグループは、究極の超伝導ダイオード効果を発見するに至りました。すなわち、単一原子レベルでのダイオード効果です。彼女らはSTMを用いて、Pb-Pbジョセフソン接合を形成し、その間に磁性原子を挿入することで、最小単位の構成での超伝導ダイオード効果の観測に成功しました。
 やっぱりSTMってすげえわ。。。


18、UTe2におけるCDW、PDWの発見
 UTe2は近年発見されたトポロジカル超伝導体候補であり、その相図の豊かさから注目を集めている物質です。この物質の難点は超伝導転移温度が低いことであり、その超伝導ギャップ構造の解明は大きなチャレンジとなっています。
 Vidya MadhavanらのグループはSTMを用いて、この物質が磁場敏感なCDW状態を伴っていることを明らかにしました。
 これだけでも大きな発見ですが、超伝導とCDWの共存といえば?そう銅酸化物超伝導です。その銅酸化物超伝導ではd波超伝導状態とCDW状態の相互作用によりPDW状態が生じていることから、UTe2でも同じようにPDW状態が生じている可能性があります。
 実際、J. C. Séamus Davisらのグループは10 μeV分解能の超高精度トンネル分光測定によりUTe2が実際にPDW状態を示すことを明らかにしました。
 超絶技術によるおもしろ物質の新現象の発見、夢がありますね。
 ウテテは他にも、サンプルクオリティが改善され、走査型SQUIDMuSRによる研究が報告され来年の新発見にも期待です。

19、グーグルと中国グループによる超伝導量子コンピュータにおける非エニオン統計の観測
 量子コンピュータの中でも一番研究が進んでいるのが超伝導量子コンピュータと考えられます。その量子ビットの増加や誤り訂正の開発とともに、今ある超伝導量子コンピュータを使った研究も盛んに行われています。
 グーグルと中国のグループは独立に、超伝導量子コンピュータを利用した非エニオン組紐統計の観測成功したことを報告しました()。非エニオン粒子は誤り耐性をもつトポロジカル量子コンピュータの実現の礎となるため、今後さらなる研究の進展が期待されます。
 しかし、グーグルの著者は数がすごいですね。多分169名。もはや素粒子実験級です。超伝導量子コンピュータの実機をもって研究できる体制、資金力をもつグーグルやそれに対抗する中国はレベルがダンチです。

20、NV中心ダイヤモンド磁力計の活躍
 ダイヤモンドに生じた空乏の一種であるNV中心はその磁気敏感性から、超空間分解能をもつ磁力計への活用が注目を集めています(PDF)。
 今年も沢山のNV中心磁力計による研究が報告されました。特にNV中心磁力計を用いたシリコン光起電力デバイスの電流経路の可視化は、磁気状態だけではないその応用の広さの可能性を教えてくれる興味深い報告でした。
 NV中心磁力計しか勝たん。


21、量子捻り顕微鏡の開発
 マジックアングルグラフェンの発見以来、ファンデルワールス物質を利用したツイストロニクスの研究が盛んになっています。超伝導やら量子ホール効果やらネマティック秩序やら強相関電子系で起きる創発現象を軒並み観測できることからその人気も納得です。薄膜であることから研究手段はARPESやSTMが主流となりますが、難点は欲しい角度に調整したサンプルの作成です。もう1.1°になるまで繰り返しサンプル作成を行うのは嫌だお。。。
 そんな中、天才の発想が提案されました。「STMの探針をファンデルワールス物質にして、好きな角度に回せるようにすればいいじゃん」。イノベーションすぎます。まさにコロンブスの卵。目玉焼きには醤油が好きです。


22、極低温超分解能レーザーARPESの開発
 角度分解高電子分光、いわゆるARPESは物質のバンド構造を直接観測することが可能な最強の測定手段です。まあ磁場に弱い軟弱さはありますが。。。そんな測定手段をさらに最強にするには、エネルギー分解能を上げ、さらに低温で測定できるようにする必要があります。そうすればコレまで測定できなかった面白い超伝導状態や創発現象を観測することが可能になります。
 中国X. J. Zhouグループは、He3冷却と7eVレーザーを用いた⊿E=0.5meV、T=0.8KでのARPES測定を実現し、これまで論争となっていた鉄系超伝導体KFe2As2の超伝導ギャップ構造を決定することに成功しました。サンプルクオリティもすごい。そして、観測されたギャップ構造から、ホール面間で符号反転が生じるノーダルs±波超伝導であることを主張しています。
 すごすぎ装置です。完全に見えてる。透け透けです。エッチすぎる。これでP-Ba122のギャップ構造も決着つけてくれ。


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